もしかして低血糖症? 赤ちゃんがぐったりしていたら早急に対処を。赤ちゃんが低血糖症になる原因と対処法を、分子栄養学的アプローチから解説
赤ちゃんは低血糖症になりやすいと言われています。これは、赤ちゃんの場合は筋肉量が少なく、肝機能も未発達のため、血糖値のコントロールが不十分なためです。
通常、低血糖になった場合は筋肉や肝臓に貯えられているグリコーゲンという糖を放出し、低血糖になる事を防いでいます。しかし、赤ちゃんの場合は筋肉や肝臓が未発達のため、グリコーゲンの貯蔵量が多くありません。そのため、血糖値を上げられずに低血糖に陥りやすくなっているのです。
他にも母乳量が少なかったり、消化吸収に問題がある場合や、母体に糖尿病などの病気がある、貧血がある、遺伝的な要因がある場合でも低血糖症になりやすくなります。
では、赤ちゃんが低血糖症に陥ってしまった場合にはどのように対処すればよいのでしょうか? また、繰り返す赤ちゃんの低血糖症に対して、根本的に解決させるにはどのように対処すればよいのでしょうか?
今回は、赤ちゃんが低血糖症になったときの対処法と、なかなか治らずに繰り返してしまう低血糖症についての対処法を分子栄養学的アプローチから解説します。
目次
赤ちゃんがぐったりしていて様子がおかしい・・・、それってもしかして低血糖症かも。 まずは早急に対処することが重要です!
ナンナン
たいへんたいへん❗
ウチの子の様子がおかしいの❗
急にどうしたの❓
えぇっと、ウチの子が朝から様子がおかしくって💧
急に身体の力が抜けたようになって、顔色もすごく悪いの❗
急に力が抜けて、顔色が悪いか・・・。それはもしかすると、低血糖症かも知れないね。
て、低血糖症❓
うん、血糖値が通常よりも下がりすぎてしまう状態の事だよ。まずは一刻を争うから、果汁やイオン飲料なんかで糖分を補給させた方が良いね。
低血糖症とは? 低血糖症になると引き起こされる症状について
低血糖症とは、血糖値が正常範囲以下にまで下がってしまった状態の事です。
通常血糖値は80〜100前後に保たれていますが、何らかの原因で血糖値が80〜70以下を下回っている状態が続いていると、低血糖と判断することが出来ます。
低血糖症にもいくつか種類がありますが、赤ちゃんが発症する低血糖症の殆どは、主に「ケトン性低血糖症」と呼ばれる低血糖症です。ケトン性低血糖症とは、血糖値が低くなりすぎた際に、糖質に変わるエネルギー源としてケトン体が体内で発生する事に由来しています。
このケトン性低血糖症が発症する1つの原因としては、肝臓や筋肉でのグリコーゲンの貯蔵量不足です。通常、低血糖になった場合は筋肉や肝臓に貯えられているグリコーゲンという糖を放出し、低血糖になる事を防いでいます。しかし、赤ちゃんの場合は筋肉や肝臓が未発達のため、グリコーゲンの貯蔵量が多くありません。そのため、血糖値を上げられずに低血糖に陥りやすくなるのです。
他にも母乳量が少なかったり、消化吸収に問題がある場合や、母体に糖尿病や貧血などの病気がある、遺伝的な要因がある場合でも低血糖症になりやすくなります。
低血糖状態になると、赤ちゃんの場合では「ぐったりする」「顔面蒼白になる」「唇の色が悪い」「手足の震え」などの症状が現れることもあり、最悪の場合は死に至る恐れもあります。
他にも、普段から夜泣きがひどい、落ち着かない、寝付きが悪い、過眠などの症状も低血糖症が疑われる症状です。
低血糖症の主な症状(赤ちゃんの場合)
- 赤ちゃんがうまく乳首を吸えない、哺乳量が少ない、哺乳中に眠ってしまう
- いつもより活動量が少ない、無反応、泣き声が弱々しい
- 通常よりも寝ている時間が長すぎる
- 哺乳後や授乳後、泣き止んだ後などに身体が小刻みに震える
- 一時的に呼吸が止まる、呼吸が早い、呼吸が浅い
- 体温が通常より低い
- 眼球が上に巻き上げられる、斜視になっている
- 顔の筋肉の動きが乏しい、無表情
- 泣き声が異常になる(高い音域、不規則なリズムなど)
- 一部または全身に痙攣が見られる
このため、赤ちゃんに低血糖の症状が起こった場合には、速やかな糖分の補給と、低血糖症に陥らないために十分な授乳、哺乳を行う事が大切です。
私達の身体は、食べた物をエネルギーに変えて身体を動かしています。血糖値も同じで、普段私達が食べた物を元に血糖値を維持しています。この時、食事量が少なかったり、抜いてしまったりしてしまうと、血糖値を維持するための材料が足りなくなってしまいます。その結果、血糖値が下がってしまい、低血糖症を引き起こしてしまうのです。
特に赤ちゃんが発症するケトン性低血糖症は、貯蔵していた糖が枯渇してしまうことで引き起こされています。これを防ぐためには、授乳や哺乳の間隔を短くすることと、母乳の栄養量を増加させることが大切です。赤ちゃんがケトン性低血糖症に陥らないようにするためにも、お母さんは日頃から十分な食事量や栄養量を確保して母乳の状態を改善し、授乳の間隔を短くして低血糖症を防ぎましょう。
赤ちゃんは著しい成長による栄養需要増加から、糖の消費や栄養の消費が多くなるよ。母乳の量が少なかったり、母乳の栄養状態が悪いと、赤ちゃんが低血糖症を引き起こしやすくなるから注意してね❗
赤ちゃんが低血糖症になったときの応急処置方法。まずは糖分を補給させる事が最優先です。
では、実際に赤ちゃんが低血糖に陥ってしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
もし、意識障害を起こしていたり、物を飲み込むことが出来ない状態でしたら、早急に救急車を呼んで下さい。低血糖症は命に関わる事態ですので、迅速な対応が必要です。
逆に、赤ちゃんにまだ意識があって何か飲み込める状態なら、まず第一に糖分を補給させましょう。そのまま何もせず血糖値が下がってしまうと、意識障害など更に重篤な症状に発展する恐れがあります。そうならないためにも、まずは吸収の良い糖分を摂取させて、血糖値を速やかに上昇させることが必要です。
糖分の補給に向いている食べ物としては、以下のような物が挙げられます。
速やかな糖の補給に向いているもの(ブドウ糖)
- 砂糖水
- イオン飲料(砂糖が使われている物)
- 果糖ブドウ糖液糖が使われているジュース
このような物を哺乳瓶に入れて、適量を飲ませて上げましょう。この時、人工甘味料が使われている物や、カロリーオフ、糖質オフと書かれた飲料では、ブドウ糖が含まれていないために血糖値を上げられません。また、果物ジュースなどに含まれる果糖は一度肝臓で代謝してから利用されます。これらは血糖値にあまり影響を与えない糖分が使われていることから、低血糖時の糖分補給には不向きです。
特に砂糖水を作る際は、溶かす糖の種類に気をつけて下さい。次のような糖を溶かして飲ませても、血糖値は上げられません。必ず、砂糖やグラニュー糖、三温糖など砂糖を使って下さい。
血糖値に影響を与えない糖
- 人工甘味料など(アスパルテーム、サッカリン、ネオテームなど)
- オリゴ糖
- 果糖
- ラカント
- スクラロース
- アドバンテーム
- ステビア
- エリスリトール
- ゼロカロリー飲料
また、ハチミツレモンやハチミツは、一歳未満の赤ちゃんには絶対に与えないで下さい。ハチミツにはボツリヌス菌と呼ばれる菌が入っており、赤ちゃんが摂取するとボツリヌス症を発症する恐れがあります。
赤ちゃんがボツリヌス症にかかると、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。
糖分を補給させる際は、パッケージのウラ面を見て、ハチミツや人工甘味料が使われていないかどうかや、砂糖、ブドウ糖が使われているかどうかをよく確認してから選びましょう。
ただし、この時、糖分の取り過ぎには注意が必要です。これらの食べ物は血糖値の上昇をもたらしてくれる反面、摂りすぎると血糖値の乱高下を引き起こす可能性があります。血糖値の乱高下とは、甘い物の摂りすぎによって血糖値が急上昇し、その後大量のインスリンの分泌によって血糖値が急降下してしまう状態の事です。
血糖値の急上昇が起こると、血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが過剰に分泌されます。このインスリンが効き過ぎることによって血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖に陥ってしまうのです。
特に、赤ちゃんの場合はインスリンを分泌するすい臓が十分に発達していないことから、糖分の与えすぎは逆効果です。低血糖時には糖分の補給が有効ですが、与えすぎた場合はむしろ低血糖症を繰り返してしまう事態に繋がることがあります。くれぐれも、糖分の与えすぎには注意して下さい。
赤ちゃん低血糖症を引き起こした場合は、まず第一に果糖やブドウ糖糖が含まれているやジュースや砂糖水などで糖分の補給をしてあげてね。
ただ、この時に単糖類を大量に与えると血糖値が上がりすぎてその後急激に下がる可能性があるから、与えすぎないようにしてね❗
ウチの子にも、果汁を飲ませてあげたら落ち着いたみたい。
命に別状が無くてよかった〜
赤ちゃんの低血糖症は、ジュースを飲ませて落ち着いたとしても油断は禁物だよ。低血糖症は、なってから慌てるよりも普段から予防することが大切。その為には、母乳の質や量を高めるためにもお母さんがしっかり栄養補給してね。
赤ちゃんの低血糖症を防ぐために。まずはお母さんが日頃から十分な量の食事と栄養を摂り、母乳の質を高めることが大切です。
ここまでは、赤ちゃんの低血糖症の原因や応急処置について解説してきました。低血糖症は、一度陥ると命に関わる恐ろしい病気です。そのため、低血糖症に陥ってから慌てて対処するよりも、日頃から低血糖症に陥らないために十分な対策を行っていく事が重要です。
赤ちゃんが低血糖症に陥らないために行うべき対策としては、日頃から十分な授乳と栄養補給をしてあげる事です。特に、母乳の量と質はお母さんの食事量や栄養状態に依存していることから、まずはお母さんの食事と栄養状態を改善させることが重要になります。
母乳はお母さんの血液から作られていることから、お母さんの栄養状態が悪くなると母乳の量や質が悪くなります。このため、お母さんが普段から十分な食事と栄養を摂取することが、赤ちゃんの低血糖症予防のために重要です。
産後の無理なダイエットは厳禁!食べないダイエットやお母さんの食事量の低下は、母乳の質を低下させます
まず、母乳の質を高める上で絶対にしてはいけないのが、食べないダイエットや食事制限です。妊娠中に太った、増えた体重を戻したい、崩れた体形を戻したいなどの理由から、出産後にダイエットを始める方を見かけます。
しかし、出産後の授乳期に食べないダイエットや食事制限を行ってしまうと、母乳を作るための栄養やエネルギーが足りなくなってしまいます。この事が母乳量や栄養量の低下を招き、赤ちゃんの低血糖症に繋がることから、産後の授乳期に食べないダイエットや食事制限をする事は絶対に止めましょう。
食べないダイエットでは、筋肉がカロリー源として使われてしまうことから筋肉量の低下を招き、基礎代謝が低下してむしろ太りやすくなります。この事からも、食べないダイエットは危険で間違ったダイエット方法です。
逆に正しいダイエットでは、しっかりとカロリーとタンパク質を摂り、運動して筋肉を付けていくことが大切です。筋肉量を増やす事で基礎代謝が上がり、体脂肪が減ります。また、崩れた体形は筋肉量の低下による物ですので、筋肉量を増やす事で崩れた体形も元に戻せます。
この事からも、食べないダイエットや食事制限は行わず、食事はしっかり摂るようにしましょう。
母乳の質を高める食事内容は和定食や地中海料理がオススメ。産後はタンパク質を中心にカロリーもしっかり補給しましょう。
授乳期のお母さんの身体は、出産による栄養消費に加え、授乳によって栄養やカロリーを多く消費しています。特に母乳の主成分はタンパク質であり、他にも炭水化物や脂質、ビタミンや亜鉛などのミネラルも含まれています。
この事からも、お母さんの食事内容はバランスよく食べるようにして下さい。バランスの良い食事を行う事によって、母乳を作るためのベースとなるエネルギーや栄養を確保出来ます。
この食事内容としては、やはり和食がオススメです。ご飯に味噌汁、納豆に卵焼き、焼き鮭などの和定食は、炭水化物に脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出ます。
また、他にも地中海料理もオススメです。地中海料理は、肉や魚などおかずの種類も多く、炭水化物や脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出来ます。
この時、必要なカロリーはしっかり摂るようにして下さい。カロリーは身体を動かすために必要なエネルギー源のことで、これが足りなくなると母乳量の低下や母体自体に低血糖を引き起こしやすくなります。
必要なカロリー量は年齢や体格、活動量で変わりますので、ご自身に必要な量のカロリーを計算して、十分な量を摂るようにしてください。ご自身に必要なカロリー量については、次のサイトで計算することが出来ます。
サイト上で、ご自身の身長と体重、年齢と性別を入力し、活動レベルを「低い」「普通」「高い」の中から選択して「計算」ボタンを押せば、一日に必要なエネルギー量と基礎代謝量が分かります。
ここで計算したカロリー量を参考に、一日に必要なエネルギー量は必ず摂取するようにして下さい。
例えば、ある人の基礎代謝量が1320kcal/日、一日に必要なエネルギー量が2292kcal/日だとしましょう。
この基礎代謝量は、「体温など生命維持をするために絶対必要なカロリー」のことです。この基礎代謝を下回ると命の危険に晒されてしまいます。基礎代謝量以上のカロリーは生きる上で最低限必要なカロリーですので、絶対に下回らないよう注意してください。
一日の必要エネルギー量は、基礎代謝に加えて体を動かしたり、頭を使ったり、喋ったりするなど日常生活を送る上で必要なカロリーが足されたものです。この一日に必要なエネルギー量を十分に摂取する事で、お母さんの身体の中では、母乳を作るためのエネルギーが確保出来ることになります。
そのため、ご自身に必要な一日のエネルギー量を計算し、これを下回らないような食事をするようにしましょう。
ちなみに、このカロリーは、多すぎても少なすぎても身体にはよくありません。必要エネルギー量よりも多いカロリーを摂取してしまうと肥満に繋がります。適切なカロリー摂取量を心がけて下さいね。
それから、十分な量の母乳を作るためには、朝昼晩の三食共に十分な量の食事を摂る事が大切です。ただ、忙しくて一度に十分な量の食事が摂れないお母さんもいますよね。この場合は少量の食事を何回かに分けて食べる「回数頻回食」を行ってみるのも手です。
食べる時間が無い、一度にしっかりとした食事が摂れない方は、食事をこまめに摂る回数頻回食を実践しましょう。
子育てやご家庭の状態によっては、時間が無かったり忙しすぎたりして三食がきちっと食べられないお母さんもいますよね。この場合は、少量の食事をこまめに摂る「回数頻回食」を実践してみましょう。
回数頻回食とは、1時間や2時間おきに少量の食事を何回も摂取したり、隙間時間を見て補食を行う事です。また、朝昼晩の三食に加えて、間食を間に挟むという方法もあります。こうすることによってカロリー不足を防ぐことが出来、母乳量の増加に繋げられます。
この時行う食事としては、朝食や夕食の残り物でも良いですし、小さなおにぎり作っておいて、隙間を見て食べるのも良いです。この時、なるべくタンパク質の摂取や、鉄、亜鉛、ビタミンB群が多い食べ物の摂取を心がけるとなお良しですね。タンパク質や鉄、亜鉛、ビタミンB群は、魚や肉などの赤身肉に多く含まれています。
また、カロリー不足にならないよう、炭水化物や脂質もしっかり摂りましょう。チャーハンやピラフなど、お米を油で炒めるとカロリーがアップします。これらをおにぎりにしてこまめに食べる事もオススメです。十分なカロリーを摂取し、母乳をしっかり作り出せる身体になりましょう。
赤ちゃんの低血糖症を防ぐには、母乳の量や質を高めることも大切なんだね。
うん、赤ちゃんの場合は、筋肉や肝臓が未発達でグリコーゲンがしっかり貯められない以上、母乳からのこまめな栄養補給が重要だね。
母乳はお母さんの食事内容や栄養状態で決まるから、赤ちゃんの低血糖症を予防する場合はお母さんの栄養状態を整える事が大切だよ。
分かった❗
今度からしっかり食事を摂るようにするよ❗
十分な母乳を与えていても繰り返す低血糖症。その原因にはもしかして赤ちゃんの発育不全が関係しているかも。
ここまで、母乳の重要性について解説してきました。ただ、中には「粉ミルクで十分な量と栄養を与えていても低血糖症になった」という方や、「十分に母乳を与えていても赤ちゃんが低血糖症になって困っている」という方もいますよね。
このような場合、もしかすると赤ちゃん自体が母乳や粉ミルクを十分に消化吸収出来ていないかもしれません。
赤ちゃんの身体は、十分な栄養を必要とするにも関わらず、胃や腸などの消化機能が未発達の状態です。このため、十分な母乳や粉ミルクを与えていても、きちんと消化吸収が出来ていない可能性があります。
特に日本では妊娠中に体重が増加すると妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、難産になる事から、妊娠中はなるべく体重を増やさないように指導が徹底されてきました。
この結果、多くなってきているのが妊婦の低栄養化、新生児の体重の減少、胎児の発育不全です。最初に解説したように、赤ちゃんの肝臓や筋肉は未発達の状態であることから、低血糖症になりやすいと言われています。この上、更に未発達の状態で生まれてしまうと、余計に低血糖症になりやすくなります。
また、発育不全の状態で生まれてきた赤ちゃんは、通常よりも胃や腸の発達が遅れています。このため、粉ミルクを与えても十分に消化吸収出来ません。加えて、乳アレルギーを抱えている場合もあるため、粉ミルクをたくさん与えていたとしても、それがきちんと消化吸収出来ているとは限らないのです。
このような場合、粉ミルクを与えるよりも、母乳を与える方が赤ちゃんにとっては消化吸収がしやすくなります。母乳に含まれているタンパク質と乳タンパク質では組成成分が違うため、やはり赤ちゃんにとっては母乳を与える方が消化吸収しやすくなります。
しっかりと母乳を出すためには、先ほど解説したように母体の栄養や食事を改善していくことが重要です。母乳でもしっかりと消化吸収出来ない赤ちゃんの場合は、一度にたくさんのおっぱいを飲ませるよりも、回数頻回食のようにこまめに何度も飲ませて上げましょう。
また、おっぱいを飲ませるときは、正しい飲ませ方であたえてあげることが重要です。赤ちゃんが母親の乳首を吸おうとする動作に合わせて、母親がうまく自分の乳首を赤ちゃんに吸着させる動作のことを「ラッチオン」といいます。乳輪ごとくわえこむように深く吸着した状態が、正しいラッチオンです。
このラッチオンがうまく出来ていないと、赤ちゃんが上手くおっぱいを吸えなくなり、母乳を与える量が少なくなってしまいます。当然ながら、与える母乳が少ない事は赤ちゃんが低血糖症に陥る原因です。
また、正しいラッチオンが出来ていないと、赤ちゃんが乳首の先端だけを吸うので、乳首が切れる、痛みが出るなどのトラブルに繋がる恐れがあります。加えて、赤ちゃんが正しいラッチオンを出来ずに大きくなってしまうと、顎や口腔機能が十分に発達しないため、「口唇閉鎖不全症」(こうしんへいさふぜんしょう)いわゆる「お口ぽかん」に繋がる恐れもあります。
お口ぽかんとは、その名の通り子供が口をポカンと開けている状態の事です。口をポカンと開けている状態であることから、こう呼ばれています。
このお口ポカンでは、必然的に口呼吸となることから、口腔内に様々なトラブルが発生しやすくなります。特に、歯周病や虫歯のリスクが増え、風邪やインフルエンザなどにかかるリスクが増えることが分かっています。
それから、お口ポカンでは顎や噛む力が発達していないために、消化が悪くなったり、呼吸がしづらくなることから姿勢が悪くなったりします。他にも、睡眠の質低下や学力低下、日常生活にも悪影響を及ぼします。
このお口ぽかんのリスクは赤ちゃんの時のから始まっており、しっかりとラッチオンが出来ていない場合や母乳が与えられていない場合にリスクが増大します。
お口ぽかんのまま成長してしまうと、小児以降でもずっと体調不良や成長不良、低血糖症を抱えたままになる恐れがありますので注意しましょう。
赤ちゃんの低血糖症を防ぐためにも、正しいラッチオンで母乳を与え、しっかりと消化吸収出来るようにこまめにおっぱいを飲ませてあげる事が重要です。赤ちゃんが低血糖症に陥った場合は、今一度このラッチオンが正しく出来ているかどうかを確認してみて下さい。
当たり前だけど、おっぱいがちゃんと飲めていない赤ちゃんは低血糖症になりやすくなるよ。その他にも顎や口の発達が遅れて生涯にわたって悪影響を及ぼすから、今のうちにしっかりと正しいラッチオンでおっぱいが飲めるようにしてあげてね。
貧血の赤ちゃんは低血糖症になりやすい。赤ちゃんの貧血と栄養不足は低血糖症の大きな原因です。
赤ちゃんが低血糖症になりやすい原因として、上述した母乳の不足以外にも、実はもう一つ理由があります。それが、母体栄養の低下に伴う貧血や栄養不良です。
赤ちゃんの低血糖症は筋肉や肝臓など臓器の未発達が原因と言われていますが、これ以外にも貧血や栄養不足が大きく関係しています。あまり知られていませんが、貧血は低血糖症を引き起こす大きな原因です。
これは、鉄分が全身に酸素を運ぶためのヘモグロビンの材料して使われる以外にも、全身の細胞がエネルギーを生み出す際の補酵素として使われているためです。
具体的には、私達が食べた糖質や脂質、タンパク質などは胃で消化され、小腸で吸収された後に血液中にのって全身へと運ばれます。全身へと運ばれた栄養素は細胞内のミトコンドリアへと運ばれ、このミトコンドリアがATPと呼ばれるエネルギーを産生することで、私達は筋肉を動かしたり体温となる熱をエネルギーを生み出しています。
このミトコンドリアがエネルギーを生み出すときには、鉄分を始めとしたミネラルやビタミンB群などが欠かせません。もし、貧血などで鉄が足りないと、ミトコンドリアがエネルギーを作る事が出来なくなってしまいます。
加えて、鉄分から作られるヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割も担っています。ミトコンドリアがエネルギーを産生するときには、この酸素も必要です。酸素が不足すると、更にエネルギー産生能力が低下し、糖のエネルギー利用や糖代謝が更に低下してしまうことに繋がります。
つまり、貧血になってしまうと①糖質、脂質、タンパク質などの栄養を細胞の隅々まで運ぶ能力が低下し、②鉄が不足することでミトコンドリアがエネルギーを作り出せなくなります。さらに、③貧血状態では酸素の運ぶ量が低下し、ミトコンドリアが利用出来る酸素も減ってしまうのです。
この3つが重なる事でミトコンドリアが糖質や脂質、タンパク質などをエネルギーとして利用出来なくなってしまい、全身の細胞の働きや臓器の働き、糖の代謝が落ちてしまいます。これが、貧血から低血糖症へと繋がってしまう理由です。
では、この貧血と赤ちゃんにはどのような関係があるのでしょうか?
貧血といえば大人の女性がなりやすいというイメージですが、実は、生まれてきた赤ちゃんも貧血になりやすくなっています。まずはこちらのグラフをご覧下さい。
この図は新生児から大人になるまでの年齢別平均血清フェリチン値をグラフにした物です。血清フェリチン値とは「貯蔵鉄」の事で、体内にどれだけ鉄分が貯えられているかを示しています。
よく見ると、生まれたばかりの赤ちゃんはフェリチンが十分高い状態になっていますが、生後6ヶ月にかけて一気に急降下していることが分かりますね。これは、赤ちゃんが造血や成長のために著しく鉄を消費しているためです。
このフェリチンは、鉄が不足したときに優先して使われることで、貧血に陥ってしまうことを防いでいます。しかし、このフェリチンが不足してしまった場合は、鉄の貯蔵が無いためにこれ以上造血する事が出来ません。
また、鉄は造血する以外にも骨や皮膚の土台となるコラーゲンの合成にも関係しています。このコラーゲンは骨以外にも肌や歯肉、臓器など様々な組織において重要な役割を果たしており、赤ちゃんが成長していくためには十分な量のコラーゲン合成が必要です。
赤ちゃんの場合、一日に成長するスピードが驚くほど早いことはご存じの通りですよね。赤ちゃんは骨や皮膚、臓器を成長させるために日々大量のコラーゲンを合成しており、この材料に鉄を消費しています。
加えて、身体が大きくなっていくにつれて血液の量も増加させる必要があることから、血液を作るためにも日々大量の鉄分を消費しています。このため、赤ちゃんは貧血になりやすく、貧血による糖代謝の悪化から低血糖症にもなりやすくなるのです。
もし赤ちゃんが貧血になった場合、それに伴って様々なトラブルが引き起こされます。主な症状としては、夜泣きがひどい、落ち着きが無い、食欲不振、成長障害、情緒不安定などです。さらに、この貧血と低血糖症を同時に抱えている場合は、更に症状が酷くなることが分かっています。
赤ちゃんがなかなか泣き止まなかったり、夜泣きが酷い場合は、まず第一に貧血を疑ってみて下さい。特に、妊娠中にお母さんが貧血と診断されていたり、不調が続いていた場合は、赤ちゃんがお腹に居るときから貧血を抱えている可能性が高いです。もしかすると、赤ちゃんの低血糖症はこの貧血から引き起こされているかも知れません。
赤ちゃんの貧血は、お腹にいるときから始まっています。妊娠中にこのような不調を抱えていませんでしたか?
この赤ちゃんの貧血は、場合によっては赤ちゃんがお腹の中にいるときから既に貧血になっていている可能性もあります。
というのも、赤ちゃんの栄養状態や発育は、母体の栄養状態に大きく左右されるからです。
特に、妊娠しているお母さんが貧血だと、赤ちゃんも貧血になります。これは、お母さんが貧血だと赤ちゃんの分まで十分な血液が作れなくなるためです。
血液が不足すると、赤ちゃんへ酸素や栄養が十分に届けられなくなり、胎児に非常に大きな悪影響を与えてしまいます。
貧血が赤ちゃんに与える具体的な影響としては、先ほど解説した夜泣きがひどい、落ち着きが無い、食欲不振など以外にも、低体重児で生まれる、アトピー性皮膚炎を抱えている、喘息がある、風邪を引きやすいなどのトラブルがあります。
低体重での出産は低血糖症を引き起こす大きな原因ですし、アトピー性皮膚炎やアレルギーなどを抱えている場合も低血糖症の原因です。これは、アレルギーを抱えていると、アレルギーを抑えるために副腎から副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまうことが関係しています。
副腎皮質ホルモンには血糖値を上げる作用がありますが、アレルギーなどによって副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されると、副腎が疲れて副腎皮質ホルモンが分泌出来なくなってしまいます。
副腎皮質ホルモンは低血糖になった際にも血糖値を上げるために分泌されており、低血糖症に陥ることを防いでいます。しかし、副腎皮質ホルモンが分泌出来なくなると、血糖値が下がったときに血糖値を十分に上げることが出来なくなり、低血糖症に陥ってしまうのです。このことから、アレルギーも低血糖症を引き起こしやすくなる原因です。
この赤ちゃんの貧血は、お母さんのお腹の中にいるときから始まっている可能性があります。もしかして、妊娠中に次のような症状に心当たりがありませんでしたか?
妊娠中に以下のような症状に悩まされていた場合、母子ともに貧血を抱えている可能性が高いです。
妊娠中の貧血の症状
- 身体がだるい
- 疲れがとれにくい
- 立ちくらみがする
- めまいがする
- 顔色が悪い
- 爪の色が白い
- 吐き気がする
- 動悸・息切れがする
- 頭痛がある
妊娠中の貧血の症状としては、疲れがとれにくい、めまいがする、吐き気がする、頭痛があるなどです。これらの症状に心当たりが合った場合は、母子ともに貧血を抱えている可能性があります。
特に、胎児期の鉄と亜鉛の貯蔵は28週目〜32週目以後に急激に起こるため、この期間に母体が貧血だと赤ちゃんも貧血になりやすくなります。
また、22週目〜36週程度の間で生まれてくる早産児では、十分な鉄や亜鉛を貯蔵する前に生まれてきてしまうため、鉄や亜鉛の貯蔵量が少ないことが分かっています。
このことから、お母さんが貧血の状態だと赤ちゃんが貧血になりやすく、おまけに早産で生まれてくる赤ちゃんも鉄や亜鉛の貯蔵量が少ないため、貧血になりやすくなってしまうのです。
貧血は、赤ちゃんが低血糖症を引き起こす原因の1つです。もし、妊娠中に貧血の症状があったり、赤ちゃんに夜泣きやアトピー、アレルギーなど疾患があったり、早産や低体重児で生まれてきていた場合は、母子ともに貧血を疑ってみて下さい。
お母さんの身体が貧血だったり、赤ちゃんに与える鉄分が足りなくなると、赤ちゃんも貧血になりやすくなるよ。貧血は低血糖症の原因になる以外にも、成長障害や精神不安定など様々な不調の原因になるから、しっかり改善するようにしてね。
赤ちゃんの貧血は鉄不足だけじゃ無い。亜鉛不足も貧血、低血糖症の原因です。
ここまで赤ちゃんの貧血について解説してきましたが、貧血や低血糖症は鉄欠乏以外に亜鉛不足も関係しています。赤ちゃんの亜鉛不足は、鉄不足と並んで引き起こしやすいミネラルの1つです。
亜鉛は、ヘモグロビンの材料となる「ポルフィリン環」の合成に必要な材料であるほか、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの合成にも使われています。
他にも、亜鉛は筋肉合成にも関わっているミネラルであることから、赤ちゃんの成長にも必要な栄養素です。赤ちゃんが亜鉛不足の状態では、成長障害や発達の遅れや、筋肉の発達不足を引き起こします。この筋肉が発達不足の状態だと、筋肉に貯蔵できるグリコーゲンが減ってしまうことから、亜鉛不足も低血糖症と深い関わりがあります。
特に、亜鉛はインスリンの作用に関係している栄養素です。
インスリンは血糖値を下げてくれるホルモンで、このホルモンの効きが悪くなると血糖値が十分に下げられなくなります。その結果、上がりすぎた血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌され、逆にインスリンが効き過ぎて低血糖症に繋がってしまいます。
このインスリンの合成や作用に必要な栄養素が「亜鉛」です。正常な人の場合、すい臓でインスリンが分泌されるときは、亜鉛も同時に分泌されています。この亜鉛がインスリンを保護することで、肝臓でインスリンが分解されてしまうことを防いでいます。
しかし、亜鉛が不足している場合、すい臓はインスリンだけを分泌します。すると、亜鉛に保護されていないインスリンは肝臓で分解されてしまい、全身インスリン濃度が低くなってしまうのです。このインスリンの働きが低下したり濃度が低くなると、そのぶんだけ血糖値が上昇しやすくなります。この亜鉛不足も、低血糖症を引き起こしやすくなる大きな原因です。
また、他にも亜鉛はヘモグロビンの材料となるポルフィリン環の材料となったり、赤血球の膜を強くしたりと、造血にも大きく関係しています。
例えば、この図は赤血球を構成しているヘモグロビンの構成を表した物です。ヘモグロビンは「ヘム」というポルフィリン環と鉄がくっついた物で、グロビンはタンパク質です。この2つが組み合わさることで、ヘモグロビンは構成されています。
よく見ると、ヘム鉄の元になる「ポルフィリン環」の材料に亜鉛が必要と書いてありますよね。ポルフィリン環とはタンパク質のカプセルのような物で、ヘム鉄はこのタンパク質に包まれていることが最大の特徴です。
私達が摂った鉄分はこのポルフィリン環に包まれた「ヘム鉄」と呼ばれる状態に合成され、ヘモグロビンの合成などに利用されています。この時に亜鉛が不足しているとポルフィリン環が十分に合成できなくなり、ヘモグロビンの合成量低下に繋がります。このことから、亜鉛は造血をする際にも必要な栄養素です。
他にも、亜鉛欠乏は「亜鉛欠乏性貧血」とも関係しています。
亜鉛欠乏性貧血とは、亜鉛が不足することによって赤血球の膜が破れやすくなり、毛細血管通過時に血管とこすれて壊れてしまう状態の事です。
赤血球が壊れてしまうと、その中に含まれるヘモグロビンも壊れてしまいます。先ほど、ヘモグロビンの構成については説明しましたよね。このせっかく作ったヘモグロビンや赤血球が次々に壊れてしまうと、これら合成量よりも破裂量が多くなって、貧血が進行する原因になります。亜鉛は、この赤血球の膜を丈夫にし、壊れにくくするために必要な栄養素です。
では、この亜鉛不足と鉄欠乏にはどのような関係があるのでしょうか? ある鉄欠乏性貧血の女性グループを調べた結果、鉄欠乏性貧血の女性は健常な女性と比較して、血清亜鉛濃度が低いことが分かりました。
この研究では、鉄欠乏性貧血の女性30名のうち、血清亜鉛濃度が70μg/dL(正常値80μg/dL)を下回っている女性が27名と、およそ90%の女性が亜鉛欠乏の状態でした。対して鉄欠乏性貧血で無い健常の女性30名では、血清亜鉛濃度が70μg/dLを超えている女性が29名と、殆どの方に亜鉛欠乏が見られなかったのです。
この事から、鉄欠乏性貧血と亜鉛不足には相関関係があることが分かっています。原因としては、鉄や亜鉛が食事からでは必要量の摂取が難しいことから、どちらも不足しやすい栄養素だからです。
上のグラフは、男女の鉄と亜鉛の摂取状況を表した物です。よく見ると、男女ともに鉄と亜鉛の摂取量は推奨量に届いていません。また、特に月経のある女性や妊娠中の女性は必要量や推奨量が多くなることから、摂取量が足りていない方が多くなっています。
これと併せて、赤ちゃんにも亜鉛や鉄不足の影響が及びます。理由としては、母体が亜鉛不足の状態だと赤ちゃんも亜鉛不足になりやすいことと、母乳中の亜鉛含有量は分娩後1週間程度過ぎた頃から急激に減少してしまうためです。
例えば、分娩後1〜7日では母乳中亜鉛含有量が400μg〜800μg程度あるのに対し、2週間経過後では200μg程度まで減少してしまいます。この期間にしっかりと母乳を飲める赤ちゃんならある程度亜鉛を補給することが出来ますが、早産など何らかの事情で母乳が与えられなかった場合は、十分に亜鉛を補給することが出来ません。
このことから、赤ちゃんは亜鉛が不足しやすい状況にあり、この背景には母体の鉄不足や亜鉛不足が関係しています。亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血には相関関係もあることから、鉄欠乏性貧血を抱える赤ちゃんの殆どは亜鉛欠乏も同時に抱えている可能性が高いです。
赤ちゃんの低血糖症を改善させたい場合は、貧血改善に加えて亜鉛も積極的に補給させてあげましょう。
ウチの子が低血糖症になった原因は、お母さんの栄養不足も関係しているんだね💧
そうだよ。中には貧血と診断されていないけど貧血になっている「隠れ鉄欠乏性貧血」の人もいる。病院で貧血といわれていなくても、注意が必要だね。
赤ちゃんの低血糖症を改善するにはまず母体栄養の改善と母乳の質を高めることから。栄養状態を改善させるための具体的な分子栄養学的アプローチ
では、ここからは赤ちゃんの低血糖症を防ぐために必要な具体的な分子栄養学的アプローチをご紹介します。
赤ちゃんの低血糖症を防ぐためには、肝臓やすい臓、筋肉など血糖コントロールに重要な役割を担っている臓器をしっかり発達させてあげることです。特に早産や低体重児で生まれてくる赤ちゃんはこれら臓器が未発達の状態である事から、低血糖症を引き起こしやすくなります。
この早産や低体重、発達の遅れは、貧血や亜鉛不足を含めた栄養不足が関係しているため、まずは第一に十分な栄養補給を行い、赤ちゃんの発達を促してあげる事が重要です。
ただ、赤ちゃんの場合は、栄養の補給源が母乳や粉ミルクなどと手段が限られています。このため、赤ちゃんに十分な栄養を与えるためには母乳の質を高めることが大切です。
母乳の質を高めるためには、第一にお母さんが十分な栄養補給を行う事が欠かせません。母乳はお母さんの血液から作られることから、お母さんが栄養不足や貧血だと母乳の質が悪くなります。このためにも、まずはお母さんが率先して栄養補給し、母乳の質を高めましょう。
では、具体的にどのような栄養補給を行えば良いのでしょうか? 特に母乳の質を高める上で必要な栄養素は、次のようなものです。
母乳の質を高めるために必要な栄養素
- タンパク質
- ビタミンB
- 鉄
- 亜鉛
- ビタミンD
- カルシウム
- マグネシウム
特に、貧血だと母乳の質が悪くなることから、貧血改善を第一に優先させていきましょう。この時、鉄分の補給に加えて十分なタンパク質を補給することが大切です。
体内では、鉄を運搬、利用する際は必ずタンパク質で出来たカプセルに鉄分子を入れて利用しています。これは、タンパク質と結合しない鉄が体内にあると、活性酸素を発生させて身体にダメージを与えてしまうためです。
このため、身体の中では鉄を安全に運搬、利用するためにポルフィリン環やフェリチンなどといったタンパク質と結合させ、活性酸素の害から身を守っています。
つまり、鉄を安全に運搬、利用するためにはタンパク質が絶対に欠かせません。いくら鉄分を多く補給しても、安全に貯蔵、運搬、利用出来るためのタンパク質がない状態では、貧血を改善させることが出来ないのです。
このことから、貧血改善をするためには鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂るようにしましょう。最低でも一食当たり100g〜200g程度の肉や魚は取り入れたいところです。足りない分は、プロテインなどを活用するのも良いですね。加えて、タンパク質を利用するために必要な補酵素である「ビタミンB群」も積極的に補給するようにして下さい。
そして、次に鉄分です。鉄分には色々な種類がありますが、必ず「ヘム鉄」を選ぶようにして下さい。
鉄には大きく分けて「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄とは、肉や魚に多く含まれる鉄分のことです。対して、非ヘム鉄は野菜や穀物などに含まれる鉄になります。病院で処方される多くの鉄剤は、非ヘム鉄です。
この2つの大きな違いは、その構造と吸収率です。ヘム鉄はポルフィリン環と呼ばれるタンパク質のカプセルのような物に包まれており、非ヘム鉄に比べて活性酸素を殆ど発生させません。対して、非ヘム鉄は鉄分子がむき出しの状態になっているため、他の物質を酸化させる力が強く、活性酸素を発生させる原因になります。
また、非ヘム鉄はお茶やコーヒーなどに含まれるタンニンや、食物繊維に含まれるフィチン酸と結合し、吸収率が落ちてしまいますが、ヘム鉄であればこれらの影響を受けずに吸収することが出来ます。
逆に非ヘム鉄を大量に摂取してしまうと、吸収出来なかった鉄が大腸へ大量に流れることから、腸内環境の悪化を招く原因にもなりえます。
なぜここまでヘム鉄が優れているかというと、ヘム鉄の構造もさることながらその吸収経路にあります。
ヘム鉄には「ヘムトランスポーター」と呼ばれる専用の吸収経路が腸に存在しており、この専用の吸収経路から効率的に吸収されることで、非ヘム鉄よりも効率的な吸収が可能になっているのです。
ちなみに、非ヘム鉄の吸収経路はDMT1という経路を使って行われています。この吸収経路は亜鉛や銅など他のミネラルを吸収経路と共通になっているため、鉄剤など非ヘム鉄を大量に摂取すると亜鉛など他のミネラルの吸収を阻害してしまいます。亜鉛の吸収阻害は亜鉛欠乏を招き、亜鉛が欠乏することによって「亜鉛欠乏性貧血」という貧血を引き起こしてしまう原因になります。
このように非ヘム鉄の鉄剤を大量に摂取することは体内に悪影響をもたらす可能性が高いことから、非ヘム鉄を用いての貧血改善はオススメしません。
特に病院で処方される多くの鉄剤は非ヘム鉄である事から、鉄分を摂取する際はこのような鉄剤では無くヘム鉄を選ぶようにしましょう。
病院で処方される非ヘム鉄の例
- フェロム (フマル酸第一鉄) 有機鉄
- フェロミア (クエン酸第一鉄) 有機鉄
- リオナ (クエン酸第二鉄) 有機鉄
- インクレミンシロップ (溶性ピロリン酸第二鉄) 有機鉄(食品添加物としても使われる)
- フェロ・グラデュメット(硫酸第一鉄)無機鉄 発色剤の一種。食品添加物としても使われる。
では、このヘム鉄をどのくらい摂取すればよいのでしょうか?
基本的に、ヘム鉄の摂取量目安は、血清フェリチン値を目安に判断します。血清フェリチン値とは貯蔵鉄の事で、体内で鉄が不足してくると真っ先にこのフェリチンから減り始めます。このフェリチン値は、潜在性鉄欠乏性貧血かの指標です。
病院ではヘモグロビン値や赤血球の値だけで貧血かどうかを判断していますが、ヘモグロビンや赤血球が基準値に収まっていたとしてもフェリチンが低ければ貧血になりやすくなります。このため、貧血かどうかはフェリチン値を見て判断するようにしましょう。
血清フェリチン値は、おおよそ40ng/mL未満では潜在性鉄欠乏性貧血と判断することが出来ます。この場合は、ヘム鉄として一日45mgを目安に摂取してみて下さい。
また、血清フェリチン値が40〜100ng/mLの間では、貧血では無いものの貯蔵鉄がやや不足している状態です。この場合も、十分な貯蔵鉄が貯えられるよう、一日あたりヘム鉄として15mg程度補給してみて下さい。継続していくにつれてフェリチン値は徐々に上がっていき、血清フェリチン値が125ng/mL程度になるのが理想と言われています。
ただし、妊娠、出産した女性や授乳中の女性、生理が始まった女性はなかなかフェリチン値が上昇しない傾向にあります。この場合、血清フェリチン値が60ng/mL前後を保てていれば大丈夫ですので、これ以下にフェリチンが下がらないようキープするよう努めて下さい。
それから、フェリチン値は貧血の判断以外にも「炎症」を見るためのマーカーでもあります。フェリチン値は体内で炎症が発生していても上昇することがあり、ガンなどでは著しく上昇する場合もあります。
特に、フェリチン値が200ng/mLを超えていたり、フェリチン値が高くてヘモグロビン値が低い場合は何らかの炎症が関与している可能性大です。この場合は、炎症の原因となっている原因を調べ、適切に対処するようにして下さい。
さらにこのヘム鉄の補給に加えて、亜鉛の補給も重要です。亜鉛は、上述したようにポルフィリン間の材料となったり、赤血球の膜を強くしたり、インスリンの働きに関与していたりと、貧血や低血糖症にも大きく関係している栄養素です。この亜鉛を同時に摂取する事で、更に貧血を改善しやすくなるという結果が出ています。
この図は、貧血の女性に「鉄だけ」を摂取してもらったグループと、「亜鉛だけ」を摂取してもらったグループ、そして「鉄と亜鉛」を摂取してもらったグループの変化を見た結果です。この結果では、鉄のみ、亜鉛のみのグループと比べ、「鉄と亜鉛を同時」に摂ったグループの方が赤血球数の改善に有意な差が見られました。
このことから鉄分だけや亜鉛だけを摂取するのでは無く、鉄分と亜鉛は同時に摂取する方が効果的です。亜鉛が不足しているかどうかも同じく血液検査で分かりますので、是非調べて見て下さい。
具体的には、血清亜鉛濃度が60㎍/㎗未満では亜鉛欠乏症、60㎍/㎗〜80㎍/㎗未満では潜在性亜鉛欠乏症、80㎍/㎗〜130㎍/㎗では基準値内と判断することが出来ます。
亜鉛不足だった場合の亜鉛摂取量としては、亜鉛欠乏症の場合では一日あたり60mg〜100mg程度、潜在性亜鉛欠乏の場合では一日あたり30mg〜60mg程度は補給したいところです。
また、血中亜鉛濃度が基準値内に収まっていたとしても、それで亜鉛が足りているとは限りません。亜鉛が足りているかどうかは、亜鉛と銅の比率で見る事が大切で、この比が1:1の割合になっているのが理想と言われています。加えて、ALPという血液検査の項目でも亜鉛が不足しているかどうかの指標になります。こちらも総合的に見て、亜鉛が足りているかどうかを判断しましょう。
それから、鉄と亜鉛に加えてカルシウムやマグネシウム、ビタミンDの補給も重要です。カルシウムやマグネシウムは骨の成長に必要な栄養素で、現代の食生活では不足しがちな栄養素です。
カルシウムは一日あたり600mg〜、マグネシウムは一日あたり300mg〜は摂取するようにしましょう。食事からではなかなか難しいので、サプリメントで補っていくのがオススメです。
加えて、ビタミンDを同時に摂取する事も大切です。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けたり、骨の形成や成長を促したりしてくれる働きがあります。他にも、不足するとアレルギー疾患になりやすくなったり、免疫力が低下したりします。
このビタミンDは、特に妊産褥婦(にんさんじょくふ)はとても不足している傾向にあります。妊娠期にビタミンDが不足していると、胎児もビタミンD欠乏となり、アレルギーや免疫力低下、早産リスクが高まるなど、様々な影響があります。
この影響は生後10年近く残存するという報告がある事から、早急にビタミンD欠乏を改善させるためにも積極的に補給していきましょう。
ビタミンDが不足しているかどうかは、血中ビタミンD濃度で分かります。血液検査では「25−OHビタミンD」と呼ばれる項目です。
この血中ビタミンD濃度が、40ng/ml以下であった場合は、かなりのビタミンD不足と判断することが出来ます。その場合は、一日に最低でも4000IU以上は補給するようにしましょう。出来れば、この血中濃度は80ng/ml〜120ng/mlは維持したいところです。
まずは血液検査でご自身の状態を確認し、適切な栄養アプローチを行うようにして下さい。
赤ちゃんには、粉ミルクや母乳にヘム鉄や亜鉛を溶かして直接飲ませるのもオススメ
ここまで母乳の質を高めるための栄養アプローチを解説してきました。しかし、上述した方法には大きなデメリットがあります。それは、母乳の質が上がるまでにはそれなりに時間がかかるということです。
上述した方法では、お母さんがまず最初に栄養摂取し、お母さんの血液から母乳が作られます。このため、お母さんの身体がかなりの貧血や栄養欠損だと、お母さんの栄養状態が改善するまでは質の良い母乳を作る事が出来ません。
この栄養状態の改善にはかなりの時間がかかります。そのため、母体の栄養状態が改善するまでの間は、母乳の質を改善させることと合わせて、赤ちゃんにも直接栄養を与えてあげましょう。
具体的には、粉ミルクや搾乳した母乳にヘム鉄や亜鉛を混ぜて飲ませてあげるのがオススメです。先ほども解説したように、赤ちゃんの成長には鉄や亜鉛が重要で、日々大量の鉄分や亜鉛を消費しています。
この鉄や亜鉛が不足していると赤ちゃんが貧血に陥り、低血糖症の原因にもなる事から、赤ちゃんの貧血や低血糖を防ぐためにも鉄分と亜鉛の補給が重要になります。
方法としては、粉ミルクや搾乳した母乳に「ヘム鉄」や亜鉛の粉を混ぜて赤ちゃんに飲ませてあげるだけです。ヘム鉄はカプセルタイプの物が多いので、カプセルを開けて適量を溶かしてあげて下さい。
亜鉛は錠剤の物が多く、こちらは一度粉の状態にする必要があります。薬局では、錠剤をすりつぶして粉に出来る道具が売っていますので、このような道具を活用して粉にし、粉ミルクや母乳に溶かしましょう。
ヘム鉄や亜鉛を粉ミルクや母乳がに混ぜると、見た目が真っ黒になりますが特に問題はありません。大人が見ると不味そうに見えますが、赤ちゃんは味覚が発達していないので問題なく飲んでくれます。
これを毎日続けることで、赤ちゃんに十分な鉄と亜鉛を補給させてあげることが出来ます。母体と母乳の栄養改善と併せて、是非行ってみて下さい。
ただし、赤ちゃんに飲ませるヘム鉄や亜鉛のサプリメントは、質に注意が必要です。インターネットや薬局などでは様々なメーカーからヘム鉄のサプリメントが販売されていますが、その質にはピンからキリまであります。
中にはパッケージに表示がされていない薬品が混入している事もありますので、このような粗悪なサプリメントを赤ちゃんに飲ませると逆に体調が悪化する恐れがあります。
サプリメントはどれも同じではありません。くれぐれもサプリメントの質には注意しましょう。
市販の安いヘム鉄サプリにはご注意!
ヘム鉄のサプリと言えば、ドラッグストアーなどで安く販売されている物を見かけることがありますよね。ヘム鉄が補給出来るなら、安くて量が摂れるに越したことはありません。しかし、同じヘム鉄といえどその質にはピンからキリまであります。特に、「ヘム鉄パウダーの量」と「ヘム鉄含有量」は全く違うものですので注意して下さい。
ヘム鉄は豚の血液を精製して作られており、ヘム鉄パウダーと呼ばれるパウダー状の中にヘム鉄が1%もしくは2%含有している物が一般的です。例えば「一粒でヘム鉄50mg」と書かれていても、これはヘム鉄パウダーが50mg含まれているだけであり、実際にはその中の1%〜2%である0.5mg〜1mgしかヘム鉄が含まれていない計算になります。このように、多く含まれているように見せかけて、実際にはヘム鉄が殆ど含まれていない物があるのです。
また、繰り返しますが貧血改善にはヘム鉄以外にも微量ミネラルと呼ばれるセレンやマンガン、銅や亜鉛など他のミネラルの補給も重要です。ヘム鉄として市販されている商品の多くはヘム鉄のみなど鉄分の補給しか出来ません。加えて、ヘム鉄の製造管理には高度な技術が必要で、生体内利用効率まで考慮すると安く作る事は不可能です。物によっては、製造管理体制が悪く、品質が劣化している物もあります。
この事から、同じように見えるヘム鉄サプリメントであっても、体内での利用効率が悪く、貧血が改善出来ない場合があります。これを避けるためにも、ヘム鉄を摂取する際は生体内のミネラルバランスや生体内利用効率などを考慮した質が高いものを選ぶようにして下さい。分子整合栄養医学で使われているヘム鉄製品は、「鉄の取り込み」「利用」「貯蔵」「排泄」など貧血改善における鉄分本来の働きが安全に出来るよう考慮されています。ヘム鉄を選ぶ際は、値段や含有量にとらわれず、体内で安全に利用出来る安心、安全な製品を選びましょう。
ちなみに、粉ミルクに配合されている鉄分は「非ヘム鉄」だよ❗
非ヘム鉄は吸収率が低く、活性酸素の発生源にもなるから大量摂取には不向き。赤ちゃんに与える鉄分の種類やサプリメントの質にはくれぐれも気をつけてね❗
栄養不足は、食事だけでも改善出来る? 食事だけで必要な栄養を補給することはほぼ不可能です。
ここまでは、主にサプリメントを用いて母乳の質を改善させる分子栄養学的栄養アプローチをご紹介しました。
ただ、人によっては「サプリメントなんか使わなくても食事で改善出来るのでは?」と思いますよね。タンパク質は肉や魚から摂れますし、ヘム鉄も肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。
また、亜鉛は牡蠣やウナギなどに多く含まれていますし、ビタミンDは魚の内臓やキノコなどから多く摂ることが出来ます。カルシウムやマグネシウムは、乳製品や煮干しを多く食べれば何とかなりそうな気がしますよね。
しかし、これら食事だけで必要な栄養素を補給することは不可能です。
理由としては主に4つあり、一つは食事で摂れる栄養素の量が少ないこと、もう一つは貧血などによって消化能力が低下してしまった状態や、元々消化能力の弱い方では十分に消化吸収出来ないこと、もう一つはむしろサプリメントよりもコストが高くなってしまうこと、最後の一つは毎日同じ物を食べ続けることで飽きが来たり食事の楽しみが無くなってしまうことです。
例えば、タンパク質やヘム鉄ビタミンB群、亜鉛を多く含む食べ物として「赤身肉」や「レバー」があります。赤身肉のヒレやランプ、モモの部位には、100gあたり20gのタンパク質と、2.5mg程度のヘム鉄が含まれています。この肉を多く食べれば、十分にタンパク質もヘム鉄も補給出来そうな気がしますよね。
しかし、肉に含まれるタンパク質は、そのすべてが得られるわけではありません。牛肉に含まれるプロテインスコアは80と低く、これは牛肉に含まれるアミノ酸のバランスがあまり良くない事を表しています。
プロテインスコアとは、そのタンパク質の「良質度」のことです。この数値が高いほど、そのタンパク質の利用効率が高くなります。この利用効率に加えて、調理による損失も加わります。肉は加熱調理をして食べますので、これを加味すると100gの肉を食べてもたった8gのタンパク質しか補給出来ない計算です。
また、肉に含まれるヘム鉄やビタミンは肉汁(ドリップ)と共に流れ出てしまいます。特に煮物や茹でこぼしでは多く鉄分が溶出し、30分から1時間程度煮込むだけでおよそ30%〜50%ほどの鉄分が溶出してしまいます。肉に含まれるビタミンB群も水溶性ビタミンですので、加熱調理や煮込むことで大部分が失われます。食べ物の栄養損失は、思っている以上に大きいのです。
この事を前提に、食事で必要な栄養を賄うとしましょう。体重が60kgの成人が一日に必要なタンパク質は、その体重分の60gと言われています。仮に50kgの方なら50g必要です。また、貧血の人は一日あたり45mgのヘム鉄が必要になります。
もし体重が60kgの人が肉だけでタンパク質を補給しようとすると、およそ800gもの肉を毎日食べなければなりません。ヘム鉄に至っては、赤身肉100gあたり2.5gとすると、45mg補給するためにはおよそ一日2kgも必要になります。一日に800gや2kgもの肉なんて、到底食べる事は不可能ですよね。
加えて、これら摂取した肉がすべて消化吸収出来るとは限りません。貧血の女性はタンパク質不足や自律神経の乱れから、消化能力が低下している可能性が高いです。そうなると、摂取出来るタンパク質量やヘム鉄量は更に低いと考えられます。もし消化吸収能が落ちている場合は、摂取タンパク質の半分程度が消化吸収出来れば良い方で、場合によっては全く消化吸収出来ない可能性も高いです。
消化できなかったタンパク質はそのまま小腸や大腸に流れ、悪玉菌のエサとなって更に腸内環境の悪化を招きます。肉を大量に食べることは更なる腸内環境の悪化と消化吸収の低下を招くことから、むしろ体調が悪化していく原因にもなるのです。
そして、当然ながらこれら肉や食材にはお金がかかります。毎日肉を1kgも2kgも買えば、出費も相当な額になるでしょう。例えば、2023年一月の全国牛肉平均価格は100gあたり342円となっています。物価の高騰で徐々に値上がりしており、今後も値上がりが続くと思われます。この肉を毎日2kg購入するとなると、物価上昇の影響を考慮に入れなくても一日あたり6,840円の出費です。
これに家族分を加えたり、一ヶ月分まで算出すると、とてもじゃありませんが現実的ではありませんよね。購入した肉が問題なく消化吸収出来るならまだしも、消化吸収できない場合は便器にお金を棄てるようなものです。
また、毎日毎日肉を食べ続けるのは精神的苦痛も伴います。いくらレシピや食べ方を工夫しても、毎日食べていれば当然飽きてきます。食べたくもないのに健康のために食べ続けることは、もはや苦痛以外のなにものでもありません。
ですので、毎日の食事を楽しみながら必要な栄養素を摂取する手段としては、サプリメントやプロテインを取り入れるのが最も手軽で簡単です。サプリメントなら、普段の食事に加えて摂取する事で、食事では摂れないような高容量の栄養素を摂取することが出来ます。
例えば、ヘム鉄のサプリメント1カプセルあたり5mgのヘム鉄が含まれていたとしたら、2カプセル飲むだけで牛の赤身肉400g程度に相当します。一回2カプセルを三食食後に飲むだけで、牛の赤身肉では1.2kg相当です。また、タンパク質をプロテインで摂った場合は、そのプロテインの質にもよりますが1回あたり20g~30g程度のタンパク質が摂取出来ます。
これは、牛の赤身肉で換算すると300g〜400g程度になります。サプリメントの場合は普段の食事に加えて摂取しますので、摂取出来る栄養素の量はこれだけではありません。そう考えると、サプリメントを必要に応じて取り入れることがどれだけ効率が良くコストパフォーマンスが良いかが分かって頂けるかと思います。
ただし、サプリメントといってもピンからキリまであります。そこら辺で売ってるサプリメントを買ってきてただ飲めば良いというわけではありません。サプリメントの中には、胃や腸で全く溶けずに便で排泄されてしまうような粗悪品も多く流通しています。
加えて消化吸収能の問題もありますので、サプリメントやプロテインの種類も消化吸収能や状態に合わせて選んだり量を調節する事が重要です。このような最適な栄養アプローチを行うためにも、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。オーソモレキュラー療法とは、68項目にも及ぶ血液検査項目でその方の状態を解析し、その方に最適な栄養アプローチをご提案する栄養療法です。
食事だけで必要な栄養素を補うのは至難の業だよ。むしろ体調を悪くする原因にもなるから、質の良いサプリメントを自分の状態に合わせて適切に使うようにしてね❗
赤ちゃんの健康はまず母体から。母体の栄養状態を改善させるためにも、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けましょう。
ここまで、赤ちゃんの低血糖症の原因や対策、赤ちゃんの低血糖症の隠れた原因となっている貧血について解説してきました。
赤ちゃんの低血糖症には、単に肝臓や筋肉などの発達が不十分というだけで無く、その根本には消化能力の低下や貧血などの栄養不足が関係しています。特に赤ちゃんの場合は成長期によって鉄の需要が高いことから貧血になりやすく、母体や母乳の栄養状態にも大きな影響を受けるので注意が必要です。
このため、赤ちゃんの低血糖症を根本から改善させるためには、栄養補給によって発達を促してあげることが最優先です。赤ちゃんは主に母乳から栄養を取り入れていますので、母体も含めて母乳の質を高めていくようにしましょう。
その為には、まず母体がどれだけ栄養状態が悪化しているのかを把握し、どのくらい栄養補給をすればいいのかを知ることが大切です。ご自身の栄養状態は「オーソモレキュラー療法」の血液検査で知ることが出来ます。
オーソモレキュラー療法とは、68項目にも及ぶ血液検査項目を独自に解析する事によって、その人の栄養状態を把握したり、栄養不足がどのような原因で引き起こされているのかを知ることが出来る検査です。
オーソモレキュラー療法を受けると、検査結果を専門の医師が解析し、レポートにまとめてくれます。このレポートでは、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも含まれています。
このような情報を元に、ご自身に合わせた栄養アプローチを行っていきましょう。
栄養状態の悪化は、単に栄養が不足しているだけで無く、その根本には疾病や消化吸収能の低下を含めた原因が必ずあります。単にサプリメントを摂っただけでは、栄養状態を改善させることは出来ません。
人によって不足している栄養素や、栄養アプローチの方法が全く異なりますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。
オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。
また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。
質の悪いサプリでのアプローチはむしろ低血糖を悪化させる!
オーソモレキュラー療法では、血液検査や各種検査の結果に応じて専用に設計されたサプリメントで栄養アプローチをしていきます。
この際、「市販されているサプリメントや海外サプリメントを利用して行っていきたい」と思うかも知れません。しかし、市販されているサプリメントやアイハーブなどで販売されているサプリメントで栄養アプローチをするのは非常に危険です。
特に海外で販売されているサプリメントやプロテインについては、日本人向けには設計されていません。加えて、主な目的が「スポーツ用」として開発された物ばかりで、治療を目的とした利用には不向きです。
また、人工甘味料を始めとした添加物も多い上、栄養素が酸化して効力を失っている物や、自然界に存在しない化学構造に加工された物、摂取しても胃や腸で全く溶けない粗悪品も多くあります。
これらを大量に摂取することでむしろ身体や肝臓にダメージを与えてしまい、低血糖症がさらに酷くなる可能性も高いです。ですので、栄養アプローチを行うときは市販サプリや海外サプリで代用せず、オーソモレキュラー療法専用のサプリメントでアプローチするようにしましょう。
サプリメントはどれも同じじゃ無いよ❗質の悪いサプリメントを使うと逆効果になるから、オーソモレキュラー療法専用に作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね❗
赤ちゃんの将来は栄養で決まる。母子ともに十分な栄養を補給することが大切です。
ここまで赤ちゃんへの栄養補給について主に解説してきましたが、人によっては「低血糖症を改善させる程度で栄養療法を行うのは面倒」と思う方もいますよね。
しかし、赤ちゃんへの栄養補給は低血糖症を改善させる以外にも大きなメリットがあります。それが、赤ちゃんの内からしっかり栄養を与えていると、学力の向上や身長が伸びるなど、将来にわたってもの凄く良いメリットが得られるということです。
例えば、母体の栄養状態と生まれていくる子供のIQには関係があります。あるテスト結果では、母親が妊娠中にしっかりと栄養摂取を行ったグループと行わなかったグループでは、子供のIQに差があることが分かりました。
具体的には、栄養摂取したグループのほうが、栄養摂取しなかったグループの子供にくらべてIQが高かったという結果が出ています。栄養摂取したグループでは平均IQが101.7だったのに対し、栄養摂取をしていないグループでは、93.6と差がありました。
また、アメリカで行われた研究によると、鉄欠乏性貧血の子供は正常の状態にある子供と比べて学力が低いという結果が出ています。
例えば、数学力と読解力、語学力の試験を行った結果、鉄欠乏性貧血を抱えた子供の数学の点数が86点前後だったのに対し、鉄正常値の状態の子供は94点前後と高い結果を出しました。
これは数学以外にも、読解力や語学力、知力においても鉄欠乏性貧血を抱えた子供と比べて総合的に勝っており、この事からも子供の栄養状態は学力に大きな影響を与えることが分かったのです。
それから、子供の栄養状態は学力以外にも身長や体力、運動能力にも良い影響を与えます。具体的には、亜鉛の摂取によって身長が伸びたという研究結果が報告されています。
例えば、低身長や成長障害と診断されていた子供に亜鉛を投与したところ、食欲増進と成長速度の増加が見られ、身長が伸びる速度は男子で平均7.8cm/年、女子で平均5.9cm/年と男女で有意に改善したとの報告があります。
これは世界各国の子供でも同様に見られ、亜鉛が成長に大きく関係している事が分かりました。
また、亜鉛は質の良い筋肉を作ったり、血液を作るときにも必要な栄養素です。亜鉛不足や貧血の状態だと、運動能力の低下や体力、持久力も低下する事が分かっています。これは特に、アスリートやスポーツ選手などにおいては周知の事実です。
貧血だと全身に酸素を運ぶ能力が低下することから、筋肉や脳が酸欠になってパフォーマンスが低下します。つまり、貧血などの栄養不足では、子供の学力や運動能力など、全体的に大きな影響を及ぼすのです。
この差は、特に小さい子ほど影響が大きくなり、将来にわたって多大な影響を与えます。身長が低い子供や運動能力が低い子供は、クラスのみんなから馬鹿にされたり、からかわれたりされやすい事はなんとなく想像できますよね。
逆に、身長が高くて運動神経抜群だったり、文武両道の子供はクラスのみんなからも羨望のまなざしで見られます。これは子供の自信に繋がり、自己肯定感に結びつきます。自己肯定感は、何かを成し遂げたり、自分らしく生きるためには絶対に必要なものです。
この学力や運動能力、自己肯定感や自信が、あるのとないのとでは子供の将来に大きな違いが出てきます。栄養によって、子供の将来が決まるといっても過言では無いのです。
ですので、子供への栄養アプローチは、面倒くさがらずに今すぐ始めましょう。たかが低血糖症でと思うかも知れませんが、その根本原因には母子ともに栄養欠損が深く関係しています。
この栄養療法は若いときから始めるほど費用対効果が高くなる傾向にあります。特に成長速度が著しい赤ちゃんなど、若いときに行ってあげるほど効果が高いです。この成長期は、今しかありません。
子供や赤ちゃんにオモチャやゲーム等の物を買い与えるのも良いですが、それよりも十分な栄養を与えてあげる事こそが最高のプレゼントです。これからスクスク育つ赤ちゃんには、「健康」という最高のプレゼントを与えてあげましょう。
栄養によって成長力が変わってくることから、赤ちゃんの内からしっかり栄養を与える事は将来にも影響を及ぼすよ。
たかが低血糖症と思わずに、その根本原因となっている栄養不良も改善するようにしてね。
もしかして低血糖症? 赤ちゃんがぐったりしていたら早急に対処を。赤ちゃんが低血糖症になる原因と対処法を、分子栄養学的アプローチから解説まとめ
以上が、赤ちゃんが低血糖症になったときの対処法と、赤ちゃんの低血糖症と関係が深い貧血についての対処方法でした。
低血糖に陥りやすい赤ちゃんはお腹にいるときから栄養状態が悪い事が多く、低体重児や未発達の状態で生まれてきていることが殆どです。低体重児や未発達の状態では、肝臓や筋肉などが十分に発達していないため、低血糖症に陥りやすくなります。
また、赤ちゃんの低血糖症の裏には貧血が隠れている場合もあります。赤ちゃんは成長のために鉄を日々大量に消費しており、不足すると貧血になりやすくなってしまいます。この貧血も、糖代謝が悪化することから低血糖症を引き起こす原因です。
赤ちゃんが低血糖症や貧血になると、夜泣きが酷くなったり落ち着きが無くなったりと、様々なサインが現れます。このサインを見逃さず、適切な栄養アプローチを行ってあげて下さい。
人の身体には、元々糖質などの栄養素や血糖値を上手く利用したりコントロールしたりする機能が備わっています。低血糖症は、この機能が正常に働けなくなってしまったことが一番の問題です。この機能を元に戻すことが出来れば、赤ちゃんの低血糖症も、根本から改善出来る可能性が高いです。
是非、このあたりの原因をしっかり調べて適切なアプローチを行っていきましょう。
今回ご紹介した原因や対策、検査方法は根本原因から低血糖症を解決する際の大きな手助けになるはずです。
糖質の摂取量だけで血糖値をコントロールしようとせず、低血糖症が引き起こされている根本の原因からアプローチしていくようにしてください。
赤ちゃんは肝臓や筋肉が未発達という理由以外にも、おっぱいが足りなかったり貧血になっていると低血糖症になりやすくなるんだね💧今度からウチの子には栄養もしっかり与えてあげるようにするよ。
それから、栄養アプローチの方法は人それぞれ違うみたいだから、オーソモレキュラー療法を受けてみるね❗
うん、是非受けてみて。
オーソモレキュラー療法を行っている方には、無料で栄養カウンセリングも行っているよ。利用してみてね。