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マグネシウムとは? マグネシウムの働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説

「疲れやすい」「夜眠れない」「便秘がある」「頭痛がする」「血糖値が高い」などの症状は、もしかしたらマグネシウム不足が原因かもしれません。マグネシウムは、体内において300を超える補酵素として働くほか、カルシウムとともに自律神経の調節や血圧の調節、糖代謝に関与しています。

マグネシウムが不足すると、全身のエネルギー不足を招き、代謝の悪化、精神の不調や睡眠障害、便秘など様々な不調へと繋がってしまう原因です。

今回は、このマグネシウムの基本についてと、マグネシウムがどのように吸収・代謝されているのか、骨粗しょう症を含めたマグネシウム不足に対する分子栄養学的アプローチを解説します。

目次

マグネシウムとは

ナンナン

うぅ〜・・・
あたま痛い〜 寝不足だ〜💦

はる かおる

ど、どうしたの❓ ナンナン
何かあったの❓

ナンナン

うん・・・
それがね、最近あまりよく眠れなくて💧
オマケにあたま痛いし便秘もあるしで調子が悪いんだ💧

はる かおる

うーん、寝不足に頭痛に便秘かぁ・・・
そういえば、ナンナンは前に糖尿病って診断されてなかったっけ❓

ナンナン

うん、ボクは前から血糖値が高いってお医者さんから言われてるよ

はる かおる

なるほど。もしかしたら、マグネシウム不足による不調かもね

ナンナン

ま、マグネシウム不足❗❓
それが糖尿病とどう関係あるの❓❓

はる かおる

うん、実は糖代謝を含むすべてのエネルギー代謝にマグネシウムが関係していて、マグネシウム不足と糖尿病は関係が深いんだ。
それに、マグネシウムは自律神経や血圧も調節していて、不足すると便秘や不眠、頭痛など様々な不調が引き起こされるんだよ。

ナンナン

そうなんだ・・・💧
じゃあ、どうしたらマグネシウム不足が改善出来るのかな❓

はる かおる

そうだね。そのあたりは割と複雑だから、マグネシウム不足に対する分子栄養学的アプローチも含めて解説してあげるよ

マグネシウムは、体内において300を超える酵素反応の補酵素として利用されている必須ミネラルの1つです。マグネシウムは体内に約25%含まれており、その約50%〜60%が骨に、残りの40%が筋肉や細胞内に存在しています。他にも、エネルギー産生やタンパク質合成、DNAの維持など、多岐にわたる生理的役割を果たしています。

マグネシウムの働き。マグネシウムは必須ミネラルの1つで、体内においては300を超える候補反応の補酵素として利用されている

また、カルシウムと拮抗して筋肉の弛緩と収縮を制御したり、自律神経を整えて睡眠の質を改善したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくしたりする作用もあります。

マグネシウムが多く含まれる食品

マグネシウムは、主にアオサやひじき、ワカメや海苔などの海藻類に多く含まれています。この他、ゴマやアーモンドなどの種子類、納豆やきなこなど大豆食品にも多く含まれています。

マグネシウムが多い食品
(可食部100g当たりの含有量)
アオサ ……3200mg
ひじき ……640mg
カットわかめ ……460mg
焼きのり ……300mg
キヌア ……180mg
そば(乾麺) ……100mg
きび ……84mg
全粒粉パン ……51mg
玄米ごはん ……49mg
きなこ ……260mg
納豆 ……100mg
がんもどき ……98mg
木綿豆腐 ……57mg
ごま ……370mg
アーモンド ……290mg
くるみ ……150
mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成
マグネシウムが多い主な食品

マグネシウムの吸収と排泄

マグネシウムは腸管で主に吸収され、その殆どは空腸や回腸で吸収されています。マグネシウムの吸収は摂取したマグネシウムの量によって吸収率が変わり、摂取量が多ければ低下し、少なければ高くなります。この吸収には、主に2つの経路があります。

1つは、食事中のマグネシウム濃度が高いときに起こる「単純拡散」で、もう一つはトランスポーターと呼ばれる特定のタンパク質によって能動的に吸収される「促進拡散」です。

1. 単純拡散:

単純拡散とは、濃度差を利用して吸収する仕組みです。マグネシウムは、濃度差に基づいて小腸の細胞膜を通過することが出来ます。この方法では、食事中のマグネシウム濃度が高いときに吸収率が大きくなり、濃度が低い場合は吸収率が下がります。

2. 促進拡散:

もう一つの促進拡散では、トランスポーターと呼ばれる特定のタンパク質輸送体によって吸収する仕組みです。主なトランスポーターはTRPM6(Transient Receptor Potential Melastatin 6)で、低マグネシウム環境下で活性化されます。この方法は、食事からの摂取量が低いときなど、マグネシウム濃度が低いときにも効果的に吸収を行います。

この他、マグネシウムの吸収を助けてくれる物としては、ビタミンDや短鎖脂肪酸などがあります。逆に、マグネシウムの吸収を阻害してしまうものとしては、過剰なカルシウムや過剰な亜鉛の摂取、加工食品に多く含まれるリン酸の摂りすぎなどが挙げられます。

マグネシウムの吸収を促進するもの

  • ビタミンD(カルシウムとの吸収競合を防ぐ)
  • 短鎖脂肪酸(大腸内の善玉菌が出す物質)

マグネシウムの吸収を阻害してしまうもの

  • 過剰なカルシウム
  • 過剰な亜鉛
  • 高リン酸の食事(加工食品の摂りすぎ)

特に、マグネシウムの吸収においてはカルシウムや亜鉛を過剰に摂取することによって吸収が阻害されてしまうことが知られています。これは、ミネラルを吸収する専用の輸送体(トランスポーター)は限られた数しか存在していないため、複数のミネラルが同時に存在すると、輸送体がそれぞれのミネラルと競合し、お互いの吸収を妨害してしまう可能性があるためです。

ただし、マグネシウムはカルシウムとセットで働くため、マグネシウムを摂取する場合はカルシウムも同時に摂取することが基本です。この場合、ビタミンDを摂取することで腸管におけるカルシウムの吸収を促進し、マグネシウムとの吸収競合を軽減する効果が期待出来ます。マグネシウムを摂取する場合は、カルシウムと併せて必ずビタミンDも摂取するようにしましょう。

吸収されたマグネシウムは、骨や歯を作ったり、エネルギー産生をはじめ様々な生合成反応や代謝で使われますが、余分に摂取したマグネシウムは腎臓の働きによって尿中に排泄され、通常の食事ではほぼ過剰症になることはありません。

また、体内ではマグネシウムの血中濃度は常に一定の濃度を保とうとする力(生体内恒常性)が働いています。この働きにより、マグネシウムの摂取量が不足している場合では、腎臓でのマグネシウム再吸収が促進され、尿中排泄量が抑制されることでマグネシウムの血中濃度は一定に保たれるようになっています。(マグネシウムの場合は、カルシウムと違って副甲状腺ホルモンの影響を受けることはありません。このため、マグネシウムが不足した場合は骨からマグネシウムを溶かして血中濃度を維持することはなく、腎臓でのみで調節されています)

ただし、腎機能が低下している場合にはマグネシウムの尿中排泄機能が低下しているため、高マグネシウム血症を生じやすくなります。また、サプリメントや薬、にがりなどで高濃度のマグネシウムを摂取した場合は、人によって下痢を起こすことがあるので注意が必要です。

ナンナン

マグネシウムって身体に必須の栄養素だったんだね💧
海藻類を全然食べてなかったから、マグネシウム不足かも💧

はる かおる

マグネシウムが足りてない人は多いから、これからはしっかりと海藻類も食べると良いね。

ナンナン

うん、でもボク海藻類を食べるのが苦手なんだよね💦
病院でマグネシウムのお薬とか出してくれないかな❓❓

はる かおる

うーん、確かにマグネシウムが主成分のお薬はあるけど・・・
マグネシウム不足に対してお薬を使うことは出来ないんだ。

ナンナン

えっ、そうなの❗❓

マグネシウムの種類とサプリメントのマグネシウム、病院で処方されるマグネシウムの違い

マグネシウムには、一言で言っても様々な種類のマグネシウムがあり、吸収率や使用用途が異なります。主なものとしては、海水やにがりなど食品に含まれる「塩化マグネシウム」や、お薬で使われる「酸化マグネシウム」などがあります。

吸収されやすいマグネシウム吸収されにくいマグネシウム
アスパラギン酸マグネシウム
クエン酸マグネシウム
乳酸マグネシウム
塩化マグネシウム
炭酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
酸化マグネシウム
リン酸マグネシウム
吸収されやすいマグネシウムとされにくいマグネシウム
スクロールできます
お薬に使われるマグネシウムの代表的な種類と違い
下剤酸化マグネシウム
炭酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
クエン酸マグネシウム
胃腸薬酸化マグネシウム
炭酸マグネシウム
不整脈治療薬硫酸マグネシウム
お薬に使われるマグネシウムの代表的な種類と違い

これらマグネシウムには吸収率に違いが見られ、水に溶けやすいマグネシウムは吸収しやすく、水に溶けにくいマグネシウムは吸収しにくいという特徴があります。水に溶けやすいマグネシウムとしては、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなどがあり、水に溶けにくいマグネシウムとしては炭酸マグネシウムや酸化マグネシウム、リン酸マグネシウムなどがあります。

ただし、水に溶けにくかったり吸収率が悪かったとしても、そのマグネシウム自体がダメなものというわけではありません。例えば、リン酸と水酸化マグネシウムから作られる「リン酸三マグネシウム」は水に溶けにくいですが酸には溶けやすいという特徴があります。また、リン酸マグネシウムはリンを含み、人の骨や歯の主成分なので生体利用効率が高いことも特徴として挙げられます。

逆に、吸収が良くても下痢を起こしやすいマグネシウムもあります。最も下痢を引き起こしやすいマグネシウムとしては、炭酸マグネシウムや塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウムや酸化マグネシウム1などです。これらは小腸や大腸で吸収されなかった塩類の浸透圧活性と胃腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の促進によって下痢が生じやすくなります。そのため、どのマグネシウムが一番良いとか悪いとかでは無く、目的に応じて適切なマグネシウムを摂取することが大切です。

例えば、病院では用途に応じて様々なマグネシウムが使い分けられています。主なものとしては、下剤として使われる「酸化マグネシウム」や、胃薬として使われる「炭酸マグネシウム」などがあります。これらは治療を目的としたお薬のため、栄養補給を目的とした用途では使われていません。もし栄養補給を目的として大量に摂取した場合は、下痢などの症状が現れる恐れがあります。また、長期にわたってマグネシウム製剤を使用した場合は、高マグネシウム血症に陥るリスクがあるため、注意が必要です。

対して、サプリメントに使われているマグネシウムでは、吸収されやすいマグネシウムが使われていたり、生体内利用効率が高いマグネシウムが主に使われています。このように、マグネシウムと一言で言っても様々な種類があり、サプリメントや病院で処方されるマグネシウムは全く違うものですので注意しましょう。

ナンナン

なるほど・・・
お薬のマグネシウムは下剤や胃腸薬として使われているんだね💧

はる かおる

そうそう。だから、お薬のマグネシウム製剤でマグネシウムの補給をする事は出来ないよ。薬とサプリメントに含まれるマグネシウムは用途が違うから、このあたりはしっかり認識しておいてね

マグネシウムの働き

マグネシウムは、カルシウムと共に骨や歯を作る材料として使われたり、筋肉の弛緩と収縮を制御したり、自律神経を整えて睡眠の質を改善したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、糖代謝を始めとしたエネルギー代謝に関わったりしています。他にも、タンパク質合成、DNAの維持など、体内において300を超える酵素反応の補酵素として利用されています。

カルシウムとマグネシウムの関係。マグネシウムはカルシウムと互いに協力し合って働いている

マグネシウムの主な働き

  • 歯や骨を作る
  • 神経伝達物質の材料となり、神経を落ち着かせる
  • カルシウムと共に血圧を調節する
  • 補酵素として糖のエネルギー代謝に関与
  • カルシウムと共に筋肉の弛緩と収縮に関与
  • 300種以上の補酵素として酵素作用に関与

マグネシウムの働き① カルシウムと共に歯や骨を作る

マグネシウムは、カルシウムと共に骨や歯を作る働きがあります。体内にはおよそ25gのマグネシウムが含まれており、その50%〜60%は骨や歯に含まれています。

体内にはおよそ25gのマグネシウムが含まれており、その50%〜60%は骨や歯に含まれている

この骨は、身体を支えたり脳や内臓などの臓器を保護したり、運動の視点となったり、骨髄で血液を作ったり、カルシウムやマグネシウムの貯蔵をしたりと様々な働きがあります。カルシウムの摂取量が足りない場合は、骨から溶け出して補う仕組みが備わっていますが、あまりにも骨を溶かしすぎてしまうと骨がスカスカになる骨粗しょう症のリスクが高まります。そのため、骨を丈夫にするためには日頃からカルシウムとマグネシウムの十分な摂取量が必要です。

骨の役割。骨は身体を支えたり臓器を保護したり、造血したりカルシウムを貯蔵する役割がある

この骨を丈夫に作るためには、カルシウムの他にマグネシウムも必要になります。骨の構造は鉄筋コンクリートのような構造になっていて、コラーゲン繊維が鉄筋の役割をし、そのコラーゲンを覆う「ハイドロキシアパタイト」という骨の成分がコンクリートの役割をしています。

このハイドロキシアパタイトを作るためには、カルシウムの他にもマグネシウムやケイ素、ビタミンKやビタミンDも必要です。また、鉄筋となるコラーゲン繊維を作るためには材料となるタンパク質やビタミンC、ヘム鉄や亜鉛、ビタミンB群も必要になります。

骨の構造は、鉄筋コンクリートに似た構造をしている。

また、丈夫な骨を作るためにはこれら栄養素以外にも骨に刺激を与えることも必要です。骨は、歩いたり走ったり飛び跳ねたりなどの刺激が加わることによって、骨を強くしようとする働きが起こります。そのため、骨を丈夫にするためには日頃からの十分な栄養摂取に加えて、運動することも大切です。

マグネシウムの働き② カルシウムと共に神経を落ち着かせる・睡眠に関与する

マグネシウムは、骨を作る材料となる以外にも、心と体のバランスを安定させる神経伝達物質の合成に必要な栄養素です。例えば、脳内で合成されている「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質は、必須アミノ酸の1つである「トリプトファン」を元に、ヘム鉄やビタミンB6、ナイアシンやマグネシウムを元に合成されています。

このセロトニンは、別名「幸せホルモン」と言って、分泌されると多幸感が得られたり、リラックスしたりするホルモンです。

マグネシウムはセロトニンを作る時の補酵素として必要な栄養素。セロトニンは、心と体のバランスを安定させる働きを持つ脳の神経伝達物質の一種

このセロトニンの分泌量が減少すると、気分が落ち込んだりやる気が起きなかったり、酷い場合ではうつ状態やうつ病の原因にもなると言われています。

また、この「セロトニン」とセロトニンから作られる「メラトニン」は、体内時計や睡眠を司っているホルモンです。セロトニンは起床する頃から分泌されはじめ、脳や身体をスッキリ目覚めさせる働きがあります。その後起床から14〜16時間後の夜間にかけてセロトニンからメラトニンに変化し、就寝する頃にはメラトニンの分泌量が最大になります。メラトニンは、身体を休めたり睡眠に入るために必要な神経伝達物質です。

セロトニンとメラトニンの関係。セロトニンは日中の活動期に、メラトニンは夕方から就寝に向けて分泌され、睡眠や体内時計を司っている

このセロトニンとメラトニンが十分に分泌され、サイクルが正常に働いていれば、朝スッキリ起きることができ、夜にきちんと眠くなります。このセロトニンの合成にはマグネシウムも必要な事から、マグネシウムは神経を落ち着かせたり、睡眠の質を改善したり、体内時計の働きを保つ働きがあります。

それから、マグネシウムはカルシウムと共に睡眠の長さやリズムにも関係しています。東京大学の研究では、睡眠の長さは脳の神経細胞に出入りする「カルシウム」で調整されることが解明されました。カルシウムは、細胞内の情報伝達に関与する重要な役割を果たしており、カルシウムが細胞内で正常に働いている場合、活動時間と休息時間のサイクルが規則正しく保たれます。

東京大学の研究で、睡眠の長さは脳の神経細胞に出入りするカルシウムで調節されることが解明された

この働きは、特にリン酸化酵素(CaMKⅡ)の働きを通じて情報伝達が行われています。このCaMKⅡは、細胞内での情報のやり取りをスムーズに行うために必要です。カルシウムによってリン酸化酵素(CaMKⅡ)の働きが正常に出来ていれば、規則正しい行動リズムや睡眠リズムを維持することが出来ます。

しかし、カルシウムの不足などにより調節がうまくいかなくなってしまった場合、リン酸化酵素(CaMKⅡ)の働きが阻害されて活動時間を一定に保てなくなってしまいます。このカルシウムの調節を助けてくれるのが「マグネシウム」です。

マグネシウムはカルシウムの調節を助け、脳内の正常な機能を維持します。そのため、マグネシウムはカルシウムと一緒に摂取することが大切です。

ナンナン

なるほど、マグネシウムは睡眠や自律神経の調節にも関わっているんだね

はる かおる

そうだよ。マグネシウムが不足すると、夜眠れなかったりうつ症状が起こったりと、様々な不調に繋がってしまうんだ

マグネシウムの働き③ カルシウムと共に血圧を調節する

マグネシウムは、カルシウムと共に血圧の調節に関わっています。主にカルシウムは血管の収縮に関わっており、血管はカルシウムイオンが細胞内のカルシウムチャネル(入り口のような物)に流れ込むことで収縮します。この血管が収縮することで、血圧が上昇する仕組みです。

血管は、細胞内にカルシウムが流れることで収縮し、血圧が上昇する

対して、マグネシウムは細胞膜や細胞内結合部位においてカルシウムと競合し、細胞内へカルシウムが過剰に流入することを防ぐ働きがあります。このカルシウムとマグネシウムのバランスが取れていることで正常な血圧が維持されるようになっています。

マグネシウムは、細胞の中に入り込むカルシウムと競合することで、カルシウムが過剰に流入することを防ぐ

しかし、骨粗しょう症やカルシウム不足などでカルシウムが不足していた場合は、骨からカルシウムを取りだして利用する必要が出てきます。この時に骨からカルシウムを溶かしすぎてしまうと、カルシウムが不足しているのにカルシウムの血中濃度が上昇しすぎてしまう「カルシウムパラドックス」が発生します。

このカルシウムパラドックスによってカルシウムが過剰になると、カルシウムイオンが細胞内のカルシウムチャネル(入り口のような物)に流れ込みすぎてしまい、血圧が正常範囲を超えて上昇してしまいます。これが、高血圧など血圧の以上や病気を引き起こす原因になります。

そのため、血圧を正常に維持するためには、血管収縮の原因となる過剰なカルシウムイオンの細胞内流入を防ぐ事と、カルシウムパラドックスが発生しないようにしっかりとカルシウムの摂取を行う事が大切です。

マグネシウムはこの血管収縮の原因となる過剰なカルシウムイオンの細胞内流入を防ぎ、カルシウムとセットで働いていることから、マグネシウムを摂取する際はカルシウムと共に摂取するようにしましょう。

マグネシウムの働き④ カルシウムと共に糖代謝に関与する

マグネシウムは、カルシウムと共に糖代謝に関わっています。マグネシウムは脂質や糖質などから身体を動かしたり体温を維持したりする為に必要な「エネルギー代謝」に関わっていることから、マグネシウムが不足すると糖や脂質の利用がうまく出来なくなって血糖値が上昇しやすくなります。

マグネシウムは糖代謝に関わっており、糖尿病患者の多くに低マグネシウム血症が見られる

例えば、実際に糖尿患者の多くに低マグネシウム血症が見られており、マグネシウムを十分量摂取すると2型糖尿病のリスクが軽減するという報告があります。

これは、糖尿病によって高血糖状態が続くと、「高浸透圧利尿」が引き起こされ、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルが尿で排泄されてしまうためです。マグネシウムが不足すると、更なる糖代謝の悪化に繋がって糖尿病が進行してしまいます。

通常、マグネシウムが不足している場合では、腎臓でのマグネシウム再吸収が促進され、マグネシウムが尿で排泄されにくくする仕組みが備わっています。しかし、糖尿病患者では、血糖値が高いために腎臓でのグルコース再吸収が飽和し、グルコースが尿中に排泄されます。この際、尿の量が増えることで、尿中のマグネシウム排泄が増加し、さらにこの状態では尿細管でのマグネシウム再吸収が抑制されてしまうことから、マグネシウム不足に陥りやすくなるためです。

マグネシウムが不足すると、糖代謝を始めとしたエネルギー産生に悪影響を与えます。具体的には、エネルギーの元となる「ATP(アデノシン三リン酸)」にはマグネシウムが結合していて、エネルギー供給のための基質として機能しています。ATPとはミトコンドリアが糖質や脂質を元に作るエネルギーの電池のようなもので、私達の身体はこのATPを利用して身体を動かしたり体温を維持したりしています。

エネルギーの電池であるATPを作る仕組み。ATPが多いほどエネルギー量が多くなる。このATPを作るためには、マグネシウムなどが関わっている

このATPを作るためには、糖質や脂質、タンパク質の他に鉄やビタミンB群、マグネシウムなどが必要です。もしマグネシウムが不足していた場合は、ATPを作り出せる量が減ってしまい、身体はエネルギー不足に陥ります。

例えば、グルコース(ブドウ糖)をもとにグルコース6-リン酸を作り出す場合は、「ヘキソキナーゼ」という酵素が必要になり、この酵素にはマグネシウムが使われています。また、フルクトース6-リン酸からフルクトース1,6-二リン酸を作り出す場合にも、「ホスホフルクトキナーゼ」というマグネシウムが使われた酵素が必要です。マグネシウム不足の状態では、これらの代謝がうまくいかなくなってしまい、代謝が滞ってエネルギー不足に陥ってしまいます。

エネルギー不足になると、疲れやすくなったり、めまいや息切れがしたり、身体が冷えたりうつ症状が起こるなど様々な不調が引き起こされます。また、糖質や脂質をエネルギーとしてうまく利用出来なくなってしまうので、太りやすくなったり脂質異常症などを引き起こしやすくなります。

この悪循環によって、血糖コントロールがうまくいかなくなったり、血糖値が上がりすぎたりして糖尿病を発症しやすくなります。このように、マグネシウムは糖代謝と深い関係があります。

カルシウムとマグネシウムは、インスリンの作用や感度に関わる。カルシウムとマグネシウムを摂取することで、インスリン抵抗性を改善する効果が期待出来る

また、カルシウムとマグネシウムはインスリンの分泌(感度)と作用にも関係しています。インスリンは血糖値を下げてくれるホルモンのことで、このインスリンの分泌や働きが低下すると、血糖値が十分に下げられなくなって2型糖尿病を発症する原因になります。

このインスリンはすい臓にあるβ細胞と呼ばれる細胞から分泌されていますが、この細胞内にカルシウムが入ることでインスリンが分泌されています。マグネシウムは、このβ細胞に出入りする過剰なカルシウムイオンの細胞内流入を防ぐ役割があるほか、インスリン受容体というインスリンが細胞に取り込まれる入り口の働きを活性化する働きや、エネルギー代謝に関わる補酵素としてインスリンの作用を増強させる働きがあります。

このことから、カルシウムとマグネシウムはインスリンの感度や作用に関与し、インスリン抵抗性の改善に役立ちます。マグネシウムは、カルシウムとセットで糖代謝に関与していることから、マグネシウムを摂取する際はカルシウムと共に摂取することが大切です。

ナンナン

なるほど❗マグネシウムが不足すると糖尿病に繋がるのか❗

はる かおる

そうそう。マグネシウムはインスリンの働きや糖代謝に関わっているから、不足すると糖尿病になりやすくなるんだよ

マグネシウムの働き⑤ カルシウムと共に筋肉の弛緩と収縮に関与

マグネシウムは、カルシウムと共に筋肉の弛緩と収縮に関与しています。先ほどの血圧の調節や血管の収縮と弛緩と同じように、筋肉においてもカルシウムは筋肉の収縮に関わっており、反対にマグネシウムはその調節と弛緩の役割を担っています。

カルシウムとマグネシウムは、筋肉の弛緩と収縮にも関係している

そのため、カルシウムとマグネシウムは運動時のパフォーマンスや筋肉の機能向上に欠かせない栄養素です。カルシウムとマグネシウムをしっかり補って運動することで、運動時のパフォーマンスが向上したり質の良い筋肉が作られたりすることに繋がります。

逆に、カルシウムやマグネシウムが不足している場合では、筋肉の収縮と弛緩がうまく出来なくなり、こむら返りが起きたり不整脈に繋がったりすることがあります。特に体内に貯えられている量ではマグネシウムよりもカルシウムの方が圧倒的に骨に貯えられているため、発汗などでミネラルが失われるとマグネシウムが不足しやすくなります。

マグネシウムが不足することで、筋肉が収縮から回復できなくなり、運動時のパフォーマンスが低下したり足がつったり、不整脈や血圧の上昇など様々な不調に繋がります。マグネシウムはカルシウムよりも不足しやすいミネラルですので、運動時も含め日頃から十分な量を摂取しておくことが大切です。

マグネシウム不足になりやすい人とその原因

マグネシウムの働きでも解説した様に、マグネシウムは身体の300種類以上もの代謝反応に関わっているため、不足すると様々な疾患を引き起こします。

例えば、マグネシウム不足が引き起こす症状と影響としては次のようなものが挙げられます。

マグネシウム不足が引き起こす症状と影響

筋肉の症状:

  • 筋肉のけいれんや痙攣
  • 筋肉の弱さや疲労感
  • 筋肉の硬直や痛み

神経系の影響:

  • しびれやチクチク感(末梢神経障害)
  • 神経過敏やイライラ
  • 不安やうつ症状の悪化
  • 集中力の低下や記憶力の問題

心血管系の影響:

  • 不整脈(心拍の異常)
  • 高血圧
  • 心血管疾患リスクの増加

代謝の影響:

  • インスリン抵抗性の増加
  • 血糖コントロールの悪化
  • 2型糖尿病のリスク増加

骨と歯の健康:

  • 骨密度の低下(骨粗鬆症のリスク増加)
  • 歯の健康の悪化

消化器系の影響:

  • 食欲不振
  • 吐き気や嘔吐
  • 便秘

免疫系の影響:

  • 免疫機能の低下
  • 感染症に対する抵抗力の低下

ホルモンバランスの乱れ:

  • ホルモン分泌の不調
  • 月経不順やPMSの悪化

その他の症状:

  • 慢性的な疲労感
  • 睡眠障害(不眠症)
  • 頭痛や偏頭痛の頻度増加
マグネシウムが不足すると、高血圧や糖尿病、動脈硬化や骨粗しょう症など様々な疾患を引き起こす

このようにマグネシウム不足は様々な不調や疾患と関係していますが、実際には男女ともに殆どの年代でマグネシウムの摂取量は推奨量を下回っているというデータがあります。

例えば、男性の30代〜50代にかけては推奨量が一日あたり370mgなのに対し、およそ250mg〜300mgしか摂取出来ていません。女性の場合では、30代〜50代にかけて推奨量が一日あたり290mgなのに対し、およそ200mg〜250mg程度の摂取量となっています。

日本人のマグネシウム摂取状況。男女ともに殆どの年代で接種推奨量を下回っている

この理由としては、推奨量を満たすには食事からの摂取だけでは難しいと言われているためです。マグネシウムはアオサやワカメ、ひじきなどに多く含まれていますが、これらは意識的に多く摂る必要があるほか、マグネシウムは加工食品などに含まれるリン酸によっても吸収が阻害されてしまいます。

マグネシウムの吸収を阻害してしまうもの

  • 過剰なカルシウム
  • 過剰な亜鉛
  • 高リン酸の食事(加工食品の摂りすぎ)

また、人によってもマグネシウムの消耗度合いは異なり、ストレスを抱えている方やスポーツをする方、成長期のお子さんや高齢者の方、糖尿病など疾病を抱えている方は特にマグネシウムが不足しやすくなっていることも理由です。

マグネシウム不足になりやすい人とその原因

  • 高齢者:
    年齢とともにマグネシウムの吸収効率が低下し、排泄量が増加する
  • 消化器系の疾患を抱えている方:
    クローン病、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)などの消化器系の疾患は、マグネシウムの吸収を妨げる
  • 糖尿病を抱えている方:
    高血糖状態が続くと、尿中にマグネシウムが過剰に排泄されるため、糖尿病患者はマグネシウム不足のリスクが高まる
  • 赤ちゃんから成長期のお子さん
    発育による骨など体組織の増加による需要増
    スポーツをするお子さんは大量に汗をかくことでマグネシウムを含む電解質が失われやすい
  • お酒をよく飲む方、アルコール依存症:
    アルコールは腎臓でのマグネシウム排泄を増加させ、食事からの吸収を妨げる
  • 特定の薬を服用している方:
    利尿薬、抗生物質、抗がん剤、制酸剤などは、マグネシウムの吸収を妨げたり、排泄を促進するため、これらの薬を長期間服用している人は注意が必要
  • スポーツ選手や激しい運動を行っている方
    大量に汗をかくことで、マグネシウムを含む電解質が失われやすくなる。
    体重制限種目における不適切な食事、栄養摂取量の低下
  • ストレスの多い方:
    慢性的なストレスはマグネシウムを消耗する
  • 不適切な食事をしている方:
    加工食品や精製された食品を多く摂取している人や、緑葉野菜、ナッツ、全粒穀物、豆類などのマグネシウムを豊富に含む食品を十分に摂取していない人は、マグネシウム不足になりやすい。
  • 慢性疾患を持つ人:
    慢性腎臓病や心血管疾患などの慢性疾患を持つ人は、マグネシウムの代謝や排泄が正常に行われず、マグネシウム不足のリスクが高まる。

特に、ストレス時に分泌される「アドレナリン」は、マグネシウムを消耗させてしまうことが分かっています。アドレナリンとは脳の神経伝達物質の一種で、分泌されることで神経を興奮させ、筋肉や血管を緊張させたり、血糖値を上昇させたりする働きがあります。

この時、過剰にアドレナリンが分泌されてしまうと、筋肉や血管を収縮するために過剰に細胞内へのカルシウム流入を促進してしまいます。マグネシウムはこの過剰なカルシウム濃度を調節するために消耗が多くなります。

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人はストレスを受けるとアドレナリンというホルモンが必要以上に分泌される。このホルモンが過剰に分泌されると、マグネシウムを多く消耗してしまう

加えて、ストレスがかかると尿から排泄されるカルシウムやマグネシウムの量が増加することも分かっています。このように、ストレスはマグネシウムやカルシウムを大きく消耗する原因です。

もしこれらに当てはまる方は、マグネシウム不足に陥っている可能性があります。次のマグネシウム不足チェックとマグネシウム不足を調べる検査項目を参考に、マグネシウムが不足していないかどうかをチェックしてみて下さい。

ナンナン

うぅ、マグネシウム不足になりやすい原因に多く当てはまってるかも・・・💦

はる かおる

マグネシウムは、糖尿病やストレスでも消耗するね。後は、運動している人もマグネシウムが不足しやすくなるよ。これらに当てはまる人は注意が必要だね。

マグネシウム不足チェックとマグネシウム不足を調べる検査項目

マグネシウム不足をチェックする方法としては、骨粗しょう症の骨の状態を知る検査や、体内の栄養状態を知る血液検査があります。これら検査に加えて、マグネシウムが不足すると起こる自覚症状の有無にどれだけ当てはまっているかも参考になります。

まずは、次のマグネシウム不足チェックリストの中から当てはまる項目をチェックし、マグネシウム不足のリスクがどれだけ高いかをチェックしてみて下さい。多く当てはまるほど、マグネシウム不足のリスクが考えられます。

マグネシウム不足チェックリスト

1. 筋肉関連の症状:

  • 筋肉のけいれんや痙攣が頻繁に起こる
  • 筋肉の硬直や痛みがある
  • 筋肉の弱さや疲労感を感じる

2. 神経系の症状:

  • 手足のしびれやチクチク感がある
  • 神経過敏やイライラを感じる
  • 不安やうつ症状がある
  • 集中力の低下や記憶力の問題がある

3. 心血管系の症状:

  • 不整脈(心拍の異常)を感じる
  • 血圧が高い
  • 心血管疾患のリスクが高いと言われたことがある

4. 代謝関連の症状:

  • 血糖値が高い、または糖尿病と診断された
  • 体重の増減が激しい

5. 骨と歯の健康:

  • 骨折しやすい、または骨密度が低いと言われたことがある
  • 歯の健康に問題がある

6. 消化器系の症状:

  • 食欲不振がある
  • 吐き気や嘔吐が頻繁に起こる
  • 便秘に悩まされている

7. 免疫系の症状:

  • 感染症にかかりやすい
  • 傷の治りが遅い

8. ホルモンバランスの乱れ:

  • 月経不順がある
  • PMSの症状が重い

9. その他の症状:

  • 慢性的な疲労感がある
  • 睡眠障害(不眠症)に悩まされている
  • 頭痛や偏頭痛が頻繁に起こる

生活習慣に関する質問

1. 食生活:

  • 加工食品や精製食品を多く摂取している
  • 緑葉野菜、ナッツ、全粒穀物、豆類などをあまり食べない

2. 飲酒:

  • アルコールを頻繁に飲む

3. ストレス:

  • 慢性的なストレスを感じている

4. 運動:

  • 激しい運動を頻繁に行っている

5. 薬の服用:

  • 利尿薬、抗生物質、抗がん剤、制酸剤などを長期間服用している

6. 健康状態:

  • 糖尿病や慢性腎臓病、心血管疾患などの慢性疾患がある
  • 消化器系の疾患(クローン病、セリアック病、IBSなど)を持っている
マグネシウムが不足すると、神経伝達物質の活動過剰や興奮の促進によって頭痛などを引き起こすことがある

特に、先ほど挙げた「マグネシウム不足になりやすい人」に当てはまる方は、マグネシウム不足のリスクが高いので注意が必要です。マグネシウム不足チェックに多く当てはまった方や、マグネシウム不足になりやすい人に当てはまる方は、次の検査も受けてマグネシウム不足の状態やリスクを知り、適切な対応を取るようにしましょう。

マグネシウムの需要と不足を知る検査項目

マグネシウム不足かどうかをチェックする検査としては、主に骨粗しょう症など骨の状態をチェックする検査と、血液検査があります。血液検査では体内のマグネシウムの不足状態とマグネシウムの需要を知ることができ、骨粗しょう症の検査では骨の健康状態とマグネシウムの需要を知ることが可能です。

例えば、次の血液検査項目などでマグネシウムの不足状態や需要を知ることが出来ます。

スクロールできます
検査項目意味マグネシウム不足では
血圧循環血液の血管壁に対する圧力上昇しやすい
BS
血糖値
血液内のグルコース濃度上昇しやすい
HBA1c
ヘモグロビンエーワンシー
ヘモグロビンに対する
糖化ヘモグロビンの割合
上昇しやすい
1,5AG
1,5-アンヒドログルシトール
短期的な血糖変動を反映する
尿糖が出ると値が低くなり、
尿糖が出ないと値が高くなる
 糖尿病では
低下することが多い
CPR
Cペプチド
インスリンと一緒に血中に分泌
されるペプチド。
上昇はインスリン抵抗性
インスリン抵抗性が
ある場合は上昇する
TG
中性脂肪
血液中を移動している
中性脂肪の濃度
脂質代謝異常では上昇
LDL-C
LDLコレステロール
LDLコレステロールの血清濃度脂質代謝異常では上昇
HDL-C
HDLコレステロール
HDLコレステロールの血清濃度脂質代謝異常では低下
CHE
コリンエステラーゼ
脂質代謝に関わる酵素脂質代謝異常では上昇
FFA
遊離脂肪酸
脂肪組織が分解されて血液中に
溶け出した脂肪の濃度
インスリン抵抗性では
上昇する
ALP
アルカリホスファターゼ
亜鉛を材料に肝臓や骨などで
作られる酵素。活性化に
マグネシウムが必要
低下または上昇する
N
好中球
細菌感染防御に関わる細胞
運動やストレスでは上昇する
ストレスが持続している
場合や運動で上昇
Eo
好酸球
体内に侵入した異物と闘う細胞
アレルギーやストレスで低下する
ストレスが持続している
場合に低下
K
カリウム
血液中のカリウム濃度体全体のミネラル量の指標
高浸透圧尿などで低下しやすい
マグネシウムの需要と不足を調べる検査項目

マグネシウムは、「マグネシウムの働き」でも解説した様に、血圧の調節や血糖値のコントロール、脂質異常症や骨の形成に関わっている栄養素です。そのため、血液検査項目ではこれら糖代謝や脂質代謝、骨代謝などの検査項目がマグネシウム不足と需要のマーカーとして参考になります。

また、マグネシウムはストレスでも消耗しやすいことから、ストレスが持続している場合に数値が変動する好酸球や好中球などもマグネシウムの需要を知る上で有効です。

特に、マグネシウムの不足と需要を知る上で最も参考となるのが、「ALP:アルカリホスファターゼ」です。ALPはリン酸化合物を分解する酵素のことで、肝臓や骨、小腸や腎臓などの臓器や器官に存在しています。この酵素は骨芽細胞の細胞膜に存在し、骨代謝に大きく関わっていることから、骨形成状態や骨粗しょう症など骨がどれだけ壊されているかのマーカーとして知られています。

また、ALPは肝臓で作られる「胆汁」と共に排泄されていることから、肝臓や胆道の病気で胆汁が排泄されなくなると血中に溢れて値が上昇します。そのため、肝臓や胆のうの異常や病気を知るためのマーカーでもあります。

アルカリホスファターゼはマグネシウムによって活性化されて利用されていることから、値が低い場合はマグネシウム不足の可能性がある

このALPは亜鉛を元に作られる酵素で、作られた酵素はマグネシウムによって活性化されて利用されています。そのため、ALPの値が低い場合は亜鉛不足及びマグネシウム不足の可能性が考えられます。

また、成長期や骨折時、骨粗しょう症や脂肪肝などでは上昇することが知られており、胆石など肝臓や胆のうの病気が否定されている場合には骨の異常やカルシウム・マグネシウムの需要が増加していることが考えられます。

そのため、このALPが高い場合や低い場合は、いずれにしてもカルシウムとマグネシウムの不足や需要増加を疑いましょう。

ちなみに、血液検査には血中の「Ca : カルシウム」「 Mg : マグネシウム 」を検査する検査項目がありますが、これらの検査項目ではカルシウム・マグネシウムの不足や需要を知ることは出来ません。カルシウムやマグネシウムは基本的にすべての体内の反応に必要なので、血中カルシウム濃度や血中マグネシウム濃度は常に一定に保つことが出来るように厳密に制御されています。

カルシウムやマグネシウムは、血中濃度を一定に保つことが出来るように厳密に制御されている

そのため、基本的に血液検査項目にあるCaやMgの値は、カルシウムやマグネシウムが不足しても大きく変動しないことが一般的です。逆にこれら値が低下したり異常値で合った場合は、腎機能に問題がある可能性を疑います。カルシウムやマグネシウムは腎臓で再吸収されたり尿中排泄されたりして血中濃度を調節していますので、血中濃度に問題があった場合は腎臓の病気が疑われます。(※マグネシウムはカルシウムと違って副甲状腺機能の影響を受けないため、不足時に骨を溶かして利用することはありません)

また、タンパク質不足の状態では、血清マグネシウムの値が低く見える事があります。これは、タンパク質がマグネシウムを血中に保持する役割を担っているからです。特に、アルブミンというタンパク質がマグネシウムと結合(血中マグネシウムのおよそ30%ほど)し、血液中でその濃度を安定させています。タンパク質が不足すると、結合するアルブミンも減少し、結果として血清中のマグネシウム濃度が低く見えることがあります。この場合、数値が低くなっていたとしても、実際に体内のマグネシウムが不足しているとは限りません。

このような仕組みがある事から、血液検査項目にあるCaやMgの値でカルシウムやマグネシウムの不足や需要を知ることは出来ません。カルシウムやマグネシウムの大半は骨に存在していることから、マグネシウムやカルシウムの不足や需要を知るためには骨の健康状態を調べる方が重要です。

特に閉経後の女性や糖尿病を抱えている方は、骨粗しょう症のリスクが高まりますので、骨の健康状態もチェックしておいて下さい。骨の健康状態をチェックする検査としては次のような検査があげられます。

骨の健康をチェックするための検査項目例
スクロールできます
検査項目意味数値の目安
OC
オステオカルシン
骨芽細胞の活性状態を示す。
骨形成マーカー
3〜13 ng/mL
ucOC
未成熟オステオカルシン
骨質の健全性を示す
高値は骨折リスク上昇
4.5 ng/mL未満
TRACP-5b破骨細胞の活性化状態を示す
骨吸収マーカー
男性 590
女性420
mU/dL以下
U-Ca
尿カルシウム
尿中へのカルシウム排泄量を示す
高値は骨吸収促進の可能性
10mg/dL以下
25-OHビタミンD
血中ビタミンD濃度
骨吸収・骨形成バランスに関係
低値は骨粗しょう症リスク上昇
80〜100ng/mL
骨の状態をチェックできる血液検査項目

これらは血液検査で知ることができ、主に骨がどれだけ壊されているかや骨がどれだけ作られているかを知るマーカーとして役立ちます。また、カルシウムとマグネシウムの摂取量と、血中ビタミンD濃度をあわせて見る事で、骨粗しょう症リスクや骨吸収、骨形成バランスを知る指標にもなります。これら検査を行い、骨代謝の状態を調べて見て下さい。

また、血液検査では骨代謝の状態は調べることが出来ますが、実際の骨量や骨密度を調べることは出来ません。実際の骨量や骨密度を知るためには、血液検査以外に骨量・骨密度測定を行う事が必要です。

骨量や骨密度測定にはいくつかの種類があるが、その中でも正確に測定できるDXA法がオススメ

骨量・骨密度を測定する検査としては、超音波検査やDXA法(デュアルエネルギーX線吸収測定法)、MD法(マイクロデンス測定法)などがあります。それぞれ特徴やメリット・デメリットがありますが、オーソモレキュラー療法ではDXA法による測定をオススメしています。

まず、超音波検査については、かかとやすねの骨に超音波を当てて骨密度を測定する方法です。こちらはX線を使用していないため、妊娠中の方でも安全に測定することが可能ですが、他の方法に比べて精度が低いため、体全体の骨密度を評価したり骨粗しょう症の診断をしたりするには適していません。

超音波法

  • 超音波を用いて骨密度を評価する方法。
  • 超音波を用いるため、放射線を使用せず安全。妊娠中の方にも使用可。
  • 検査は数分で完了し、即時に結果が得られる。
  • 他の骨密度測定方法に比べて低コスト。
  • 検査装置が比較的小型で、診療所や家庭でも使用可能。
  • 但し、骨密度を直接測定しているわけでは無いため、他の方法に比べて精度が低い。

体全体の骨密度の評価や、骨粗しょう症の診断をするのには適していない。

もう一つのMD法では、厚さの異なるアルミニウム板に両手を置き、X線でアルミニウム板と同時に撮影することで、骨密度を測定する方法です。得られたX線写真から骨とアルミニウムの濃度を比べることで骨密度を解析します。

こちらの方法は、DXA法に比べて検査時間が短く、安価で簡便に出来るという特徴があります。しかし、測定する部位が手の骨のみのため、全身の骨密度は測定することが出来ません。また、精度はDXA法に比べて劣ります。

MD法(マイクロデンス測定法)

  • X線でアルミニウム板と手の骨を同時に撮影し、骨密度を測定する方法
  • X線を用いるため、被爆リスクがある
  • 検査時間が短く、即時に結果が得られる。
  • DXA法に比べて安価。
  • 検査装置が比較的小型。
  • 但し、骨密度を直接測定しているわけでは無いため、DXA法に比べて精度が低い。

体全体の骨密度の評価や、骨粗しょう症の早期発見には適していない。

対してDXA法では、2種類のX線を用いて、腰椎や大腿骨などの骨密度を測定する方法です。こちらは複数の骨部位の密度を一度に測定できることに加え、X線を使用しますが放射線量は非常に小さく被曝量は微量なことがメリットです。

測定精度も最も高く、全身の骨密度評価も可能なことから早期の骨粗鬆症の発見や診断に適しています。ただ、DXA法は他の検査に比べて検査時間が長く、設備も大型なため専門の医療施設でのみ検査可能というデメリットがあります。また、検査費用も比較的高く、妊娠中の方や授乳中の方は検査することが出来ません。

DXA法(デュアルエネルギーX線吸収測定法)

  • 2種類のX線を用いて、腰椎や大腿骨などの骨密度を測定する方法
  • X線を用いるため被爆リスクがあるが、被曝量は微量
  • 検査時間が比較的長く、検査に時間がかかる
  • 他の検査法に比べてコストが高い。
  • 検査装置が大型なため、専門の医療機関でのみ測定可。
  • 全身の骨密度や複数の骨密度が測定可能
  • 背骨や大腿骨など需要部分の骨密度が最も正確に測定できる

全身の骨密度が測定できることに加え、精度が高いため、骨粗しょう症の早期発見や診断に適している

このような違いから、骨量や骨密度を測定する場合はDXA法がオススメです。骨粗しょう症と診断された場合や、リスクが高いと診断された場合は、次に解説する分子栄養学的アプローチを参考にケアを行ってみて下さい。

ナンナン

そういえば、糖尿病だと骨粗しょう症になりやすくなるって聞いたことがあるかも💧

はる かおる

そうだね、糖尿病は高浸透圧尿によってカルシウムやマグネシウムの排泄量が増加するから、骨粗しょう症にもなりやすくなるよ。
カルシウムやマグネシウムが不足しているかどうかは、骨密度や骨量を測定して判断した方が良いね。

マグネシウム不足に対する分子栄養学的アプローチ

マグネシウム不足やマグネシウムの需要が高い時に対する分子栄養学的アプローチのご紹介です。ここでは、マグネシウム摂取に対する基本的な考え方やアプローチの仕方と、骨粗しょう症に対する分子栄養学的アプローチをご紹介します。

まず、マグネシウム不足の場合やマグネシウムの需要が高いときには、カルシウムとマグネシウムをセットで摂ることが分子栄養学の基本になります。「マグネシウムが不足しているならマグネシウムだけを補給すれば良いのでは?」と思うかも知れませんが、マグネシウムだけを摂取してもあまり意味はありません。マグネシウムはカルシウムとセットで働きますので、マグネシウムを補給する場合はカルシウムも同時に摂取するようにしましょう。

カルシウムとマグネシウムを摂取する際は、カルシウムとマグネシウムの摂取バランスが重要になります。最適な比率は人にもよりますが、食事からのマグネシウムの摂取量不足やストレスによる排泄量の増加などを加味すると、カルシウム:マグネシウムを1:1のバランスで摂取することが理想です。

カルシウムとマグネシウムの摂取バランス。ストレスの増加や食事からの摂取量不足などがある事から、カルシウムとマグネシウムは1:1で摂取することが望ましい
カルシウムとマグネシウムの摂取量は、一日あたりそれぞれ600mg〜を目標に摂取する

具体的な摂取目安としては、カルシウム600mg〜、マグネシウム600mg〜が一日あたりの推奨量になります。2回〜3回に分けて摂取しましょう。

ただ、人によってはカルシウム:マグネシウムを1:1のバランスで摂取するとお腹が緩くなってしまう場合があります。また、成長期のお子さん、妊産婦の方、骨粗しょう症の方など、カルシウムの需要が高い方もいます。そのような場合は、カルシウム:マグネシウムの摂取は2:1で摂取するのもオススメです。

1:1での摂取比率を推奨する方2:1での摂取比率を推奨する方
マグネシウムの摂取量が不足している方
ストレスが多い方
糖尿病の方
脂質異常症の方
スポーツをしている方
成長期のお子さん
妊産婦の方
骨粗しょう症の方
1:1の摂取比率ではお腹が緩くなってしまう方
カルシウム:マグネシウムのオススメ摂取比率

特に、骨粗しょう症と診断された場合にはカルシウム製剤を出されることが一般的ですが、カルシウムのみを補給してもマグネシウムが無ければ骨を作る事は出来ません。カルシウムとマグネシウムはセットで働いて骨を作っているので、カルシウムとマグネシウムはセットで摂取することが大切です。

骨の代謝にはカルシウム以外にもマグネシウムやビタミンDなど、様々な栄養素が関係している。

また、カルシウムとマグネシウムは吸収しにくいミネラルのため、カルシウムとマグネシウムをきちんと吸収するためにもビタミンDを同時に摂取するようにしましょう。ビタミンDは骨を強くするなどカルシウムとマグネシウムを利用するために必要な栄養素です。

カルシウムはマグネシウムとビタミンDによって調節され、一定の機能が保たれるようになっています。そして、このビタミンDは腎臓で活性化されて利用されていますが、この活性化に必要な酵素にはマグネシウムが必要になります。そのため、マグネシウムを利用するためには十分な量のビタミンDの摂取が必要です。

カルシウム、マグネシウムとビタミンD、ビタミンBとの関係。マグネシウムを利用するためにはビタミンDも必要

例えば、ビタミンDは日光を浴びて紫外線に当たった皮膚で作られるほか、食事からも摂取することが出来ます。ビタミンDにはいくつか種類があり、キノコ類に多く含まれるものが植物性の「ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)」で、魚や卵、乳類に含まれる動物性のものが「ビタミンD3(コレカルシフェロール)」です。ビタミンD2とビタミンD3は構造の一部が異なる同族体で、どちらも体内での生理活性作用は同じとされています。

この2つのうち、人体で大半を占めているのは「ビタミンD3」の方です。これは、皮膚に日光が当たることによってビタミンD3が作られるためです。皮膚に日光が当たって作られたビタミンDは「プロビタミンD3」と言って、コレステロールを材料に作られています。

ビタミンDは体内で活性化されて初めて作用する。ビタミンDは、タンパク質によって肝臓に運ばれ、腎臓で活性型に変わる

これらビタミンD2やビタミンD3は、血液中で運ぶためにタンパク質で出来たトラックと結合し、肝臓まで運ばれます。そこで、25-OHビタミンD3に変換され、更に必要に応じて腎臓で活性型のビタミンD3(1α,25-OHビタミンD3)に変えられて利用されています。

この肝臓や腎臓でビタミンD3を利用出来る形に変換するためには、酵素の働きが必要になります。この酵素の働きに必要なものがマグネシウムです。もし、マグネシウムの摂取量が不足していた場合は、ビタミンDが活性化できずに、不活性のまま体内に留まることが分かっています。

マグネシウムの摂取量が不足すると、ビタミンDが代謝されずに不活性のまま体内に留まることが分かっている

このビタミンDが不活性のまま活性化できずにいると、カルシウムやマグネシウムが利用出来なくなり、カルシウムやマグネシウムが不足したり骨粗しょう症のリスクが高まります。そのため、カルシウムとマグネシウムを摂取する場合は、必ずビタミンDも摂取するようにしましょう。

ビタミンDの摂取目安としては、ビタミンDの血中濃度が40ng/mL以下の方には1日あたり8,000IU以上、40ng/ml以上の方は4,000IU以上を目安に摂取することをオススメしています。

ビタミンDの摂取目安。血中ビタミンD濃度によって、4,000IU〜8,000IU〜摂取する

また、理想的な血中ビタミンD濃度としては、男女ともに80〜100ng/mLが推奨値となっています。この数値を目安に、ビタミンDの摂取量を調節してみて下さい。

血中ビタミンD濃度は、80〜100んg/mLを目標、維持する

この他、骨粗しょう症の方で「ucOC(低カルボキシル化オステオカルシン)」が高い方は、「ビタミンK」の摂取も重要です。ucOCとは未成熟のオステオカルシンのことで、オステオカルシンとは骨芽細胞が産生する骨の形成に重要な役割を果たすタンパク質のことです。このucOCが高い場合は、骨の石灰化が進んでいないため、骨密度が高くても転倒などにより簡単に骨折してしまうリスクが高まります。

通常はオステオカルシンの働きによって骨形成が行われていますが、ビタミンKが不足するとオステオカルシンの低カルボキシル化(未成熟化)が進んで未成熟のオステオカルシン(ucOC)が作られます。このucOCは骨に蓄積せず血中に分泌されるため、血清のucOC濃度が高い場合はビタミンK不足の状態と判断出来ます。

骨は、骨密度や骨量を図る意外にも、骨強度を測るucOC(低カルボキシル化オステオカルシン)を測定することも重要

このことから、ucOCの値が高かった方はビタミンKも同時に摂取するようにしましょう。ビタミンKの種類や働きなど詳しい事についてはここでは深く解説しませんが、一日あたりの摂取目安としては150㎍〜が推奨です。

ucOC(低カルボキシル化オステオカルシン)が高値の場合はビタミンK不足が考えられる。ビタミンKは、一日あたり150μg〜が摂取目安

併せて、骨を作るために必要なその他の栄養素も摂取するようにしましょう。骨の構造でも解説した通り、骨は鉄筋コンクリートのような構造になっていて、コラーゲン繊維が鉄筋の役割をし、そのコラーゲンを覆う「ハイドロキシアパタイト」という骨の成分がコンクリートの役割をしています。

このハイドロキシアパタイトを作るためには、カルシウムやマグネシウムの他にも、ケイ素やビタミンK、ビタミンDも必要です。また、鉄筋となるコラーゲン繊維を作るためには材料となるタンパク質やビタミンC、ヘム鉄や亜鉛、ビタミンB群も必要になります。

骨は鉄筋コンクリートに似た構造をしており、タンパク質やビタミンBなど、カルシウムマグネシウム以外にも様々な栄養素が必要

また、繰り返しになりますがマグネシウムを利用するためにはビタミンDが必要で、このビタミンDを運んだり活性化して利用するためにはマグネシウムの他にタンパク質やビタミンB群も必要になります。このことから、単にマグネシウムやカルシウム、ビタミンDだけを摂れば良いというわけでは無く、タンパク質やビタミンB群などその他の栄養素も組み合わせて摂取するようにして下さい。これら分子栄養学的アプローチをまとめると次のようになります。

マグネシウム不足や需要が高い時に対する分子栄養学的アプローチ(1日あたり)

  • カルシウム 600mg〜
  • マグネシウム 300mg〜600mg
  • ケイ素
  • ビタミンK 150㎍ (必要に応じて摂取)
  • ビタミンD 4,000IU〜8,000IU
  • タンパク質
  • ビタミンC
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • ビタミンB群

これら栄養素の摂取に加えて、食事の見直しや生活習慣の見直しなども同時に行いましょう。特に骨は十分な刺激が与えられないと弱くなるため、運動する習慣を身につけることが大切です。運動には精神的なストレスを軽減したり自律神経を整える効果もあり、ストレス対策にもなります。

この他、喫煙や過度な飲酒も骨密度の低下やカルシウム、マグネシウム不足に繋がりますので控えるようにしましょう。タバコは性ホルモンであるエストロゲンの作用を抑制するため、骨を壊す破骨細胞の働きが活発になるリスクがあります。また、アルコールの多飲も骨を作る骨芽細胞の働きが抑えられ、骨の形成が不十分になります。

更に、骨を作るためには骨に刺激を与えることも必要。運動や生活習慣の見直し等も必要に応じて行う

エストロゲンは性ホルモンの一種で、女性らしさを維持し、骨量を維持したりコレステロール値などを整えて動脈硬化を予防したりと様々な働きがあるホルモンです。女性の場合は閉経後にエストロゲンの分泌が急激に減少するため、エストロゲンの保護作用が無くなって骨粗しょう症や糖尿病になりやすくなります。

将来にわたって健康な骨を維持するためにも、無理なダイエットや偏食、喫煙や過度な飲酒は避け、バランスの良い食事と運動する習慣を取り入れるようにしましょう。

ナンナン

なるほど、骨粗しょう症だからと言って、カルシウムだけを補給すれば良いってもんじゃ無いんだね

はる かおる

そうそう、骨を作るためには、カルシウムやマグネシウム以外にもタンパク質やビタミンBなど様々な栄養が必要だよ。マグネシウムが不足しているからと言って、マグネシウムだけ足そうとするのは間違いだから気をつけてね

エプソムソルトのマグネシウムで分子栄養学は実践出来る?

マグネシウムには様々な働きがありますが、不足しやすいミネラルなので日頃から十分な量の摂取量が必要です。

マグネシウムの摂取方法は口腔摂取以外にも、「エプソムソルト」を入れたお湯に入浴すること皮膚から吸収する方法もあり、一部の間では高濃度のエプソムソルトに入浴してマグネシウムを補給する事がブームになっている事があります。

このエプソムソルトに入浴することで、十分な量のマグネシウムは補給出来るのでしょうか? また、分子栄養学は実践できるのでしょうか?

結論としては、エプソムソルトに入浴して分子栄養学を実践することは出来ません。また、口腔からの摂取と経皮からの吸収では、同じ効果が得られる訳ではない点にも留意が必要です。

まず、入浴剤には「硫酸マグネシウム」を主成分としたエプソムソルトと呼ばれる物と、「塩化マグネシウム」を主成分とした物があります。どちらもマグネシウムを主成分としており、経皮から吸収されていると言われています。

ですが、分子栄養学においては基本的にマグネシウム単体を補給する事はありません。マグネシウムはカルシウムやビタミンDとともに働くので、これらはセットで摂ることが基本です。この時点で、エプソムソルトで分子栄養学を実践することは出来ません。

また、口腔からの摂取と経皮からの摂取を比較すると、その摂取量には大きな差があります。サプリメントなどからマグネシウムやカルシウムを摂取する場合、それぞれ一日あたり300mg〜600mg程度摂取することが出来ますが、エプソムソルトの場合はマグネシウムのみとなります。エプソムソルトが経皮吸収されていることは実験により明らかになっていますが、どの程度の濃度が体内に浸透しているかについては、具体的な数値として明らかにはされていません。

例えば、医薬品で使用される硫酸マグネシウムは高血圧の薬としても用いられていますが、同じ成分が主成分のエプソムソルトに高血圧を抑える効果は無い2と言われています。そのため、口腔からの摂取と経皮からの吸収では同じ効果が得られるわけでは無い点に留意が必要です。

エプソムソルトでは主にリウマチや関節痛などの痛みや、アトピーなどの肌荒れに効果があったとされる研究結果が多数を占めています。このことから、口腔からの摂取と経皮からの吸収は分けて考え、必要な栄養は食事やサプリメントでしっかり摂る。そして痛みや肌に対してはエプソムソルトも使うなどして上手く使い分けるのが良いでしょう。

この時、エプソムソルト入浴をする場合は、使用ルールをよく守り、長時間の入浴は避けて下さい。一部では通常よりも数倍の濃度での入浴を推奨していることがありますが、高濃度のエプソムソルト入浴を長時間行う事は危険です。

高濃度の塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムは、その浸透圧により体内から水分を引き抜こうとします。通常の濃度で20分程度の入浴時間なら問題ありませんが、高濃度で長時間入浴すると肌の水分が奪われすぎたり脱水症状を起こす危険性があります。特に脱水では腎機能に負担がかかることから、腎機能に悪影響を与える可能性もあります。

マグネシウムは不足しやすく様々な効果がありますが、バスソルトのみで分子栄養学を実践することは出来ません。分子栄養学では至適量の栄養補給を行う事が大切ですので、しっかりと食事からもカルシウムやマグネシウム、ビタミンDなども摂るようにしましょう。

マグネシウムは万能薬にあらず。栄養状態の改善には必ずオーソモレキュラー療法を受けましょう

マグネシウムの不足は摂取不足以外にも様々な原因が関係しており、糖尿病や消化器系疾患、運動やストレスなど様々な原因が関係しています。また、この他にも骨粗しょう症など様々な疾病や栄養不足が関係していて、人によって複数の原因が複雑に絡み合っていることも多くあります。

そのため、単にカルシウムやマグネシウム、ビタミンDを補給するのでは無く、これら原因となる要因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の血液検査を受けてみましょう。

オーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査項目に加え、消化吸収能の状態やピロリ菌感染の有無、甲状腺の検査、副腎疲労や短鎖脂肪酸検査、リーキーガット症候群検査などを必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。

複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの栄養不足の根本原因がどこから来ているのかが分かります。また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。

このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。
マグネシウムには様々な働きがありますが、あくまで「補酵素」であり、万能薬ではありません。マグネシウムを利用するためには、タンパク質やビタミンB群など様々な栄養が必要です。このタンパク質の消化能力や栄養の需要は人それぞれ異なりますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。

オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。

また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。

分子栄養学の実践は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用しましょう

オーソモレキュラー療法では、血液検査や各種検査の結果に応じて分子栄養学実践専用に設計されたサプリメントで栄養アプローチをしていきます。

分子栄養学実践専用サプリメントとは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。また、原材料には天然由来の生体内物質が使用されていたり、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。

そのため、分子栄養学実践専用サプリメントは、市販されているサプリメントや海外サプリメントと比べて非常に高価となっています。

しかし中には、「市販されているサプリメントや海外サプリメントを利用して実践したい」と思っている方も多いかもしれません。市販されているサプリメントや海外サプリメントは、分子栄養学実践専用サプリメントと比べて非常に安価です。

ですが、市販されているサプリメント海外サプリメントなどで販売されているサプリメントで分子栄養学を実践をするのはオススメしません。

市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、そもそも消化吸収能が低下した方や病態を抱えた方が摂取するようには設計されておらず、胃や腸でも全く溶けない粗悪品も流通しています。

市販されているサプリメントの中には胃や腸で溶けずにそのまま便に排泄される物もある

また、原材料に人工的に加工されたものや合成されたもの、天然界には存在しない化学構造のものなどが使われていることもあり、これらを大量に摂取することはむしろ生体内の分子を乱してしまうことにも繋がります。

加えて、栄養素が酸化・劣化して効力を失っているものや、そもそも有効成分自体が殆ど含まれていないものなどもあります。このことから、市販されているサプリメントや海外サプリメントを使って分子栄養学を実践することはオススメしていません。

分子栄養学を実践する際は、このようなサプリメントの善し悪しを学ぶことも非常に重要です。分子栄養学実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの違いについては、下記の記事を参考にして下さい。

そして、分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する際は必ず「分子栄養学実践専用サプリメント」を使用しましょう。

サプリメントは、きちんと消化吸収・利用されて初めて意味があります。分子栄養学実践専用サプリメントでは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。

また、分子栄養学では一般的な量よりも遙かに多くの栄養素を摂取します。この時、栄養素同士が反応して効力を失ってしまったら意味がありません。分子栄養学実践専用サプリメントでは、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。

このことから、分子栄養学を実践する際は、必ず分子栄養学実践専用サプリメントを用いるようにして下さい。

ナンナン

サプリメントは何を選んでもいいわけじゃないのか❗

はる かおる

そうだよ、サプリメントは同じように見えてもその中身や設計や全く異なっているんだ質の悪いサプリメントを使うと逆効果になるから、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用に作られた作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね

分子栄養学実践用に設計されたケンビックスシリーズ

マグネシウムとは? マグネシウムの働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説まとめ

以上が、マグネシウム働きと代謝の基本、マグネシウム不足に対する分子栄養学的アプローチについてでした。

マグネシウムには酸化マグネシウムや塩化マグネシウムなどの種類があり、それぞれ吸収率や効果などに違いがあります。分子栄養学では、このようなマグネシウムの働きや代謝をよく理解することが大切です。

また、マグネシウムはカルシウムとセットで働くので、マグネシウムとカルシウムはセットで摂取することが基本です。加えて、ビタミンDもマグネシウムを利用するために必要な栄養素なのでセットで摂取するようにしましょう。

分子栄養学やオーソモレキュラー療法というと単にサプリメントを飲むだけの療法だと思われがちですが、この記事で解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。もし、オーソモレキュラー療法に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。

分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。

オーソモレキュラー療法の申し込み方法については、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で詳しくご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。

参考情報

  1. eJIM マグネシウム ↩︎
  2. エプソムソルト入浴で得られる効果の科学的根拠は?経皮吸収についても解説 ↩︎

※当サイトは分子栄養学の普及を目的に、個人が独学で学んだ情報を発信しているサイトです。情報の正確性には配慮しておりますが、サイトに記された情報については、必ずしも正確性を保証するものではありません。また、サイトに示された表現や再現性には個人差があり、必ずしも利益や効果を保証したものではございません。
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