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運動するとなぜ低血糖になりやすい?運動と血糖値の関係と、正しい血糖コントロール方法、運動時の正しい栄養アプローチを分子栄養学の観点から徹底解説!

運動は筋肉でブドウ糖を消費して低血糖になりやすくなる以外にも、低血糖症に繋がる疾病を引き起こしやすい。

近年では運動不足が万病の元となると言われ、健康やダイエットのためにも運動する習慣を取り入れる人が増えてきています。運動すると筋肉が付き、基礎代謝が上がります。また、余計な脂肪も燃焼できるのでダイエットや生活習慣病の予防にも効果的です。

しかし、その一方で運動をしたことによって低血糖症に陥ってしまうなど、むしろ運動をすることによって体調が悪化してしまうパターンも増えてきてきました。これは、正しい運動方法や栄養の摂取方法を知らないために、エネルギーが不足して低血糖を引き起こしてしまうためです。

また、運動による低血糖症は、真剣にスポーツに取り組んでいるスポーツ選手やアスリートなどでも起こりやすい症状です。一般的には運動によるエネルギーの消耗が低血糖症を引き起こすと言われていますが、低血糖症に陥る原因は貧血や消化吸収能の低下など、様々な原因があります。

運動による低血糖症を改善させるためには、これら根本原因からアプローチしていくことが何よりも重要です。今回は、運動と低血糖症の関係と、運動によって引き起こされる低血糖症と関連の深い疾病の解説、およびその改善方法と運動時における正しい栄養アプローチについて分子栄養学観点から詳しく解説します。

目次

運動するとなぜ低血糖になりやすい?運動と低血糖症との関係とは。

ナンナン

みてみて!ダイエットのために運動を続けてたらこんなに痩せたよ!

はる かおる

おお!頑張ってるね!なかなかいい体してるじゃん。

ナンナン

うん、身体の見た目はすごくよくなったんだけど・・・。実は、最近あんまり調子がよくないんだ💧

はる かおる

あらら💧最近調子よくないんだね💦 具体的に、どういうふうに調子が悪いの❓

ナンナン

うん、ちょっと運動すると頭がクラクラしたり、急に力が入らなくなったりして、立っていられないくらいひどいんだ💧

はる かおる

立っていられないくらいの状態か・・・それはひどいね。1つ聞きたいんだけど、運動するときはちゃんと食べてる❓

ナンナン

うん、しっかり食べてるよ❗ダイエットも兼ねて、プロテインもたくさん飲んでるしね。

はる かおる

そかそか。もしかして、ダイエットのために割とヘルシーな食事をしてたり、朝ご飯をプロテインだけで済ませるとか、そんな食生活してない?

ナンナン

うん、そうだよ❗最近は特に意識してて、炭水化物を減らしたりヘルシーなササミでタンパク質を摂るようにしたりして、食べる量と質にも気をつかってるんだ。

はる かおる

あー、やっぱり💧炭水化物を抜いて運動してるんだね。おそらく、ナンナンの不調は低血糖症だよ。

ナンナン

えっ、て…ていけっとうしょう❗❓低血糖って、糖尿病の人がなる病気じゃないの❓❓

はる かおる

いやいや、低血糖症は糖尿病に限らず、運動や普段の食生活にも密接に関係している病気なんだ。特にナンナンの場合は食生活に問題があるね。間違った食事や運動は、逆に身体を壊す原因になるよ。

ナンナン

そ、そうだったのか…💧じゃあ、僕の低血糖症はどうやったら改善出来るのかな❓

はる かおる

運動による低血糖症を改善するには、適切な食事を心がけることだね。よし、このあたりについて今から詳しく説明してあげるよ❗

現代社会では、インターネットや交通手段の発達により、身体を動かす機会がめっきり減ってしまいました。このような運動不足が糖尿病や生活習慣病などの万病を引き起こす原因と言われています。このことから、ダイエットのために運動を取り入れたり、健康のために運動を取り入れる方も増えていますよね。また、元々スポーツが好きで、プロを目指している方もいると思います。

このような運動習慣は、健康になるための第一歩です。運動不足よりかは、運動をしている方の方が遙かに健康的です。ただ、この運動のやり方や栄養摂取の方法によっては、むしろ身体に不調を招いてしまう結果となりかねません。その間違った方法によって引き起こされる主な不調が、運動による低血糖症です。

運動と低血糖症の関係は深く、特に運動によるエネルギーの消費量増大が低血糖症を発症する原因です。特に、私達が運動するときに使っている筋肉は、主に「ブドウ糖」がエネルギー源になります。運動によってこのブドウ糖が枯渇してしまうと、低血糖症を引き起こしやすくなってしまいます。

この時、きちんとエネルギー源である炭水化物や糖質を摂取すれば、殆どの場合は低血糖症を防ぐことが可能です。しかし、中にはダイエット目的による食事制限や糖質制限を行いながら運動する場合もあり、十分なエネルギーを確保しないまま運動している人も多く居ます。この十分な糖質を摂らないまま運動することで、低血糖症を引き起こしたり、逆に筋肉量が低下してしまったり等の逆効果に繋がってしまうのです。

このあたりの具体的なメカニズムとしては、筋肉や肝臓における糖代謝が関係しています。私達が食事から摂取した炭水化物や糖質は、小腸で吸収され、ブドウ糖として筋肉で使われていますよね。実はこれ以外にも、余ったブドウ糖はは貯蔵型のブドウ糖である「グリコーゲン」に変換され、肝臓や筋肉にも貯蔵されています。そして、運動時などエネルギー消費が増えたときには、必要に応じて筋肉や肝臓に貯えた「グリコーゲン」を分解し、ブドウ糖にして利用しています。

私達が摂取したブドウ糖は、筋肉や肝臓で貯蔵され、必要に応じて分解して利用されている。

この時、食事量が足りなかったり、激しい運動をしたりして貯蔵されたグリコーゲンを使い切ってしまうと、筋肉や脳で使えるブドウ糖が足りなくなってしまいます。これが運動によって低血糖症に陥る第一歩です。じゃあ、筋肉や肝臓に貯えたグリコーゲンを使い切ったらすぐに低血糖症になるのか?というと、そうではありません。

私達の身体はブドウ糖が枯渇しても生命が維持できるように、様々な調節機構が働いています。その主な機能の1つが「糖新生」と呼ばれる機能です。糖新生とは、筋肉に含まれるタンパク質や脂質などからブドウ糖を合成する仕組みのこと。主に筋肉に含まれる「アラニン」や「グルタミン酸」などの糖原性アミノ酸と呼ばれる、ブドウ糖に変換できるアミノ酸を材料を元に、肝臓でブドウ糖に変換されます。この糖新生の機能によって、グルコースやグリコーゲンを使い切ったとしても、低血糖症にならないように身体が調節してくれています。

糖新生では、主に筋肉に含まれるアラニンやグルタミン酸を元にブドウ糖を合成する

そして、この糖新生が起こるときは「糖新生を起こしなさい」という命令が必要です。この命令のような役割を担っているのが、副腎やすい臓などから分泌される「グルカゴン」や「アドレナリン」「ノルアドレナリン」「糖質コルチコイド(コルチゾール)」などのホルモンです。

血糖値の調節は、血糖を下げるインスリンというホルモン1つに対し、上げるホルモンには様々な種類がある。

グルコースの枯渇によって低血糖に陥ると、これらが分泌されて糖新生が促され、血糖値を上げる働きがあります。ただ、これらのホルモンは同時に交感神経を刺激するため、イライラしたり落ち着かなくなったり、不安になったり、冷や汗をかいたり等の不調も引き起こします。これが、運動によって低血糖症の症状が引き起こされる仕組みです。

低血糖症に陥ると、冷や汗や動機、意識障害や痙攣、手足の震えなど様々な症状が現れ、最悪の場合は死に至る恐れもあります。これは、脳のエネルギー源であるブドウ糖が足りなくなるために脳機能が低下し、中枢神経症状や意識障害を引き起こすためです。それ以外にも耐えられないほど甘い物の欲求が強くなったり、気分が落ち込んだり不安感に襲われるなど、その症状は多岐にわたります。

https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/050/05.htmlより

通常、血糖値は80〜100前後に保たれていますが、何らかの原因で血糖値が80以下を下回っている状態が続いていると、低血糖症と判断することが出来ます。ただし、これはあくまで病気としての判断方法であり、一時的に低血糖状態になっていても病気とは判断されません。特に運動している方は運動時のみ低血糖症を引き起こしている場合があり、空腹時血糖値は正常である事が殆どです。このため、低血糖症と診断されない場合が多く、特に何の対処も行わないまま放置しているパターンが大半です。

では、運動時の低血糖症を放置しているとどうなるのでしょうか?運動時における低血糖症の問題は、単に精神的、身体的症状が現れるだけではありません。先ほどの「糖新生」では筋肉のタンパク質を分解してブドウ糖に変換する作用があることは説明しましたよね。つまり、運動時の低血糖症は、筋肉量が低下する原因にもなります。このため、運動して筋肉を付けているつもりが、逆に筋肉量を減らしていることになってしまうのです。

糖質制限などで飢餓状態が続くと、筋肉を壊してブドウ糖を合成する糖新生が起きる。これによって、筋肉量が低下する。

これは、糖新生によって1gのブドウ糖を得るためには、2gのタンパク質を分解しなければならないためです。糖新生によってアミノ酸からブドウ糖に変換するためには、それなりにエネルギーを消費します。エネルギーを消費しながらエネルギーを作り出すので、非常に効率が悪いのです。
この糖新生が続くことによって筋肉がドンドン分解され、筋肉量が低下することに繋がります。つまり、運動によって低血糖状態になると、運動によって筋肉を付けるはずが、逆に筋肉量が落ちてしまう結果に繋がってしまうのです。

ナンナン

げげっ❗運動で低血糖になると筋肉が落ちちゃうのか❗

はる かおる

そうだよ。だから、ダイエットを目的とした食べない運動は、むしろ筋肉量を低下させて逆に太りやすい身体になってしまうんだ。

「食べないダイエット」や「糖質制限」が運動時に低血糖症を引き起こす原因に

運動によって低血糖症を発症する大きな原因となっているのが、ダイエットや糖尿病の改善を目的とした「食べない運動」です。ダイエットでは食事からのカロリーの摂取量を減らすことが良しとされ、ヘルシーな食事をしたり、食事量を減らしたりすることが一般的です。

また、糖尿病の方は血糖値を上げすぎない対策として糖質制限食が行われていますよね。このような糖質制限や食事量をコントロールする事で、痩せる効果があったり、糖尿病の改善効果があると言われています。これら食事制限に加え、ダイエットや糖尿病の改善には「運動」を取り入れることが効果的とも言われています。でも実は、この食事制限をしながら運動をしてしまうことで、むしろ体内で使えるエネルギーの量が低下し、低血糖に陥ってしまう原因になっているのです。

人は、食べた食べ物をエネルギーに変えて体を動かしたり、体温を維持したり、消化吸収をしたりしています。
この時、過剰な糖質制限や食べないダイエットなどによって摂取カロリーが低くなってしまうと、体内で利用出来る糖やエネルギーが枯渇してしまいます。その結果、十分な血糖量を維持することが出来なくなり、低血糖症へと陥ってしまうのです。

特に、脳や神経系、赤血球の唯一のエネルギー源は糖だけです。糖が枯渇すると脳のエネルギー不足を招き、やる気が起こらなかったり、鬱や不安感、パニックを引き起こしたりなど精神的にも大きな不調が表れます。

この状態が続くことによって、身体は優先的に筋肉を壊してブドウ糖を生成し、エネルギーとして使ってしまうため(糖新生)、実際には脂肪が燃焼されたり、糖尿病が改善することはありません。糖尿病の方は、食べずに運動をすることで一時的に血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が低くなって改善したように見えますが、これは糖の摂取を減らしたためにそう見えるだけです。

糖尿病や低血糖症の根本原因である血糖コントロール機能自体は、全く改善していません。また、ダイエットしている方は一時的に体重が落ちたように見えますが、これは「脱水」による水分量の低下と「筋肉量の低下」によって体重が減ったためです。

食べないダイエットは筋力の低下を招き、筋力の低下は代謝の低下や糖代謝の悪化を引き起こす。

体内の60%は水分であり、例えば体重60kgの人の場合は36kgが水分です。体重の半分以上を水分が占めているので、脱水になれば体重の減少は大きく見えます。また、体重60kgの人のうち、およそ30%の18kg程度は筋肉が占めています。この筋肉も体重に占める割合が大きいので、筋肉量が低下すると体重の減少が大きく見えるのです。

このような体重低下は、むしろ筋肉量が落ちることによって更に糖代謝の悪化と基礎代謝の悪化を招きます。これは、摂取したブドウ糖がグリコーゲンとして筋肉に貯えられる量が減ったり使われる量が減ったりするためです。単純に筋肉量の低下はブドウ糖の貯蔵量と消費量の低下に繋がり、筋肉に取り込めなかったブドウ糖は血中に溢れます。血中の余剰なブドウ糖は、中性脂肪に変えられて脂肪として貯えられたり、高血糖の状態が続いたりして糖尿病が悪化します。ですので、食べないダイエットや運動はむしろ太りやすくなり、糖尿病の悪化を招く原因です。

加えて、胃や腸も筋肉で出来ていることから、筋肉量の低下は胃や腸の消化吸収能力も招きます。消化吸収能の低下は、最悪の場合「甲状腺機能低下症」や「SIBO」「リーキーガット症候群」などにも発展する恐れもあります。
ですので、間違ったダイエットや極端な糖質制限、最近流行りの「ファスティング」などは低血糖症を引き起こす主な原因になりますので、絶対に止めましょう。

このような運動時における低血糖症の対策として最も効果的なのは、しっかり食べる事です。身体を動かすエネルギーをしっかりと食事から摂取出来れば、筋肉を壊してエネルギーに変える必要が無くなります。むしろ適切な食事は筋肉量をアップさせることにつながり、基礎代謝アップや糖尿病改善、ダイエット等に繋がります。このことから、運動をする際はしっかりと食事を摂るようにして下さい。運動時における適切な食事としては、糖質、脂質、タンパク質などをバランスよく摂ることと、しっかりとカロリーを確保することです。

筋肉量をアップさせ、代謝を上げるにはバランスの良い食事を摂ることが大切。適切な糖質量の摂取はむしろ筋肉を付けやすくしてくれる。

例えば、運動時などにおける筋肉へのブドウ糖の取り込みは「インスリン」というホルモンで行われていますので、インスリンを適切な量分泌するためにも、適正な糖質量の摂取が重要です。人にもよりますが、目安としては一食20g〜40g、一日に最低でも70g〜130gは必要です。この量は、ご飯で言うと110g程度、茶碗3分の2程度が40gに当たります。また、食パンなら5枚切り一枚、中華麺なら一玉より少し多め、そばなら1.5人前、うどんなら一玉よりすこし少なめ程度の量です。

ダイエット中でも適切な炭水化物を摂取する事が重要。炭水化物の必要量は意外と多い。

これらの炭水化物を、毎食必要量摂取するようにして下さい。加えて、ご自身の体格や活動量にあわせて更に増量するなど調節することも必要です。不足する場合は筋肉の減少や腸内環境の乱れに繋がりますので注意して下さい。それから、糖質だけではエネルギーが足りないので脂質も十分に摂るようにしましょう。一日に必要なエネルギーの20%〜25%は脂質から摂るのが良いと言われています。

この糖質と脂質の摂取と併せて、タンパク質を多く摂取する事も重要です。質の良いタンパク質をしっかり摂取する事で、筋肉の合成や筋肉量維持に繋がります。摂取目安としては、体重1kgあたり1g〜1.5gのタンパク質量です。例えば、体重60kgの人であれば一日に60g〜90g程度のタンパク質の摂取が目安になります。

加えて、食物繊維もしっかり摂るようにしましょう。タンパク質の大量摂取は腸内をアルカリ性に傾けたり、悪玉菌のエサになったりすることから、腸内環境が悪化しやすくなります。腸内環境が悪化するとタンパク質の消化吸収や糖代謝の悪化に繋がります。せっかく摂ったタンパク質がしっかり消化吸収出来るよう、いい菌のエサとなる食物繊維の摂取が重要です。摂取目安としては、男性では一日あたり20g以上、女性なら18g以上が目安です。食物繊維をしっかり摂れば、善玉菌が腸内環境によい「短鎖脂肪酸」を生成し、腸内を酸性に傾けて悪玉菌の増殖を防いでくれます。

これら炭水化物や脂質、タンパク質などをバランスよく摂るためには、食事内容を工夫することが欠かせません。バランスよく摂取出来る食事のポイントとしては、和定食や地中海料理などのメニューがオススメです。

これら和食や地中海料理は、おかずの種類も多く野菜も多く摂れるので、タンパク質、炭水化物をバランス良く摂る事が出来ます。まさに、ダイエットや糖尿病、低血糖症の改善にはもってこいの食事内容です。お米の量も食べ過ぎなければ問題ありません。カロリーが不足してしまわないよう、オリーブオイルなどの脂質も取り入れてしっかりカロリーを確保して下さい。

それから、食べ方にもポイントがあります。血糖値を急激に上げないようにするために、まずは野菜サラダなど食物繊維から先に食べるようにして下さい。そして、次にお肉などの副菜、タンパク質を食べて、最後にお米などの主食を食べるようにしましょう。こうすることで糖の消化吸収が緩やかになり、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。

そして、これら食事を摂る量は人によっても大きく変わります。一日に必要なカロリーは身長や体重、活動量によって大きく変わり、カロリーが不足すると糖新生が起きて筋肉量が低下する原因になります。この筋肉を落とさないようにするためには、適切なカロリー摂取が欠かせません。その為には、ご自身に必要なカロリー摂取量を把握し、基礎代謝を下回らないように十分な食事量を摂取していきましょう。

自分にとって必要なカロリー量の計算は、次のサイトで計算することが出来ます。

基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算式

サイト上で、ご自身の体重と身長、年齢と性別を入力し、活動レベルを「低い」「普通」「高い」の中から選択して「計算」ボタンを押せば、一日に必要なエネルギー量と基礎代謝量が分かります。運動をしている方なら、「高い」を選択しましょう。ここで計算したカロリー量を参考に、一日に必要なエネルギー量は必ず摂取するようにして下さい。

例えば、ある人の基礎代謝量が1320kcal/日、一日に必要なエネルギー量が2292kcal/日だとしましょう。

この基礎代謝量は、「体温など生命維持をするために絶対必要なカロリー」のことです。この基礎代謝を下回ると命の危険に晒されてしまいます。基礎代謝量以上のカロリーは生きる上で最低限必要なカロリーですので、絶対に下回らないよう注意してください。

一日の必要エネルギー量は、基礎代謝に加えて体を動かしたり、頭を使ったり、喋ったりするなど日常生活を送る上で必要なカロリーが足された物です。この一日の必要エネルギー量を十分に摂取する事で、筋肉が壊されてエネルギーとして使われてしまうことを防げます。また、運動している方は筋肉の合成や身体の修復にもカロリーが使われます。ご自身に必要な一日のエネルギー量を計算し、これを下回らないような食事をするようにしましょう。運動している方の目安としては、運動内容や体格にもよりますが一日あたり3000kcal以上は必要です。

逆に、この必要エネルギー量よりも多いカロリーを摂取してしまうと肥満に繋がります。多すぎても少なすぎても体には良くありませんので、適切なカロリー摂取量を心がけて下さいね。

ナンナン

運動してしっかり筋肉を付けるためには、適切な糖質の摂取量とカロリーの摂取量が大事なんだね❗

はる かおる

その他にも、タンパク質やビタミンB群など栄養素の補給も大事だよ❗運動している人は交感神経優位から消化吸収能も弱っている可能性もあるから、血液検査を受けて自分の状態の確認することと、必要な栄養アプローチのアドバイスを受ける事が重要だね

見た目は美しい身体でも、身体の中はボロボロかも…。運動は筋肉でブドウ糖を直接消費する以外にも、低血糖症と関連が深い疾病を引き起こす。

ここまで、運動によるブドウ糖の消費と低血糖症の関係、加えてその対策としてカロリーをしっかり摂取する重要性について解説してきました。では、運動前にしっかりとご飯を食べれば低血糖症を防げるか?と言われたら、そんな事はありません。実は、運動と低血糖症は、単に運動によるブドウ糖の消費以外にも、消化吸収能の低下や口腔内の環境悪化、貧血など様々な原因が関係しているのです。

例えば、運動によって引き起こされやすい疾病として以下のような物があります。これらも、低血糖症と関連が深い疾病です。

運動によって引き起こされやすい疾病と、低血糖症と関連のある疾病

  • 消化不良
  • 口腔内環境の悪化
  • リーキーガット症候群
  • 貧血
  • 副腎疲労、慢性疲労
  • 酸化ストレス

ですので、運動前にしっかりと食べたからと言って、それだけで低血糖症が改善出来るとは限りません。特に運動の内容によっては交感神経が優位になりやすく、交感神経が優位の状態では胃の働きが低下して消化吸収能力が低下します。このことから、運動前にしっかり食べていたとしても、それがきちんと消化吸収出来ているかは全くの別問題です。

運動による交感神経優位な状態は、消化不良の原因に

私達が食べたタンパク質は胃で消化され、更にすい臓から分泌されるすい液によってアミノ酸まで分解され、吸収される

例えば、私達が食べた食べ物やタンパク質は、胃で分泌される胃酸(ペプシン)によって分解され、十二指腸で分泌されるすい液によって更に分解されてから小腸で吸収されています。炭水化物や脂質も同様で、すい液や唾液に含まれる「アミラーゼ」によってブドウ糖まで分解されて小腸で吸収されています。脂質は、胆嚢から分泌される「胆汁」によって水と混ざり合う状態にされてから小腸で吸収されています。これら栄養の吸収には、胃や胆嚢、すい臓の十分な働きが欠かせません。

しかし、勝負事などで常に緊張状態にあるアスリートやスポーツ選手では、その緊張状態から「交感神経」が常に優位な状態となります。交感神経が優位な状態では、胃液や腸液、唾液の分泌を抑制し、さらに胃の蠕動(ぜんどう)運動や腸運動も抑制してしまいます。

交感神経と副交感神経の関係。運動によって交感神経が優位になると、胃液、腸液の分泌が抑制され、更に胃と腸の蠕動運動も抑制される。
交感神経と副交感神経による身体への影響。交感神経優位では、唾液の分泌量も低下し、なおかつグリコーゲン分解も促進する。

食べ物を十分に消化吸収するためには、先ほどの胃酸や胆汁、すい液などの胃液や腸液の分泌に加えて、胃運動や腸運動もかかせません。これらの運動は胃や腸を収縮したり弛緩させたりして胃液や腸液と食べ物を混ぜ合わせ、粥状にして十二指腸へ送る働きをしています。

つまり、運動によって交感神経が優位な状態が続いている場合は、これらの働きが低下していることから、食べていても十分な消化吸収が出来ていない可能性が高いのです。食べていても十分に消化吸収が出来なければ、当然ながら運動時のエネルギーが足りなくなり、低血糖も引き起こしやすくなります。このことから、運動前に十分な量の食事を摂ることが、必ずしも低血糖症の改善に繋がるとは限りません。

緊張状態における「歯の食いしばり」や、口呼吸が口腔内の環境も悪化させる

また、食べ物の消化吸収は「口で物を噛む事」から始まります。私達は、食べ物を食べるときに必ず噛んで食べますよね。この「噛む」という行為も、消化を促す行動の1つです。よく噛んでよく唾液と混ぜ合わせて食べるほど、食べ物の消化はよくなり、胃や腸の負担軽減に繋がります。

しかし、アスリートやスポーツ選手など運動している人の場合は常に緊張状態にある事から、口腔内の環境が悪化していることが殆どです。これは、勝負事のために歯を食いしばっていることが多く、歯がすり減りやすくなることと、交感神経優位の状態によって唾液の分泌量が低下していること、口呼吸の回数が多いことから口の中が乾燥し、虫歯菌や歯周病菌が増殖しやすくなるためです。

また、運動時の衝撃によって赤血球が壊れ、貧血を引き起こしやすくなることから歯肉の状態も悪化します。これは、歯肉を形成する「コラーゲン」という組織に鉄分が欠かせないためです。これにより歯や歯肉の状態が悪くなり、十分に噛んで唾液と混ぜることが出来なくなることから、更なる消化不良を招きやすくなります。

歯垢の蓄積によって炎症が発生し、歯周組織の炎症が全身性疾患へ進行する

とくに口腔内環境の悪化の中でも恐ろしいのが「歯周病」です。歯周病とは、歯と歯肉の間に歯周病菌という細菌が感染し、歯周病菌が毒素を出すことで歯肉の炎症や全身性疾患へと進行する恐ろしい病気です。

具体的には、主に食べかすや磨き残しをエサに、歯と歯肉の間で歯周病菌が増殖。この菌がドンドン増殖していくと、そこで大量の毒素を分泌し、歯肉に炎症が発生します。この炎症が進行していくにつれて歯肉が弱くなり、歯肉から出血。弱くなった歯肉中の血管から歯周病菌が 歯槽骨に侵入し、歯を支えている骨を破壊して溶かすなどの影響を与えます。

この状態が慢性的に進行したり続いてしまったりすることで全身へ毒素や炎症が飛び火し、動脈硬化やアルツハイマー病、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、関節リウマチなど全身性の疾患へと進行してしまう恐ろしい病気です。

特に歯周病は糖尿病、低血糖症、動脈硬化、関節リウマチ、アルツハイマー病を引き起こす原因になる

この歯周病によって引き起こされる病気の1つに「糖尿病」がある事からもわかるように、歯周病と低血糖症には関連があります。これは、歯周病菌の毒素によってインスリン抵抗性を引き起こし、糖代謝を悪化させるためです。

メカニズムとしては、弱った歯肉組織から歯周病菌や毒素が血管内に侵入し、これをやっつけるためにマクロファージという白血球の一種が活性化します。このマクロファージが更に炎症を起こすサイトカイン(TNF-α)を放出することで、インスリンの機能が低下し、インスリン抵抗性が高まってしまうのです。

インスリン抵抗性が高まると、インスリンによって筋肉や細胞にブドウ糖が十分に取り込めなくなります。先ほど、インスリンは筋肉や細胞にブドウ糖を取り込む働きがある事は説明しましたね。このインスリン抵抗性は、糖尿病や低血糖症を引き起こす1つの原因です。

インスリン抵抗性によって筋肉や細胞にブドウ糖が十分に取り込めない場合は、血管内にブドウ糖が溢れて血糖値が上昇しやすくなります。このような状態で糖質や炭水化物を摂取すると、血糖値を下げるために更に大量のインスリンを分泌します。この大量に分泌されたインスリンが効き過ぎることによって血糖値が下がりすぎ、「血糖値スパイク」や「低血糖症」などを引き起こす原因となるのです。

また、インスリン抵抗性によって筋肉に取り込むブドウ糖の量が減ると、筋肉で利用出来るエネルギー源が足りなくなってしまいます。この結果、筋持久力が低下したり、筋肉の修復力が低下するなど、筋肉の利用や修復にも悪影響を及ぼします。加えて、運動時は交感神経が常に刺激されていることから、「糖新生」を促すホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなど)が常に分泌されています。糖新生は筋肉を壊し、筋肉からアミノ酸を取りだしてブドウ糖を合成します。

この状態が続くと、当然ながら筋肉量が低下します。そして、このような交感神経の高まりは唾液の分泌量低下や緊張状態から歯の食いしばりを引き起こし、更なる口腔内の環境悪化を引き起こす原因です。

これによって更なる口腔内環境の悪化やインスリン抵抗性、消化不良を引き起こし、糖の吸収や代謝が落ちて低血糖症を引き起こします。つまり運動と歯周病には関連があり、歯周病と低血糖症はお互いに悪影響を及ぼし、悪循環を形成してしまうのです。

口腔内環境が悪化することで腸内環境も悪化し、更なる低血糖症の悪化に繋がる

そして、この消化不良と口腔内環境の悪化は、胃と腸に負担をかけ、更なる悪循環を引き起こします。先ほども解説しましたが、私達は食べ物を食べるときに、「よく噛む」事で唾液が分泌され、唾液に含まれる「アミラーゼ」によってデンプン質をブドウ糖まで分解しています。これと同時によく噛むことでインスリンの分泌が促され、血糖値が上がりすぎないような機能が備わっています。もし、歯や歯茎が悪くなって噛めなくなったり唾液の分泌量が減ってしまうと、十分に噛んで消化することが出来ません。十分に噛んで消化することが出来なくなってしまった場合は、食べ物を大きい塊のまま飲み込むことになり、胃に負担がかかって消化不良を起こしてしまいます。

その結果、未消化の大きなタンパク質や分子が小腸や大腸に流れ込む事につながり、未消化のタンパク質や食べ物は悪玉菌のエサになります。この悪玉菌が未消化のタンパク質などをエサに腸内で増殖し、毒素を分泌。毒素は消化管にダメージを与え、腸粘膜に炎症を発生させます。この炎症がSIBO(小腸内細菌増殖症)やリーキーガット症候群(腸漏れ症候群)、自己免疫疾患や菌血症などにつながり、最終的にはまた口腔内環境を悪化させるという悪循環に陥ってしまうのです。

特に、運動による消化吸収能の低下はリーキーガット症候群を引き起こしやすい原因です。リーキーガット症候群とは、炎症によって小腸の粘膜に隙間ができ、この隙間から本来吸収されるはずの無い未消化のタンパク質や毒素が血管内に吸収されてしまう状態のこと。このリーキーガット症候群によって、更なる全身状態の悪化や低血糖症を引き起こしてしまいます。

ナンナン

運動していると、口腔内が悪くなりやすいのか💦
これも低血糖と関係眼あるんだね💧

はる かおる

そうだね。運動している人は力を込めるときに歯を食いしばることが多いから、口腔内も悪くなりやすいんだよ。おまけに、唾液の分泌量が低下するから口腔内の悪玉菌も繁殖しやすい。このような口腔内環境の悪化も、運動と低血糖症とで関連が深い病気の1つだね。

運動による消化吸収能の低下はリーキーガット症候群を引き起こす

スポーツ選手やアスリートなど、運動している方が特に陥りやすく、気をつけたいのがリーキーガット症候群です。運動している方は筋肉を付けるために「プロテイン」などタンパク質の補給を意識して行っていますよね。このプロテインは筋肉を修復したり増強したりする効果がある一方、十分に消化吸収出来ない場合は小腸や大腸などの腸内環境の悪化に繋がります。特に運動している方は交感神経が優位になる事から胃の働きや腸の働きが低下しやすく、その状態での大量のプロテインを摂取することは、消化不良に繋がる原因です。

もし、タンパク質がアミノ酸にまで十分に消化できなかった場合は、分子の大きいまま小腸や大腸へと運ばれてしまいます。小腸や大腸に運ばれた未消化のタンパク質は悪玉菌の餌となり、腸内環境が悪化。腸内環境の悪化は腸粘膜を炎症させ、炎症によってインスリンの働きを低下させます。このような腸内環境が悪化する原因として近年注目されているのが、「リーキーガット症候群」や「SIBO(小腸細菌過剰増殖症)」と呼ばれる疾患です。

リーキーガット症候群とは、食べ物の栄養を吸収する小腸の粘膜が炎症によって弱り、腸粘膜の細胞同士の間に隙間が出来てしまう状態。この隙間から本来吸収されるはずのない未消化の食べ物や細菌などが血液中に入り込み、免疫が過剰に反応してアレルギー反応や慢性的な炎症を引き起こしてしまう状態です。

腸粘膜同士の繋がりが弱まることで、未消化の食べ物や細菌が血管内に侵入してしまう状態

健康な腸の粘膜では「タイトジャンクション」と呼ばれる小腸粘膜同士の結びつきがしっかりしていて、腸粘膜の隙間から異物が血管内へと漏れ出ることはありません。しかし、リーキーガット症候群の状態では、このタイトジャンクションの結びつきが弱くなってしまっています。ここから隙間が出来て、未消化のタンパク質や細菌、毒素などが血管内へ侵入。これらを免疫細胞が異物と捉え、攻撃することで様々なフードアレルギーや炎症を引き起こしてしまう原因になるのです。

この時、身体はアレルギー反応を抑えようと副腎から「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」を分泌します。副腎皮質ホルモンは炎症を抑えたり免疫力を抑制したりする作用があるステロイドの一種です。
他にも、副腎は血糖値をコントロールするためのアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンを分泌しています。副腎がこれらのホルモンを出し続ける状態が続くことによって副腎機能が低下すると、ホルモンの分泌量も低下します。これがいわゆる「副腎疲労」と言われる状態です。

この副腎疲労、リーキーガット症候群の状態では、炎症が慢性化することでさらに糖代謝やアレルギーが悪化します。これは、腸内細菌が出した毒素によって小腸粘膜に炎症が慢性的に引き起こされたり、腸粘膜から漏れ出た毒素や分子の大きいタンパク質が漏れ出たりすることでアレルギー慢性的に続くためです。この漏れ出た異物や炎症をやっつけようと、白血球の一種であるマクロファージが活性化し、サイトカインというホルモンの一種であるTNF-αの分泌が亢進します。そして、このTNF-αの作用によってインスリンの働きが悪くなってしまうのです。この様な流れは、先ほど解説した「歯周病」によって低血糖症に陥るメカニズムと殆ど同じです

また、副腎疲労によって血糖を上げるためのアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが分泌出来なくなると、運動時にグリコーゲンが枯渇した場合に糖新生を起こせなくなります。このようなことから、リーキーガット症候群と低血糖症には関連があり、運動によってリーキーガット症候群が引き起こされると、血糖コントロール機能もドンドン低下して低血糖症を引き起こしてしまうのです。

このリーキーガット症候群は機能性低血糖症や無反応性低血糖症の原因にもなっており、現時点で低血糖症を抱えている方なら、既にリーキーガット症候群になってしまっている可能性が高いです。特に下記の症状に当てはまる項目が多いようでしたら、リーキーガット症候群も疑いましょう。

リーキーガット症候群で引き起こされる主な症状。低血糖症や糖尿病の原因にもなる

特に、運動している方は「湿布」や「鎮痛剤」などの薬を使う機会も多くなります。これらは胃の働きを低下させる事から消化不良を招き、リーキーガット症候群の原因になります。女性の場合、最近では低用量ピルなどで生理をコントロールしていたり、月経前症候群や月経困難症などの月経対策をしている方も多くなってきています。特に欧米では女性アスリートの低用量ピル服用が普及してきており、トップアスリートの83%が低用量ピルを服用しているという報告があります。このようなピルの服用もリーキーガット症候群を引き起こしやすくなる原因になりますので注意しましょう。

また、リーキーガット症候群と同じく腸内環境が悪化する原因といわれているのが、「SIBO(腸内細菌増殖症)」と呼ばれる疾患です。SIBOとは、その名の通り小腸に細菌が増殖してしまう病気のこと。小腸内に細菌が増殖してしまうことで、これら菌が私達が食べた食べ物をエサに腸内で大量のガスを発生させます。この結果、お腹が張ったり便秘や下痢になったり、食べていても栄養が吸収出来ずに栄養不足になるなど、様々な不調が表れます。

本来、小腸には少ない数の細菌しか棲息していない。この細菌が増えすぎることによって小腸内細菌増殖症を引き起こす。

本来、小腸には大腸と比べるとかなり少ない数の細菌しか生息していません。これは、本来であれば胃酸によって食べ物に付着している雑菌が殺菌されたり、胆のうから分泌される胆汁によって殺菌されたりしているからです。
また、これら胃酸や胆汁酸から菌が生き残ったとしても、空腸や回腸と呼ばれる部分では腸の動きが激しく、流れが速いために増殖することは出来ません。このことから、健康な人の小腸では細菌が増殖していないことが殆どです。

しかし、SIBOの状態では健康な腸の人と比べて10倍近くの特定の腸内細菌が激増してしまっています。この菌が増殖してしまう理由としては、運動によって交感神経優位の状態が続き、胃酸の分泌量が落ちていたり、胃や腸の働きが落ちていたりすることなど。胃酸の分泌量が減っている場合は、食べ物に付着している菌が胃酸で十分殺菌する事が出来なくなります。また、胃酸の分泌量が減っていることによって十分な消化が出来なくなり、未消化の食べ物が悪玉菌のエサとなってしまいます。この2つが同時に重なる事で小腸内に細菌とエサが流れ込み、本来増殖しないはずの小腸内で大量の腸内細菌が増殖してしまう結果になるのです。

では、小腸内で大量の腸内細菌が増殖することでどのような悪影響が引き起こされるのでしょうか。まず、小腸内で大量に増殖した菌は、特定の糖類をエサに大量のガスと毒素を発生させます。このガスは水素やメタンなどで、臭いおならの原因になったり、お腹がガスでパンパンになるなどの症状を引き起こします。そして、この大量に発生したガスは腸の粘膜を風船のように膨らませてしまうことから、腸粘膜同士の結びつきである「タイトジャンクション」の結着力が低下。腸粘膜同士に隙間が出来て、リーキーガット症候群へと発展してしまうのです。

SIBOやリーキーガット症候群になっていると、腸内細菌が出す毒素や血管内に侵入する異物によって粘膜や体内に炎症が発生し、低血糖症を引き起こす原因になります。このSIBOやリーキーガット症候群において特に、ダメージが大きいのが「肝臓」です。肝臓と小腸は門脈という血管で繋がっており、小腸から吸収した栄養は最初に肝臓に運ばれます。この時に分子の大きい物質や細菌から分泌された毒素が血管内に漏れ出ると、これらが肝臓に運ばれ、肝臓にダメージを与えて炎症や脂肪肝、繊維化を引き起こしてしまうのです。

この脂肪肝や炎症が発生することによってインスリンの働きが低下することから、機能性低血糖症や糖尿病を発症する原因になります。他にも、SIBOやリーキーガット症候群では栄養の吸収阻害が起こることで栄養が吸収出来なくなり、無反応性低血糖症へと繋がることがあります。

このように、運動による消化能力の低下は腸内環境の悪化へと繋がり、腸内環境の悪化は低血糖症の発症と発展することから、運動による消化吸収能の低下と低血糖症には深い関係があるのです。

ナンナン

運動していると消化能力が落ちて、これも低血糖症と関係があるんだね💦

はる かおる

そうだよ。特に勝負事や緊張状態が続くような運動の場合は消化吸収能力が低下しやすいね。あとは、湿布とか鎮痛剤、ピルなんかを日常的に使っている場合も消化能力が低下しやすくなるよ。
消化能力が低下すると、タンパク質や糖質、脂質がうまく消化吸収出来なくなって、低血糖症を引き起こしやすくなるんだ。

運動によるストレスは副腎疲労と低血糖症の原因に。

運動が血糖症を引き起こす原因として「副腎疲労」も関係しています。副腎疲労は、ストレスが長期間続くことで副腎が疲れ、副腎から分泌されるホルモンの産生量が低下してしまう状態です。主に副腎疲労では、副腎から血糖値を上げる作用のホルモンである「コルチゾール」や「アドレナリン」「ノルアドレナリン」などの分泌が出来なくなり、下がった血糖値を上げられない状態に陥ります。特に、無反応性低血糖症では、DHEASというホルモンの低下も含めて極度の副腎疲労の状態に陥っている場合があります。

副腎疲労を発症する原因としては、「ストレス」や「カフェインの摂りすぎ」「睡眠不足など生活習慣の悪化」「アレルギー」などがが関係しており、他にも運動による糖新生の亢進や、後に解説する運動と関係の深い「貧血」も関係していると言われています。

特に運動している方は強いプレッシャーにさらされる機会が多いことからストレスを抱えやすく、ストレスに対抗するためのホルモンである「コルチゾール」が分泌されやすい傾向にあります。また、運動時に筋肉に貯えたグリコーゲンが枯渇したり、交感神経が優位な状態が続いていたりすると、副腎からコルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンなどの糖新生を促すホルモンが分泌されます。このことから運動している方は副腎を酷使しやすく、副腎疲労に陥りやすい傾向が強いです。副腎疲労に陥った場合は、次のような症状が現れると言われています。

副腎疲労時の主な症状

  • 慢性的な疲労
  • エネルギー低下
  • 睡眠障害(寝つきが悪い、中途覚醒など)
  • 気分の変動(イライラ、抑うつ、不安など)
  • 頭痛
  • 免疫力の低下(感染症にかかりやすい)
  • 消化不良や食欲不振
  • 低血圧
  • 集中力や記憶力の低下
  • 糖分やカフェインへの欲求
  • 筋力の低下や関節痛
  • 性欲の低下

この他、先ほども解説したようにコルチゾールなどの副腎皮質ホルモンやアドレナリンなどの副腎髄質ホルモンは、アレルギー症状を抑える働きがある事から、アレルギー症状を抱えている場合も分泌されています。アレルギー症状が重くなるほど大量のコルチゾールやアドレナリンなどが分泌されることから、慢性的なアレルギーも副腎疲労を引き起こしやすい病気です。

この一種のアレルギー症状は、リーキーガット症候群などで未消化の分子の大きいタンパク質が血管内に入り込んだ場合にも引き起こされます。これは、体内の免疫細胞が腸漏れによって血管内に入った異物を排除するために活性化するためです。先ほど、運動によって胃腸機能が低下している場合は、リーキーガット症候群など腸内環境の悪化を引き起こしやすいことについて解説しましたよね。このリーキーガット症候群がアレルギーを引き起こす原因となり、アレルギーが副腎疲労を引き起こすことに繋がります。つまり、運動は直接的にも間接的にも、副腎疲労を引き起こしやすくなるのです。

アレルギーは未消化のタンパク質が腸から吸収されてしまうことで引き起こされる。


また、後ほど解説する貧血によって自律神経が乱れると、身体がストレスを受け続けてコルチゾールが大量に分泌されます。この貧血によってストレスが過剰にかかっている状態や、日常的な飲酒を行っている状態では、慢性的にコルチゾールが分泌され、副腎が疲れ切ってコルチゾールなどのホルモンが分泌出来なくなってしまいます。このような貧血や自律神経の乱れも副腎が疲れてしまう原因です。

ナンナン

運動をしている人は、色んな理由から副腎疲労になりやすくなるんだね💧

はる かおる

そうだよ。
運動している人はリーキーガット症候群にも副腎疲労にも貧血にもなりやすい。だからこそ、その原因からアプローチしていくことが大切なんだ。

運動をしている方は貧血になりやすい。運動と貧血、貧血と低血糖症の関係とは。

スポーツ選手やアスリートなど、激しい運動をする方は特に貧血になりやすいと言われています。これは、走ったりぶつかったりするときの衝撃によって赤血球が壊れ、溶血性貧血という貧血を引き起こしてしまうためです。

他にも鉄は血液の材料となる以外にも脳の神経伝達物質の合成や、細胞内のミトコンドリアがエネルギーを作り出すときに鉄が必要です。運動をしている方は普段からエネルギー消費が激しく、自律神経が乱れやすいことから鉄の消費量が多くなります。また、鉄は汗によって微量が排泄されるほか、女性の場合は月経による定期的な出血、お子さんの場合は骨や皮膚の成長に鉄分が多く必要となる事から、総じて貧血を引き起こしやすくなります。

特にアスリートの場合は男女問わず40%以上が鉄欠乏性貧血といわれ、運動による貧血の問題が大きく叫ばれるようになってきました。貧血になるとミトコンドリアがエネルギーを作り出せなくなるため、エネルギー不足を招きます。「練習について行けなくなった」「疲れやすくなった」などのパフォーマンス低下を感じたら、真っ先に貧血を疑いましょう。また、鉄分は脳の神経伝達物質を作る材料です。貧血が続くとイライラしたり不安感が増大したりするなどメンタルの不調も引き起こされます。精神的不調を感じた場合も、貧血を疑うサインです。

加えて、女性アスリートの三主徴として「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」が問題となっています。この原因は、先ほどの貧血によるエネルギー産生不足に加え、貧血の状態では身体がこれ以上の貧血進行を抑えるための防御反応として無月経となります。また、骨を作るためには「コラーゲン」という繊維が必要で、このコラーゲンを作るには鉄が欠かせません。このことから、女性アスリートの三主徴にはすべて貧血が根本原因にあると考えられます。

そんな貧血の主な症状としては、「めまいや立ちくらみがする」「太りやすくなった」「爪がもろくてすぐ割れる」「喉に違和感があり、物を飲み込みにくい」など。この他にも、下図のように様々な症状が引き起こされます。

貧血の状態では、イライラなどの精神的不調に加え、疲れやすい、朝起きられないなどの身体的不調も引き起こされる。

貧血ではこのような不調が多岐にわたることから、「うつ病」や「パニック障害」などの精神疾患と間違えられてしまう場合も少なくありません。しかも、貧血と低血糖症の症状は似ている部分もあり、この2つの症状が重なる事で更に症状が酷くなることもあります。例えば、低血糖症の主な症状を下記の表にまとめてみました。鉄欠乏性貧血の症状と見比べてみると、かなり似ていることが分かりますよね。

低血糖症の主な症状

  • 全身の倦怠感、疲れやすい
  • 集中力が無い
  • 眠気が強く、朝起きられない
  • 寒がり、低体温
  • 動悸がする
  • めまいがする
  • 冷や汗をかく
  • 不眠
  • イライラする
  • 頭痛
  • 神経過敏
  • 不安、恐怖感が強くなる
  • 太りやすくなった

では、貧血と低血糖症には具体的にどのような関係があるのでしょうか?
1つ言えることとして、貧血があると低血糖症になりやすくなるという傾向があります。その理由は、貧血の状態だと身体が作り出せるエネルギー産生量が低下してしまうためです。貧血は単に血が足りないだけと思われがちですが、それだけではありません。

血液や鉄分は体内の細胞に酸素や栄養を届けたり、脳の神経伝達物質を合成する材料としても使われています。そのため、血液の量が少ないとその分だけ全身に酸素や栄養を運ぶ能力が低下し、酸素や栄養が足りなくなると身体の細胞はエネルギーを作れなくなります。その結果、代謝機能の低下や脳機能の低下、免疫機能の低下や自律神経の乱れを引き起こしてしまうのです。

この代謝機能低下や自律神経の乱れが引き起こされることから、貧血は低血糖症やPMS(月経前症候群)などを発症する原因となります。

鉄は栄養素の運搬や神経伝達物質の合成に必要であり、不足すると低血糖症に繋がる恐れがある

このように、人間の身体は鉄無しでは十分な機能を発揮することが出来ません。鉄分は、全身に酸素を運ぶためのヘモグロビンの材料して使われる以外にも、全身の細胞がエネルギーを生み出す際の補酵素として必要です。

具体的には、私達が食べた糖質や脂質、タンパク質などは胃で消化され、小腸で吸収された後に血液中にのって全身へと運ばれます。全身へと運ばれた栄養素は細胞内のミトコンドリアへと運ばれ、ミトコンドリアがATPと呼ばれるエネルギーを産生することで、私達は筋肉を動かしたり体温となる熱をエネルギーを生み出しています。

このミトコンドリアがエネルギーを生み出すときには鉄分を始めとしたミネラルやビタミンB群などが必要です。もし鉄が足りない場合は、ミトコンドリアがエネルギーを作る事が出来なくなってしまいます。

鉄はミトコンドリアのエネルギー産生(ATP産生)に重要な役割をもつ

このエネルギーが十分に作れない状態では、私達が食べた糖質などがエネルギーとして利用しづらくなることに繋がります。通常、糖分(グルコース)は貯蔵型の糖であるグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯えられ、運動時や低血糖時などに必要に応じて使われています。これら糖をエネルギーとして使えない状態では、そのぶんだけ血管内に余分な糖が溢れることになり、細胞や筋肉に取り込めなかったブドウ糖はインスリンによって中性脂肪として貯えられます。この結果、機能性低血糖症のような血糖値の乱高下や低血糖症に繋がってしまうのです。

また、貧血の状態では代謝が低下することから貯えたグリコーゲンや中性脂肪がうまく使えなくなり、空腹時や運動時など血糖値が下がった場合にも血糖が上げられなくなってしまいます。このようなことも、低血糖症を引き起こす原因です。

それから、鉄分から作られるヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割も担っています。ミトコンドリアがエネルギーを産生するときには、この酸素も欠かせません。酸素が不足することで更にエネルギー産生能力が低下し、糖のエネルギー利用や糖代謝が更に低下してしまうことに繋がります。

血液中のヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割を持つ。酸欠になるとミトコンドリアがエネルギーを作れなくなり、全身のエネルギー産生量が減る

つまり、貧血になってしまうと①糖質、脂質、タンパク質などの栄養を細胞の隅々まで運ぶ能力が低下し、鉄が不足することでミトコンドリアがエネルギーを作り出せなくなります。さらに、③貧血状態では酸素の運ぶ量が低下し、ミトコンドリアが利用出来る酸素も減ってしまうのです。

この3つが重なる事で糖質や脂質、タンパク質などがエネルギーとして利用出来なくなってしまい、全身の細胞の働きや臓器の働き、糖の代謝が落ちて、運動時のパフォーマンス低下や集中力低下などを引き起こします。そして、最終的には低血糖症へと繋がってしまう原因となるわけです。

加えて、貧血時は代謝が悪化することから肥満や脂肪肝などへの異所性脂肪へと発展し、さらなる血糖コントロール障害へと進行するきっかけになります。これは、ミトコンドリアがエネルギーとして使えなかった糖質や脂質などのエネルギーは、インスリンなどの働きによって中性脂肪に貯えられてしまうため。よく「貧血になるとあまり食べていないのに太りやすくなる」と言われていますよね。これは、貧血が肥満や脂肪肝などへと発展し、更なる血糖コントロール障害へと進行するきっかけになっているためです。

また、鉄分はミトコンドリアのエネルギーとして使われる以外にも、脳の神経伝達物質の材料としても使われています。脳の神経伝達物質とは、分泌されると幸せな気分になったり、感情をコントロールしている物質のこと。うつ病の原因と関係があると言われている「セロトニン」などが有名です。このセロトニン以外にも「ノルアドレナリン」や「ドーパミン」など様々な神経伝達物質がバランス良く分泌されて、私達の精神や自律神経が保たれています。

神経伝達物質にはノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンなどがあり、セロトニンはこの2つを調節する役割がある

この神経伝達物質の材料には、鉄分が欠かせません。下の図は神経伝達物質が合成されるまでの経路と必要な栄養素を表した物です。

まず、神経伝達物質を合成するためには、材料として「アミノ酸」が必要です。このアミノ酸は、肉や魚などのタンパク質を胃で分解し、小腸で吸収することで補給しています。このアミノ酸にはおよそ20種類ありますが、そのうち脳の神経伝達物質として利用出来るのは「L-グルタミン」と「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」です。

脳の神経伝達物質の合成経路と合成に必要な栄養素。合成の第一段階で鉄が必要になっていることが分かる

そして、この3つのアミノ酸がそれぞれ「鉄」や「葉酸」「ナイアシン」などを利用して「L-グルタミン酸」や「L-チロシン」「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」などに合成され、最終的に「GABA」や「ドーパミン」「セロトニン」や「メラトニン」などに合成されて利用されています。

この脳の神経伝達物質を合成する際には、必ず鉄が必要です。例えば、「L-フェニルアラニン」から「L-チロシン」に合成する際には鉄が必要ですし、「L-トリプトファン」から「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」に合成する時にも鉄が必要になります。

この時に体内で鉄分が不足していると、脳の神経伝達物質を合成するための材料が足りなくなってしまい、自律神経の乱れやうつ症状、感情が抑えられない、ストレスの増加、頭痛やめまいPMSや腸内環境の悪化など様々な体調不良へと繋がってしまうのです。

貧血は自律神経の乱れに繋がり、エネルギー産生の低下や消化能力の低下、精神的不調など様々な不調に繋がる。

スポーツ選手やアスリートなど、運動している方の場合もメンタルに不調を抱えている方が多く、現役選手の38%、元選手の35%がうつもしくは不安障害に苦しんでいるそうです。基本的に有酸素運動はうつ病や不安気分の改善に有効と言われていますが、スポーツ選手ほぼ日常的に有酸素運動を行っているにもかかわらず、メンタルの不調を抱えている方が多くいます。

この理由は様々あると思いますが、1つの原因として上げられるのが、先ほどの鉄不足による自律神経の乱れです。鉄不足になると睡眠に関わる「メラトニン」という神経伝達物質の合成も出来なくなるため、睡眠の質が低下します。これも、スポーツ選手やアスリートなど、運動している方がメンタルの不調を引き起こしやすい原因です。

メラトニンは、「セロトニン」という神経伝達物質から合成されるホルモンで、この2つは体内時計と睡眠の質を司っています。例えば、セロトニンは日中の活発な状態では分泌量が増え、逆に就寝時には分泌量が減るという特徴があります。逆にメラトニンは就寝時に分泌量が多くなり、起床した後の日中は分泌量が低下します。このようにお互いが相反するような形で体内時計と睡眠を司っています。

セロトニンとメラトニンによる睡眠の関係。日中はセロトニンの分泌が多く、夜間はメラトニンの分泌が多くなる。これにより、体内時計が機能するようになっている。

そして、このセロトニンは「L-トリプトファン」というアミノ酸から合成され、この合成の際には鉄が必要になります。セロトニンが不足するとうつ病の原因になる事は有名ですよね。また、セロトニンが分泌されると多幸感を得られることから、「セロトニンは幸せホルモン」とも言われています。他にも、メラトニンはリラックスするための副交感神経を優位にするホルモンでもあります。

これら脳の神経伝達物質合成が出来なくなってしまうということは、副交感神経を優位にする事が出来なくなってしまうということにつながります。副交感神経が優位に出来ない場合は、リラックス出来ない状態や質の良い睡眠がとれない状態が続いてしまうということです。良い睡眠がとれない状態では、メンタルの不調や運動時のパフォーマンス低下を招きます。このような貧血による睡眠不足やエネルギー代謝の低下、自律神経の乱れが、スポーツ選手にメンタルの不調を引き起こしやすい原因の1つです。

また、この状態では常に交感神経が優位の状態に陥り、交感神経優位の状態では胃や腸の働きが低下してしまいます。加えて、交感神経優位の状態では常に神経が高ぶって身体がストレスを受け続け、先ほど解説した副腎からストレスに対抗するためのホルモンが大量に分泌されます。このことから、貧血は副腎も疲れて副腎疲労や慢性疲労症候群などへ進行し、結果的に低血糖症へと繋がりやすくなります。貧血は、直接的にも間接的にも低血糖症と関係が深い病気なのです。

ナンナン

運動すると血液が壊れて貧血になりやすくなるんだね💦
ボクも、もしかすると貧血かも💧

はる かおる

そうだよ。運動すると、活性酸素や衝撃によって血液が壊れて貧血になりやすい。貧血になると、代謝能力低下から低血糖症になりやすくなるよ。その他にも自律神経が乱れたり、胃や腸の働きが落ちることで低血糖症の原因にもなる。貧血と低血糖症は関連が深い病気なんだ

鉄欠乏性貧血と診断されていなくても注意が必要!隠れ鉄欠乏性貧血とは?

それから、現在「鉄欠乏性貧血」と診断されていない方でも注意が必要です。アスリートの場合は男女問わず40%以上が鉄欠乏性貧血といわれている中、運動している方は貧血と診断されていなくても貧血の状態となっている可能性があります。

通常、貧血かどうかの判断は病院の血液検査で診断して貰いますよね。しかし、現在の病院では貧血の診断を「ヘモグロビン」という値が低いかどうかだけで診断しています。ヘモグロビン値の低下は確かに貧血を診断する指標となるのですが、この値が一定以下にまで低下していない限り、仮にギリギリ下限の値だったとしても貧血と診断されません。この貧血と診断されていなくても貧血の状態になっている「隠れ鉄欠乏性貧血」の方が非常に多くいるのです。

貧血と診断されていなくても貧血になっている「隠れ貧血」の人は多い

また、貧血を判断する血液検査項目にはヘモグロビン値以外にも「赤血球数」や「血清鉄」「不飽和結合能」、鉄の貯蔵量を表す「フェリチン」などの検査項目があります。貧血が進行する際はこの貯蔵鉄であるフェリチンから減り始め、次に血清鉄、次にヘモグロビンと段階を追ってヘモグロビン値が下がっていきます。

鉄分が不足すると、貯蔵鉄であるフェリチンから優先的に使われる
貧血の進行は、最初にフェリチンが減少し、次に血清鉄が減少。更に進行すると赤血球やヘモグロビンが減少する。

つまり、ヘモグロビン値が下がってきて貧血と診断されたときは、もう既に重度の貧血になってしまっているのです。貧血と診断される前から貧血は徐々に進行しており、貧血だと気がつかないまま徐々に頭痛やめまい、倦怠感や食欲不振などの症状が悪化している場合もあります。このような貧血と診断されていないけど貧血に陥ってしまっている状態の方はかなり多く、一般的な病院の血液検査ではまず見つけてくれません。このような貧血と診断されていないけど実際には貧血が隠れている状態の事を、「隠れ貧血」や「潜在性鉄欠乏性貧血」などと呼んでいます。

もし、上図のような不調がある場合は、隠れ貧血の疑いがありますので注意が必要です。この隠れ貧血や潜在性鉄欠乏性貧血も低血糖症を引き起こすきっかけになりますので、ご自身に隠れ貧血が無いかどうか血液検査でチェックしてみて下さい。チェックの仕方は、血液検査の結果からある程度判断することが出来ます。

ヘモグロビン値が下がったときは重度の貧血。ヘモグロビン値が下がっていなくても「フェリチン」で貧血を判断すべき

血液検査でチェックする項目としては、「赤血球数」「ヘモグロビン」「血清鉄」「不飽和鉄結合能」「フェリチン」などです。これらは貧血の状態だと数値が低下することが多く、貧血を判断する指標となります。具体的な判断指標としては以下の通り。

血液データから見る貧血の判断基準
  • 赤血球数……430〜500万
  • ヘモグロビン……13.0以上
  • 血清鉄……60〜100以上
  • 不飽和鉄結合能……250〜300
  • 血清フェリチン……125以上

これらの数値を参考に、ご自身が貧血や隠れ貧血に陥っていないかをチェックしてみてください。ちなみに、血清フェリチンの検査は、通常の保険適用の検査では行ってくれない病院が多いです。ただ、病院によっては「フェリチン値もお願いします」と伝えると検査してくれるところもあります。ダメ元でお願いしてみるのも手ですよ。

フェリチンは、貧血を見るマーカーの中で最も鋭敏に反応する数値です。この値が低下していた場合は隠れ貧血の疑いがあります。もし低かった場合は、後述する方法で積極的に鉄分を補給するようにしましょう。

また、逆にフェリチン値が正常範囲だったからといって安心することは出来ません。フェリチンは生理不順や風邪、運動などによる炎症によっても数値が上昇する事があります。この場合は数値がよく見えても貧血に陥っている可能性が高いです。このあたりの判断は専門家でないと難しいですので、貧血かどうかはご自身で判断せずにオーソモレキュラー療法の血液検査を受けるようにして下さい。

ナンナン

貧血と診断されていなくても、貧血になっている可能性があるんだねー

はる かおる

そうそう。運動している方の中には、貧血と診断されていなくても貧血になっている「隠れ貧血」の人は多く存在しているよ。隠れ貧血でも病院では貧血と診断されないから貧血かどうかを調べるのはオーソモレキュラー療法の血液検査を受けるのが良いね。

身体の内側も外側もしっかり美しく健康になるために。低血糖症と関連の深い疾病の対策と、身体の内側から健康になるための分子栄養学的アプローチ

ここまでは、運動における低血糖症の原因と、運動によって引き起こしやすい疾病とその低血糖症との関係について解説してきました。ここからは、これら疾病の具体的な改善方法を分子栄養学的アプローチから解説していきます。

まず、運動している方が栄養アプローチを行う上で最も基本となるのが、「消化サポート」です。この記事でも解説したように、運動による交感神経優位の状態や胃酸の分泌量低下、胃や腸の蠕動運動低下は、消化能力を低下させます。消化不良によって未消化の食べ物が腸に流れると、悪玉菌が増殖する原因となり、小腸や大腸の粘膜にダメージを与えます。このことから、プロテインを飲む際や食事をする際は、必ず消化サポートも同時に行うようにしましょう。

特に、身体のベースとなる最も重要な栄養素は「タンパク質」です。タンパク質が不足している状態では、いくら鉄サプリやビタミン、ミネラル等の栄養素を補給しても上手く利用することが出来ません。このタンパク質をしっかりと消化吸収し、運動によって引き起こされた貧血などを改善させるためにも、タンパク質を消化吸収出来る状態に整える事が重要です。

この時、ご自身がどのくらいタンパク質の消化能力があるかや、胃粘膜の状態をきちんと知ってから行うようにしましょう。これらの状態が分からない状態では、どれくらいの消化サポートが必要なのかや、胃粘膜の状態に応じてどのような修復アプローチを取れば良いのかが分かりません。胃の粘膜の状態やタンパク質の消化能力は、血液検査で概ね知ることができます。具体的には、次のような検査項目です。まずは胃の検査を受けてみて、タンパク質がどのくらい消化吸収出来る能力があるかなどを確認してみてください。

タンパク質の消化吸収能力は胃のチェックで分かる

胃の状態を知る血液検査項目としては、胃酸の分泌量を表すPG1や、粘膜の炎症程度を表すPG2、胃粘膜萎縮の程度を見るPG1/2比などがあります。このPG1の数値が低い場合は胃酸の分泌量が少なく、タンパク質をしっかり消化吸収することが出来ません。タンパク質がしっかり消化できていない状態だと、未消化のタンパク質が腸に流れて悪玉菌が増える原因となります。

また、ピロリ菌に感染していたり、胃粘膜の炎症や萎縮があるとタンパク質が上手く吸収できなくなってしまいます。これらの検査を参考に、タンパク質がしっかり消化吸収出来ているかや、胃の健康状態も同時に確認してみましょう。

もし胃の状態や腸の状態に問題がある場合は、胃や腸の粘膜を強化したり、消化を助けるための栄養素が必要になります。必要に応じて、次のような栄養素も組み合わせてみて下さい。これらの栄養素は、SIBOやリーキーガット症候群などによってダメージを受けた腸粘膜を修復するためにも必要です。

運動によって低下した消化能力やダメージを受けた胃粘膜の修復に必要な栄養素

  • 消化酵素
  • タンパク質
  • グルタミン
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンA
  • 亜鉛
  • ヘム鉄
  • レシチン
  • カルシウム・マグネシウム

これら消化サポートや胃粘膜の修復に加えて、腸内環境を整えるアプローチも必要になります。運動による交感神経優位の状態で消化能力が長期間低下していた場合は、SIBO(小腸内細菌増殖症)やリーキーガット症候群(腸漏れ症候群)などの発生につながっている可能性があります。もし先ほど解説したリーキーガット症候群の症状に当てはまっていた場合などは、下記を参考に腸ケアも同時に行って下さい。

SIBOやリーキーガット症候群だった場合の基本的なアプローチとしては、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の乱れを整えることです。SIBOやリーキーガット症候群などは、未消化のタンパク質などが小腸や大腸などに流れ込んだことによる腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の乱れによって引き起こされます。このことから、消化サポートに加え、腸内細菌のバランスを整えていくことが最も重要です。腸内には善玉菌と悪玉菌が住んでいますが、悪玉菌よりも善玉菌の方が多い状態が理想です。これが逆転して善玉菌よりも悪玉菌の量が多くなってしまうと、お腹の調子が崩れたり太りやすくなったりと様々な不調へと繋がってしまいます。

腸内細菌叢は日和見菌を味方に付けられるかどうかが鍵

この腸内細菌叢には、悪玉菌と善玉菌以外にも日和見菌(ひよりみきん)といって、悪玉菌にも善玉菌にもどちらにもなれる菌が多数を占めています。この日和見菌は、悪玉菌が優勢であれば悪玉菌と同じような活動をし、善玉菌が優勢であれば善玉菌と同じような活動をするという特徴があります。

つまり、腸内の健康状態を保つためには、善玉菌を多くして日和見菌を味方に付けることが最大のポイントです。この善玉菌や悪玉菌、日和見菌のバランスは善玉菌が2割、日和見菌が7割、悪玉菌が1割という比率が最もバランスが良いと言われていて、その優劣は日々、私達が食べた物や体調によって影響を受けています。特に運動による消化能力の低下はは悪玉菌の増殖を招きやすく、腸内細菌のバランスを乱す原因です。日頃から運動をしている方は腸内細菌のバランスも乱れやすいですので、積極的に善玉菌を増やすよう努めましょう。

この腸内細菌のバランスを整え、善玉菌を増やすために最も重要な栄養素が、「食物繊維」です。
食物繊維とは、胃で消化されずに腸まで届く繊維質や難消化性の糖質のこと。大きく分けて「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があります。これらは主にワカメや昆布等の海藻類や、お米、トウモロコシなどの穀物類、フルーツや野菜などに多く含まれています。

これら食物繊維を多く含む食べ物を食べるとお腹の中で善玉菌の餌となり、餌を食べた善玉菌は腸に有益な働きを持つ「短鎖脂肪酸」を生成してくれます。短鎖脂肪酸には「酢酸」や「プロピオン酸」「酪酸」などがあり、それぞれ腸内や身体にとって有益な働きをしてくれます。この短鎖脂肪酸の量と質が、腸内の健康状態を決定づけてくれるのです。

腸内環境の改善は、短鎖脂肪酸の量とバランスを意識する

ですので、腸内環境の改善を行う際はこの短鎖脂肪酸を意識するようにしましょう。
最近流行りの腸活では、乳酸菌やビフィズス菌などの菌(プロバイオティクス)を摂ることばかりが言われています。しかし、いくらいい菌を摂ったとしても、いい菌の餌になる食物繊維(プレバイオティクス)が無ければ短鎖脂肪酸は作られません。

重要なのは、いい菌であるプロバイオティクスと、そのエサとなるプレバイオティクスを両方同時に摂ること。こうして善玉菌を増やしていけば、短鎖脂肪酸の生成量も増えていきます。短鎖脂肪酸には腸内を酸性に傾けてくれる作用もあり、酸性に弱い有害菌やカンジダ菌の増殖抑制効果や有害物質の発生抑制、体内への侵入抑制効果もあります。

このような事から、腸内環境を改善させるためにも有用菌とそのエサとなる食物繊維を同時に摂っていきましょう。食物繊維が多く含まれる食べ物としては、以下のような物があります。

食物繊維が多く含まれる食べ物

水溶性食物繊維が多い食べ物:

  • オートミール
  • りんご
  • いちご
  • オレンジ
  • グレープフルーツ
  • ブルーベリー
  • バナナ
  • キウイフルーツ
  • ぶどう
  • もも
  • マンゴー
  • クルミ
  • アーモンド
  • 豆類(レンズ豆、黒豆、ひよこ豆など)
  • メロン
  • シイタケ

不溶性食物繊維が多い食べ物:

  • 小麦ふすま
  • 玄米
  • キャベツ
  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • セロリ
  • カリフラワー
  • グリーンビーンズ
  • 大根
  • にんじん
  • ズッキーニ
  • エンドウ豆
  • パセリ
  • とうもろこし
  • アボカド
  • シリアル類(全粒小麦など)

このリスト以外にもワカメや昆布、キャベツなど食物繊維が多く含まれる食べ物は沢山ありますので、献立を色々と工夫してみて下さい。

また、食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維などをバランス良く十分な量を摂取する事が大切です。食べ物からではこれら食物繊維をバランス良く十分な量を食べることが難しい上、有用菌が生きたまま補給することも難しいので、サプリメントからも補給していくことがオススメです。短鎖脂肪酸を増やすアプローチとしては、次のようなプロバイオティクス、プレバイオティクスが配合されたサプリメントを選びましょう。

短鎖脂肪酸の量とバランスを整える栄養素

  • 乳酸菌(有胞子性乳酸菌)
  • ビフィズス菌
  • 酪酸菌
  • 納豆菌
  • 食物繊維(水溶性、不溶性両方)

ただし、乳酸菌などのサプリメントは様々な会社から販売されていますが、その殆どは生きて腸まで届きません。乳酸菌やビフィズス菌などは胃酸に弱く、その殆どが胃酸や胆汁酸の影響で死滅してしまいます。また、タブレット錠に加工されている物は押し固める際に菌が圧死してしまっている場合もあります。このようなサプリメントを飲み続けても、腸内環境の改善には繋がりません。これはヨーグルトや発酵食品などから摂れる乳酸菌なども一緒です。

ですので、乳酸菌など有用菌は、生きて腸まで届く「有胞子性乳酸菌」が配合されている物がオススメです。有胞子性乳酸菌とは、硬い殻に覆われている乳酸菌のこと。硬い殻に覆われていることで胃酸や胆汁酸から身を守り、生きて腸まで届きます。

また、プロバイオティクスとして最も摂りたいのが「酪酸菌」です。酪酸菌は「酪酸」という短鎖脂肪酸を作ってくれる菌で、腸内の健康状態に非常に重要な役割を担っています。これらをバランス良く含めたプロバイオティクス製品と、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランス良く含まれたプレバイオティクス製品を同時に摂るようにしてみて下さい。これら腸内環境改善のために専用に設計された製品は、オーソモレキュラー療法でも用いられています。ご興味ある方は、最後にご説明するオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。

もし、ご自身の腸内でどれだけ短鎖脂肪酸が作られているか知りたい場合は、便中短鎖脂肪酸検査を受けることで分かります。

腸内環境が健康かどうかは、便中短鎖脂肪酸検査で分かる

便中短鎖脂肪酸検査では、短鎖脂肪酸のバランスや量を測定することができ、腸内環境の健康度や食生活が適正かどうかが分かります。

お腹の調子があまり良くない方や、前述したリーキーガット症候群の傾向がある方など、腸内の環境を良くしたい方は是非一度受けてみて下さい。便中短鎖脂肪酸検査と胃の状態を知る検査は、後述するオーソモレキュラー療法にて受ける事が出来ます。

はる かおる

消化能力が低い状態での食物繊維摂取は、むしろ腸粘膜にダメージを与える原因になるよ❗消化サポートを行わずにむやみに食べると、きちんと消化できずに逆効果になるから、栄養補給と消化サポート、腸ケアはセットで行ってね❗

口腔内をケアし、低血糖症と口腔内環境の悪化を防ぐ

低血糖症の改善には、食事内容の改善や運動、消化サポートや腸ケアに加えて口腔内のケアも重要です。運動時には歯の食いしばりや唾液の分泌量低下が低下することから、適切な口腔ケアが欠かせません。

また、運動によって胃や腸の機能が低下していた場合は体全体が栄養不足になっている事が多く、栄養不足の状態では歯肉の状態も悪くなります。特に歯肉はコラーゲンから出来ており、コラーゲンを作る材料にはタンパク質やビタミン、鉄などのミネラルが欠かせません。運動によってタンパク質不足やビタミン不足、貧血などによるミネラル不足が引き起こされることから、口腔内の環境も悪くなりがちです。歯肉の健康状態が悪くなると歯周病菌などが住みつきやすくなることから、歯周病も進行しやすくなります。

歯周病が進行すると、歯周病菌が出す毒素によってインスリン抵抗性が悪化したり、歯周病による炎症によって更にインスリン抵抗性が悪化したりする原因になります。また、口腔内の環境が悪い場合は口腔内に住みつく悪玉菌を唾液と一緒に絶えず飲み込むことになる事から、腸内環境が悪化してしまう原因です。この事からも、先ほどの腸ケアや消化サポートに加え、口腔ケアもしっかり行うようにして下さい。

口腔内が悪化する最も多い原因としては歯垢の磨き残しです。磨き残しをなくすためにも、電動歯ブラシやウォーターピックなどを使って歯と歯の隙間もしっかりケアしていきましょう。ここでは、オススメの口腔ケアグッズをいくつかご紹介します。

電動歯ブラシ

磨き残しが多く残る原因は、やはり手磨きによるもの。手磨きだと適切な磨き方が求められる上に、歯垢をしっかり落としきるまで磨くには時間がかかります。このような問題を解決するためにも、是非電動歯ブラシを取り入れてみて下さい。電動歯ブラシであれば、短時間で確実に歯垢を落とすことが出来ます。電動歯ブラシには音波式など振動するタイプのものとブラシが回転する回転式がありますが、歯垢をしっかり落とすなら回転式ブラシがオススメ。歯垢は細菌が出すネバネバ物質に覆われており、これを物理的にそぎ落とせる回転式ブラシが最も効果的です。

この回転式の電動歯ブラシにもピンからキリまでありますが、あまり高いものを選ぶ必要はありません。機能面と価格面のバランスが良い真ん中あたりのモデルを選ぶと良いでしょう。オススメは、ブラウンのOral-Bシリーズです。僕自身も、ブラウンのOral-B io9シリーズを愛用しています。予算や形、お好きな色で選んでみて下さい。

プロポリス、マヌカハニー入り歯磨き粉

次に、歯磨き粉です。これは特に何でも大丈夫ですが、歯周病対策用に作られたある程度の値段がしている物を選びましょう。研磨剤が配合されている物は歯と歯肉を傷つけてしまう可能性がありますので、選ばないようにして下さい。

オススメは、プロポリス、マヌカハニー配合の歯磨き粉です。プロポリスやマヌカハニーには天然の殺菌成分が含まれており、歯周病菌の殺菌にも有効です。これら天然の殺菌成分は口腔内の有用菌に対してダメージを与えすぎないので、口腔内の細菌バランスを保つ上でもオススメです。
逆に、マウスウォッシュや殺菌成分が強すぎる歯磨き粉では口腔内の有用菌も殺菌してしまいますので注意しましょう。

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ウォーターピック

電動歯ブラシは短時間で歯垢を落としてくれるものの、やはり歯と歯の隙間の汚れまではしっかり落としきることが出来ません。この歯と歯の隙間をしっかり落とすのに有効なのが、「ウォーターピック」や「ジェットウォッシャー」と呼ばれているものです。

仕組みとしては、高圧の水流を歯や歯肉に当てて汚れを落とすというもの。高圧洗浄機で有名な「ケルヒャー」の口腔版といった感じですね。文字で説明するよりも、動画の方がわかりやすいかと思います。

ジェットウォッシャー

このように、高圧の水流を当てて歯と歯の隙間にある汚れを効率よく落とします。電動歯ブラシだけでは落とせない汚れもしっかり落とせますので、歯ブラシ後にウォーターピックやジェットウォッシャーを併用するようにしましょう。ジェットウォッシャーは、僕自身も毎日愛用しています。今では、人生の中でも買ってよかった物ナンバーワンに入るほど気に入っていますね。

歯周病の状態によっては、これらジェットウォッシャーの使い始めに出血するかも知れませんが、使っている内にだんだんと出血量が減ってきます。およそ3ヶ月程度使用すれば殆ど出血も収まり、歯周病の状態も改善してきますので、始めは出血したり痛みがあっても根気強く続けるようにしてみて下さい。

ウォーターピックやジェットウォッシャーには類似品が安く売られていますが、水圧など機能面から見てもちゃんとしたメーカー品を購入するのがオススメです。メーカー品の値段は高めですが、使いやすさや機能面、耐久性や汚れの落ちやすさなどしっかり考えられています。これで今後、歯の治療費や病気の治療費が減ると考えると、かなり安い投資かと思います。一度買うと家族で使える上にずっと使える物ですので、是非勇気を持って購入してみて下さい。

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口腔内環境改善サプリメント

歯の汚れをしっかり落としたら、次に口腔内の細菌バランスを整えていきましょう。
細菌バランスと言えば腸内環境を思い浮かべるかも知れませんが、実は口腔内にも悪玉菌と善玉菌が生息しています。悪玉菌の代表は虫歯菌や歯周病菌などで、これらが善玉菌よりも多くなってしまうと口の中で悪さをし始めるのです。

ですので、歯周病などの悪玉菌が増えないように、善玉菌を増やしていく事が重要になってきます。
口腔内の善玉菌としては、「ストレプトコッカス・オラリス菌」や「ストレプトコッカス・ウベリス菌」「ストレプトコッカス・ラッタス菌」などです。これらの有用菌は虫歯菌や歯周病菌のすみかを奪い、過酸化水素を微量に産生することで歯周病菌の殺菌作用をもたらします。

歯磨き後は口腔内の有用菌のバランスを整える事が大切

特にストレプトコッカス・オラリス菌とストレプトコッカス・ウベリス菌が歯周病対策に有効な菌で、これら菌が歯周病菌の住処を奪って過酸化水素を産生することで歯周病菌の増殖を防ぎます。ストレプトコッカス・ラッタス菌は虫歯の原因となるミュータンス菌と住処と栄養源を奪い合うことで、ミュータンス菌に対して増殖抑制作用を示します。

歯ブラシとウォーターピックなどでしっかり汚れを落とした後は、これらの菌が含まれている口腔環境改善サプリメントも利用して、口腔内をケアしてみて下さい。実際に口腔環境改善タブレットを4週間使用した方は、虫歯の原因菌や歯周病の原因菌が減少した結果が出ています。

口腔内環境改善タブレットを4週間使用後、悪玉菌が有意に減少した

この口腔環境改善タブレットの具体的な製品については、オーソモレキュラー療法の一環として用いられています。ご興味ある方は、最後にご説明するオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。

それから、歯周病菌の出す毒素や炎症によって弱ってしまった歯肉を修復するためにも、歯肉の材料となる栄養補給も同時に行いましょう。歯肉がダメージを受けたままや出血している状態では、悪玉菌が増殖しやすくなります。

歯肉は「コラーゲン」繊維で出来ており、コラーゲンはタンパク質やビタミンC、鉄などを材料に作られます。有用菌の補給に加えて、これら栄養も補給して歯肉の修復を行うようにして下さい。

歯肉を強くする栄養素

  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • コエンザイムQ10

マウスピースを装着する、ガムを噛む

運動の種類、食いしばりの状況によっては、マウスピースを装着することも口腔内の保護に繋がります。マウスピースを装着していれば、歯のすり減りや顎関節への負担を軽減してくれるため、歯の欠損や歯肉組織へのダメージも防ぐことが出来ます。マウスピースは主にボクシングなどの格闘技で使われることが多いですが、これら格闘技以外のスポーツにおいてもマウスピースは有効です。

特に食いしばりが起きやすいスポーツとしては、ボクシングや空手、柔道などの格闘技に加え、重量挙げやウェイトトレーニングなどの筋力トレーニングも力を込める際に歯を食いしばります。他、陸上競技などの瞬発力を求められる競技や有酸素運動、サッカー、ラグビー、バスケットボールなどのコンタクトスポーツなども肉体的な接触を伴う際に歯を食いしばることが多いです。

このようなスポーツは無意識に歯を食いしばってしまうことから、歯や顎の負担が大きくかかります。歯や顎を保護するためにも、出来ればマウスピースを装着する習慣を付けましょう。ただ、マウスピースの難点としては、慣れるまでに口の中に違和感があることと、呼吸や発声に影響を及ぼす点があげられます。やはり、マウスピースを装着することによって最初は違和感を相当感じ、装着することをためらってしまう方も少なくありません。

それでも、慣れれば何とかなるものです。ボクシングの選手も激しい運動の中で絶えずマウスピースを付けていますが、あれも慣れです。慣れればどの競技でもボクシングのように装着できるかと思います。最初は呼吸や発声に違和感があると思いますが、根気強く装着してならしていきましょう。

マウスピースには色々種類がありますが、市販品を購入するよりも歯科で歯型を取って作って貰うのがオススメです。割とどこでも対応してくれると思いますので、是非お近くの歯医者でマウスピースを作って貰ってください。

それと、運動時や練習中には、ガムを噛むことも習慣として取り入れてみましょう。ガムを噛むことによって、ストレスや筋肉の緊張が緩和され、リラックスする効果があります。これは特に試合の合間など緊張感やストレスが高まる状況において有効です。また、ガムを噛むことで脳の血流が増加し、集中力が向上することが報告されています。運動中に集中力を維持することが重要な場合に有効です。加えて、ガムを噛むことで唾液を分泌し、口腔内を潤したり保護したりする効果もあります。運動中は交感神経優位の状態から唾液の分泌量が低下しやすく、口腔内の悪玉菌が繁殖しやすい状態になります。唾液は口腔内の悪玉菌の増殖を抑制する効果もありますので、歯周病や虫歯予防にも有効です。

運動中にガムを噛んでいるスポーツと言えば、メジャーリーグやプロ野球などが有名ですよね。スポーツ選手はガムを噛むことのメリットも知っていて、それを効果的に取り入れています。特に、集中力を高めたいときや緊張を緩和したい試合中などにはガムを噛むことのメリットが大きいです。

このようなスポーツを行っている方は、是非とも運動や練習中にガムを噛むことも習慣に取り入れてみてください。ただし、マラソンなどの走ったりする競技や、格闘技などの競技中はガムを噛むことは不向きです。これらの競技では、口呼吸が多かったり誤って飲み込む危険性もあることから、練習中でもオススメしません。これらは、試合や練習の合間など落ち着ける状況になったときにガムを噛む習慣を取り入れると良いですよ。

運動中に噛むオススメのガムとしては、スポーツ用に開発されたガムです。スポーツ用に開発されたガムでは、噛み始めから一定時間はほぼ同じ硬さでかみ続けられるように作られています。通常のガムでは噛んでいる内に柔らかくなりすぎてしまいますが、スポーツ用に開発されたガムなら一定の硬さで長く噛むことが出来ます。ガムを噛むことはマウスピース替わりにもなりますので、口腔内を保護する効果も期待出来ます。上述したマウスピースではどうしても違和感があって装着できない方は、是非運動のパフォーマンスアップと口腔内を保護するためにも、ガムを噛む習慣を取り入れてみてください。

はる かおる

運動時は特に口腔内の環境が悪くなりやすいから、低血糖症対策もかねて歯のケアは特に重要だよ❗ここにはできる限りお金と手間をかけるようにしてね。

副腎機能を回復させる分子栄養学的アプローチ

運動は極度の緊張とストレスを発生することがあり、ストレスが加わるとコルチゾールの分泌量を増加させることから、副腎疲労にもなりやすくなります。また、花粉症などアレルギー症状が酷い場合や、低血糖症が酷い方、ストレスや自律神経の乱れを抱えている方も、副腎が疲労している可能性が高いです。副腎が疲労していると、「アドレナリン」や「コルチゾール」など血糖を上げる作用のあるホルモンが分泌出来なくなって低血糖症を引き起こします。この場合も、副腎を元気にするアプローチを行っていきましょう。

副腎疲労を回復する基本的なアプローチとしては、上述した消化サポートと腸ケアに加え、「ストレスをかけないこと」です。ストレスと言えば精神的なストレスが思い浮かびますが、これ以外にも身体は様々なストレスを受けています。例えば、騒音だったり異臭だったり、気温の変化や湿度の変化、睡眠不足や偏った食生活、運動不足や喫煙、ウィルス感染や病原菌などの感染症もストレスと関係しています。

免疫力の低下とストレスには関連がある。特に現代はストレスとなる環境的、生活習慣的要因が大きい

これらストレスは免疫を低下させる要因でもあり、その他にもストレスが高まると下図のような身体機能にダメージを与えることが分かっています。特にストレスがかかった際には甲状腺刺激ホルモンの分泌異常が発生し、甲状腺機能にもダメージを与えますつまり、副腎疲労の方は甲状腺機能にも異常が発生しやすくなってしまうのです。

加えて、成長ホルモンの分泌も抑制されることから、運動後の筋肉修復や増量にも悪影響を与えます。筋肉の修復や増量は主に寝ている間に行われており、この間は成長ホルモンの分泌が促されることで身体を修復したり筋肉を作ったりしています。ストレスが高まるとこの成長ホルモンの分泌が抑制されることから、ストレスはトレーニングの効果が低下する原因です。

ストレスは身体の様々な機能に深刻なダメージを与える

また、過剰なストレスや副腎疲労の状態では交感神経が常に有意な状態となり、胃腸の機能が低下します。胃腸の機能が低下するとタンパク質などが上手く消化できなくなり、未消化のタンパク質が腸に流れて腸内環境を荒らします。このことから、副腎疲労はSIBOやリーキーガット症候群とも関係が深い病気です。もし甲状腺機能に異常があったり、リーキーガット症候群などの症状が感じられたりする場合は、副腎も疲れている可能性があります。心当たりがある方は、副腎機能を検査する「DHEA-S」の検査を受けてみて下さい。

「DHEA」とは、コルチゾールなどストレスホルモンの材料となるホルモンのことです。これが低い場合は副腎がコルチゾールなどを分泌しすぎて疲れている可能性があります。「DHEA-S」の検査は後述するオーソモレキュラー療法の血液検査で受けられますので、ご希望の方はご相談下さい。

次に、副腎機能を回復する栄養素についてです。ストレスがかかると様々な栄養素を消耗することから、ストレスに対抗するためには栄養素の摂取が重要になります。ストレスを感じている方や副腎疲労がある方は、次の栄養素の摂取も積極的に行ってみて下さい。

ストレスはビタミンとミネラルをはじめ大量の栄養を消耗する。ストレスに負けないためには、消費量よりも多くの栄養を摂取する

ストレスに対抗するための分子栄養学的アプローチ

  • 糖質
  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • カルシウム・マグネシウム

これら栄養補給に加え、生活習慣の乱れや睡眠不足もストレスを増加させたり栄養を消耗する原因になります。
加えて暴飲暴食や飲酒、喫煙、コーヒーや紅茶などのカフェインも副腎が疲れている方にとっては悪影響です。これらの生活習慣も見直してみて下さい。

特に、ストレスに対抗するためにはタンパク質摂取が重要になります。これは、ストレスがかかったり低血糖になることによってコルチゾールやアドレナリンなどの糖新生を促す異化ホルモンが分泌され、タンパク質の消耗量が多くなってしまうためです。この仕組みは、糖新生と言ってタンパク質からブドウ糖に作り替える機能が働くことが関係しています。

アドレナリンやコルチゾール、副腎皮質ホルモンなどが分泌されると、筋肉のタンパク質が壊されてアミノ酸に分解されます。このアミノ酸はブドウ糖に作り替えることが出来るので、身体は筋肉を壊してブドウ糖を作り、血糖値を調節しようとします。この結果、低血糖に陥ると筋肉がどんどん壊されてしまうのです。

ストレスを受けるとタンパク質の消費量が増えてしまう。この時にタンパク質を積極的に摂ることが重要

このような悪循環を防ぐためにも、タンパク質はしっかり補給しましょう。タンパク質は肉や魚などからも摂取する事が出来ますが、運動をしている方や低血糖症の方、副腎疲労を抱えている方等は胃腸機能が低下しており、肉や魚などを食べてもしっかり消化吸収出来ない可能性が高いです。これら肉や魚などきちんと消化できなかったものは悪玉菌のエサになり、腸内環境を荒らす原因になってしまいます。

ですので、そのような消化に負担がかかる肉や魚などのタンパク質を摂るよりも、既に消化吸収しやすくした「ペプタイドプロテイン」や「アミノ酸」からタンパク質を補給するのがオススメです。プロテインの中にはタンパク質を分解した「ペプタイド状」のプロテインも存在し、このようなプロテインは通常のプロテインよりも消化吸収しやすくなっています。

タンパク質を摂取する際は、既に分解されたペプチドやアミノ酸から摂取すると効率がよい

また、このような消化吸収しやすいプロテインでも消化できないほど消化吸収能が弱ってしまっている場合は、消化酵素を足したりアミノ酸やグルタミンなどで粘膜を修復したりするアプローチも有効です。

このあたりのアプローチは人によって異なりますので、是非オーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。オーソモレキュラー療法では、一人一人の消化能力や状態に合わせてプロテインや消化酵素、アミノ酸などをアドバイスしています。

加えて、オーソモレキュラー療法で使われるこれら栄養素は、消化吸収能が低下している方など病態を抱えている方向けに特化した設計になっていますので、副腎疲労や低血糖症を抱える方にもオススメです。

市販のプロテインやサプリメントは「健康維持用」に開発されたものであり、病態を抱えている方や消化吸収能に異常がある方向けには設計、開発されていません。これら市販のサプリを用いた場合は、上手く消化吸収出来ずに腸や肝臓にダメージを与え手しまうことがありますので注意して下さい。栄養素を補給する際は、必ず病態を抱えた方向けに設計された専用の製品で補給するようにしましょう。

最後に、副腎を元気にするための栄養素についてです。副腎から分泌されるホルモンや副腎自体はタンパク質から出来ていますので、タンパク質補給は欠かせません。また、タンパク質以外にも次のような栄養素も重要です。

副腎疲労、慢性疲労症候群からの回復には栄養補給が欠かせない

副腎を元気にする栄養素

  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンE

特に副腎はビタミンCを大量に消費する臓器でもあり、ビタミンCはストレスホルモンの材料でもあります。
この事からビタミンCは「抗ストレスビタミン」とも呼ばれ、ストレス対策には欠かせません。副腎を元気にするためにもビタミンCをしっかり補給するようにしましょう。

ビタミンCは最強の抗ストレスビタミンと言われている

ビタミンCの補給量については個人差がありますが、およそ一日に3,000mg程度は最低でも摂りたいところです。ただし、人によってはビタミンCの摂取によって下痢になってしまう場合があります。この場合は量の調節が必要です。

また、ビタミンCを補給する際は質の良いしっかりとした製品を選びましょう。エナジードリンクやお菓子にもビタミンCが添加されている物がありますが、これらはビタミンCの補給にはなりません。ビタミンCは熱や水分に弱く、ジュースやお菓子に添加されている物は活性を失って効力を失ってしまっているからです。

また、薬局などで売られている食品添加物用のビタミンCやサプリメントなども同様です。ビタミンCが体内で十分に効果を発揮するためには、ビタミンPが必要な事に加えて、製造段階や保管段階でビタミンCの活性が失われないよう厳重な製造管理体制が必要になります。安く販売されているビタミンCはこのような製造管理体制下で作られていませんので、十分な効果が発揮出来るかどうかは不明です。医薬品にもビタミンC製剤が売られていますが、こちらも「アスコルビン酸カルシウム」など通常のアスコルビン酸とは分子構造が異なっています。

ビタミンCと一言で言っても何でも良いわけではありませんので、しっかりと生体内で利用出来るよう設計、製造されたビタミンC製品を選んで下さい。

はる かおる

副腎機能回復にはストレスに対抗するために糖質とタンパク質とビタミンB,C,Eの補給が鍵を握っているよ❗ただ、市販のプロテインやサプリメントは消化吸収や生体内利用効率の考慮がされてない。これらを摂るとむしろ逆効果にもなる可能性があるから気をつけてね❗

貧血の場合は必ず貧血改善も同時進行を!

日常的な運動を行っている方は、胃腸機能の低下や運動時の衝撃によって鉄不足や貧血を引き起こしやすくなります。また、有経の若い女性の方は、生理による毎月の出血により、気をつけていても貧血になりがちです。貧血は、代謝機能低下や自律神経の乱れから上述した副腎疲労や肥満、脂肪肝に繋がり、低血糖症を発症する原因にもなります。

現在貧血と診断されていなくても貧血になっている「隠れ貧血」の場合もありますし、貧血で無くても日々生理などで鉄分は消費してしまいます。また、血流の悪化で気がつかないまま溶血性貧血が進行していることもありますので、貧血改善は必ず行っておきましょう。貧血改善は、運動時のパフォーマンスアップやメンタルの向上など、様々なメリットがあります。

さて、貧血と診断された場合や治療と言えば、真っ先に「鉄剤」が思い浮かびますよね。「鉄欠乏性貧血」と言われているくらいですから、鉄を補給すれば貧血が改善出来る。そう思われています。

しかし、病院で処方される鉄剤を飲んでも、貧血を改善することは出来ません。むしろ、鉄剤を摂取する事により大量の活性酸素が発生し、胃や腸の粘膜にキズを付けてしまう可能性があるのです。

病院で処方される鉄剤は体内で活性酸素を発生させる原因となり、細胞や粘膜にダメージを受けてしまう

この原因は、病院で処方される鉄剤の多くが「無機の鉄そのもの」であるか、吸収効率が非常に悪い事が原因です。無機の鉄とは、タンパク質などと結合していない「鉄そのもの」の状態のもの。鉄は、酸素と結びつきやすく、錆びやすいことはご存じですよね。このサビが悪さをすることから、身体の中で鉄を扱う時は必ずタンパク質でコーティングしてから利用する仕組みになっています。

対して、この無機の鉄や鉄剤に含まれている鉄は、何もコーティングされていないことから他の物質や細胞を酸化させやすい状態になっています。この他の細胞を酸化させる力が強い鉄を大量に飲むことによって「活性酸素」を大量に発生させてしまうのです。

活性酸素とは、酸素の一部が通常よりも活性化された状態になること。活性酸素の事を「フリーラジカル」とも呼びます。この活性酸素はその活性の高さから細胞を傷つけてしまい、むしろ胃粘膜や腸粘膜を傷つけ、消化吸収能の低下や、SIBO、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群(IBS)など炎症性の腸疾患や肝炎、非アルコール性脂肪肝などに進行してしまう可能性があるのです。この事から、病院で処方される鉄剤で貧血対策を行う事はオススメしません。

病院で処方される鉄剤の例としては、次のような物があります。

病院で処方される非ヘム鉄の例

  • フェロム (フマル酸第一鉄) 有機鉄
  • フェロミア (クエン酸第一鉄) 有機鉄
  • リオナ (クエン酸第二鉄) 有機鉄
  • インクレミンシロップ (溶性ピロリン酸第二鉄) 有機鉄(食品添加物としても使われる)
  • フェロ・グラデュメット(硫酸第一鉄)無機鉄 発色剤の一種。食品添加物としても使われる。
病院で処方される鉄剤は「非ヘム鉄」であり、吸収率が非常に悪い。

特に処方が多い鉄剤としては、「フェロム」や「フェロミア」などがあります。これらは1回の服用量が100mgとかなり多く、これだけ飲んだとしてもたった5mg程度しか吸収することが出来ません。かなり吸収率が低い割には身体へのダメージが大きく、人によっては胃がムカムカしたり便秘になったりと副作用が出る場合があります。

対して、このような胃腸障害や活性酸素を引き起こしにくく、吸収率が高い鉄が「ヘム鉄」です。鉄には大きく分けて、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けられます。ヘム鉄とは肉や魚などに含まれている動物性の有機鉄のことで、ポルフィリン環というタンパク質の一種と結合しているのが特徴です。それ以外の鉄は、クエン酸などと結合させた有機鉄と、硫酸第一鉄のような有機酸と結合していない無機鉄があります。

鉄分には、動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と野菜や果物などに含まれる「非ヘム鉄」がある

鉄剤の中には「第一鉄」や「第二鉄」と書かれている物がありますが、これは鉄イオンの状態を表しています。
第一鉄がFe2+、第二鉄がFe3+です。何だか難しい話しですが、簡単に言えば鉄が元気をちょっと失った状態(電子2個分を失った状態)が第一鉄であり、二価鉄やFe2+と表されます。第二鉄は鉄が元気をもっと失った状態(電子3個分を失った状態)で、三価の鉄やFe3+と表されます。

二価や三価は、失った元気(電子)の数だと思ってください。この二価の鉄が酸素と反応すると、酸素が二価の鉄から元気(電子)を1つ奪っていきます。すると、二価の鉄は元気(電子)をさらに1つ失って、三価の鉄になります。逆に、三価の鉄がビタミンCや水素などによって元気(電子)1つ受け取ると、ちょっと元気になって二価の鉄になります。これを酸化還元反応と言います。

つまり、酸化とは電子を失うこと、奪われることであり、還元とは電子を得ること、奪うことです。鉄を吸収する際は、必ず三価鉄のFe3+から、二価鉄のFe2+に変化させる必要があります。

なぜ三価鉄のFe3+から二価鉄のFe2+へ変化させる必要があるかというと、鉄の吸収経路であるDMT-1は、二価鉄のFe2+のみしか結合して輸送できないためです。三価のFe3+の状態では非常に安定しおり、そのままの状態ではDMT-1と結合させて輸送することが出来ません。

そのため、第二鉄である三価の鉄を吸収するためには、必ず二価の鉄に還元する必要があります。先ほどの鉄剤の一覧を見ると、第二鉄であるFe3+が混ざっていることが分かりますよね。この第二鉄であるFe3+は、一度Fe2+の状態に還元して初めて吸収することが出来ます。この鉄の吸収メカニズムを表したものが次の図です。

鉄剤やホウレン草などに含まれるFe3+は、一度Fe2+に変化させないと吸収することが出来ない

上の図では、動物性の食品に含まれるヘム鉄はそのまま取り込まれているのに対し、非ヘム鉄である三価の鉄(Fe3+)は、一度二価鉄であるFe2+に変化してから取り込まれているのが分かるかと思います。

このFe2+の状態に還元するためのサポートをしてくれるのが、胃酸やビタミンCなどです。非ヘム鉄は、この胃酸やビタミンCのサポートを受けて吸収されています。

ただ、この時にすべての鉄分を吸収することは出来ません。吸収出来なかった鉄分が腸内に流れると、それが腸内細菌のエサとなり、この腸内細菌が毒素を発生させて腸粘膜を傷つけてしまう原因になります。また、Fe3+からFe2+に還元する際には、大量の活性酸素も発生させてしまいます。

また、これは第一鉄であるFe2+も同じです。Fe2+の一部は一度胃酸によってFe3+の状態に変換し、すい臓から分泌されるすい液中の酵素によって小腸で再び二価の状態に戻されます。この過程は、鉄が小腸で吸収されるのを助けるために必要です。また、ほとんどの二価鉄は変換する必要が無く吸収されるため、その分吸収効率は三価鉄であるFe3+に比べて高くなっています。しかし、それでも吸収率としてはごく僅か。大半は吸収出来ずに大腸へ流れ、活性酸素の発生原因やカンジダ菌など悪玉菌のエサになってしまいます。

このように、これら鉄剤や非ヘム鉄は吸収効率が非常に悪く、活性酸素を発生させる大きな原因です。特に非ヘム鉄は吸収率が悪く、ヘム鉄の吸収効率が10%〜30%程度あるのに対し非ヘム鉄は僅か5%以下しかありません

このことから、鉄分を補給する際は「ヘム鉄」から補給するのがオススメです。ヘム鉄とは、肉や魚に多く含まれる鉄分のこと。ヘム鉄はポルフィリン環と呼ばれるタンパク質のカプセルのような物に包まれており、上述した非ヘム鉄に比べて活性酸素を殆ど発生させません。

また、非ヘム鉄はお茶やコーヒーなどに含まれるタンニンと結合し、吸収率が落ちてしまいますが、ヘム鉄であればこれらの影響を受けずに吸収することが出来ます加えて、ヘム鉄は吸収率が高いことから大腸へと流れる量が少なく、しかもヘム鉄自体が腸内細菌のエサになりにくいという特徴があります。逆に非ヘム鉄を大量に摂取してしまうと、吸収出来なかった鉄が大腸へ大量に流れることから、更なる腸内環境の悪化を招く原因となりかねません。

ヘム鉄は専用の吸収経路があり、タンニンなどの吸収阻害要因からの影響も受けにくい。

加えて、ヘム鉄には「ヘムトランスポーター」と呼ばれる専用の吸収経路が腸に存在しています。この専用の吸収経路から効率的に吸収されることで、非ヘム鉄よりも効率的な吸収が可能になっているのです。

ちなみに、非ヘム鉄の吸収経路はDMT1という経路を使って行われています。この吸収経路は亜鉛や銅など他のミネラルを吸収経路と共通になっているため、鉄剤を多く飲めば飲むほど亜鉛など他のミネラルの吸収を阻害してしまい、亜鉛が欠乏することによって「亜鉛欠乏性貧血」という貧血を引き起こしてしまう原因になります。

この事は海外製のサプリメントとしてよく販売されている「アミノ酸キレート鉄」にも同じです。
アミノ酸キレート鉄とは、本来吸収効率の悪い鉄を「グリシン」と呼ばれるアミノ酸でサンドイッチする事で、飛躍的に吸収効率を高めた鉄サプリメントです。

海外サプリメント通販で手軽に入手出来るアミノ酸キレート鉄。吸収率が高い代わりに鉄過剰のリスクが高い

一見すると、鉄分の吸収率がとても高い事は良いことのように思えますよね。しかし、この吸収率の高さが問題となります。鉄の吸収経路には先ほど解説したようにミネラル全般を吸収するための DMT1と、ヘム鉄専用のヘムトランスポーターがあります。アミノ酸キレート鉄は、このどちらでも無くアミノ酸の吸収経路から無理矢理吸収させているようなのです。

このため、体内で鉄が過剰になりやすく、無理矢理吸収させているために利用効率がとても悪くなるといった問題が発生します。本来、DMT1やヘムトランスポーターでは、体内に鉄が十分にある場合や利用出来ない場合はこれ以上鉄を吸収しないようコントロールする能力が備わっています。アミノ酸キレート鉄ではこれら吸収経路を迂回してしまうため、吸収量をコントロールする事が出来ません。この結果、体内で鉄が過剰になり、肝臓に負担がかかったり、腸粘膜を傷つけたり、貧血改善していないのにフェリチンだけが高くなっていくといった弊害が多く発生してしまっているのです。

また、アミノ酸キレート鉄は鉄分だけを無理矢理大量に吸収させるため、とても利用効率が悪くなります。造血には鉄以外にも亜鉛や銅、セレンやマンガン、タンパク質なども必要で、これらが足りない場合は造血することが出来ません。また、鉄は体内で活性酸素を発生させる原因になる事から、必ずタンパク質と結合して安全に利用されています。アミノ酸キレート鉄は、タンパク質不足などで鉄が体内で安全に利用出来ない状態でも無理矢理吸収させてしまい、これが体内で活性酸素を発生させる原因となるのです。この事から、日本では「天然に存在しない鉄」としてアミノ酸キレート鉄は製造・販売が認められていません。

特に問題なのは、アミノ酸キレート鉄は鉄だけを大量に吸収させることから、他のミネラルとのバランスを崩しやすくなる事です。鉄を多く摂取すれば貧血が改善出来るような気がしますが、鉄だけ大量に補給しても造血することは出来ません。造血するには「亜鉛」も必要で、鉄欠乏性貧血の方は同時に亜鉛欠乏性貧血も抱えています。このような理由から、アミノ酸キレート鉄及び病院から処方される非ヘム鉄の摂取は、むしろ亜鉛欠乏性貧血を招く原因となってしまうのです。

貧血は「鉄欠乏」だけじゃない!貧血改善に大きな役割を果たす亜鉛の重要性

貧血は「鉄分だけが不足している」というイメージが強いですが、鉄不足だけが原因ではありません。鉄以外にも様々なミネラルやタンパク質が関係していて、その中でも特に「亜鉛」が重要な働きをしています。亜鉛はヘモグロビンの材料となる「ポルフィリン環」の合成に必要な材料であるほか、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの合成にも必要です。

この亜鉛が不足してしまうと、貧血が改善出来なかったり、亜鉛欠乏性貧血を引き起こしたり、糖尿病や低血糖症を引き起こしてしまう原因になります。

ヘモグロビンの構造とポルフィリン環の構造

この図は、赤血球を構成しているヘモグロビンの構成を表した物です。ヘモグロビンは「ヘム」というポルフィリン環と鉄がくっついた物で、グロビンはタンパク質です。この2つが組み合わさることで、ヘモグロビンは構成されています。

よく見ると、ヘム鉄の元になる「ポルフィリン環」の材料に亜鉛が必要と書いてありますよね。ポルフィリン環とはタンパク質のカプセルのような物で、ヘム鉄はこのタンパク質に包まれていることが最大の特徴です。私達が摂った鉄分はこのポルフィリン環に包まれた「ヘム鉄」と呼ばれる状態に合成され、ヘモグロビンの合成などに利用されています。この時に亜鉛が不足しているとポルフィリン環が十分に合成できなくなり、ヘモグロビンの合成量低下に繋がります。このことから、亜鉛は造血をする際にも必要な栄養素です。

亜鉛欠乏性貧血では赤血球の膜が弱くなり、血管とこすれて赤血球が破壊されてしまう

また、亜鉛が不足している場合は「亜鉛欠乏性貧血」を引き起こしやすくなります。亜鉛欠乏性貧血とは、赤血球の膜が壊れやすくなり、赤血球と血管がこすれることで赤血球が破裂してしまう状態のこと。これが繰り返されることで、貧血が進行してしまいます。赤血球は、酸素を運搬してくれる血液中の成分のことで、この赤血球の中にはヘモグロビンが大量に含まれています。赤血球が壊されることで酸素を運ぶ量も低下し、貧血の状態に陥ってしまうのです。

亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血の関係。鉄欠乏性貧血がある人は同時に亜鉛欠乏を抱えている可能性が高い

このことから、亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血には相関関係があり、鉄欠乏性貧血を抱える女性のおよそ90%に亜鉛欠乏が見られています。また、アルコールの解毒や筋肉を作る際にも亜鉛も必要である事から、運動をしている方が鉄欠乏以外にも亜鉛欠乏を抱えているケースが多くあります。このことから、鉄欠乏性貧血を改善させるためには「亜鉛」を同時に摂ることも重要です。アミノ酸キレート鉄や病院から処方される鉄剤は鉄のみしか補給出来ず、ミネラルバランスを崩す原因になりますので注意しましょう。

貧血を改善させるための具体的な分子栄養学的アプローチ

では、貧血を改善させるためにはどのようなアプローチをすれば良いのでしょうか? ここからは、具体的な鉄分の摂取目安や貧血改善に必要な栄養について解説します。

まず、鉄分を補給する際に選ぶべき鉄の種類は「ヘム鉄」です。この理由は、先ほど解説した通りになります。
ヘム鉄をベースに、鉄代謝や造血に必要なミネラル等も併せて摂るようにしましょう。貧血改善に必要な栄養素の目安は次の通りです。

貧血改善に必要な栄養素

  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • マンガン
  • セレン

この中でも、最も重要なのは「タンパク質」です。先ほども解説したように、無機の鉄そのものの状態が体内で存在すると、活性酸素を発生させてしまってむしろ身体や細胞にダメージを与えてしまいかねません。
身体はこの鉄から発生する活性酸素から身を守るために、鉄を運搬、利用する際は必ずタンパク質で出来たカプセルに鉄分子を入れて利用しています。これが、ポルフィリン環やフェリチンなどですね。

つまり、鉄を安全に運搬、利用するためにはタンパク質が絶対に欠かせません。いくら鉄分を多く補給しても、安全に貯蔵、運搬、利用出来るためのタンパク質がない状態では、貧血を改善させることが出来ないのです。
このことから、貧血改善をするためには鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂るようにしましょう。最低でも一食当たり100g〜200g程度の肉や魚は取り入れたいところです。足りない分は、プロテインなどを活用するのも良いですね。加えて、タンパク質を利用するために必要な補酵素である「ビタミンB群」も積極的に補給するようにして下さい。

そして、次に「ヘム鉄」です。ヘム鉄の摂取量目安は、血清フェリチン値を目安に判断します。血清フェリチン値の検査はオーソモレキュラー療法の血液検査を受けることで調べることが出来ますので、気になる方は受けてみて下さい。また、一部の病院では「フェリチン値を図ってほしい」とお願いすると検査してくれるところもあります。大抵の場合はフェリチン値の検査を追加したい理由を尋ねられますので、「貧血の参考にしたい」としっかり説明出来るようになっておくと良いですよ。

血清フェリチン値は男女で基準値の違いがありますが、おおよそ40ng/mL未満では貧血と判断することが出来ます。この場合は、ヘム鉄として一日45mgを目安に摂取してみて下さい。

また、血清フェリチン値が40〜100ng/mLの間では、貧血では無いものの貯蔵鉄がやや不足している状態です。この場合も、十分な貯蔵鉄が貯えられるよう、一日あたりヘム鉄として15mg程度補給してみて下さい。継続して行くにつれてフェリチン値は徐々に上がっていき、血清フェリチン値が125ng/mL程度になるのが理想と言われています。

フェリチンに対するヘム鉄摂取量目安。40ng/mL以下では積極的な補給が望まれる。

ただし、有経女性の場合は毎月月経があるのでフェリチン値はなかなか上昇しない傾向があります。有経女性の場合は血清フェリチン値が60ng/mL前後を保てていれば大丈夫ですので、それ以上フェリチンが下がらないようキープして下さい。また、男性の場合でフェリチンがなかなか上がらない場合や貧血が改善出来ない場合は、消化管から出血していることも考えられます。この場合は、胃カメラや大腸カメラ、便潜血検査などで消化管に出血が無いかどうかも確認してみてください。

それから、フェリチン値は貧血の判断以外にも「炎症」を見るためのマーカーでもあります。フェリチン値は体内で炎症が発生していても上昇することがあり、ガンなどでは著しく上昇する場合もあります。

特に、鉄分を補給していないのにフェリチン値が200ng/mLを超えていたり、フェリチン値が高くてヘモグロビン値が低い場合は何らかの炎症が関与している可能性大です。この場合は、炎症の原因となっている原因を調べ、適切に対処するようにして下さい。

市販の安いヘム鉄サプリにはご注意!

ヘム鉄のサプリと言えば、ドラッグストアーなどで安く販売されている物を見かけることがありますよね。
ヘム鉄が補給出来るなら、安くて量が摂れるに越したことはありません。しかし、同じヘム鉄といえどその質にはピンからキリまであります。特に、「ヘム鉄パウダーの量」と「ヘム鉄含有量」は全く違うものですので注意して下さい。
ヘム鉄は豚の血液を精製して作られており、ヘム鉄パウダーと呼ばれるパウダー状の中にヘム鉄が1%もしくは2%含有している物が一般的です。例えば「一粒でヘム鉄50mg」と書かれていても、これはヘム鉄パウダーが50mg含まれているだけであり、実際にはその中の1%〜2%である0.5mg〜1mgしかヘム鉄が含まれていない計算になります。このように、多く含まれているように見せかけて、実際にはヘム鉄が殆ど含まれていない物がありますので注意して下さい。
加えて、安いヘム鉄の場合は原材料に肝臓を使用している場合があります。肝臓は毒素や薬の解毒が行われる臓器で、毒素や薬物が蓄積しやすい臓器です。特に家畜には抗生剤やホルモン剤が大量に使われていることがあり、これら抗生剤やホルモン剤が肝臓に蓄積している場合もあります。これらを原材料として使った安いヘム鉄サプリの場合、微量ながら薬物がサプリメントに混じる事になり、余計な成分も摂取してしまうことになりかねません。特にアスリートやスポーツ選手の方がこのようなサプリメントを摂取すると、サプリメントに含まれる薬物成分も同時に摂取してしまい、ドーピング違反として選手生命が絶たれる事態に陥る恐れもあります。ですので、このようなリスクを無くすためにもしっかりと質の良い原材料と製法で作られた質の良いヘム鉄サプリメントを選ぶようにして下さい。

また、繰り返しますが貧血改善にはヘム鉄以外にも微量ミネラルと呼ばれるセレンやマンガン、銅や亜鉛など他のミネラルの補給も重要です。ヘム鉄として市販されている商品の多くはヘム鉄のみなど鉄分の補給しか出来ません。この事から、ヘム鉄であっても体内での利用効率が悪く、貧血が改善出来ない場合も多くあります。これを避けるためにも、ヘム鉄を摂取する際は生体内のミネラルバランスや鉄の利用効率などを考慮した設計のものを選ぶようにして下さい。分子整合栄養医学で使われているヘム鉄製品は、「鉄の取り込み」「利用」「貯蔵」「排泄」など貧血改善における鉄分本来の働きが安全に出来るよう考慮されています。ヘム鉄を選ぶ際は、値段や含有量にとらわれず、体内で安全に利用出来る安心、安全な製品を選びましょう。

貧血改善には、サプリメントの質が重要。鉄単体の補給はむしろ逆効果となる。
はる かおる

貧血は、単に鉄を補給しているだけじゃ改善出来ないよ❗
貧血にも必ず原因があるから、原因も突き止めて
アプローチするようにしてね❗

ご存じですか?質の良い筋肉を付けるために必要なプロテインの種類とアミノ酸の基礎知識

ナンナン

なるほど❗じゃあ、ここに書かれている栄養を摂っていれば、運動時の栄養補給もバッチリだね❗

はる かおる

いやいや、上述したのはあくまで疾病対策用の栄養アプローチだよ。これらと運動時に行うべき栄養アプローチは全くベツモノなんだ。

ナンナン

な、なんですとっ❗❓これ以外にも必要なアプローチがあるってこと❓❓

はる かおる

そうだよ。そもそも、運動時の栄養補給がしっかり出来ていれば、上述したような運動時の低血糖症や疾病は殆ど防ぐことが出来るんだ。この栄養補給の量や種類は、人によってさまざま。このアプローチが適切に出来ていないから、摂った栄養が胃や腸に負担をかけたり、摂取量が足りなくて身体を壊してしまう。運動している人が何らかの体調不良を抱えていた場合、まずは運動時の栄養アプローチが不十分だと考えて良いね。

ナンナン

なるほど…。じゃあ、運動時の適切な栄養アプローチって、どんな栄養を摂ったら良いのかな❓

はる かおる

そうだね。ちょっと長くなるけど、ここからは運動時の栄養摂取方法について基本的なことを解説してあげるよ。

ここまで、運動によって引き起こしやすい疾病と低血糖症との関係、および具体的な改善方法の分子栄養学的アプローチを解説してきました。ここからは、運動と栄養について、もう少し踏み込んだアプローチ方法をご紹介します。

運動においては、プロテインなどのタンパク質摂取の重要性については以前から言われていますよね。しかし、プロテインにもホエイやソイなど色々な種類があり、その種類の中でも製造方法や添加物の違いなどによって様々なプロテインが販売されています。また、筋肉を付ける際にはプロテインの摂取に限らず、アミノ酸をタイミングよく摂取する事も欠かせません。

運動における栄養摂取は、これら栄養がどのように身体に作用し、どのように使われるかをしっかり理解して行っていく事が重要です。このような基本が分からないまま闇雲にサプリメントを摂取している状態では、上手く筋肉を付けることが出来ないために理想的な身体の状態を目指せません。

それどころか、間違ったプロテインや栄養素の摂取によって、上述した腸内環境の悪化や副腎疲労など、逆に身体を壊してしまう恐れがあります。このような事態を避けるためにも、まずはプロテインやサプリメントの基本的な知識と、運動時における効果的な摂取方法を学びましょう。

運動時における栄養摂取において、最も基本となるのがプロテインです。プロテインには大豆タンパクが原料のソイプロテインや乳タンパクが原料のホエイプロテイン、カゼインプロテインなどがあります。まずはこれら原料の違いによる特徴やメリットデメリットを把握し、ご自身に合ったプロテインを選べるようになる事が重要です。プロテイン製品の主原料の違いについては、下図を参考にして下さい。

プロテインに使われている原材料によって、それぞれ特徴がある。目的に合わせて選ぶことが大切。

現在主流のプロテインに使われている原材料は、主に大豆タンパクであるソイプロテイン、牛乳に含まれる水に溶けやすい成分を分離精製したホエイプロテイン、そして水に溶けにくい部分を分離精製したカゼインプロテインがあります。

それぞれ含まれているアミノ酸の量や栄養成分、消化吸収時間が異なることから、摂取時における効果も変わってきます。このため、プロテインは目標や目的に合わせて原材料の種類を選ぶことが大切です。

筋力増量を目的とするならホエイ、リカバリー促進ならカゼイン、身体を引き締めたいなら大豆と、目的に合わせて摂取する

例えば、ホエイプロテインは他の原材料に比べてBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)という筋タンパク質を構成するアミノ酸が豊富に含まれています。また、ホエイは小型の球状タンパク質であるために消化しやすいタンパク質です。

加えて、水に溶けやすく風味もよいため、大量に摂取する方に向いています。このことから、ホエイプロテインは筋肉を増やしたい方やスポーツ選手など、運動している方にオススメのプロテインです。ただし、ホエイプロテインの製法によっては乳糖が含まれていることがあります。乳糖不耐症の方はお腹がゴロゴロする原因になるので注意して下さい。

対して牛乳の水に溶けにくい部分を分離精製したカゼインプロテインは、ホエイプロテインに比べて分子が大きいため消化に時間がかかります。消化に時間がかかることから運動前後におけるゴールデンタイムには吸収が間に合わず、運動時におけるタンパク質摂取にはあまり向いていません。

しかし、消化に時間がかかるということは、そのぶんだけゆっくり持続的に吸収出来るということです。この事は特に就寝時の筋肉組織の修復に向いています。就寝時は副交感神経が優位になり、筋肉を作る成長ホルモンも分泌されることから、身体の修復や筋肉の増量が促される時です。この時にタンパク質が体内で十分にあると、身体の修復が行われ、筋肉が付きやすくなります。カゼインプロテインではゆっくり吸収されることから、就寝時の何も食べ無い時間が長く続く時でも持続的にアミノ酸を供給できます。このことから、カゼインプロテインは就寝前の摂取や、リカバリーを促したい方にオススメです。

最後に、大豆が主原料のソイプロテインについてです。ソイプロテインはカゼインプロテインと同じく分子量が大きいため、ゆっくり消化されて補給効果が長く続きます。また、ソイプロテインは製法によってはイソフラボンが含まれている物もあります。

このため、なるべく筋肉量を増やさずに身体を引き締めたい方や、ダイエット中の方、更年期前後などでイソフラボンを補給したい方、美容効果や健康維持を期待する方にオススメです。加えて、ソイプロテインは乳が原材料のプロテインと比べて乳糖が含まれません。このことから、乳糖不耐症の方や牛乳アレルギーの方など、乳製品以外からタンパク質を摂りたい方にもオススメです。

ナンナン

プロテインは、目的に合わせて選ぶことが大切なんだね

はる かおる

そうだよ。なんとなく「ホエイが最強❗」みたいに決めたくなるけど、それぞれのメリットを理解して上手く使い分けていくことが大切なんだ。

筋肉増量にはBCAAが欠かせない

この3つの中でも、運動している方が特に摂りたいのが「ホエイプロテイン」です。ホエイプロテインにはBCAAというアミノ酸が含まれており、このBCAAは筋タンパクを作り出しやすく壊れにくくしてくれる働きがあります。

必須アミノ酸のバリン・ロイシン・イソロイシンは分岐鎖アミノ酸と呼ばれ、筋タンパクの合成を促す働きがある

BCAAは、バリン・ロイシン・イソロイシンという3つのアミノ酸のことで、アミノ酸の一部が分岐した分子構造を持つ事が特徴です。この3つのアミノ酸は「必須アミノ酸」と呼ばれ、体内で合成出来ないことから食べ物から補給する必要があります。

対して、これら必須アミノ酸を材料に体内で合成出来るアミノ酸を「非必須アミノ酸」と言います。非必須というと摂取しなくてもよいイメージがしますが、体内で合成出来るだけで摂取が不要というわけではありません。非必須アミノ酸は必須アミノ酸を材料として合成されるので、非必須アミノ酸の摂取量が不足した場合は必須アミノ酸も不足することに繋がります。これらアミノ酸は、バランスよく摂取する事が重要です。

そして、筋肉を付ける際に最も欠かせないのが、先ほども挙げたBCAAというアミノ酸です。

BCAAは筋肉の30%〜40%を構成しており、筋タンパクを作り出しやすく壊れにくくする働きがある。
他にも、BCAAは運動時に筋肉で重要なエネルギー源となり、運動時のパフォーマンス維持に役立つ

BCAAは筋肉を構成する主な材料で、筋肉を構成する必須アミノ酸の30%〜40%を占めています。それから、運動時には筋肉で重要なエネルギー源となることと、筋タンパク質の分解を抑制してくれる効果、そして筋肉を作り出しやすくしてくれる効果があります。このことから、運動前後にBCAAを摂取すると、筋肉がBCAAをエネルギー源として利用して運動時のパフォーマンスを維持してくれる効果が期待出来ます。

加えて、BCAAに含まれるロイシンはタンパク質合成促進効果があることから、筋肉増量にも欠かせないアミノ酸です。

ロイシンには筋タンパクを作り出しやすくする機能が強く、筋肉の増量には欠かせない。

具体的には、ロイシンにはタンパク質合成を調節するmTORというシグナル伝達経路を活性化させる作用があります。ロイシンが細胞内に入るとmTORが活性化され、筋タンパク質の合成が増加。筋肉の成長や修復が促されます。

また、同じく糖質を摂取した際に分泌される「インスリン」にもmTORを活性化させる作用があります。このことから、筋肉量を増やしたい場合はロイシンを含むBCAAの摂取に加えて、インスリンを分泌させることも重要です。ロイシンとインスリンが共同で働くことで、筋タンパク質合成がより効果的に促進されます。運動後の筋肉回復と筋肉増量を促すために、適切なタイミングでBCAAと炭水化物を摂取するようにしましょう。

特に、運動後はプロテインを摂取する事が一般的ですが、プロテインを大量に摂取するよりもBCAAを組み合わせて摂取する方が効果的です。BCAAはアミノ酸である事からプロテインと違って消化が必要ない上に、吸収された後は肝臓で代謝されないという特徴があります。

このため、筋肉への到達速度が速く、速やかに筋タンパクの修復や増量に使われます。同時に消化のよい糖類と組み合わせて適度にインスリンを分泌させ、タンパク質合成促進効果を高めてください。

ナンナン

運動後にはプロテインを飲んでいたけど、BCAAを摂ることも大切なんだね。

はる かおる

うん、プロテインは消化吸収に時間がかかるけど、アミノ酸のBCAAなら消化に時間がかからない。そのぶんだけ筋肉に到達する速度が速いから、プロテインとBCAAを組み合わせて摂取する方が効果的だね。

骨格筋で発生したアンモニア代謝にもBCAAが欠かせない

次に、BCAAとアンモニア代謝についての解説です。この記事の最初に、運動によってグリコーゲンが枯渇した場合は、筋肉を壊してアミノ酸を取り出し、ブドウ糖に変える事は説明しましたよね。このような働きを糖新生と言います。この糖新生の反応は、実は大量のアンモニアを発生させてしまう原因です。

これは、糖新生で使われるアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン)をブドウ糖に変える際に、アミノ酸から切り離したアミノ基がアンモニアとして解離するためです。

このアンモニアには毒性があり、蓄積すると中枢神経や脳機能にダメージを与える事は有名ですよね。中枢神経や脳機能にダメージを受けると、運動機能の低下や集中力の低下にも影響します。また、重度のアンモニア蓄積が続くと死に至る事もあります。

このことから、体内で発生したアンモニアは速やかに体外へと排泄する事が重要で、身体にはアンモニアを適切に解毒する機能が元々備わっています。そのアンモニアの解毒にも関係しているのがBCAAです。

骨格筋におけるBCAAとアンモニア解毒の関係。BCAAのアミノ基がグルタミン酸の合成に利用され、グルタミン酸がアンモニアと結合することでアンモニアを解毒している。

具体的には、BCAAがグルタミン酸の代謝に関係していることが挙げられます。BCAAが骨格筋でエネルギー源として利用される際、まず脱アミノ反応という反応を経て分岐鎖ケト酸に変換されます。変換された分岐鎖ケト酸は、各種代謝を経て、最終的にクエン酸回路(TCAサイクル)やβ酸化に参加し、エネルギー(ATP)の産生として使われています。

そして、このBCAAが分岐鎖ケト酸に代謝される際には、もう一つの重要な経路があります。それが、グルタミン酸の合成です。グルタミン酸の合成には、脱アミノ反応によって取り外されたBCAAのアミノ基が、α-ケトグルタル酸と結合することでグルタミン酸に変換されています。つまり、グルタミン酸を合成する際にはBCAAなどの代謝によって生じたアミノ基が必要です。

このグルタミン酸は、アンモニアの生成や代謝にも関与しています。グルタミン酸がアンモニアを生成させる要因としては、最初の方に解説した「糖新生」によるルートと、α-ケトグルタル酸に変換されてクエン酸回路に参加し、ATPを生成するルートの二つがあります。「糖新生」によってアンモニアが発生するルートでは、グルタミン酸がブドウ糖に変換される際に行われる「脱アミノ反応」によってアミノ基が外され、外されたアミノ基がアンモニアに変換される事で生じます。また、グルタミン酸がα-ケトグルタル酸に変換されるルートでは、グルタミン酸がα-ケトグルタル酸に変換される際に行われる「脱アミノ反応」によって外されたアミノ基が、アンモニアに変換される事で生じます。

この2つはどちらもエネルギーを作り出す際に行われることから、運動などによって消費エネルギーが増えるほどアンモニアの発生量が増えることに繋がります。運動によってエネルギー消費が増えると、BCAAの代謝が活性化し、それに伴ってグルタミン酸の合成とアンモニアの生成も増加します。これは、運動時に筋肉がエネルギーを必要とするため、BCAAの代謝が促進されることが原因です。

そして、この発生したアンモニアは、同じくBCAAやグルタミン酸の働きによって無毒化することも可能です。これは、BCAAの代謝によって発生したグルタミン酸が、同じく発生したアンモニアと結合し、「グルタミン」というアミノ酸の合成に使われるためです。グルタミン酸からグルタミンに変換される際には、クエン酸回路で生成したATPエネルギーを消費することでアンモニアと結合させ、グルタミンに変換しています。この消費するATP自体は、BCAAやグルタミン酸の代謝によってATPが産生されているので問題ありません。

グルタミンはアンモニアを安全かつ効率的に運ぶことができる物質であり、また小腸などのエネルギー源としても使われている物質です。グルタミンに変換された後は骨格筋から放出され、その後血液で運ばれて小腸のエネルギー源として使われたり、肝臓でアンモニアが解毒されたりしています。このような一連の代謝経路を通じて、アンモニアは生成され、解毒され、無害化されているわけです。

このため、運動前後にBCAAを補給することは、アンモニアの生成による悪影響を最小限に抑えることに繋がります。質の良い筋肉を付けたり、運動によって生成されたアンモニアを代謝させたりするためにも、運動前後はBCAAも含めてしっかりと栄養補給を行いましょう。

ナンナン

すごい❗BCAAにはアンモニアを間接的に解毒する役割もあるのか❗

はる かおる

そうそう。ちょっと難しい話しだけど、BCAAにはアンモニア解毒にも間接的に関わっていると覚えておくと良いね。
それに、グルタミン酸とアンモニアが結合して出来た「グルタミン」は次で説明する腸粘膜や免疫細胞のエネルギー源として使われているよ。人間の代謝機能って神秘的だねー

運動によるグルタミンの消費と、免疫力、筋肉量低下の関係

次に、筋肉とグルタミンの関係についてです。質の良い筋肉を付けるためには、先ほど解説したBCAA以外にも、グルタミン酸やグルタミンも運動による代謝と筋肉量に大きく関係しています。運動をするとグルタミン酸やグルタミンを大量に消費することになるため、不足した場合は免疫力の低下や筋肉量の低下を招きます。このようなことを防ぐためにも、運動後には適切な「グルタミンの補給」も必要です。

ちなみに、「グルタミン酸」と「グルタミン」は名前がよく似ていますがその構造や働きは全くのベツモノです。グルタミン酸は上述のようにATP産生やアンモニアの解毒、ピルビン酸からアラニンというアミノ酸の合成、BCAAの代謝にもかかわっていますし、抗酸化物質である「グルタチオン」の合成にも必要な材料です。また、糖原性アミノ酸であることから糖新生など糖代謝にも関係しています。他、グルタミン酸は脳の興奮性神経伝達物質としても使われており、こちらは骨格筋とは別の代謝機構によって脳内で緻密に制御され、利用されています。

対してグルタミンは、先ほど解説したように「グルタミン酸」と「アンモニア」が結合した物がグルタミンです。こちらは主に小腸などの粘膜細胞や免疫細胞などのエネルギー源として使われているアミノ酸であり、免疫系の機能にも重要です。また、グルタミンは小腸粘膜から分泌されるGLP1と言うホルモンの促進させることが示唆されており、GLP1はインスリンの分泌を促進させることから糖代謝にも関係しています。グルタミンは脳の神経伝達物質であるグルタミン酸の材料となるため、血液脳関門を通過して脳内でも利用されています。こちらも、骨格筋でのグルタミン代謝とは別に、血液脳関門によってグルタミンの濃度が厳密に調節されています。

このグルタミンは、運動による身体的ストレスや精神ストレスによって需要が高まるアミノ酸です。特に激しい運動では身体が身体的ストレスや精神ストレスなどの強いストレスを感じ、それに対抗しようと筋肉中からグルタミンが取り出されます。この時に筋肉を分解してグルタミンを摂りだしてしまうことから、筋肉量の低下にも繋がります。よって、運動後には筋肉の分解や免疫力の低下を防ぐためにも、適切なグルタミンの補給が重要です。

運動時など激しいストレスがかかると、骨格筋のタンパクを分解してグルタミンを放出する。

特に運動においては、グルタミンと免疫力低下の関係が示唆されています。フルマラソンレース後の免疫能力を調査した結果では、グルタミンを7日間摂取させたグループでは風邪を引かなかった人の割合が80%と多かったのに対し、グルタミンを摂取しなかったグループではおよそ50%の人が風邪を引くという結果になりました。

フルマラソンレース後にグルタミンを摂取したグループとしなかったグループでは、グルタミンを摂取したグループの方が風邪を引かなかった

この調査が行われた背景としては、以前からフルマラソン選手はレース後に風邪を引きやすいという事が言われていたためです。フルマラソンでは長距離を完走するためにかなりのエネルギーを消費します。また、過酷な運動でもあるため、身体は大きなストレスを感じています。ストレスがかかるとグルタミンの消費が増大することから、グルタミンの消費が免疫力の低下と関連しているのではと考えられていました。

その結果を裏付ける研究としてこの調査が行われた結果、やはりグルタミンが不足していたことによって免疫力が低下していたという事が分かりました。この事からも、運動とグルタミンの消費には大きな関係があります。運動後は筋肉の分解や免疫力の低下を防ぐためにも、適切なグルタミンの補給を行いましょう。

また、グルタミンの摂取は血糖調節に関わるGLP-1の分泌を促進させる作用があるため、低血糖症の予防や筋肉を増強したい時にも有効です。

小腸粘膜細胞から分泌される GLP-1というホルモンは、インスリンの分泌を促す働きがある。グルタミンはこのGLP-1の分泌を促進する

GLP-1とは、小腸粘膜から分泌されるホルモンの一種で、インスリンの分泌を促進してくれる作用があります。先ほどBCAAの解説記事で、筋肉量を多くするためにはBCAAと同時に適度なインスリンの分泌が重要である事は説明しましたよね。インスリンは筋肉細胞にグルコース(ブドウ糖)を取り込む作用があることから、血糖調節や運動時のエネルギー代謝に関係しています。グルタミンを摂取するとGLP-1を刺激してインスリンの分泌を促進してくれることから、運動後のタンパク質異化亢進(糖新生)の抑制にも繋がります。このため、運動後は運動時に消費したグルコースをインスリンによって筋肉細胞に速やかにとどける為にも、グルタミンを適切に補給することがオススメです。

他、グルタミンとグルタミン酸は抗酸化物質である「グルタチオン」の合成にも関係しているアミノ酸です。

グルタミン酸は抗酸化物質のグルタチオンの合成材料でもある。グルタチオンには、薬物や重金属を解毒する作用や、老化を防御する役割を果たしている。

グルタチオンは「グルタミン(酸)」と「システイン」「グリシン」の3つのアミノ酸が3つくっついたトリペプチドと呼ばれる物質です。このグルタチオンには、活性酸素の除去を行う「抗酸化作用」があるほか、毒素や薬物を取り込んで一緒に排泄する事で解毒を行う「グルタチオン抱合」という役割も果たしています。この2つの役割から、グルタチオンは老化を防御する作用やガン化を抑制する作用、活性酸素から細胞を保護する作用などがあると言われています。

特に、スポーツ選手やアスリートなどは呼吸数が多いため、大量の酸素を吸い込んでエネルギーに変えています。この息を吸って吐くだけでも体内で活性酸素が発生し、身体にダメージを与える原因です。活性酸素のダメージは細胞を傷を付け、これが日常的に繰り返されることでがん細胞など異常な細胞が増える原因になります。よく、スポーツ選手やアスリートなどが「ガンになりやすい」と言われているのはこのような理由があるためです。

グルタチオンはこのがん細胞の発生原因となる活性酸素を除去し、細胞を保護してくれる働きがあります。運動をしている方は、このグルタチオンをしっかりと合成するためにも、材料となるグルタミンは積極的に補給したいですね。

ナンナン

運動すると体にいいっていわれていたけど、逆に過酷な運動は免疫力を低下させたりガンになりやすくなったりするんだね💦

はる かおる

うん、適度な運動は健康によいと言われているけど、逆に過剰な運動は身体に負担がかかってしまうんだ。だからこそ、身体を守るためにも運動前後は適切な栄養補給をすることが大切だね。

グリシンは質の良い筋肉作りと睡眠の質向上、貧血改善、免疫力向上に役立つ。

運動している方に是非摂って頂きたいアミノ酸として、BCAAとグルタミン以外にももう一つあります。それが「グリシン」です。グリシンは先ほど解説したの「グルタチオン」の合成に必要なほか、グリシンはグルタミン同様に消化管粘膜細胞のエネルギーとして使われるアミノ酸です。

グリシンにはグルタミンと同様、消化管粘膜のエネルギー源として使われる他、免疫細胞のエネルギー源にもなる

運動している方はグルタミンの消費量が激しいため、運動後はどうしても免疫力が低下しがちです。グリシンやグルタミンはこの免疫細胞のエネルギー源となる事から、これらを補給することで免疫力の維持、向上に役立ちます。グルタミンと併せて摂取する事で相乗効果が高まりますので、摂取する際は是非グルタミンと一緒に摂りましょう。

また、グリシンは「コラーゲン」や「アミノレブリン酸」の材料にもなるアミノ酸です。アミノレブリン酸とは、貧血の所でも解説した「ヘム鉄」の元となる「ポルフィリン環」の材料となる物質です。鉄はむき出しの状態だと活性酸素を発生させて細胞にダメージを与えてしまいます。これを防ぐためにも、身体の中の鉄はタンパク質に包まれて大切に運搬、利用されています。この鉄を包む際に使われているのが「ポルフィリン環」です。ポルフィリン環はこのアミノレブリン酸が組み合わさって出来た物で、その材料には「グリシン」が使われています。

グリシンはヘモグロビンの材料となるポルフィリン環の材料となる事から、貧血改善にも有効。また、コラーゲンの合成に必要である事から質の良い筋肉を作る上でも役立つ。

そのため、グリシンの摂取は貧血の改善にも役立ちます。運動をしている方は地面を走ったり飛んだりぶつかったりするような衝撃が加わるため、その衝撃で血液が壊れて貧血になる「溶血性貧血」になりやすいことは貧血の所で解説しましたよね。また、運動している際は呼吸数が多くなることから活性酸素の発生量も多くなります。この活性酸素が赤血球にダメージを与え、赤血球が壊れやすくなってしまいます。このようなことから、アスリートやスポーツ選手など運動をしている方は貧血改善も同時に行う必要があります。この貧血改善に役立つのがグリシンです。

また、グリシンは質の良い筋肉を作る際にも役立ちます。筋肉や筋膜、軟骨には、コラーゲンというタンパク質を主成分として含んでおり、コラーゲンは体全体のタンパク質のおよそ30%を占めています。コラーゲンは筋肉や皮膚など組織の構造的な基盤を提供し、弾力性や強度を維持する役割を果たしています。このコラーゲンを作る上でも重要になるのがグリシンです。グリシンは、コラーゲンの三重らせん構造を形成する際に重要な役割を担っています。このことから、グリシンの摂取は、筋肉や筋膜、軟骨の健康を維持する上で非常に役立ちます。グリシンを適切に摂取すると、コラーゲンの合成をサポートし、筋肉の回復や成長を促進します。また、筋膜の柔軟性や弾力性を向上させ、筋肉のパフォーマンスを最適化することができます。

さらに、コラーゲンは軟骨の構造を支えていることから、関節の健康や機能向上にも有効です。軟骨は関節の表面を覆う滑らかな組織で、骨同士の摩擦を減らし、衝撃を吸収する役割を果たしています。特に、運動している方は走ったりジャンプしたりと、激しい運動の中で膝関節や肘関節を酷使することから、どうしても軟骨がすり減りやすく、関節痛や関節炎などを引き起こしやすくなります。また、軟骨は加齢によっても変化、減少していく事から、健康的な関節を将来にわたって維持するためにも日頃からの適切な栄養補給が欠かせません。グリシンは軟骨の成分であるコラーゲン繊維を形成する主な材料ですので、関節痛の緩和や関節の機能向上にもつながります。

このように、グリシンの摂取は筋肉の質向上や関節機能の向上など、さまざまな運動機能向上が期待出来ます。筋肉を付ける栄養というとBCAAやクレアチンなどが思い浮かびますが、グリシンの摂取も質の良い筋肉を付ける上で非常に重要です。運動する際は、是非グリシンの摂取も取り入れてみましょう。
ちなみに、コラーゲン繊維を作る際はグリシン以外にも「鉄」や「ビタミンC」が必要になります。貧血の状態だとコラーゲン繊維が上手く作れず、筋肉の質も低下しますので、必ず貧血改善とセットで行うようにして下さい。

グリシンは他にも睡眠の質を向上する働きがある。睡眠時には成長ホルモンが分泌されることから、睡眠の質を改善させることは質の良い筋肉作りにも役立つ。

それと、質の良い筋肉を付ける上で切っても切り離せないのが「睡眠」です。筋肉は、鍛えたらすぐに筋肉が作られるわけではありません。鍛えた筋肉を修復させたり増量させる際には、寝ている間に分泌される「成長ホルモン」の働きが重要です。成長ホルモンには、筋肉の回復や成長に必要なアミノ酸の取り込みを促し、筋肉組織の新陳代謝を高めてくれる作用があります。このため、トレーニングをした日は如何に良い睡眠を取り、成長ホルモンを分泌させるかが鍵になります。

この成長ホルモンが分泌される時は、深い睡眠をしたときの「ノンレム睡眠」の時です。睡眠には2種類あって、浅い眠りの時の「レム睡眠」と、深い眠りの時の「ノンレム睡眠」があります。成長ホルモンが分泌されるのは「ノンレム睡眠」の時ですので、眠りが浅かったり途中で目が覚めてしまっては、成長ホルモンが分泌されません。

つまり、日中にどんなハードなトレーニングやプロテインを飲んだとしても、睡眠の質が悪いと成長ホルモンが十分に分泌されないことから、筋肉の修復や増量が行われにくくなってしまうのです。
特にアスリートやスポーツ選手など運動をしている方は交感神経が優位になりやすく、身体は常に緊張状態にあります。この緊張状態が続いている場合は、睡眠の質が悪くなる原因です。しっかり睡眠を取っていると思っていても、朝スッキリ起きられなかったり、前日の疲れが残っていたりする場合は、質の良い睡眠が十分にとれていない可能性があります。質の良い筋肉を付けたり修復したりするためにも、運動を行う際は睡眠の質もしっかりと改善していきましょう。

この睡眠の質を改善する際に特に役立つのが、グリシンです。グリシンは、ノンレム睡眠への誘導を深め、成長ホルモンを分泌するのに役立ちます。具体的には、グリシンには入眠時の体温を下げて深い睡眠に入りやすくなる作用と、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸の働きを抑制し、抑制性の神経伝達物質であるガンマ-アミノ酪酸(GABA)の働きをサポートする働きがあります。これにより、運動によって高まってた交感神経を落ち着かせ、副交感神経が優位になる事で神経系がリラックスし、睡眠に適した状態になります。

また、グリシンは、セロトニンの合成に関与するトリプトファンというアミノ酸の利用効率を高めることが言われています。セロトニンは、幸福感やリラクセーションを感じさせる神経伝達物質であるほか、メラトニンへと変換されることで体内時計や睡眠のリズムを整える働きをしています。

セロトニンは日中に分泌され、夜間になるにつれてメラトニンに合成されていく。メラトニンが十分にある事で身体は休息モードになり、質の良い睡眠を取ることが出来る。

睡眠には「セロトニン」や「メラトニン」の働きも深く関係していて、日中はセロトニンが分泌され、夜間にはこのセロトニンがメラトニンに変換されることで身体は休息モードになります。つまり、よい睡眠を取るためには十分なセロトニンの分泌量と、スムーズなメラトニンへの変換が重要です。グリシンを摂取すると、セロトニンおよびメラトニンの生成が促進され、睡眠の質を高めることが出来ます。このことから、グリシンの摂取は成長ホルモンの分泌につながり、質の良い筋肉を付ける上で非常に役立ちます。

また、よい睡眠がとれることやセロトニン、メラトニンなどがしっかり分泌されることは、運動時のパフォーマンスや試合のパフォーマンスにも良い影響を与えます。よく、トップアスリートの中では「最終的な勝敗を分ける要因はメンタルだ」と言われていますよね。どんなに優れたトレーニングを行っても、試合中に緊張したり不安になったりして本来のパフォーマンスが引き出せなければ意味がありません。つまり、スポーツにおいては単に筋肉の量を増やすこと以外にもメンタルの状態を整える事も非常に重要です。

よい睡眠がとれることや、セロトニン、メラトニンなどがしっかり分泌されること、交感神経優位の状態からリラックスした副交感神経優位の状態になる事は、メンタルの向上や運動パフォーマンスの向上も期待出来ます。

加えて、交感神経優位の状態では糖新生が促進され、副交感神経が優位の状態では糖新生が抑制されることから、筋肉量の低下防止や糖代謝の改善、低血糖症対策にも有効です。グリシンはこのようなメンタルや睡眠の面からも質の良い筋肉を付けるサポートをしてくれますので、上述したBCAAやグルタミンと併せて、ぜひ積極的に摂取してみて下さい。

ナンナン

質の良い筋肉を付けるためには、睡眠も重要な働きをしているんだね。わかった、グリシンもちゃんと摂るようにするよ❗

はる かおる

うん、質の良い筋肉を付けるためには、質の良い睡眠を取ることが大切だね。運動している人は交感神経優位になりやすいから、睡眠の質が低下する傾向にあるよ。睡眠の質を高めるためにも、グリシンを摂ることも大切だね。

運動時の正しい糖質の摂り方と、質の良い筋肉を付けるための効果的なタンパク質、アミノ酸の摂取方法

ここまでは、質の良い筋肉を付けるために必要なプロテインの種類とアミノ酸の基礎知識を解説してきました。少し難しい話しでしたが、質の良い筋肉を付けるために必要な栄養素の基礎知識は身についたかと思います。
それでは、ここからはもう少し具体的に、質の良い筋肉を付けるためにはどのタンパク質、アミノ酸、糖質をどれくらい摂れば良いのかについて解説していきましょう。

質の良い筋肉を付ける上で最もベースとなるのが「プロテイン」です。プロテインの種類やオススメの摂取対象者については、先ほども解説しましたよね。

筋力増量を目的とするならホエイ、リカバリー促進ならカゼイン、身体を引き締めたいなら大豆と、目的に合わせて摂取する

ただ、ここでよく勘違いされがちなのが、「どのプロテインが最強なのか?」と考えてしまうことです。運動している方は筋肉量を増やす事が目的のため、BCAAが多く含まれている「ホエイプロテインがもっとも良い」と考えますよね。しかし、ホエイもカゼインも大豆プロテインも、それぞれ長所と短所があります。これらは組み合わせて考える事が重要です。ホエイは吸収率が高く、比較的早く吸収されることがメリットですが、逆に吸収が早いことですぐにアミノ酸の供給が切れてしまうというデメリットがあります。また、カゼインではゆっくり吸収されることから運動後のタンパク質補給には向いていないと言われています。こちらも逆に、ゆっくり吸収されるからこそ、持続的にアミノ酸が供給できるとも考える事が出来ます。

このようなタンパク質にはそれぞれ特徴があることから、プロテインを摂るときは組み合わせて摂取する方が筋肉合成をより促進させることが出来ます。例えば、ホエイプロテインだけ、カゼインプロテインだけを摂ったときよりも、ホエイとカゼインを両方組み合わせて摂ったときの方が吸収率も持続時間もバランスよく維持することが可能です。

ホエイプロテインとカゼインを一緒に摂ることで速効性と持続性が合わさり、骨格筋合成を促進できる

また、ホエイとカゼイン以外にも、大豆プロテインもゆっくり消化吸収されることから、ホエイプロテイン+ソイプロテインのように混ぜて摂取する事もオススメです。こちらの組み合わせでも、ホエイプロテインのみを摂取するよりも筋肉合成を促進させることが出来ます。プロテインを混ぜる割合としては、個人差もありますが大体ホエイが4、カゼイン・ソイが6の割合、またはホエイとカゼイン・ソイを5:5の割合で混ぜて摂取するのがオススメです。この割合がご自身にとって正解とも限りませんので、混ぜる量などを工夫してみてください。

次に、プロテインの摂取量についてです。一日に必要なタンパク質の摂取量としては、体重(Kg)あたり1g~1.5gの摂取量が推奨されています。例えば体重が60kgなら、一日に必要なタンパク質は60g〜90gです。ハードな運動をしている方は、体重あたり1.5gを摂取すると良いでしょう。

一日のタンパク質摂取量の目安。運動している方は体重(kg)×1.5gを摂るとよい。

このタンパク質量は、一日あたりの摂取量なので一度にまとめて摂る必要はありません。むしろ、何回にも分けて摂取した方が消化に負担が少なく、効果が持続します。最低でも、一日に4回〜5回程度に分けて摂取すると良いですね。例えば、体重60kgの人なら、1回あたり20g程度のプロテインを4回〜5回に分けて飲むイメージです。すべてのタンパク質をプロテインから摂る必要はありませんので、残りは食事から摂りましょう。

ちなみに、販売されているプロテインパウダーは、それぞれ含まれているタンパク質量が違います。プロテインパウダーを20g分図って飲んだとしても、そのすべてがタンパク質ではありません。味を調えるための甘味料や、添加物、精製度合いによって乳糖等の不純物も多く混ざっている物もあります。傾向としては、プロテインの品質は原材料と精製度合いによって決まるため、不純物が少なくタンパク質含有量が多い物ほど価格が高くなる事が一般的です。基本的には、それなりに価格が高い物を選ぶのが良いでしょう。安く販売されているプロテインの中には、タンパク質が殆ど入っていない代わりに難消化性デキストリンなどの添加物が殆どだったという場合もあります。安いプロテインほどタンパク質含有量が少なく、添加物が多い傾向にありますので注意して下さい。

それから、プロテインの品質や体内での利用効率を決める上で最も重要なのが「きちんと消化吸収されるかどうか」です。いくら一生懸命プロテインやタンパク質を摂取しても、それがきちんと消化吸収されなければ全く意味がありません。特に安いプロテインやアミノ酸は大量生産するために、熱をかけてパウダー状に乾燥させている場合があります。タンパク質やアミノ酸に熱を加えると変性し、消化吸収率の低下や体内での利用効率が低下することから、このようなプロテインは絶対に選んではいけません。

また、運動をしている方は交感神経が優位になっている事から、プロテインを飲んでも上手く消化吸収出来ない場合も考えられます。

タンパク質は胃でペプチド状に分解され、小腸で更にアミノ酸にまで分解されて吸収される。運動している方や消化吸収能が低下している方は、ペプチドおよびアミノ酸での補給が望ましい。

例えば、タンパク質は胃で消化され、ペプチドと呼ばれる数個のアミノ酸が結合した状態になります。そこから更に小腸で分泌される消化液によってアミノ酸まで分解され、小腸粘膜で吸収されています。

プロテインとして販売されている商品の殆どは「タンパク質」の状態である事から、胃の働きが落ちている場合はペプチドやアミノ酸にまで十分に消化する事が出来ません。十分に消化吸収出来ない場合は、いくらプロテインを一日に何十グラムと飲んでも、タンパク質不足に陥ってしまいます。このような状況を避けるためにも、「ペプチド化されたプロテイン」を選ぶのがオススメです。

アミノ酸が数個繋がったペプチドでは、アミノ酸一個の吸収よりも効率がよい。ペプチドプロテインでは、プロテインよりも消化の負担が少なく、吸収効率が高くなる。

ペプチド化とは、プロテインを特殊な製法によって一段階消化し、ペプチドの状態にした物です。ペプチド化された物は、タンパク質からペプチドへの消化段階を飛ばすことが出来ることから、アミノ酸への分解時間が短いというメリットがあります。また、アミノ酸が2-3個繋がった状態のジペプチドやトリペプチドの状態でも吸収することが出来るため、アミノ酸を一個ずつ吸収するよりも効率が良くなるというメリットもあります。

このことから、ペプチド化されたプロテインは消化吸収能が低下している方や、プロテインを毎日大量に飲む方には特にオススメです。特にプロテインを運動直後に補給するタイミングでは、交感神経が優位になっている事から胃の働きが低下し、プロテインを十分に消化することが出来ません。ペプチド化されたプロテインなら、このような運動直後の状態でもしっかりとタンパク質を補給することが出来ます。運動前や運動後のタンパク質補給には、是非ペプチド化されたプロテインを選んでみて下さい。

ただ、ペプチド化されたプロテインの難点としては、価格が高い事があげられます。プロテインの製造方法に加えてペプチド化する工程が加わることから、どうしても価格が高くなってしまいます。それでも、消化吸収出来ないプロテインを大量に飲むよりかはコスパが高いです。消化吸収出来ないプロテインをいくら飲んでも筋肉にはなりませんが、高くても消化吸収出来るペプタイドプロテインを飲めば筋肉の材料になります。プロテインを選ぶときは、値段だけで決めずに消化吸収効率も考慮に入れて選ぶようにしましょう。

それから、運動時にはプロテインやアミノ酸の摂取が推奨されていますよね。この記事でも、BCAAやグルタミン、グリシンなどのアミノ酸の働きについて解説しました。そうなってくると疑問に湧いてくるのが、「アミノ酸とプロテイン、どっちを摂れば良いの?」という疑問です。

アミノ酸とプロテインにはそれぞれメリットとデメリットがある。運動している方は、どちらも取り入れる方がよい。

基本的に、プロテインの摂取は消化能力が必要なことから、消化吸収に問題が無い方にオススメです。ただ、この場合も「消化酵素」と組み合わせたり、先ほど解説した「ペプタイドプロテイン」を選べば特に問題ありません。対してアミノ酸は消化の必要が無いことから、消化吸収力が低い方やタンパク質にアレルギーを持っている方にオススメです。

この場合も「どちらがいいか?」と考えがちですが、どちらがいいかを考えるよりも「どちらも組み合わせて摂る」ことが大切です。特に運動をしている方は運動後のおよそ1時間までのタイミングがゴールデンタイムと言われ、この間にタンパク質やアミノ酸を摂取することでアミノ酸が筋肉に輸送される量が通常の3倍にアップすると言われています。このタイミングを逃さないためにも、プロテインやアミノ酸は組み合わせて摂ったり、使い分けたりして摂取していきましょう。

具体的なアミノ酸やプロテインの摂取タイミングとしては、糖質と併せて摂ることが望ましいです。アミノ酸やプロテインの効果を最大限に引き出すためにも、次で説明する「もぐもぐタイム」を取り入れてみてください。

ナンナン

なるほど、プロテインやアミノ酸は組み合わせて摂る方が良いのか❗

はる かおる

そうだよ。プロテインも消化吸収に合わせてペプタイドプロテインを選ぶことも重要だね。プロテインやアミノ酸は「どれが最強か❓」って考えてしまいがちだけど、自分の身体に合わせて、色々組み合わせて摂っていくことが大切だよ。

運動中や運動の前後は糖質とアミノ酸を補給する「もぐもぐタイム」を取り入れよう

次に、プロテインの摂取タイミングと糖質の摂取タイミングについてです。「運動後にはプロテインを飲む」という行為は、運動している人にとってはもはや当たり前の行為ですよね。でも実は、運動後にプロテインを飲むだけでは不十分です。記事の途中でも解説したように、筋タンパク質を合成するためには糖質によるエネルギー供給が欠かせません。この糖質と一緒にアミノ酸やプロテインを摂ることによって、はじめて筋タンパク質のアミノ酸合成が促進されるのです。

筋タンパク質の合成には、糖質が大きく関係している。タンパク質と糖質を同時に摂取することでインスリンが分泌され、アミノ酸合成が促進される。

例えば、運動時や運動後などにおける筋肉へのブドウ糖の取り込みは「インスリン」というホルモンで行われています。このインスリンが分泌されることで筋肉にブドウ糖が取り込まれ、筋肉を動かすためのエネルギーや筋肉を修復するためのエネルギーとして使われています。この時、糖質を摂らないままプロテインだけを飲んでしまうと、筋肉などアミノ酸を合成するエネルギーが足りなくなり、タンパク質合成が促されません。むしろ逆に、タンパク質やアミノ酸をエネルギーとして使う糖新生が起こり、摂ったアミノ酸やプロテインが無駄になってしまいます。このような状態を避けるためにも、アミノ酸やプロテインの摂取時には適量の糖質を摂取をし、インスリンを適量分泌することが重要です。

そのためには、糖質を運動の前と後に摂取したり、少量を回数頻回で食べたりなど「もぐもぐタイム」を設けましょう。特に筋肉量をアップさせるためには、運動前や運動中、運動後にプロテインやアミノ酸などと併せて適切な量の糖質を摂取することが重要です。

筋肉量アップには運動前後の適切なタイミングで糖質とアミノ酸、プロテインを摂ることが欠かせない。

例えば、運動前には筋肉にエネルギーをしっかり供給するためにも、おにぎりやバナナなど、炭水化物から十分な糖質を摂って下さい。消化吸収の時間を加味して、運動の60分前に摂取すると効果的です。この時、なるべく緩やかに持続的にブドウ糖を供給できる「炭水化物」を選びましょう。炭水化物は唾液やすい液に含まれるアミラーゼという消化酵素により徐々にブドウ糖に消化されることから、持続的にブドウ糖を供給することが出来ます。逆に、ジュースなどの果糖やブドウ糖のラムネなど、単糖類と呼ばれている糖質では消化が不要なため、吸収が早すぎることから、運動中にエネルギー切れを起こしやすくなります。運動前に摂取する糖質の種類には注意しましょう。

加えて、運動30分前には筋肉のエネルギー源となるアミノ酸のBCAAや、アルギニン、オルニチン、シトルリンなども摂取しましょう。アルギニンやオルニチン、シトルリンは血管を拡張させて運動時のパフォーマンスを向上してくれたり、アンモニアの排泄を促してくれる効果があります。このアミノ酸と糖質を同時に摂取することで運動時に筋肉が壊れることを防ぎ、疲労回復を早めたり持久力を高めてくれる効果が期待出来ます。

次に、運動中では、こまめな糖質補給も重要です。運動中は筋肉に貯えられた「グリコーゲン」を大量に消費していきます。グリコーゲンが枯渇すると筋肉が壊されて糖新生が引き起こされてしまうことから、グリコーゲンが枯渇する前にこまめな糖質の補給を心がけましょう。補給する糖質としては、吸収の早い「果糖」や「ブドウ糖」などの単糖類がオススメです。これらは消化する必要が無いため、摂取すると速やかに吸収されて筋肉で利用出来ます。

一時期、オリンピックカーリング女子代表の選手達は、試合中に「もぐもぐタイム」としてイチゴなどの糖質を摂っていましたよね。これにもしっかりと理由があり、身体を動かした後に適切な糖質を摂ることで筋肉の破壊を防いでいたのです。このような糖質の摂取に加えて、筋肉のエネルギー源となるBCAAも同時に摂取してください。

そして、最後に運動後の栄養補給です。運動後はなるべく早く糖質を摂るようにして下さい。これは、筋肉の破壊を防ぐ効果と、筋肉を速やかに修復させるためです。この時摂るべき糖質は、果糖やブドウ糖などに加えて、持続的に吸収出来る炭水化物も組み合わせましょう。スポーツドリンクなどで糖質と水分を補給し、バナナなどの炭水化物で糖質を摂っていくと良いですね。

次に、筋肉を付けるためのBCAAの補給と消耗したグルタミンの補給、加えて必須アミノ酸がバランスよく含まれたサプリメントなどで速やかにアミノ酸を補給してください。このアミノ酸の摂取は、筋タンパク質合成速度を高める上で非常に重要です。

運動後にアミノ酸と糖質を同時に摂取することで、速やかに筋肉に運ばれ、筋タンパク質の合成を促進することが出来る。

例えば、運動後にアミノ酸だけを補給した場合と、運動後にアミノ酸と糖質を補給した場合では、運動後にアミノ酸だけを補給した場合に比べておよそ3倍の筋タンパク質の合成が促進される事が分かっています。このことからも、運動後は糖質に加えて適切なアミノ酸と糖質を摂取することが重要です。

特に、運動後の30分間から1時間は、筋肉が作られやすくなる「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯があります。この運動後30分以内に筋肉を作るための材料をしっかり補給することで、筋肉量のアップが期待出来ます。

もし、このタイミングでプロテインだけの摂取にしてしまうと、消化吸収に時間がかかることからゴールデンタイムには間に合わなくなる可能性があります。これは、プロテインに含まれるタンパク質をアミノ酸に消化するまでにおよそ1時間程度かかるためです。このタイミングを逃さないためにも、運動後はしっかりとアミノ酸と糖質を補給するようにして下さい。

それと、アミノ酸だけではタンパク質の量が足りないのでプロテインも併せて摂ることも重要です。アミノ酸は吸収が早い分高価で、摂取出来る量が少なくなります。この量を確保するためにも、プロテインでタンパク質の量をカバーすることが大切です。アミノ酸とプロテインを組み合わせて、吸収速度とタンパク質摂取量を両立させましょう。

このアミノ酸やプロテインの摂取に加えて、タンパク質の合成に必要な補酵素である「ビタミン」や「ミネラル」も同時に摂取する事も重要です。運動後にプロテインだけを摂っている方が多いですが、プロテインだけを摂っても筋肉を作るためのアミノ酸合成は出来ません。筋肉を作るためには補酵素であるビタミンB群や亜鉛などのミネラルも必要です。これらも忘れずに補給するようにして下さい。

腸カンジダ症、SIBOなどでは糖質、炭水化物の摂取が逆効果になる恐れあり

ただし、これら糖質や炭水化物の摂取は、消化能力や消化器官に異常が無いことが前提です。
糖質と炭水化物の摂取には一定のメリットがありますが、これらを摂ることでむしろ体調が悪化してしまう場合もあります。それが、腸にカビの一種であるカンジダ菌が多く繁殖してしまう「腸カンジダ症」や、小腸に細菌が多く繁殖してしまうSIBOと呼ばれる病気の場合です。

これら消化器官に問題がある場合は、炭水化物や糖質を摂ることによってむしろ腸内環境が悪化しかねません。このような問題を抱えている方は、炭水化物を大量に摂取する前に、腸内環境を改善したり、腸粘膜を強化したり、胃や腸の機能を高めたりするアプローチをするのが優先です。
もしこれら疾患に心当たりがある場合や、糖質・炭水化物を摂取すると体調が悪くなる場合は、後述するオーソモレキュラー療法の血液検査や短鎖脂肪酸検査を受けてみて下さい。

ナンナン

なるほど、運動するときはこまめな糖質摂取が重要なんだね。
これをやっていなかったから、低血糖になったり筋肉が壊れちゃったりしてたのか💧

はる かおる

そうだよ。筋肉を付けるために運動してプロテインを飲む人が多いけどそれだけだと筋肉は付かないんだ

ナンナン

プロテインを飲んで運動すれば筋肉が付くと思っていたけど
全部カロリーとして使われちゃってたって事なんだね💦
わかった、今度からちゃんと糖質も摂るようにするよ❗

運動後はプロテイン、アミノ酸の補給以外にもビタミンやミネラルの同時補給を!

次に、筋タンパク合成に必要なビタミン、ミネラルについてです。筋肉を修復したり作ったりするにはタンパク質が必要ですが、だからと言ってプロテインをガンガン飲んでも筋肉を作る事は出来ません。身体を修復したり筋肉を作ったりするためには、ビタミンやミネラルなど様々な栄養素が必要です。

タンパク質を合成するためには、タンパク質に加えて代謝酵素の働きが欠かせない。この酵素はビタミンやミネラルを元に作られている。

例えば、私達が摂取したプロテインは、胃や腸でアミノ酸にまで分解され、小腸で吸収されています。この吸収されたアミノ酸をつかって筋肉などのタンパク質を合成するためには、補酵素と呼ばれるビタミンやミネラルが欠かせません。

先ほど説明したα-ケトグルタル酸からグルタミン酸に合成する場合や、ピルビン酸からアラニンに合成する際にも、代謝酵素に加えて補酵素であるビタミンB6が必要です。

私達が摂取したプロテインや糖質、脂質などはすべて肝臓で代謝されてから全身に運ばれている。これらの代謝にはビタミンB群が欠かせない。

また、タンパク質以外にも、私達が摂った糖質や脂質などはすべて肝臓でされています。肝臓はエネルギーや酵素の生産工場のような物で、糖質から筋肉のエネルギー源となるグリコーゲンを合成したり、疲労物質である乳酸をグリコーゲンに再合成したりして、再びエネルギー源として利用されています。

この他、栄養を体中に運ぶためのタンパク質である「アルブミン」や「コレステロール」などはすべて肝臓で作られています。これらの代謝の殆どに、ビタミンB群が欠かせません。

ビタミンB群は糖質、脂質、タンパク質の代謝すべてに関わっており、特に疲労の原因となる乳糖をエネルギーとして再利用するためにはビタミンB群が関係している。

このように、タンパク質の合成や糖質、脂質をエネルギーとして利用する際は、ビタミンB1をはじめほぼすべてのビタミンB群が関与しています。ビタミンBにはいくつかの種類があって、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類をすべて含めた総称が「ビタミンB群」です。これらすべてのビタミンB群が代謝に関わっていることから、ビタミンBを摂取するときは必ず「ビタミンB群」として摂取するようにしましょう。

ビタミンB群を摂取する事で、はじめて摂取したプロテインが筋肉を作る材料として使われたり、糖質がエネルギー源として働いてくれます。このことから、運動をするときは普段の栄養補給をする際には必ずビタミンB群の摂取も取り入れてください。オススメの摂取量としては、B1レベルで一日に100mg以上です。

はる かおる

筋肉を作るためのタンパク質や、エネルギー源となる糖質と脂質の代謝にはすべてビタミンB群が関係しているよ。ビタミンB群をしっかり補給しないと筋肉が作られないから注意してね❗

ビタミンDも質の良い筋肉を作るためには必要

ビタミンB群に続いて、ビタミンDも質の良い筋肉を作るためには必要です。ビタミンDと言えば骨を強くするだけの栄養素と思われていますが、実はそれ以外にも様々な効果があります。その1つが、筋タンパク質の合成の促進や、筋肉のエネルギー代謝を調整する働きです。

https://www.j-milk.jp/report/study/health/h4ogb400000040mw.htmlより

ビタミンDには骨を強くする作用以外にも、筋肉に含まれるBCAAの分解を抑制してくれるという結果が出ています。これは、ビタミンDが筋タンパク質の合成を促進することから、筋肉の成長や修復が促進され、BCAAが分解されるのを抑制すると考えられています。また、ビタミンDは筋肉のエネルギー代謝を調整する役割があることから、ビタミンDが筋肉のエネルギー代謝を調整し、BCAAの分解を抑制してくれる働きがあると考えられています。

また、ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、カルシウムは筋肉の収縮や弛緩など神経伝達に関係する栄養素です。カルシウムが十分にあると、筋肉の神経伝達と機能を向上させてくれます。筋肉の機能が向上することで、運動時のパフォーマンスや筋力が向上し、質の良い筋肉が作られる可能性が高まります。

このようなビタミンDと筋肉との関係性については、特に高齢者のサルコペニア(筋肉量の減少)対策として注目されていました。血中のビタミンDの濃度が低い人ほど筋肉量が少なく、逆に血中のビタミンD濃度が高いほど筋肉量の低下を予防出来るとの研究結果が出ています。これはアスリートや運動をしている方にも当てはまることがあり、特にバスケットボールやバレーボール、卓球など屋内で運動をしている方は注意が必要です。

理由としては、日光に当たらないスポーツをしている人はビタミンDの合成量が少ないために、血中ビタミンD濃度が低下している可能性があるためです。ビタミンDは日光に当たることでも合成することが出来ますが、屋内での活動時間が多い運動の場合は日光に当たる時間がそれほど多くありません。また、ビタミンDはキノコや魚などの食事からでも摂取することが出来ますが、その量は十分とは言い難い量です。

そのため、運動をしている一部の方はビタミンDが慢性的に不足し、質の良い筋肉が作れていない可能性があります。当てはまる方は、質の良い筋肉を付けるためにも、ビタミンDをしっかり補給していきましょう。ビタミンDの補給目安としては、血液検査項目である25-OHビタミンDの数値で分かります。25-OHビタミンDが50〜100程度あれば十分ですが、それ以下の場合は積極的にビタミンDを補給するのがオススメです。25-OHビタミンDの検査は、後述するオーソモレキュラー療法の血液検査の項目にも含まれています。興味ある方は是非オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。

はる かおる

あまり知られていないけど、質の良い筋肉を付けるためにはビタミンDも欠かせないんだ。ビタミンDは日光に当たることで合成することが出来るけど、日に当たらない場合は不足しやすい。特に屋内で行う運動や日焼け止めをガッツリ塗るようなスポーツはビタミンDが不足している可能性が高いから注意してね❗

筋タンパク質の合成には亜鉛も重要

質の良い筋肉を付けるためには、亜鉛の摂取も重要です。亜鉛にはタンパク質の合成を促進する役割があり、筋肉の修復や成長に欠かせない栄養素の1つです。また、亜鉛には筋肉を成長させるために必要なホルモンの産生や機能にも関係しています。例えば、テストステロンや成長ホルモンの材料として亜鉛が必要である事から、亜鉛が不足した場合にはこれら筋肉を付けるために必要なホルモンの分泌量も減少してしまいます。

他にも、亜鉛はインスリンの構成成分として必要な栄養素である事から、糖代謝や筋肉へのグルコース供給にも関係している栄養素です。

このように亜鉛は筋タンパクの合成促進やエネルギー供給にも関係している栄養素である事から、質の良い筋肉を付けるためにも十分な亜鉛の摂取が重要です。しかし、亜鉛は食事から摂ることが難しい割に必要量が多い栄養素であることから、健康的な人でも亜鉛が不足している人が多くいます。KYBクリニックが調べたところ、健康的な人でも亜鉛の血中濃度が十分とされる80㎍/dL以上を保持している人の割合は4割に達しないという結果が出ました。

筋タンパク質の合成に必要な亜鉛は、食事からの摂取が難しいことから不足している人が多い。

亜鉛不足かどうかは血液検査における血中亜鉛濃度がどれくらいかでおおよそ判断することが出来ます。血中亜鉛濃度が80㎍/dL以上であれば亜鉛が充足しているとし、逆に80㎍/dL以下であれば潜在性亜鉛欠乏と見ることが出来ます。もし、60㎍/dLよりも下回っていた場合は、極度の亜鉛欠乏の状態です。

ただ、実際には血中亜鉛の濃度が80㎍/dL以上あったとしても、それで亜鉛が充足していると判断することは出来ません。亜鉛の理想的な数値には個人差があり、この個人差を判断する上でも亜鉛と銅との比率で判断することが重要です。この比率は、亜鉛と銅で1:1が理想とされています。例えば、血中亜鉛濃度が80㎍/dLだったとして、血中の銅の濃度が100㎍/dLであれば、比率は0.8となって亜鉛不足が疑われます。もしこれが、どちらも100㎍/dL程度であれば、比率は1:1となるので亜鉛が足りていると判断することが出来ますね。

亜鉛の必要量は血中濃度よりも銅とのバランスで見る事が重要。亜鉛の血中濃度が80㎍/dL以上あっても、潜在性亜鉛欠乏になっている人が多い。

亜鉛の充足度はこの亜鉛と銅の比率で判断することが大切です。もし仮に亜鉛の血中濃度が80㎍/dL以上あったとしても、それで亜鉛が充足していると判断することは出来ません。事実、KYBクリニックの調べでは、亜鉛と銅の比率で見た際におよそ8割の方が潜在性の亜鉛欠乏を抱えていることが分かりました。

特に亜鉛不足は鉄欠乏性貧血と関連が深く、鉄欠乏性貧血を抱えている方の殆どに亜鉛欠乏が見られます。この記事の途中では、運動している方は鉄欠乏性貧血になりやすいことは説明しましたよね。これは、運動による衝撃によって赤血球が壊れやすくなることから溶血性貧血を引き起こしやすくなるためです。この鉄欠乏性貧血を抱えている状態だと、亜鉛欠乏も同時に抱えているリスクが高くなります。貧血を改善する際は亜鉛も同時に補給するようにしましょう。

1つ注意点としては、運動によって溶血性貧血が進行している場合は亜鉛の血中濃度が80㎍/dL以上と高く見える場合があり、亜鉛と銅の比率も1:1以上と亜鉛が足りているように見える場合があります。しかし、これは亜鉛が足りているわけでは無く、溶血によって亜鉛の数値が足りているように見えるだけです。赤血球には亜鉛が含まれており、赤血球が壊れることによって赤血球に含まれていた亜鉛が流出します。溶血性貧血ではこの赤血球に含まれた亜鉛が血中に流出することから、亜鉛の血中濃度が高く見えるのです。

この場合、亜鉛の血中濃度が高く見えても亜鉛を補給する方が良い場合があります。このような判断は専門家で無いと判断が難しいことから、ご自身で判断せずにオーソモレキュラー療法の血液検査を受けて下さい。

はる かおる

亜鉛は、食事から摂取することが難しい栄養素である事から、潜在的に亜鉛不足に陥っている人が多くいるよ。血中濃度が十分にある様に見えても、溶血性貧血が起きていたり銅の数値が高い場合は亜鉛欠乏の可能性が高いから注意してね❗

酸化ストレスは筋肉の損傷や疲労を引き起こす原因に。抗酸化対策はしっかり行いましょう。

運動を行っている方は、もう一つしっかりと補給したい栄養素があります。それが、ビタミンCを含めた「抗酸化栄養」です。アスリートやスポーツ選手など運動をしている方は、酸素をたくさん吸って吐くので、活性酸素や酸化ストレスが発生しやすくなります。この酸化ストレスは筋肉の損傷や疲労を引き起こすため、質の良い筋肉を作るためには抗酸化対策が重要です。

特にビタミンCは骨格筋に多く存在しており、身体のビタミンCのおよそ40%は骨格筋に存在しています。これは、ビタミンCが活性酸素を除去し、酸化ストレスによる筋肉の減少を予防しているためです。

https://dagoe.jp/vitamin/より

他にも、ビタミンCは筋膜などを形成するコラーゲンの材料となるほか、筋肉のエネルギー代謝に関与する酵素の働きをサポートする働きをしています。ビタミンCも質の良い筋肉を作るためには必要な栄養素ですので、日頃からしっかり補給しておきましょう。

それから、運動している方が抗酸化対策をするメリットとしてもう一つ理由があります。それが、慢性炎症対策とガン予防です。実は、アスリートやスポーツ選手など運動している方は、酸化ストレスが高くなりやすいことからガンの発症率も高いと言われています。これは、活性酸素によって細胞が傷つくことによって細胞に何らかの異常が発生し、がん細胞が増えやすくなってしまうためです。

ガンは活性酸素と関係があり、活性酸素は慢性炎症を引き起こす。逆に、慢性炎症では活性酸素を発生させることから、炎症と酸化ストレスはセットで考える必要がある。

酸化ストレスが高くなる理由としては、呼吸数が多いこと以外にも炎症が関係しています。ボクシングや柔道などの激しい衝撃が加わるようなスポーツでは、その衝撃によって細胞が傷つき、それを修復しようと炎症が発生します。この炎症が起こっているところからも活性酸素が発生する原因です。

つまり、この炎症と活性酸素はワンセットであり、抗酸化対策をすることが炎症対策に繋がります。ガンは慢性酸化ストレス状態が1つの原因と言われていますので、ガン予防のためにも運動をしている方は日頃からしっかり酸化ストレス対策を行いましょう。

ちなみに、この酸化ストレスや慢性炎症が持続している場合も、低血糖症を引き起こす原因になります。これは、炎症によって活性化した免疫細胞の一種が、更に炎症を起こすサイトカイン(TNF-α)を放出することで、インスリンの機能が低下し、インスリン抵抗性が高まってしまうためです。

適度な運動ではむしろインスリンの働きを高めてくれますが、あまりにも激しい運動を行う場合や栄養補給が適切では無い場合は、酸化ストレスや貧血によってむしろ糖代謝を悪化させてしまう原因になります。このようなことを防ぐためにも、抗酸化対策はしっかり行いましょう。

抗酸化栄養としてビタミンCが有名だが、ビタミンCは他の抗酸化栄養と相互で働くことで初めて意味がある。

抗酸化作用が期待出来る栄養素としては、「ビタミンC」「ビタミンE」「コエンザイムQ10」「αリポ酸」「ナイアシン」などがあげられます。これら栄養素はお互いに還元し合うことが出来るので、セットで摂ると効果的です。

他にも、「グルタチオン」や「ビタミンA」なども抗酸化栄養の1つです。ビタミンAは特に目の細胞を活性酸素から保護する役割がある事から、屋外で長時間運動する方は是非取り入れてみてください。屋外では日光から照射される紫外線によって眼にダメージを受ける事から、眼病や視力低下などを起こしやすくなります。眼の修復や保護を促すためにもビタミンAも補給することがオススメです。

抗酸化栄養としてグルタチオンを補給するのもよい。抗酸化栄養は相互に協力して働くので、他の栄養素と同時に摂取する事が望ましい。

以上のような内容から、日々運動する場合に摂りたい栄養素を一覧にまとめてみました。運動時は適切な栄養補給が、低血糖症の予防や質の良い筋肉を作るポイントとなります。下記を参考に、是非日頃から積極的に栄養補給を行っていきましょう。

日々運動する場合に摂りたい栄養素の一覧

  • ホエイプロテイン
  • ソイプロテイン(ペプタイド)
  • 消化酵素
  • 必須アミノ酸(EAA)
  • BCAA
  • グルタミン
  • グリシン
  • ビタミンB群(ナイアシン含む)
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • カルシウム
  • マグネシウム
  • グルタチオン
  • コエンザイムQ10
  • αリポ酸
ナンナン

むっちゃ沢山あるね❗

はる かおる

うん、なんたって運動したり筋肉を付けたりする場合はエネルギーと材料ありきだからねー

ナンナン

そうだよね・・・💧
でも、これだけ揃えるのも金額的に大変そう💦
安いのを探せば何とかなりそうかな。

はる かおる

いやー、安いのはオススメしないね。特に海外製のサプリメントや安いサプリメントなんかは、禁止薬物が含まれている可能性も高いし。

ナンナン

き、きんしやくぶつ❗❓

はる かおる

うん、原材料に残留した抗生物質やホルモン剤なんかがね、混じっている場合があるよ。他にも、生産設備が薬品の製造と共通になっていて、薬物が混ざることもある。それで毎年多くの選手がドーピング違反で処分を受けてるんだ。

ナンナン

ひょえー❗サプリメントにはそんなリスクが潜んでいるんだね💦
おそろしー💦

はる かおる

だから、サプリメントを選ぶ場合はちゃんと質が良い物を見極めて選ぶことが重要だよ。それと、摂取量や種類には個人差があるから、血液検査の結果を基にパーソナライズされた栄養摂取方法のアドバイスを受けるのがオススメだね。

サプリを飲んだだけなのに・・・あなたにも忍び寄る「汚染サプリ」の危険性サプリメントに相次ぐ薬物混入。私達はどう身を守るべきか?

ここまでは、運動する方が是非取り入れたい栄養素と、その摂取方法について解説してきました。運動時には適切な栄養補給を行う事が、低血糖症の防止に繋がります。また、同時に質の良い筋肉を付ける事にも繋がりますので、低血糖症が改善出来た後も、栄養補給は続けていくのがオススメです。

ここまで読んで具体的な栄養素の効果と必要性が理解できてくると、「じゃあ実際にサプリメントを買って飲んでみようかな?」なんて思いますよね。現代ではドラッグストアなどでもサプリメントは販売されていますし、通販でも手軽に購入する事が出来ます。同じ栄養素でも安い物もあれば高い物もあり、「どうせ同じ物なら安くて良い物を選びたい」と思うのは当然のことですよね。

でもちょっと待ってください❗サプリメントには、「質」があります。この質を考慮しないまま、安易に値段や含有量でサプリメントを選んでしまうと、むしろ身体を壊してしまったり、選手生命を絶たれてしまったりと人生を狂わす原因になる可能性があるのです。

サプリメントには法律で禁止されている成分が混入している場合がある。日本よりも質が良いと言われる米国製サプリメントであっても注意が必要

特に最近では、サプリメントの安全性が問題となっており。海外製のサプリメントや市販されている一部のサプリメントにはホルモン剤や抗生剤などの「禁止薬物」が含まれていることがあります。これを知らないまま摂取した多くの選手が、毎年のように資格停止処分や成績剥奪などの重い処分を受けているのが現状です。

例えば、2019年の8月には、水泳選手の古賀淳也選手が「汚染されたサプリメント」の摂取によって不本意にも禁止薬物が検出され、2年間の資格停止処分を受ける事件が発生しました。

http://jsl-src.org/?p=1250より

このようなリスクは私達の日常に常に潜んでおり、決して人ごととは言えません。2017年には、海外サプリメントメーカーであるGaspari Nutirition社(ギャスパリ ニュートリション)が販売するANAVITE(アナバイト)というマルチビタミンミネラルのサプリメントから禁止薬物が検出され、これを摂取した水泳選手が成績剥奪と資格停止処分を受けるという事件も発生しています。

https://www.jtu.or.jp/news/2017/10/18/13162/より
https://www.playtruejapan.org/upload_files/uploads/2017/2017-01_final.pdfより

上記は古賀選手とは違う選手ですが、この選手も食生活の偏りに起因するビタミン不足を解消しようと、通販サイトのAmazonにて購入し、使用していたとのことでした。このGaspari Nutirition社(ギャスパリ ニュートリション)のサプリメントは、日本で有名なボディービルダーである山岸秀匡選手も愛用しているとのことで大々的に販売されているサプリメントでもあります。

楽天市場より

このように、いくらアスリートやスポーツ選手が愛用していると謳っているサプリメントだとしても、決して安心することは出来ません。また、米国はサプリメント先進国と言われていますが、その米国で販売されている有名メーカーのサプリメントですら、禁止薬物の混入が相次いでいるのです。

このことは米国製品などの海外製サプリメントに限らず、国内製品であっても安心することは出来ません。2019年9月にはDNSブランドで有名なドーム社製のサプリメントから禁止薬物が検出される事件も起きています。

https://swim.or.jp/assets/files/pdf/pages/anti-doping/atdp_15_2019.pdfより

ドーム社では、LGC社(イギリス)が運営する国際的なアンチドーピング認証プログラムであるINFORMED-CHOICE(インフォームドチョイス)の認証を取得している企業として、以前からアンチドーピングにはかなり力を入れている企業でした。それでもやはり、微量ながら禁止薬物が混入してしまう事件が発生してしまっているのです。

このようなサプリメントの安全性については、かなり昔から厚生労働省やアンチドーピング委員会が注意喚起を行ってきました。それでも、汚染サプリメントの販売は後を絶ちません。もし仮に汚染サプリの摂取によってドーピング違反になったとしても、それを証明することは困難です。このことから、サプリメントの摂取については、もはや「汚染サプリ」である事を知っていて飲んだという「自己責任」扱いになっています。

特に、世界的な大会に出場するようなスポーツ選手やアスリートの場合は、汚染されたサプリメントの摂取がドーピング違反となる事から、その後の人生を狂わすほどの大きな問題です。禁止薬物が混入した海外サプリメントの摂取によってドーピング違反となった水泳の古賀選手は、4年間の資格停止処分となり、オリンピック出場の夢も絶たれたことから、インタービュー記事で「死のうかと思った」と涙ながらに語っています。

https://www.sankei.com/article/20200318-5Z4BGPFGDZPA7GRDPMIRIOVY2A/
https://www.sankei.com/article/20200318-5Z4BGPFGDZPA7GRDPMIRIOVY2A/より

もちろん、古賀選手にはプロのコーチが付いていましたので、サプリメント選びや摂取量などについては厳密な管理体制の元に摂取しています。そのような状況下でも、汚染されたサプリメントから身を守ることは出来ませんでした。ましてや、サプリメントについての知識が全くない一般人においては、サプリメントに潜む危険から身を守ることは余計に難しいでしょう。

特に最近では、有名アスリートが監修、推奨しているサプリメントや、医師が監修、推奨しているサプリメントが多く出回っています。このようなお墨付きのようなサプリメントであっても、絶対に鵜呑みにしてはいけません。なぜなら、アスリートや医師は、スポーツすることや患者を治療することが専門であって、サプリメントの専門家では無いからです。ハッキリ言って、基礎科学や生理学の専門家でも無い素人が、質の良いサプリメントを設計・製造することはほぼ不可能です。しかし、現代ではサプリメントの委託生産が可能になった事で、知識が全く無い人でもお金さえ出せば「栄養素をカプセルに詰めた物」を製造して貰うことが出来るようになりました。

アスリートが監修、販売しているサプリメントや医師が監修、販売しているサプリメントなどは、このようなサプリメント製造委託を利用して製造されていることが殆どです。つまり、サプリメントに対して全くの初心者が、「サプリメントのようなもの」を販売しているのです。このような素人が生産、販売しているサプリメントは「サプリメントのジェネリック問題」と言われ、以前から専門家の間では警笛が鳴らされていました。

サプリメントの委託生産が可能になったことで、全く知識が無い初心者でもサプリメントを製造することが出来る。これらは原材料や製法、臨床試験結果が不明瞭である事から危険性が高い。

サプリメントのジェネリック問題では、どのような原材料が使われ、どのように栄養素を配合しているかも全く未知数です。例えば栄養素の中にはお互いが反応して効果を失ってしまう物や、品質が劣化してしまう物があります。また、栄養素の中には同じように見えても全く化学構造や働きが違うものがあります。例えばビタミンB群の中には葉酸やビタミンB12、ナイアシンなどがありますが、葉酸にも葉酸塩と葉酸という違った種類がありますし、ナイアシンにもナイアシンとナイアシンアミドといった、同じように見えて働きが違うものがあります。このような専門的な知識が全く無い状態でも、委託先に「これくらいの予算でこんなサプリメントを作ってほしい」と伝えれば、簡単に製造、販売できてしまうのです。それこそ、安く大量に販売することが目的ですので、コストがかかる混入薬物の検査なんてするはずもありません。

また、サプリメントは栄養素が配合されている以外にも、そのサプリメントが体内でしっかり溶けて吸収されるかという事も重要です。当たり前ですが、摂取したサプリメントが胃や腸で溶けて吸収され、体内で利用されて初めて意味があります。ですが、市販されているサプリメントの中には、このような胃でも腸でも溶けずに排泄されてしまう粗悪なサプリメントも多く販売されています。特に、先ほどのようにサプリメントの素人が委託製造したものや、安すぎるサプリメントは、このような消化吸収を考慮していない場合が殆どです。

サプリメントの中には、単に栄養素を固めただけで、消化吸収について考慮していない物も多い。これらは胃でも腸でも溶けず、そのまま便に排泄されてしまう。

例えば、プロテインやアミノ酸などは熱を加えると変性し、体内での消化吸収効率や利用効率に影響を与えてしまいます。プロテインやアミノ酸を製造する過程では、安く粉末状にするために高温で乾燥させている場合も少なくありません。プロテインを高温で一気に乾燥させると乾燥時間が短くなるため、手間も時間もかからず、安く大量に製造することが可能です。しかし、これではタンパク質やアミノ酸が変性してしまい、栄養成分が壊れてしまいます。壊れた栄養成分を摂っても、当たり前ですが効果はあまり見込めません。

逆に、低温でゆっくり時間をかけて乾燥すれば、変性していない質の良いプロテインが出来上がります。低温でゆっくり時間をかけて乾燥すれば、その分だけ時間と手間がかり、生産量も少なくなってしまいます。結果、質の良いプロテインはどうしてもコストが高くなりがちです。この事からも、安く大量に販売されているプロテインやサプリメントを選ぶよりも、それなりに時間とコストをかけて生産された値段が高いものを選ぶ方が安心です。

アミノ酸やプロテインなどは、サプリメントとして製造する際に熱をかけると変性してしまう。安く大量に販売されているものは熱を加えている可能性が高いことから、成分が変性している可能性が高い。

この記事の途中でも、「グルタミン」というアミノ酸について解説しましたよね。このグルタミンも、サプリメントの製造段階で熱をかけてしまうと変性してしまいます。安く販売されているサプリメントや、素人が委託製造で作ったようなサプリメントは、熱を加えられて変性している可能性が高いです。

このように、どれも同じように見えるサプリメントでも、その品質や製造方法には天と地ほどの差があります。当たり前ですが、質の良い原材料の調達にはそれなりに目利きや人間関係が重要ですし、栄養素の配合量や製造管理にはかなりの専門知識が必要です。単に栄養素を寄せ集めてカプセルに詰めれば良いというものではありません。このような素人が作ったサプリメントが、アスリートや医師が監修という名の下で平然と販売されています。これらは安全性の面からも、絶対に手を出してはいけません。

では、どのような点に考慮すれば安心・安全でしっかりと消化吸収されるサプリメントを選ぶことが出来るのでしょうか?その条件としては、以下のような条件に当てはまるものを選ぶことです。

質の良いサプリメントを選ぶ条件。含有量や値段で選ばずに、原材料の質や消化吸収を考慮した設計、汚染物質などのチェックがしっかりされているものを選ぶとよい。

まずは、原料に生体内物質が使用されていることが絶対条件です。例えば「鉄」と一言で言っても、動物や植物に含まれる鉄分もあれば、砂鉄や鉄鉱石のような工業製品に使われる鉄もあります。原材料に動物性や植物性の鉄を抽出して利用すればコストが高くなりますが、その分食品で摂取する栄養素に近い成分が得られます。食品として摂取する栄養素に近ければ、そのぶん体内での利用効率も高まります。逆に、砂鉄や鉄鉱石を原材料に使用した鉄サプリメントもあり、この場合は安く作る事が可能ですが栄養摂取としてはかなり不自然な化学構造です。

というのも、人間は鉄鉱石や砂鉄などをバリバリ食べることはありませんよね。鉄を補給する際は、動物や植物などの食品や、鉄器などの調理器具から微量に溶け出した鉄分から補給しているはずです。しかも、食品には鉄分以外にも様々な栄養素が含まれていますが、鉄鉱石から作られたような鉄サプリメントには鉄以外の栄養素が一切含まれていません。このようなサプリメントは、栄養素に見えて実は体内では異物として判断されてしまいます。このことからも、原材料には生体内物質が利用されていることが絶対条件です。

他、有効成分が高濃度に配合されているかや、消化吸収を考慮した設計になっているか、胃や腸でしっかりと崩壊されるかなども重要です。原材料に生体内物質が使われていても、その量がほんのちょっぴりしか含まれていれば全く意味がありませんし、ましてや体内で消化吸収されずに排泄されてしまっては全く意味がありません。

また、栄養素同士がお互いに反応しないようにコーティングされているかや、お互い協力して働く栄養素が複合して配合されているか、細菌や汚染物質などのチェックや、製造管理システムはしっかりしているかも重要です。
栄養素は単品で働くわけでは無く、様々な栄養素が協力し合って働いています。例えば、貧血の改善には鉄分以外にも亜鉛が重要でしたよね。この鉄と亜鉛を補給するときにカルシウムを摂取すると、カルシウムによって吸収が阻害されてしまうことがあります。ただし、これは「非ヘム鉄」や「無機の亜鉛」の場合であって、「ヘム鉄」や「有機の亜鉛」ではカルシウムによる吸収阻害の影響をあまり受けません。このようなことも考慮し、お互いに反応しにくい成分が配合されているかや、反応してしまう成分はコーティングするなどの対策がされているものを選びましょう。

そして、サプリメントは大量に生産されて流通している物では無く、小ロット生産で徹底的に品質管理されたものを選ぶことが重要です。大量に生産する場合はどうしても薄利多売となりやすく、原材料の質や品質管理の体制はどうしても低下してしまいます。また、長期で保管、輸送されることから品質の劣化も起こりやすくなります。このようなサプリメントは、摂取しても栄養成分が劣化している上に薬物が混入している場合も多く、あまりオススメは出来ません。それよりも、価格は高くなりますが小ロット生産で徹底的に品質管理されたサプリメントを選ぶ方が安心です。

小ロット生産の場合は必要に応じて新鮮な原材料を都度仕入れて生産しています。また、過剰な在庫を抱えるリスクも無く、売りきりであることから長期保管によって品質が劣化している心配もありません。加えて、小ロット生産ではその都度細菌検査や汚染物質の検査も行っているので安心です。このようなサプリメントの品質が確保されたものを選べば、有害事象による被害から身を守ることにも繋がります。サプリメントを選ぶ際は、上述のような条件に当てはまるかどうかをチェックして選んでみて下さい。

ナンナン

げげっ❗サプリメントの中には変な薬物が混入している場合があるんだね💦しかも、安く作られた物は品質が変性してたり、劣化もしているのか💦

はる かおる

そうなんだ。サプリメントは同じように見えるけど、どれも同じじゃ無いよ❗特に、大量生産された海外サプリメントや市販サプリ、医師やアスリートが監修したサプリメントは危険性が高いね。
質の悪いサプリメントを使うと選手生命を絶たれたり、むしろ身体にとって逆効果になるから、栄養補給をする際はオーソモレキュラー療法専用に作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね❗

分子栄養学実践用に設計されたケンビックスシリーズ

そのサプリの摂り方、間違っているかも?パーソナライズされた栄養摂取の重要性。オーソモレキュラー療法で自分に合った栄養療法を行いましょう。

最後に、パーソナライズされた栄養摂取の重要性についてです。いくら質の良いサプリメントでも、どれをどのくらい摂れば良いのかが分からなければ、適切な栄養アプローチは出来ません。特に運動している方は体格の違いや活動量に大きな差があるため、人それぞれ必要量が違います。栄養補給を行う際は、このような個人差による必要量を考慮することが重要です。

必要な栄養素の量は、体格や活動量、その時の状態によっても大きく変わる。この状態に合わせて摂取量を調節することが大切。

例えば、貧血の度合いにおいても必要な鉄分補給量は変わってきますし、目指している体格によってもプロテインの摂取量や糖質の摂取量が変わってきます。他、試合前や風邪を引いたときなどのストレスが多いときの栄養摂取量や、怪我をしてしまったときの栄養補給量も変わってきます。

また、運動による低血糖症は、上述した原因以外にも様々な原因が関係しており、胃腸機能の低下や婦人科疾患、溶血性貧血、甲状腺機能障害や副腎疲労など様々な疾病や栄養不足など様々な原因が関係しています。人によってはこれら複数の原因が複雑に絡み合っていることも多く、検査もなしに適切な栄養アプローチを行うのは困難です。

例えば、運動している方は貧血になりやすいため、低血糖症の原因は貧血から引き起こされている可能性があります。これ以外にも、交感神経過剰によって胃の働きが落ちている場合は、消化能力の低下から貧血や低血糖症になりやすくなります。この場合は、真っ先に消化サポートから行う事が重要です。

低血糖症の発症には必ず原因がある

このように低血糖症には様々な原因があり、個人個人バラバラに組み合わさって引き起こされています。同じ低血糖症に見えても対処法は全く異なりますので、これら原因となる要因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。
また、運動している方は体格や運動量の違いから、自分に合った栄養素量の補給を行っていく事が大切です。その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の血液検査を受けてみましょう。

オーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査項目に加え、低血糖症の状態や甲状腺の検査、副腎疲労や酸貧血の状態、短鎖脂肪酸検査やリーキーガット症候群検査などを必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。
複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの低血糖症や貧血の根本原因がどこから来ているのかが分かります。

また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。

このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。根本原因からきちんと対処していくことが出来れば、運動時の低血糖症も改善出来る可能性があります。また、検査結果を基に自分の体格や活動量に合わせた栄養アプローチを行う事も可能です。

低血糖症の対策や栄養の補給量は個人差が大きく、同じように運動によって低血糖症が引き起こされている人が居ても、人によって全くアプローチが違います。ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。

オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。

また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。

はる かおる

必要な栄養素が分かっても、それが自分にとって最適な種類と量を摂取することが大切だよ❗このようなパーソナライズされた栄養摂取を行うためにも、是非オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみてね❗

運動するとなぜ低血糖になりやすい?運動と血糖値の関係と、正しい血糖コントロール方法を分子栄養学の観点から徹底解説!まとめ

以上が、運動によって低血糖症が引き起こされる原因その対処方法、運動時における適切な栄養補給のご紹介でした。

運動と低血糖症については以前から関連が知られていたものの、単なる運動によるエネルギー不足が原因と言われるだけで、貧血や消化能力の低下、腸内環境の悪化などとの関係は殆ど知られていません。そのため、現在の運動における低血糖症の対処法としては、糖質の摂取など対処療法的な指導をしているところが大半です。しかし、これでは低血糖症は良くなるどころかむしろ悪くなってしまいますよね。低血糖症には運動によって引き起こされた消化吸収能の低下や貧血、甲状腺機能障害など様々な疾病が複雑に関係していますので、単に糖質の摂取量をコントロールしているだけでは良くなる訳がないのです。

また、貧血についても重度の貧血にならないと貧血だと診断されない事が多く、「隠れ貧血」に陥っている方も多くいます。加えて、低血糖症にも「隠れ低血糖症」に陥っている方がおり、貧血とも低血糖症とも診断されない場合は、精神疾患として扱われたり間違われたりしてしまう場合も多いです。精神疾患として扱われた場合は、もちろん精神薬を処方されます。しかし、元々は精神疾患ではないので精神薬が効くことはありません。むしろ、精神薬を服用することで依存症になったり副作用の問題が発生したりして更なる体調悪化を招きます。このような問題もあることから、貧血や低血糖症の治療に対して、病院での保険診療は殆ど役に立ちません。

人の身体には、元々糖質などの栄養素や血糖値を上手く利用したりコントロールしたりする機能が備わっています。低血糖症は、この機能が正常に働けなくなってしまったことが一番の問題です。この機能を元に戻すことが出来れば、機能性低血糖症や無反応性低血糖症も改善出来る可能性が高いです。

是非、このあたりの原因をしっかり調べて適切なアプローチを行っていきましょう。
今回ご紹介した原因や対策、検査方法は根本原因から低血糖症を解決する際の大きな手助けになるはずです。

糖質の摂取量だけで血糖値をコントロールしようとせず、低血糖症が引き起こされている根本の原因からアプローチしていくようにしてください。

ナンナン

低血糖症の改善方法は人それぞれ違うんだね❗
分かった、オーソモレキュラー療法を受けてみるよ❗

はる かおる

うん、是非受けてみて❗
オーソモレキュラー療法を行っている方には、無料で栄養カウンセリングも行っているよ❗利用してみてね❗

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この記事を書いた人

はる かおるのアバター はる かおる 分子栄養療法ナビゲーター ディレクター

春木 敏徳(はる かおる)
分子栄養療法ナビ(このサイト)の管理人のはる かおるです。
現在は「字が書けないライター」兼、KYBクラブのディレクターとして活動しています。

僕自身、発達障害の一種である「書字障害」を抱え、幼少の頃から両親からの虐待や学校でのいじめなど、数々の困難や体調不良を経験してきました。
育った環境の悪さから18歳頃からうつ病を発症し、その後10年近く精神薬での治療を行っています。また、他にも小・中・高校生時代は朝起きられず、殆ど学校にも行っていません。

今では「あれは起立性調節障害だったな」と思えるのですが、当時はそのような病気の認識は殆どありませんでした。そのため、非常に風当たりの強い中、幼少時代を過ごしてきています。

また、幼少期から続く極度の栄養失調により、低血糖症や甲状腺機能低下症、SIBO、リーキーガット症候群、副腎疲労、脂肪肝など様々な病気を経験しました。現在では分子栄養学に出会ったことで体調も大きく回復しており、これら病気の改善に必要な知識も豊富です。

インターネットの登場によって間違った分子栄養学も広まってきており、それによって体調を崩してしまう人も多くなってきています。このような中、分子栄養療法ナビ(このサイト)や情報発信を通じて、多くの人に正しい分子栄養学が広められるよう現在も奮闘中。

得意とする分野
うつ病、発達障害、ADHD、起立性調節障害、貧血、不妊症、ガン、甲状腺機能障害、ピロリ菌感染症、SIBO、リーキーガット症候群、低血糖症、副腎疲労、脂肪肝、ダイエット、更年期障害、PMSなど。全般的に幅広い知識を有する。

ほか、文章を書くのが得意で、ライティングやマーケティング、投資などお金に関する知識や生き方に関するアドバイスも得意。

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