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亜鉛とは? 亜鉛の働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説

「風邪をひきやすい」「暗いところが見えにくい」「血糖値が上がりやすい」「アトピーやアレルギーがある」「味覚に異常を感じる」などの症状は、もしかしたら亜鉛不足が原因かもしれません。亜鉛が不足すると、暗いところで眼が見えにくくなる夜盲症を引き起こしたり、アトピーやアレルギーなどが起こりやすくなったりなど、様々な不調へと繋がってしまう原因になります。

特に、亜鉛は眼の健康や視力、皮膚の健康などに関わるビタミンAと協力して働いており、亜鉛が不足するとビタミンAが働けなくなって眼や皮膚などに異常が現れます。これ以外にも、亜鉛は血糖値の正常なコントロールや貧血改善などにも関係しています。

今回は、この亜鉛の基本についてと、亜鉛がどのように吸収・代謝されているのか、亜鉛とビタミンAとの関係についてや、アトピーやアレルギーなどを含めた亜鉛不足に対する分子栄養学的アプローチを解説します。

目次

亜鉛とは?

ナンナン

むむむ・・・・ あの店長・・・
さては、コスト削減で味を落としたな💢

はる かおる

なになに、どうしたの❓❓

ナンナン

あ、ちょっと聞いてよ❗
ボクのお気に入りだったピザの味が落ちたんだ❗
それも、ちょっとどころじゃなくてかなり酷いんだよ❗

はる かおる

そんなに味が落ちたの❓ どれどれ・・・
うーん、相変わらず美味しいけどなぁ

ナンナン

いやいや、そんなはずは・・・

ナンナン

やっぱり美味しくない❗
だって全然味がしないもん💢

はる かおる

味がしない・・・❓
もしかして、味がおかしいのはピザの方じゃ無くてナンナンの味覚のほうかもよ

ナンナン

えっ、どういうこと❗❓

はる かおる

味は舌で感じているのは知っていると思うけど、この味を感じる細胞に異常が起こると味覚を感じにくくなるんだ。特にこの味覚を感じる細胞には亜鉛が関わっていて、亜鉛が不足すると味覚障害を起こすことがあるよ。
そういえば、ナンナンってピザとか加工食品を食べるのが大好きだったよね。

ナンナン

あ、亜鉛不足・・・❓
それがピザ好きと関係あるの❓❓

はる かおる

亜鉛はもともと摂取しにくい栄養素で、加工食品に含まれるリン酸などの影響で吸収が阻害されてしまうんだ。だから、加工食品を習慣的に多く食べていると、亜鉛が不足しやすくなるんだよ

ナンナン

な、なるほど・・・💧
じゃあ、ピザの味がおかしいんじゃ無くてボクの亜鉛不足かもしれないんだね💧 どうやったら、味覚を元に戻せるかな❓❓

はる かおる

亜鉛は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれているよ。でも、亜鉛だけを摂れば良いって訳じゃないんだ。このあたりは複雑だから、もっと詳しく解説してあげるね

亜鉛(あえん、Zinc)は、私たちの体にとって欠かせない「必須ミネラル」の一つです。体の中では、およそ2〜3g程度存在し、アルコール代謝やビタミンA代謝など300種類以上の酵素の働きを助ける「補因子(ほいんし)」として機能しています。

加えて、細胞の成長や修復(DNAの複製)をサポートする働きがあるほか、傷が治るのを早めたり、エネルギーの代謝や血糖コントロール、免疫力の向上にも役立っています。また、味覚を感じるためにも亜鉛は大切な役割を果たしていて、不足すると味覚が鈍くなることもあります。

亜鉛の主な働き。亜鉛は、細胞の成長や修復に関わるほか、体内で300を超える酵素の活性化に関与している

この亜鉛は、現代人において不足しやすいミネラルの1つです。その理由は、亜鉛自体がそもそも食事から摂取しにくい栄養素である事に加え、無理なダイエットや加工食品の摂取など偏った食生活、高齢化などによる食生活の変化などによって、「現代型栄養失調」に陥っている人が多くなっているためです。

現代型栄養失調とは、カロリーなどエネルギーの摂取は十分に足りているにもかかわらず、タンパク質やビタミン、ミネラルといった身体に必要な栄養素が十分に摂れていない状態の事です。亜鉛は赤身肉や魚、牡蠣などの魚貝類に多く含まれていますが、現代の食生活ではこれら赤身肉や魚貝類などの摂取量が十分で無い場合があります。逆に、ラーメンやパスタ、うどんやパンなど炭水化物や加工食品に偏った食生活を送っている方が多くなっており、このことから、亜鉛は意識的に摂取しないと不足しやすい栄養素です。

亜鉛には、ビタミンと協力して眼の健康を維持する以外にも、細胞の正常な分化分裂(遺伝子の転写)に関係しており、生殖機能の維持や貧血の改善にも関わっています。不足すると夜盲症になりやすくなったり、アトピーやニキビ、タコやウオノメなど皮膚の異常が起こりやすくなったり、貧血になりやすくなります。亜鉛はビタミンAやビタミンDと協力して働いており、これらもあわせて亜鉛は積極的に摂取したい栄養素の1つです。

亜鉛が多く含まれる食品

亜鉛は、主に食事から摂取する必要があり、特に肉や魚、貝類に多く含まれています。成長期の子どもや、特に身体が成長する時期には、十分な量を摂取することが大切です。

亜鉛を多く含む食品
1.魚介類
牡蠣(100g生)……14mg
ホタテ(100g生)……2.2mg
カニ(100g生)……3.2mg
エビ (100g生)……1.4mg
イワシ(100g生)……1.3mg
2.肉類
牛肉赤身肉(100g生)……5.7mg
豚赤身肉 (100g生)……3.1mg
鶏もも肉(100g生)……1.7mg
3.内臓肉
牛レバー(100g生)……3.8mg
豚レバー(100g生)……6.9mg
鶏レバー(100g生)……3.3mg
4.ナッツ・種実類
かぼちゃの種(100g)……7.7mg
ヒマワリの種(100g)……5mg
カシューナッツ(100g)……5.4mg
アーモンド(100g)……3.6mg
ピスタチオ(100g生)……2.5mg

6. 豆類
ひよこ豆(100g)……3.2mg
レンズ豆(100g)……4.8mg
大豆製品(高野豆腐)(100g)……5.2mg

7. 乳製品
チーズ(チェダー)(100g)……4.0mg
8. 全粒穀物
全粒小麦(100g)……3.0mg
オートミール(100g)……2.1mg
キヌア(100g)……2.8mg

9. 卵
鶏卵(100g生)……1.1mg

※赤字はフィチン酸も多く含む。
※『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』より作成

亜鉛の吸収と代謝

亜鉛は主に小腸で吸収され、主に腸管上皮細胞で吸収されています。その効率は摂取する食物の種類や体内の条件に大きく影響をうけ、一般的に亜鉛の吸収率は20〜40%程度とされています。

この亜鉛の吸収には、輸送タンパク質が関与しており、特に「ZIP4(Zrt,Irt-like Protein4)」と呼ばれるタンパク質が、亜鉛を腸管上皮細胞の内側に取り込んでいます。ZIP4は消化管からの亜鉛吸収量を調節していて、亜鉛不足ではZIP4の数が増え、充足するとZIP4の数が減って亜鉛の吸収量を調節しています。他にも、鉄や銅、亜鉛などを吸収する共通の経路であるDMT1からも吸収されていると言われています。

亜鉛がZIP4によって腸管上皮細胞の内側に取り込まれると、今度は血管側の腸管上皮細胞から「ZnT(Zn transporter)」という亜鉛トランスポーター(輸送経路)を介して細胞外に分泌され、血中に入ります。ZnTは、消化管以外にも全身の細胞に存在していて、細胞内の亜鉛を細胞外へ分泌する働きを担っているものです。血中に分泌された亜鉛は、タンパク質で出来た輸送体の「アルブミン」などと結合し、門脈経由で肝臓に運ばれて利用されます。

この時、腸管上皮細胞で吸収された亜鉛の一部は、「メタロチオネイン」というタンパク質に結合し、細胞内で一時的に貯蔵されます。そして、粘膜細胞内に蓄積された余分な亜鉛は小腸粘膜の剥離と共に便中に排泄され、体内の亜鉛が過剰にならないよう調節されています。

このメタロチオネインは腸粘膜以外にもさまざまな細胞に存在し、とくに表皮細胞(皮膚)や生殖細胞、肝臓や腎臓など、細胞の分裂や増殖の盛んな組織に多く存在しています。メタロチオネインはこれらの細胞で亜鉛を貯蔵する役割を持ち、必要に応じて直ちに亜鉛を供給できるようにしています。メタロチオネインは、亜鉛の摂取量が増えると合成量が増加し、亜鉛が不足すると合成量が低下します。また、体にストレスがかかったときに分泌される「グルココルチコイド」や「アドレナリン」などのホルモン、「サイトカイン」などの炎症物質は、メタロチオネインの合成を促進させる働きがあります。これは、これらホルモンや炎症物質が分泌されている状態では亜鉛の需要が高まることから、体内に亜鉛を確保するための生理的な反応の1つです。

この吸収経路は同じ微量ミネラルである「銅」と一部共通の仕組みとなっていることから、亜鉛と銅には深い繋がりがあります。

亜鉛と銅は同じ吸収経路を辿ることから深い繋がりがある。そのため、亜鉛と銅のバランスが重要

例えば、亜鉛と銅は吸収の際に競合関係にある事があげられます。これは、亜鉛を多く摂取すると、腸内でメタロチオネインというタンパク質が増加するためです。メタロチオネインは亜鉛よりも銅と強く結びつきやすく、結果的に銅の吸収が妨げられます。

具体的には、亜鉛を多く摂取するとメタロチオネインというタンパク質を増加させ、メタロチオネインが銅と強く結合します。メタロチオネインは亜鉛よりも銅と結びつきやすく、銅と結合したメタロチオネインは腸管上皮細胞に留まり、小腸粘膜が剥がれ落ちることによって余剰な銅は便中に排泄されます。逆に、亜鉛の摂取が不足するとメタロチオネインの合成量が減少し、余剰な銅の排泄量が低下して銅の血中濃度が上がりやすくなります。1

また、亜鉛の吸収も行っているとされるDMT1では、吸収経路が鉄や銅などと共通であることもあげられます。亜鉛や銅、鉄など特定のミネラルを大量に摂取すると、特定のミネラルがDMT1の吸収経路を占有してしまい、その他のミネラルの吸収が阻害されてしまう可能性があります。

このような仕組みのため、亜鉛が不足すると銅の血中濃度が上がりやすくなり、逆に亜鉛を十分に摂取すると銅の血中濃度が下がりやすくなるという関係にあります。銅は様々な食品に多く含まれており、食事量が十分であれば銅が不足することは殆どありません。逆に、現代の食生活では亜鉛を積極的に摂取しないと不足しやすく、銅の血中濃度は上がりやすい傾向になっています。

この亜鉛と銅はお互いに拮抗してシーソーの様な関係になっていますので、亜鉛が足りているかどうかは亜鉛と銅の比率でチェックすることが大切です。

この他、亜鉛の吸収効率は摂取する食物の種類や体内の条件に大きく影響をうけます。亜鉛の吸収・代謝を助けてくれるものや、阻害してしまうものには次のようなものがあげられます。

亜鉛の吸収・代謝を助けてくれるもの

  • タンパク質
    タンパク質や、タンパク質に含まれるヒスチジンやシステインなどのアミノ酸は、亜鉛と結合して吸収を促進する。また、血中で亜鉛を運ぶためにはタンパク質で出来たトラック(アルブミン)が必要
  • 動物性食品
    肉類や魚介類に含まれる亜鉛は、植物性食品に比べて吸収が良いとされる。これは、動物性食品に含まれるアミノ酸や有機酸が、亜鉛の吸収を促進するためです。
  • ビタミンC
    ビタミンCは、亜鉛の吸収を助ける作用がある。これは、ビタミンCが亜鉛をキレート化し、腸内での吸収を促進すると言われているためです
  • クエン酸などの有機酸
    ビタミンCと同じく、クエン酸は亜鉛の吸収を促進すると言われている
  • 短鎖脂肪酸
    腸内に生息する納豆菌や酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌は、短鎖脂肪酸を産生する。この短鎖脂肪酸は亜鉛の吸収を助ける
  • 発酵食品(味噌、醤油、麹納豆、キムチなど)
    発酵食品に含まれる酵素や乳酸菌は、短鎖脂肪酸と同じく亜鉛の吸収を助けてくれる。また、味噌には亜鉛吸収に関わるZIP4の発現を促進する因子が含まれていると言われている2。発酵食品には大豆が主原料として使われているものもあるが、発酵過程でフィチン酸が分解されているものが多く、これらは吸収阻害の心配が無い3
  • 十分な胃酸分泌
    亜鉛は動物性のタンパク質と同時に摂取すると吸収率が促進される。このタンパク質をアミノ酸までしっかりと消化するためには、十分な胃酸の分泌が必要です。胃酸の分泌が正常であると、タンパク質の消化が正常に行われて亜鉛の吸収が促進されます。逆に、加齢やストレスにより胃酸分泌が減少すると、タンパク質の消化能力が低下し、関連して亜鉛の吸収、利用効率が低下することがあります。

亜鉛の吸収・代謝を阻害してしまうもの

  • タンパク質不足
    亜鉛の吸収、運搬にはタンパク質(アルブミンなど)が関わる。そのため、タンパク質不足では亜鉛の吸収と利用効率が低下する
  • フィチン酸(玄米、豆類など)の摂取
    穀物や豆類に含まれるフィチン酸は、亜鉛と結合して亜鉛の吸収を阻害してしまう。
  • 菜食主義
    亜鉛は穀物や豆類、種実類にも多く含まれるが、これらはフィチン酸を多く含むことから亜鉛の生体内利用効率が低い
  • タンニン(コーヒー、紅茶、緑茶等)の摂取
    コーヒーや紅茶などに含まれるタンニンは、亜鉛と結合して吸収を妨げると言われている
  • リン酸塩、ポリリン酸塩など(加工食品に多い)
    食品添加物に使われるリン酸塩などは、亜鉛とキレートを形成して亜鉛の吸収を妨げる
  • 過剰な食物繊維
    食物繊維は消化管内で栄養素と結合し、その吸収を妨げることがあります。特に過剰な食物繊維は、亜鉛や鉄と結合して吸収を妨げてしまうことがあります。
  • 吸収不良症候群
    クローン病やセリアック病など、腸の吸収機能が低下する疾患では、亜鉛の吸収が阻害されます。
  • アルコール摂取
    アルコールの過剰摂取は、胃粘膜や肝臓にダメージを与え、亜鉛の吸収不良や尿中排泄量の増加を招きます。また、亜鉛はアルコールの解毒に関わっており、過剰なアルコール摂取は亜鉛の消費を増加させます。この他、過剰なアルコールは脳の視床下部や下垂体を障害し、代謝異常などによる複合的な要因により亜鉛不足を招きます
  • 薬物の影響
    降圧薬、抗生物質、抗うつ剤、ステロイド剤などの一部薬物は、キレート作用を持つことから亜鉛の尿中排泄量が増加し、亜鉛不足を招きやすくなります
  • 胃酸抑制剤
    H2ブロッカーなどの胃酸抑制剤の使用は、胃酸の分泌を抑制してタンパク質の消化能力を低下させて、結果的に亜鉛の吸収や利用を妨げてしまうことがあります
  • 過剰な鉄や銅の摂取
    高量の鉄や銅の摂取(鉄のみを大量に摂取するなど)は、亜鉛の吸収を阻害することが知られています。これらのミネラルは亜鉛と競合し、吸収を妨げてしまうことから、ミネラルはバランス良く摂取することが大切です

特に、亜鉛の吸収においては動物性タンパク質に含まれるアミノ酸が重要で、これらアミノ酸が亜鉛と結合することで吸収を助けています。このタンパク質をアミノ酸まで消化するためには胃酸が十分に分泌されていることが必要です。この胃酸が少ない場合はタンパク質の消化能力が低下し、関連して亜鉛の吸収率や利用効率も低下してしまいます。そのため、胃酸の分泌を抑制してしまうH2ブロッカーなどのお薬を使用している場合は、関連して亜鉛の吸収や利用を妨げてしまいますので注意して下さい。

また、加工食品に多く含まれるリン酸の摂取や、コーヒー・紅茶などに含まれるタンニン、穀物などに多く含まれるフィチン酸は、亜鉛の吸収を妨げてしまうことが知られています。上述した亜鉛が多く含まれている食品の中に豆類や穀物、種実類などがあげられていますが、これらはフィチン酸を多く含むことから、亜鉛が多く含まれていても食べ過ぎると亜鉛不足になる恐れがあるので注意が必要です。

逆に、牡蠣や肉など動物性食品に含まれる亜鉛は、アミノ酸など有機酸と結合しているため植物性食品に含まれる亜鉛よりも吸収率が高くなっています。そのため、亜鉛を摂取する際は植物性食品よりも動物性食品から摂取するようにしましょう。

それから、高食物繊維の食事は、亜鉛などミネラルの吸収を阻害してしまうことが知られていて、これらの摂りすぎにも注意が必要です。ただし、腸内に住んでいる善玉菌は、食物繊維をエサに「短鎖脂肪酸」を産生してくれる菌もいます。この短鎖脂肪酸はカルシウムやマグネシウム、鉄・亜鉛などのミネラルの吸収を助けてくれる働きがあります。

腸内に存在する4種類の腸内細菌(大腸菌、酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌)は、鉄や亜鉛などのミネラルの吸収を助けてくれる

そのため、高食物繊維の食事は亜鉛などミネラルの吸収を妨げてしまうと言われていますが、腸内環境が整っていればそこまで気にする必要はありません。むしろ、食物繊維はお腹の調子を整えてミネラルの吸収を助けてくれますので、積極的に摂るようにしましょう。

亜鉛は、銅と共通の吸収経路で吸収されていて、亜鉛だけなど特定のミネラルのみを大量に摂取すると、銅の吸収を阻害してしまう恐れがあります。特にサプリメントで亜鉛のみの栄養素を単品で大量に摂取することは、銅と競合して吸収を妨げてしまう恐れがあるため、ミネラル類をサプリメントで摂取する際はその他のミネラルもバランス良く摂取するように心がけて下さい。

この亜鉛吸収率は、年齢と共に吸収率が低下していきます。例えば、若い男性の亜鉛吸収率は31%程度でしたが、60歳を超えた男性の亜鉛吸収率は平均17%と有意に低下していました。そのため、亜鉛は加齢と共に積極的に摂取する必要があります。

亜鉛は吸収されにくい栄養素で、加齢と共に吸収率が低下する。そのため、加齢と共に積極的に摂取したい栄養素の1つ

吸収された亜鉛は、全身のあらゆる細胞で働き、骨を作ったり、インスリンの構成成分として使われたり、アルコールの代謝やビタミンAの代謝、造血など様々な代謝で使われます。仮に余分に摂取したとしても、亜鉛は亜鉛トランスポーターの「ZIP4(Zrt,Irt-like Protein4)」や「メタロチオネイン」の働きによって吸収量が調節されたり便中に排泄されるため、通常の食事や分子栄養学の実践において過剰摂取になることはほぼありません。(分子栄養学実践専用サプリメントの場合)

むしろ亜鉛は不足するリスクの方が高く、一日あたりの所要量を摂取出来ていたとしても、ストレスや吸収能力の低下、加工食品の摂取量増加などで潜在性の亜鉛欠乏になっている方が見受けられます。亜鉛は普通の食事から10〜15mgほど摂取出来ますが、上述したように吸収阻害や吸収率の低下要因が多く存在するため、健康を保つためには成人で一日当たり15〜60mgを目安に補給するのがオススメです。

ナンナン

なるほど・・・
加工食品の摂りすぎは、亜鉛の吸収を阻害しちゃうんだね💧

はる かおる

そうそう。だから、なるべく新鮮な肉や魚を多く食べるのがオススメだよ。とは言っても、全ての加工食品がダメって訳じゃないから、勘違いしないようにね。

亜鉛の種類と、サプリメントの亜鉛、病院で処方される亜鉛の違い

亜鉛は食品やサプリメント以外に、お薬としても用いられています。主な物としては、ウィルソン病(先天性銅代謝異常)や低亜鉛血症治療薬として使われている「ノベルジン(酢酸亜鉛)」や、外傷、熱傷、凍傷、湿疹などの皮膚疾患に使われる「亜鉛華(酸化亜鉛)」、胃潰瘍の治療に使われる「ポラプレジンク」などがあります。

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お薬で使われる亜鉛含有製剤の代表的な種類例
ウィルソン病
低亜鉛血症
ノベルジン(酢酸亜鉛)
ジンタス(ヒスチジン亜鉛水和物)
外傷、熱傷、凍傷、湿疹、皮膚炎、白癬など
その他の皮膚疾患によるびらん・潰瘍・湿潤面
亜鉛華(酸化亜鉛)
亜鉛華軟膏(酸化亜鉛)
胃潰瘍ポラプレジンク
お薬に使われる亜鉛製剤の代表的な種類と違い

これらお薬は「亜鉛のみ」を大量に含み、治療を目的としたお薬のため、栄養補助を目的とした用途では使われていません。もし栄養補助を目的として漠然と日常的に摂取した場合は、銅の吸収阻害によって銅欠乏症を引き起こすリスクがあり、大変危険です。銅欠乏症になると、赤血球数の減少(貧血)や、疲労感や筋肉量低下、白血球数の減少により感染リスクが上昇するなどの異常が起こることがあります。また、時に骨粗しょう症や神経の損傷が発生し、手足にピリピリする感覚や感覚消失、錯視、抑うつなどの異常が起こることがあります。

この理由としては、先ほどの亜鉛の吸収と代謝でも解説した様に、亜鉛を大量に摂取すると銅の吸収を阻害してしまうためです。亜鉛を大量に摂取すると、腸内でメタロチオネインというタンパク質が増加し、このメタロチオネインが銅と強く結びつくことで結果的に銅の吸収が妨げられます。特にお薬で用いられている亜鉛含有製剤は亜鉛のみを大量に含むため、漠然と摂取し続けると銅欠乏症のリスクが高まる恐れがあります。

このため、お薬の亜鉛含有製剤をサプリメント代わりに使用する事は出来ません。また、逆にサプリメントの亜鉛もお薬の代わりにはなりません。例えば、胃潰瘍の治療薬として用いられる「ポラプレジンク」は吸収率が高いことから亜鉛の補給を目的として推奨・処方されていることがあります。しかし、厚生労働省が発表している「ポラプレジンクの「使用上の注意」改訂の周知について(依頼)」では、平成25年度以降、本剤による銅欠乏症に関連する副作用報告が9例集積しているとされています。このことから、ポラプレジンクの「重大な副作用」の項には、「銅欠乏症:本剤は亜鉛を含有するため、亜鉛により銅の吸収が阻害され銅欠乏症を起こすことがある。栄養状態不良の患者で銅欠乏に伴う汎血球減少や貧血が報告されているため、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。」が追記されました。

このように、お薬で用いられている亜鉛含有製剤を漠然と摂取し続けると銅欠乏症のリスクが高まる恐れがあります。もし今現在、治療目的以外で亜鉛含有製剤を服用している方は、必ず医師や専門家の指示の元、正しい服用を行うようにして下さい。

また、海外サプリメントや市販されているサプリメントの中にも、亜鉛のみしか含有していないものが多く出回っています。これらも亜鉛のみしか含まれていないことから、漠然と日常的に摂取し続けると銅欠乏症のリスクが高まる恐れがあります。サプリメントで亜鉛を摂取する際は、原材料や亜鉛の吸収、生体内利用効率などもきちんと考慮された質の高いサプリメントを選ぶようにしましょう。

一方で牡蠣など亜鉛を含む食品や当方の推奨する分子栄養学実践専用サプリメントには、亜鉛以外にも銅やセレン、マンガンなどの微量ミネラルが含まれています。これらは亜鉛以外にも銅やセレン、マンガンなどの微量ミネラルが含まれていることから、亜鉛のみを含むお薬やサプリメントと比べて安全性が高くなっています。

分子栄養学実践専用サプリメント海外サプリメントなど
亜鉛以外にも銅やセレン、マンガンなどの微量ミネラルを含む
クエン酸など亜鉛の吸収を促進する成分が含まれている
亜鉛含有酵母や銅含有酵母、セレン含有酵母など食品由来の原材料で作られている
栄養成分の消化・吸収、生体内利用効率と安全性を考慮した設計と製造が行われている
ピロリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛など亜鉛のみを大量に含むものが多い
亜鉛鉱物を原料としているものが多く、食品由来の原材料が使われていない
生体内利用効率や安全性が考慮されていないものが多い
分子栄養学実践専用サプリメントと海外サプリメントなど市販されている亜鉛サプリメントの違い

そのため、栄養補給を目的として日常的に摂取する場合や、分子栄養学を実践する際は、食品や分子栄養学実践専用サプリメントを利用しましょう。亜鉛は、きちんと吸収、運搬され、体内で利用されて初めて意味があります。そのためには、なるべく食品に近い天然由来の原材料を使用し、他のミネラルや有機酸などがバランス良く含まれているものから摂取することがオススメです。

このように、亜鉛と一言で言っても様々な種類があります。食品や分子栄養学実践専用サプリメントに含まれる亜鉛と、病院で処方される亜鉛では、役割が全く違いますので注意しましょう。具体的な亜鉛の必要量や不足状態は、亜鉛と銅の比率など人によって違いがありますので、最適な摂取量については最後に解説するオーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。

ナンナン

むむむ・・・
病院で亜鉛のお薬を貰ったら安く済みそうって思ったけど、サプリメントの代わりには使えないのか・・・💧

はる かおる

そうだね。亜鉛の薬とサプリメントは役割が全く違うよ。
分子栄養学を実践する際は、この当たりの違いもよく学ぶことが大切だね

亜鉛の働き

亜鉛は、アルコール代謝やビタミンA代謝(網膜のロドプシン合成)に関わったり、遺伝子転写に関わって細胞の分化分裂に関わったり、カドミウムや水銀など有害な重金属を無毒化したり、インスリンの合成・作用に関わって糖代謝に関与したり、ビタミンAやビタミンDと共に造血に関わったり、エネルギー代謝に関わったりしています。他にも、タンパク質合成、ビタミンの利用など、体内において300を超える酵素反応の補因子として利用されています。

亜鉛の主な働き。亜鉛は、細胞の成長や修復に関わるほか、体内で300を超える酵素の活性化に関与している

亜鉛の主な働き

  • 体内で300種類以上の酵素反応に関わる
  • 遺伝子転写に関わり、細胞の分化分裂に関わる
  • カドミウム、水銀など有害な重金属を無毒化する
  • インスリンの合成、作用に関わり、糖代謝に関わる
  • 皮膚のバリア機能の正常化や免疫細胞を増やして免疫力に関わる
  • ビタミンAやビタミンDと共に造血に関わる
  • アルコール代謝やビタミンA代謝(網膜のロドプシン合成)に関わる
  • TCAサイクルに関与し、エネルギー代謝に関わる

亜鉛の働き①多くの酵素反応に関わる

亜鉛は、300種類以上の酵素の合成に欠かせない重要な栄養素です。この酵素には、骨を作るために必要な酵素や、細胞分裂に関わる酵素、アルコールの解毒などアルコール代謝に関わる酵素、タンパク質の分解(消化)に関わる酵素など様々な種類があります。

亜鉛は、多くの酵素の活性化に関わる。その中には、アルコールを解毒するために必要な酵素や、骨を作るために必要な酵素など様々なものがある

これら酵素は、タンパク質を材料に、主に肝臓やすい臓など全身の細胞で合成されています。そして、これら酵素が働くためには、補酵素や補因子としてビタミンB群やマグネシウム、亜鉛などのビタミンやミネラルが必要です。

例えば、お酒などアルコールを飲んだ時、私達の肝臓はこのアルコールを水や二酸化炭素に分解し、無毒化してくれています。このアルコールを分解するためには、「アルコール脱水素酵素」という酵素が必要です。

肝臓はアルコールを無害な形に解毒してくれる働きがある。このアルコール代謝にはビタミンB群や亜鉛が必要。

このアルコール脱水素酵素はタンパク質を材料に肝臓で合成され、必要に応じて「活性化」されて利用されています。このアルコール脱水素酵素の活性には補酵素としてビタミンB群の一種である「ナイアシン」や、補因子である「亜鉛」が関係していて、アルコール脱水素酵素にナイアシンと亜鉛がくっつくことで初めて酵素として働くことが出来ます。

この補酵素と補因子の違いとは、わかりやすく言えばビタミンとミネラルの違いです。補酵素はビタミンなどタンパク質以外の有機物のことで、酵素と反応することで活性を促進する働きをしています。主な補酵素としては、ビタミンB群があげられます。

もう一つの補因子とは、酵素がその活性を発揮するために必要な無機物質のことです。主に、亜鉛、鉄、マグネシウムなどがこれに該当します。亜鉛は酵素に結合し、酵素の構造を安定させたり、酵素の触媒機能を助ける役割を担っています。例えば、亜鉛は「亜鉛依存性酵素(メタロ酵素)」に結合して活性化し、タンパク質やDNAの分解・合成を助けています。

つまり、亜鉛は私達が食べた食べ物を代謝したり、それを利用したりするためのサポートを行う必要不可欠な栄養素です。亜鉛が無くては、私達の体は正常な機能を維持することが出来ません。亜鉛はタンパク質とビタミンB群などと協力して働いているので、亜鉛を摂取する際はこれら栄養素も同時に摂取するようにしましょう。

亜鉛の働き②遺伝子転写に関わる

亜鉛は、私たちの体の中で遺伝子転写(いでんしてんしゃ)という重要な働きに深く関わっています。遺伝子転写とは、細胞内DNAの情報をもとにしてタンパク質を作るための設計図(mRNA)を写し取る仕組みのことです。

私達の細胞一つ一つが正常に分裂するためには、遺伝子(DNA)が正確に複製されることが必要。亜鉛は、ジンクフィンガーという酵素でDNAの正確な転写をサポートする

私達の体はおよそ60兆個の細胞が集まって出来ていて、毎日約1%の細胞が死んでいると言われています。そのままでは全ての細胞が死んでいってしまうので、そうならないように細胞分裂によって減った細胞を補うことが必要です。それぞれの細胞は、細胞分裂を繰り返すことで体を修復したり、体を成長させたりしています。

この時、細胞が正常に分裂するためには、遺伝子(DNA)が正常に複製されなければいけません。人間の細胞分裂では、細胞の設計図であるDNAを毎日数千億回コピーしていると言われています。亜鉛は、このDNAの複製過程において重要な働きを担っている栄養素です。

具体的には、亜鉛はRNAポリメラーゼやDNAポリメラーゼといった、タンパク質の合成や増殖に関わる「亜鉛(ジンク)フィンガー構造」という特殊な構造を持つタンパク質酵素を作るのに使われています。亜鉛フィンガーは、亜鉛を含む指のような形をした小さなタンパク質構造で、DNAの特定の場所にしっかり結合し、遺伝子の転写を開始する役割を持っています。

この転写のプロセスでは、まずDNAに記録された塩基配列が、亜鉛フィンガーの助けを借りて細胞の核の中でメッセンジャーRNA(mRNA)という形でコピーされます。このコピーのプロセスが「転写」と呼ばれます。転写されたmRNAは、細胞の核の外にある「リボソーム」というタンパク質を作る工場に運ばれ、リボソームではmRNAの配列に基づいて、タンパク質を作るためのアミノ酸が一つずつつながれてきます。そして、このアミノ酸を鎖のように1つづつ繋げていくことでタンパク質が合成されています。

このとき、アミノ酸を運ぶ役割を果たすのがトランスファーRNA(tRNA)です。tRNAはmRNAの配列に対応するアミノ酸を見つけてリボソームに運び、タンパク質の鎖を作る手助けをします。このプロセスを「翻訳」といいます。

このように、遺伝情報はDNAからRNA、タンパク質へと伝達されていきます。DNAの情報がRNAに引き継がれることを「転写」、RNAの情報からタンパク質が合成されることを「翻訳」といい、このタンパク質合成の一連の流れのことを「セントラルドグマ」と呼びます。

亜鉛は、このDNAからmRNAへの正確な転写を行うために必要な「亜鉛フィンガー」という酵素を作るのに必要な栄養素です。亜鉛が不足すると、亜鉛フィンガーの構造が崩れてしまい、DNAからmRNAへの正確な転写が行われなくなってしまいます。この遺伝子発現には、他にもタンパク質やビタミンB群、ビタミンAやビタミンDなども関係していますので、亜鉛を摂取する際はこれらの栄養素も同時に摂取するようにしましょう。

ナンナン

セ、セントラルドグマ❗❓
セントラルドグマって、ネルフ本部の地下にあるアレのこと❓❓

はる かおる

ネルフ本部❓❓ いきなり何の話かと思ったら、新世紀エヴァンゲリオンの話か。確かに同じ言葉が出てくるね。でも、本来はタンパク質合成の一連の流れのことを「セントラルドグマ」って言うんだよ。

ナンナン

むう・・・、何だか覚えにくいなぁ・・・
セントラルドグマって聞くと、どうしてもエヴァを思い浮かべちゃう💧

はる かおる

うーん・・・まぁ、分からなくもないね。でも、本来は生物学用語だよ。セントラルドグマの最初の転写には亜鉛が関わっているから、セントラルドグマ、亜鉛って覚えると良いね。

ナンナン

セントラルドグマ、あえん・・・
セントラルドグマ、あえん・・・
セントラルドグマ、あえん・・・

亜鉛の働き③解毒に関わる

亜鉛は、カドミウムや水銀など有害な金属を無毒化し、体外に排泄する働きがあります。カドミウムは、日本の高度経済成長期に起こった四大公害病の1つである「イタイイタイ病」の原因になった事で有名です。水銀は、同じく四大公害病の1つ「水俣病(みなまたびょう)」の原因になった重金属です。

水銀やカドミウムといった有害金属は、体内に蓄積すると細胞を傷つけ、腎臓や肝臓などに深刻なダメージを与えることがあります。イタイイタイ病や水俣病は過去の病気というイメージがありますが、鉱山国日本において米の中のカドミウム濃度は比較的高い値が今も続いています。米や魚を多食する日本人にとって、カドミウムや水銀による健康への影響は、今なお重要な問題です。4

亜鉛の摂取によって合成量が増えるメタロチオネインは、水銀やカドミウムなどの有害な重金属の解毒に関わっている

この亜鉛が解毒に関わっている仕組みとしては、主に「メタロチオネイン」というタンパク質の一種が関係しています。メタロチオネインは、先ほど解説した「亜鉛の吸収と代謝」でも解説した様に、亜鉛や銅などの必要なミネラルを細胞内に蓄えて吸収量を調整するほか、有害な金属を無毒化する能力も持っています。

具体的には、亜鉛を多く摂取するとメタロチオネインの合成量が増加します。亜鉛はメタロチオネインに結合して、その構造を安定化させ、他の金属とも結合できる準備が整います。そして、水銀やカドミウムなどの有害金属が体内に入ると、亜鉛を切り離してカドミウムや水銀などの重金属と非常に強い結合を形成します。これは、カドミウム、銅、水銀などのほうが亜鉛より結合力が強いため、亜鉛と置き換わるためです。

メタロチオネインが水銀やカドミウムを捕まえると、その重金属は「隔離」されて無毒化された状態になります。これにより、有害な重金属が体内で自由に反応して他の重要な細胞やDNAにダメージを与えるのを防ぐ働きがあります。その後、メタロチオネインと結合した重金属は小腸粘膜の剥離と共に便中に排泄されるか、体内の特定の部位に安全に保管されます。

このように、亜鉛はメタロチオネインの構造を安定化させ、有害な水銀やカドミウムと結合させることで、これらの金属が体内で悪影響を及ぼすのを防いでいます。この仕組みによって、亜鉛とメタロチオネインは体を守る「デトックスシステム」の一部として重要な働きをしています。

日本では、稲作を中心として米が主食の1つです。米を育てる田んぼには、鉱山や精錬所などから排出された鉱石に含まれるカドミウムが長い時間をかけて蓄積されていたり、土壌や水など環境中に広く存在しています。そのため、日本米には比較的多くのカドミウムが含まれています。また、カドミウムは米以外にも貝類やイカ、タコ、海老やカニなど甲殻類の内臓に蓄積されやすいことが分かっています。5

私達が生きていくためには必ず食べ物を食べる必要がありますので、カドミウムや水銀を100%避ける事は出来ません。ですが、亜鉛の摂取によってこれら重金属を無毒化していくことは可能です。亜鉛は現代人の食生活では不足しやすい栄養素と言われていますので、重金属のデトックスも兼ねて積極的に摂取していきたいですね。

ナンナン

おお❗
亜鉛は有害な重金属の解毒作用もあるのか❗

はる かおる

そうそう。水銀やカドミウムなどの健康への影響は、今なお重要な問題とされているよ。特に日本人が主食としているお米や、魚介類には有害な重金属が多いから、デトックスも兼ねて亜鉛は積極的に摂取していきたいね

亜鉛の働き④インスリンの作用に関わる

亜鉛は、インスリンの合成や作用に必要な栄養素です。インスリンは、血糖値を下げるホルモンで、膵臓(すいぞう)のβ細胞から分泌されています。不足すると、インスリンの分泌低下や機能低下を招き、糖尿病や低血糖症、虚血性疾患、がんの発症リスクの上昇とも関係しています。

亜鉛はインスリンの合成や働きに関わる。亜鉛が不足するとインスリンの機能が低下し、血糖値が上昇したり乱高下したりする原因になる事がある

例えば、私達が甘いものや何か食べ物を食べたとき、食べ物の糖分(ブドウ糖)が吸収されて血中のブドウ糖濃度(血糖値)が上昇します。血糖値が上昇すると、すい臓のβ細胞からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖を筋肉などの細胞に取り込んで血糖値を下げる働きをしています。

この時、インスリンの分泌量が少なかったり、効きが悪かったりすると、正常範囲を超えて急激に血糖値が上昇してしまいます。すると、高くなりすぎた血中のブドウ糖が毛細血管を傷つけたり腎臓に負担をかけたりして、体に様々なダメージを与えてしまいます。

この高くなった血糖値が何かしらの原因でずっと続いてしまう状態を「糖尿病」、インスリンの分泌や効きなど糖代謝に何かしらの問題が発生して血糖値が乱高下したり、下がりすぎたりしてしまう状態のことを「低血糖症」と言います。

例えば、低血糖症の1つである機能性低血糖症では、インスリンの効きや分泌が悪くなったことによって血糖値が急上昇し、精神的症状を引き起こす病気です。この機能性低血糖症が引き起こされる流れとしては、まず甘いものなどを食べたときに血糖値が急上昇し、次に血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが分泌されます。この時、インスリンの効きが悪くなっていると、その分だけ大量にインスリンが分泌され、今度は分泌されすぎたインスリンが効き過ぎてしまうことで逆に低血糖を引き起こしてしまうという流れです。このように、低血糖症が発症してしまう原因は、インスリンの作用や合成に関わる亜鉛が不足していることも1つの原因として挙げられます。

亜鉛とインスリンの作用の関係。亜鉛はインスリンの合成と作用に必要で、不足するとインスリン分泌、機能の低下を招く

亜鉛とインスリンの具体的な関係としては、インスリンの合成に亜鉛が関わっていることがあげられます。 すい臓内のβ細胞は、インスリンを合成する際に亜鉛を取り込み、亜鉛がインスリンの結晶を形成する手助けをしています。亜鉛がインスリン分子に取り込まれると、インスリン分子が安定して結晶が形成され、インスリンが必要になったときにはすぐに分泌することができるようになります。

この亜鉛が取り込まれたインスリン結晶が血中に分泌されると、結晶は速やかに分解されて活性のあるインスリンと亜鉛とに融解されて共に分泌されます。この亜鉛とインスリンが同時に分泌されると、亜鉛が肝臓から分泌される分解酵素からインスリンを保護し、インスリンの働きを守ってくれます。

逆に、亜鉛が不足している場合では、インスリンを合成する際に亜鉛が取り込まれず、インスリンの結晶が不安定になってしまいます。この不安定な結晶のインスリンが分泌されると、亜鉛による保護が無いため肝臓で分泌される分解酵素によってインスリンが分解されてしまいます。このため、亜鉛はインスリンの合成や貯蔵、効果に深く関わっている栄養素です。

また、亜鉛は、体内の酸化ストレスを軽減する効果もあります。酸化ストレスは、体内の慢性炎症を引き起こしてインスリンの機能を低下(インスリン抵抗性)させたり、糖尿病を引き起こす原因の一つとされています。亜鉛は、抗酸化作用を持つ酵素(スーパーオキシドジスムターゼなど)の働きを助けることで、酸化ストレスからすい臓のβ細胞を守り、インスリンの働きをサポートすると考えられています。

亜鉛が不足すると、インスリンの分泌や貯蔵、効果が低下し、血糖値が高くなって糖尿病や虚血性疾患、ガンなどのリスクが高まる恐れがあります。現在2型糖尿病や低血糖症を抱えている方は、インスリンの働きをよくするためにも、亜鉛は積極的に摂取することがオススメです。

ナンナン

ふむふむ。亜鉛不足は糖尿病や低血糖症の発症にも関わっているんだね。ボクはさっき亜鉛のサプリメント飲んだから大丈夫かな

はる かおる

そうだね。亜鉛はインスリンの合成や作用にも関わっているよ。
って、ナンナン何飲んでるの❓

ナンナン

ん❓ これはボクの大好きなタピオカミルクティーだよ。
シロップマシマシにすると甘くて美味しいんだ

はる かおる

いやー、亜鉛を摂ってるからって、甘いものを習慣的に飲んでいたら生活習慣病のリスクが上がるよ💧
二型糖尿病や低血糖症の改善には、亜鉛を摂る以外にも生活習慣も改善していかなきゃ

ナンナン

えっ、そうなの❗❓
亜鉛を十分に摂れば、糖尿病を防げるんじゃないの❗❓

はる かおる

それは無いよ💦
何か特定の栄養素を摂取して病気が改善するとか、病気にならなくなるなんてことは無いんだ。この他に日々の食生活や運動など様々なことが健康状態に関係しているから、生活習慣そのものを見直していくことが大切だよ

亜鉛の働き⑤免疫に関わる

亜鉛は、免疫細胞の一種であるNK細胞を増やしたり、抗炎症作用のあるタンパク質を増やして免疫反応の効率を高めたり、鼻や喉など粘膜のバリア機能を強化して免疫力を高めたりなど、免疫機能にも深く関わっています。

免疫機能とは、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るために働くシステムのことです。亜鉛が不足すると、皮膚や粘膜のバリア機能が低下して感染症にかかりやすくなったり、免疫細胞の働きが低下して風邪などにかかりやすくなります。

亜鉛は、皮膚や粘膜のバリア機能の維持、NK細胞の増加や活性化に関わり、免疫機能と深い関係がある

具体的には、亜鉛は免疫細胞である白血球のうち、T細胞、NK細胞などの生成を助ける働きがあります。免疫細胞にはいくつかの種類があり、体内に侵入してきた微生物を食べて体を守る「好中球」、好中球では食べられない微生物や老廃物を食べて体を守る「マクロファージ」、寄生虫やウィルスの排除に重要な役割を担ったり、過剰な免疫反応の抑制や腫瘍細胞の破壊など免疫機能の中心的役割を果たしている「リンパ球」、リンパ球に属するT細胞に敵の情報を分析して提供する「樹状細胞」などがあります。このような免疫細胞の総称を「白血球」と言います。

白血球には様々な種類がある。この中でも、リンパ球は免疫機能の中心的役割を果たしている

このリンパ球は、さらに細かく種類が分かれていて、「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」「B細胞」「T細胞」に分かれます。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、主にウィルスに感染した細胞や、腫瘍など異常が起こった細胞の破壊を担い、B細胞はウィルスと闘うための抗体産生を主に担っています。一方でT細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺傷し排除する「キラーT細胞」と、マクロファージや樹状細胞などから受け取った情報を元に、他の免疫細胞のはたらきを調節する司令塔の役割を果たす「ヘルパーT細胞」があります。

免疫細胞には様々な種類がありますが、これらの主な働きの違いは、「自然免疫」と「獲得免疫」の違いです。主にマクロファージや好中球、NK細胞や樹状細胞は、体内に侵入してきた異物を早期に発見し、攻撃する役割(自然免疫)を担っています。この時、マクロファージや樹状細胞などは、敵の情報をT細胞(ヘルパーT細胞)に伝える役割も行います。

白血球の役割の違い。免疫機能は異物を発見して攻撃する自然免疫と、異物を記憶して攻撃する獲得免疫に分かれる

そして、これら敵の情報を受け取ったT細胞(ヘルパーT細胞)は、キラーT細胞やB細胞に情報や指令を与え、抗体を作って細菌やウィルスなどを攻撃します。この時受け取った敵の情報は記憶され、次に同じ敵が侵入してきた時はすぐに抗体を作ってやっつけられるよう準備が整えられます。このような敵の情報を記憶し、攻撃することを「獲得免疫」と言います。このように、T細胞は獲得免疫の中心的役割を担っていて、敵の情報の記憶や、他の免疫細胞のはたらきを調節する司令塔の役割をしている細胞です。

ただ、このT細胞がしっかり働くためには、マクロファージや樹状細胞から、敵が侵入してきた事や敵の情報がしっかりと情報伝達されなければなりません。この情報伝達の役割を担っているのが、「サイトカイン」と呼ばれる物質です。サイトカインには数百種類存在すると言われていますが、主なものが「インターロイキン(IL)」や「インターフェロン(IFN)」、「腫瘍壊死因子(TNF)」などです。

マクロファージや樹状細胞などは、敵が侵入したときにこのサイトカインを放出することで、T細胞など他の細胞や内分泌系、神経系などに情報伝達を行っています。例えば、インターロイキンは白血球間の情報伝達に関わっており、分泌されると発熱や炎症反応を起こして敵と戦いやすくします。インターフェロンは、ウィルスの増殖阻止やマクロファージの活性化、NK細胞の増殖や活性化などに関わり、腫瘍壊死因子は異常な細胞(腫瘍)を自然死に導いて有害な物質を放出すること無くマクロファージが処理できるようにします。

このうち、亜鉛が深く関わっているのが「インターフェロンα」と呼ばれるサイトカインの合成です。インターフェロンαは、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を増やし、活性化させる働きを持っています。NK細胞は、ウィルス感染初期の防御や腫瘍細胞の破壊を担う細胞で、ウィルスに感染した細胞を丸ごと破壊してウィルスから体を守る働きをしています。

亜鉛は、免疫細胞の主体である白血球類の正常な分化分裂に関わるほか、NK細胞の増殖と活性化のきっかけとなるインターフェロンαの合成に欠かせません。このように、亜鉛は免疫細胞に重要な役割を果たしている栄養素です。

また、亜鉛は体内で発生した炎症を抑える「抗炎症性タンパク質」を増やす働きもあります。私達が病気にかかったり怪我をしたりすると、体内では病原体をやっつけたり体を修復しようとして「炎症」が発生します。この炎症は自然免疫反応の一つで、痛みや発赤、発熱、腫れなどが主な症状です。しかし、過剰な炎症は人体に余計なダメージを与えてしまうことがあります。亜鉛は抗炎症性タンパク質を増やして炎症を抑制し、免疫反応の効率を高める働きがあります。

それから、亜鉛は補因子としてコラーゲン合成にも重要な役割を果たし、皮膚や粘膜のバリア機能の維持に重要な役割を果たしています。コラーゲンとは、皮膚、骨、軟骨、腱など、体全体の結合組織を構成する主要なタンパク質のことです。コラーゲンは、体の構造を維持し、弾力性や柔軟性を与える役割を担っています。

コラーゲンはタンパク質で出来ており、皮膚や髪など体の組織のあらゆる部位に含まれる。コラーゲンを合成、維持するためには、タンパク質に加えてビタミンCや鉄、亜鉛が必要

コラーゲンにはアミノ酸配列の違いや分子形態の違いによってⅠ型、Ⅱ型、Ⅳ型と異なる型のコラーゲン分子が存在しています。そのうち体内で最も多くを占めるのはⅠ型コラーゲンで、主に皮膚の真皮や骨、靱帯、骨、腱などの主要成分になっています。私達が「コラーゲン」と聞くと真っ先に思い浮かべるのがこちらです。

一方のⅡ型コラーゲンは主に関節軟骨の主成分で、Ⅳ型コラーゲンは皮膚や腎臓、消化管などの基底膜を構成する主要成分です。どのコラーゲンも、三本のタンパク質を束ねてらせん構造にした「コラーゲン三重らせん構造」によって構成されています。

このコラーゲン三重らせん構造を構成するためには、タンパク質を中心に、補酵素として「ビタミンC」と「鉄」が関わっています。また、コラーゲン三重らせん構造を維持するためには「亜鉛」も必要です。

亜鉛不足の状態では、コラーゲンの三重らせん構造を維持する際に重要な働きをする酵素の働きが低下し、コラーゲン合成が阻害されます。その結果、皮膚の弾力性の低下、関節痛、骨粗鬆症などの症状や、肌荒れ、アレルギーやアトピーなど皮膚や粘膜のバリア機能が低下して異物が体内に侵入しやすくなることがあります。このように、亜鉛は免疫細胞以外にも皮膚や粘膜のバリア機能の維持に関わる栄養素です。

ナンナン

へっ・・・へっくしっ💦
うぅ、言われてみれば風邪引きやすいかも💧

はる かおる

亜鉛は免疫細胞の分化分裂やバリア機能の維持に関わっているから、不足すると免疫力が低下する原因になるよ。
風邪を引きやすいなと思ったら、亜鉛不足を疑ってみても良いね

亜鉛の働き⑥ビタミンAやビタミンDと共に造血に関わる

亜鉛は、ビタミンAやビタミンD、鉄等と共に造血や「貧血」に関わっています。貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が減少して身体が低酸素状態になる事で、動悸や息切れ、立ちくらみやめまいなど様々な不定愁訴(ふていしゅうそ)に繋がる原因になるものです。

貧血は血液中のヘモグロビン濃度が低下して低酸素状態になる事を言う。一般的なイメージの「血液が薄くなる」というのは間違い

通常、ヘモグロビンは赤血球と呼ばれる細胞に多く含まれているのですが、貧血の状態では、正常な状態に比べて赤血球に含まれるヘモグロビンが減少しています。加えて、貧血が進行するにつれて赤血球も減少していきます。

この貧血改善には一般的に「鉄分が良い」と言われていますが、実はそれだけでは不十分です。酸素の運搬に関わっている赤血球は細胞で出来ていることから、赤血球の分化分裂を正常に促すためには「亜鉛」に加えて、ビタミンAとビタミンDが必要です。

造血に必要な栄養素。貧血は鉄分不足と思われがちだが、実はビタミンB群やビタミンA、ビタミンD、亜鉛など様々な栄養素が関わっている

具体的には、赤血球は白血球と同じく骨髄で作られる「幹細胞」が分化することで作られています。この分化にはビタミンAとビタミンD、亜鉛が関係していて、この2つが足りない場合は骨髄で血液成分が作られなくなってしまいます。この骨髄で血液成分が作られなくなって血液中の赤血球や白血球、血小板のすべての血球が減少してしまう病気を「再生不良性貧血」と言います。

亜鉛はビタミンAやビタミンDと共に、赤血球の元となる幹細胞の分化分裂に関与しています。この幹細胞が正常に分化分裂することで赤血球が作られている事から、亜鉛は造血にも深く関係している栄養素です。

また、亜鉛は赤血球の膜を正常に維持する働きも持っています。赤血球は全身に酸素を運ぶために、血管が細い「毛細血管」の中を通り抜ける必要がありますが、この毛細血管を通り抜けるときには赤血球が血管の内側にぶつかって擦りあってしまいます。

亜鉛は赤血球の膜を正常に保つ働きをしている。亜鉛が不足すると赤血球の膜がもろく壊れやすくなり、破裂して溶血性貧血を起こしやすくなる

この時、正常な赤血球であれば、毛細血管の内側に擦れても壊れずに通過することが出来ます。しかし、亜鉛が不足している赤血球では、赤血球の膜がもろく壊れやすくなっているため、毛細血管通過時に血管の内側と擦りあって壊れてしまいます。このような赤血球が破壊されることで赤血球が減少し、貧血になることを「溶血性貧血」と言います。

亜鉛は赤血球の膜を強くし、赤血球を壊れにくくしてくれる働きがある事から、溶血性貧血の予防、改善にも必要な栄養素です。

これら赤血球の分化分裂や、赤血球の正常な膜の維持に加え、亜鉛は赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の構成材料としても必要です。ヘモグロビンとは、赤血球の中に大量に含まれる、酸素を運ぶための「器」のようなものです。

赤血球の主要な役割である酸素運搬は、主にこのヘモグロビンによって行われています。鉄は酸素と結びつきやすいことはご存じですよね。ヘモグロビンには鉄が含まれており、この鉄に酸素を結びつけることで全身に酸素運搬する重要な働きを担っています。血液が赤く見えるのは、この赤血球に含まれるヘモグロビンによるものです。

ヘモグロビンは、「ヘム鉄」と「グロビン」と呼ばれるタンパク質が組み合わさって出来ている

このヘモグロビンは、「ヘム鉄」と「グロビン」というタンパク質が結合して構成されていて、ヘム鉄とグロビンが合わさった物である事から「ヘモグロビン」と呼ばれています。一般的に鉄分の摂取量が少ないなど鉄不足の状態だとヘモグロビン量が減少することから、「鉄欠乏性貧血」を判断するマーカーとして用いられています。

一般的に、このヘモグロビンの減少や鉄欠乏性貧血の改善には、「鉄分を摂れば良い」というイメージがありますよね。例えば、病院で鉄欠乏性貧血と診断された場合は鉄剤を処方されることが一般的です。しかし、実は鉄欠乏性貧血の改善には鉄の補給だけでは不十分です。この理由は、ヘモグロビンの構成成分である「ヘム鉄」の合成には「亜鉛」が関わっているためです。

ヘモグロビンの合成にはヘム鉄が必要。このヘム鉄の合成には、鉄以外にもタンパク質や亜鉛などが関わる

ヘム鉄とは、「ヘム」と呼ばれる特別な構造を持つ鉄を含んだ鉄の一種のことです。ヘムの中心には鉄イオン(Fe²⁺)があり、この鉄イオンが酸素を結合させる能力を持っています。このヘム鉄は、私たちの体にとって非常に重要な鉄の一種で、酸素を運ぶ役割を担っているほか、ATP(エネルギーの電池のようなもの)やエネルギー産生を行う材料として使われたり、薬の代謝に必要な酵素の材料としても使われています。

このヘム鉄に必要な「ヘム」は、体内で合成されていて、5-ALA(アミノレブリン酸)が8つ集まって出来ています。この5-ALA(アミノレブリン酸)が8つ集まって出来た環状構造のことを「ポルフィリン環」と言います。このポルフィリン間の中心に鉄イオン(Fe²⁺)がくっついたものが、「ヘム鉄」です。

ポルフィリン環は、アミノレブリン酸が8つ集まって作られている。このポルフィリン環に鉄イオンがくっつくとヘム鉄となる

このヘムを構成している「ポルフィリン環」の合成には、「グリシン」というアミノ酸を材料に、ビタミンB6、亜鉛を含む酵素が働くことによって作られています。具体的には、グリシンとスクシニル-CoA(コハク酸を含む有機化合物)を材料に、ALAシンターゼという酵素の働きによってアミノレブリン酸が合成されます。この合成は主にミトコンドリア内で行われ、ALAシンターゼの活性化にはビタミンB6が必要です。

アミノレブリン酸は、グリシンやスクシニルCoAを材料に、ビタミンB6や亜鉛含有酵素の働きによって作られる

そして、作られたアミノレブリン酸は、ALAデヒドラターゼという酵素によって「ポルフィリン環」に合成されます。このALAデヒドラターゼ(アミノレブリン酸脱水酵素)の構成成分には、亜鉛が必要です。

つまり、ヘモグロビンの材料として必要な「ヘム鉄」の合成には、鉄以外にも亜鉛が欠かせません。亜鉛が不足すると、赤血球の膜が壊れやすくなったり、赤血球の分化分裂やヘム鉄の合成がうまくいかなくなって貧血になります。このような亜鉛が不足して貧血になることを「亜鉛欠乏性貧血」と言います。

貧血といえば「鉄分を摂れば大丈夫」というイメージが強いですが、亜鉛も造血や貧血に深く関わっています。そのため、鉄欠乏性貧血など貧血を抱えている方は、鉄分以外にも亜鉛やタンパク質、ビタミンB群など他の栄養素もしっかり補給する事が大切です。

ナンナン

えぇっ❗❓
貧血には鉄以外にも亜鉛も関わっているの❓❓

はる かおる

そうそう。一般的には貧血改善には鉄分を摂れば良いって思われることが多いけど、それだけでは不十分なんだよ。造血にはタンパク質やビタミンB、ビタミンAやビタミンD、亜鉛なんかも関わっているから、これらもしっかり補給する事が大切なんだ

亜鉛の働き⑦ビタミンA代謝(網膜のロドプシン合成)に関わる

亜鉛の働きとして、切っても切れない関係にあるのが、ビタミンAの代謝です。亜鉛はビタミンAを利用するために必要な栄養素で、不足するとビタミンAの利用がうまくいかなくなって眼球乾燥症(ドライアイ)や夜盲症などを引き起こす原因になります。

亜鉛とビタミンAの関係を解説する前に、まずはビタミンAについておさらいしておきましょう。ビタミンAの働きとして最も知られているのが、網膜のロドプシン合成に関与し、眼の健康維持や視力の維持をする働きです。活性型のビタミンAである「レチナール」は、眼で物を見るときに必要なロドプシンの再合成を行って光を信号に変換することで、夜間など暗い場所での視力維持に役立ちます。

また、ビタミンAは目の表面(角膜や結膜)を健康に保つために必要な栄養素であり、涙液の生成と分泌にも深く関与しています。ビタミンAが不足すると結膜や角膜が乾燥する「眼球乾燥症(ドライアイ)」を引き起こし、最悪の場合は失明にも繋がることから、ビタミンAは眼の正常な機能維持や視力の維持に関わっています。

ビタミンAは、目の機能を維持する働きを持つ。不足すると、夜盲症や眼球乾燥症、眼精疲労などが起こる

ビタミンAと眼の関係を知るためには、まず眼の基本的な構造や仕組みを理解することが重要です。眼は脳の一部とも言われており、むき出しになった臓器(脳)の一部です。

この眼がものを見る仕組みとしては、まず眼に入った光は角膜(かくまく)を通過して、次に瞳孔(どうこう)を通ります。瞳孔の大きさは虹彩(こうさい)によって調整され、適切な量の光が水晶体(すいしょうたい)に到達します。この虹彩と瞳孔の違いは、眼球の色がついている部分を虹彩(こうさい)と言い、その真ん中にある「黒目」と呼ばれている部分が瞳孔です。

虹彩によって適切な量に調節された光は水晶体を通り、水晶体はレンズのように光を屈折させてピントを合わせ、網膜(もうまく)に焦点を合わせます。そして、網膜に届いた光は視細胞によって電気信号に変換され、これらの信号が視神経を通って脳に送られます。脳はこれらの信号を処理し、視覚情報として色や形、大きさ、距離などを脳が解釈することで、私たちは物を見ることができるのです。

眼の作りと働き。眼は様々な組織が連携して働くことで、私達はものを見ることが出来る。
私達がものを見るときは、水晶体を毛様体筋という筋肉で伸ばしたり縮めたりすることで、眼の奥の網膜にピントが合うよう調節している。

この網膜には、「ロドプシン」と呼ばれる色素が存在しています。ロドプシンは光の刺激を受けると分解されますが、すぐまた再合成されます。この再合成の連続作用により光を信号に変え、脳に伝達して「ものを見て」います。

ビタミンAとロドプシン再合成の関係。網膜に光が当たると、ロドプシンが光の刺激によって分解される。分解されたロドプシンはすぐまた再合成され、この連続でものを見ることが出来る。このロドプシンはビタミンAのレチナールで出来ている

このロドプシンの合成に関わっているのが、ビタミンA(レチナール)です。レチナールは網膜でビタミンA(レチノール)から作られ、レチナールからレチナールを作るためには、「レチノール脱水素酵素」と呼ばれる酵素が必要になります。

この「レチノール脱水素酵素」を作るためには「亜鉛」が必要で、亜鉛が不足するとレチナールからレチノールへの代謝が低下し、レチノールが不足して夜間や暗部など暗い所で視力が低下する「夜盲症」に繋がります。また、亜鉛は肝臓に貯蔵されているビタミンAを血中に放出するためにも必要な栄養素です。亜鉛が欠乏すると、肝臓でのレチノール結合タンパク質(ビタミンAを血液中で運ぶトラックのようなもの)の合成が減少し、ビタミンAの利用障害が起こります。このように、亜鉛はビタミンAの代謝に深く関わっている栄養素です。

ビタミンAについては、次の記事で詳しく解説していますので、もっと詳しく知りたい方は是非ご覧下さい。

ナンナン

なるほど、亜鉛にはビタミンAの働きにも関係しているのか❗

はる かおる

そうだよ、だから亜鉛が不足すると、ビタミンAが利用出来なくなって眼の病気や失明になるリスクが高まってしまうんだ

ナンナン

じゃあ、ドライアイを改善したい時は、亜鉛とビタミンAを摂れば良いってこと❓

はる かおる

うーん、それだけじゃ無いけど、その2つは不足しやすい栄養素だから、意識的に摂った方が良いね。

ナンナン

なるほど。
よし、ちょっと亜鉛とビタミンA摂ってくる❗❗

亜鉛の働き⑧エネルギー代謝に関わる

亜鉛は、体の中でエネルギーを作り出す過程においても重要な役割を果たしています。特に、TCA回路(クエン酸回路)やATP(アデノシン三リン酸)産生に関わる酵素の働きをサポートすることで、エネルギー代謝を助けています。

例えば、私達の体は常に体温という「熱」を生み出して生命活動を維持しています。この熱を生み出すためにはエネルギーが必要で、このエネルギーは私達の食べた食べ物を元に作られています。他にも、体を動かしたり、頭を使ったり、免疫力を維持したりなど私達が生命活動を行う上では常にエネルギーを必要としています。このエネルギーを作り出したり、エネルギーの元となる物が「TCA回路(クエン酸回路)」「ATP(アデノシン三リン酸)」とよばれるものです。

TCA回路とは、細胞のミトコンドリア内で行われる一連の化学反応のことで、食べ物から得られた栄養素(主に糖質や脂質、アミノ酸)を利用してエネルギー(ATP)を作り出す経路のことです。この回路は、私達が生命活動を行う上で必要なエネルギー(ATP)を生み出すための中心的な経路であり、「クエン酸回路」や「トリカルボン酸回路」とも呼ばれます。

また、ATP(アデノシン三リン酸)とは、細胞がエネルギーを利用する際の「通貨」や「電池」のようなものです。このATPは筋肉を動かしたり、神経を伝達したり、細胞を成長させたりなど、ほとんどの生命活動において欠かせない働きをしています。亜鉛は、このATPを産生するために必要な酵素の働きをサポートし、エネルギー代謝に関わっています。

エネルギーを作る代謝経路。この代謝経路には様々な栄養素が関わっているが、その内の1つに亜鉛が関わっている

例えば、私達が食べたご飯やパンなどの炭水化物(デンプン)は、唾液やすい臓から分泌される「アミラーゼ」という酵素によってブドウ糖に分解され、吸収されます。吸収されたブドウ糖は血液に乗って全身の細胞へ運ばれ、細胞の中で「ピルビン酸」に代謝されます。このブドウ糖からピルビン酸に代謝する過程を、「解糖系」と言います。

ブドウ糖が代謝されて出来たピルビン酸は、細胞の中にあるミトコンドリアに取り込まれた後に「アセチルCoA」という物質に代謝されます。そして、このアセチルCoAは、エネルギーを作り出すための回路である「TCA回路」に入ります。この解糖系やTCA回路ではビタミンB1やビタミンB2、ナイアシンなどのビタミンB群や、鉄、マグネシウムなどが関わっていて、これらを材料に作った「酵素」によって次々に代謝され、最終的には「電子伝達系」という回路に入ってATPが産生されていきます。

このTCA回路には、他にも多くの酵素が関与しており、その中には亜鉛を必要とする酵素も含まれます。例えば、TCA回路内の第6段階であるコハク酸からフマル酸に代謝する過程では、「コハク酸脱水素酵素」が関係していて、この酵素の活性や調節には亜鉛が関わっているとされています6。そのため、これら酵素は、亜鉛がなければ働くことができません。

また、エネルギー代謝に必要なビタミンB群の吸収、代謝にも亜鉛が関わっているとされています。京都大学の研究結果では、ビタミンBの吸収・代謝には亜鉛栄養が重要である事が明らかになりました7

例えば、ビタミンB群の一種であるビタミンB1やビタミンB2は、先ほど解説したTCA回路の糖代謝において重要な働きをしています。具体的には、解糖系であるピルビン酸からアセチルCoAに代謝するために必要な「ピルビン酸脱水素酵素」や、TCA回路の第5段階目であるα-ケトグルタル酸からスクシニルCoAに代謝するために必要な「α-ケトグルタル酸脱水素酵素」にはビタミンB1やビタミンB2等が関わっています。

ビタミンB群は、あらゆる酵素の補酵素として必要であり、酵素の活性化に関わる

これらビタミンBが働くためには、「活性化」される事が必要です。食品やサプリメントに含まれているビタミンBは「前駆体」と言って、そのままの形では働くことが出来ません。ビタミンB群は肝臓で活性化されて、はじめて全身で働くことが出来ます。

食品やサプリメントに含まれるビタミンB群は、肝臓で活性化されて全身で働く。そのため、肝機能が低下するとビタミンB群の活性化が抑制される

例えば、ビタミンB1は活性化されると「チアミン二リン酸」、ビタミンB2が活性化されると「フラビンアデニンジヌクレオチド」、ビタミンB6は「ピリドキサールリン酸」が主な活性体となります。これら活性を持ったビタミンBは全身の細胞に運ばれて細胞内に取り込まれ、先ほどあげたような「酵素」類と結合することで酵素が働けるようになります。

しかし、この活性体のビタミンBはそのままでは細胞膜を通過できず、細胞内に入ることが出来ません。そのため、一度活性体のビタミンBを分解し、細胞内に取り込んでから再度合成する必要があります。この過程には亜鉛依存性酵素が関係していると示唆されていましたが、先ほどの京都大学の研究でその過程が明らかになりました。

特に、活性型のビタミンB1,ビタミンB2、ビタミンB6を加水分解し、細胞内に取り込む際には、ALP、CD73、ENPP1、ENPP3という4つの亜鉛依存性酵素が重要な役割を果たすことが明らかになっています。これら酵素は亜鉛が不足すると活性が低下し、活性型のビタミンBの加水分解力が減少することが明らかになりました。

ビタミンB群が不足すると、エネルギー産生機能が滞って代謝が低下し、エネルギー不足や疲労に繋がる

この結果から、亜鉛はビタミンB群の吸収・代謝に深く関わっており、亜鉛が不足するとビタミンB群の利用が妨げられてしまう恐れがあります。ビタミンB群は糖代謝やTCA回路などを始めとした様々な代謝に関わっていて、ビタミンB群が不足するとエネルギー代謝や糖代謝がスムーズに進まず、疲労やエネルギー不足に繋がります。

このように、亜鉛は補因子としてTCA回路に関わる以外にも、補酵素のビタミンB群の代謝にも関わっている栄養素です。食事やサプリメントからビタミンB群を補給する際は、必ず亜鉛も同時に摂取するようにしましょう。

ナンナン

むむむ・・・・
何だか難しい話しだけど、亜鉛はエネルギー産生やビタミンB群を利用するために必要なんだね

はる かおる

そうそう。
エネルギーは体内で常に作られているから、亜鉛も常に消費していくよ。運動量が多い場合や成長期はそれだけエネルギーを作る必要があるから、亜鉛の需要も多くなるんだ

亜鉛不足になりやすい人とその原因

亜鉛の働きでも解説したように、亜鉛はアルコール代謝やビタミンA代謝(網膜のロドプシン合成)に関わったり、遺伝子転写に関わって細胞の分化分裂に関わったり、カドミウムや水銀など有害な重金属を無毒化したり、インスリンの合成・作用に関わって糖代謝に関与したり、ビタミンAやビタミンDと共に造血に関わったり、エネルギー代謝に関わったりしています。他にも、タンパク質合成、ビタミンの利用など、体内において300を超える酵素反応の補因子として利用されています。そのため、不足すると様々な疾患を引き起こします。

例えば、亜鉛不足が引き起こす症状と影響としては次のようなものが挙げられます。

亜鉛不足が引き起こす症状と影響

1. 眼の健康に関する影響

  • 夜盲症(暗所での視力低下)
    ビタミンAは視覚に関与するロドプシンという光感受性色素の成分です。ロドプシン合成には亜鉛が関与しており、亜鉛が不足すると、暗闇での視力が低下する夜盲症が起こりやすくなります。

2. 免疫系への影響

  • 免疫機能の低下
    亜鉛は免疫細胞の働きに必要です。不足すると、T細胞やNK細胞などの免疫細胞が十分に機能せず、細菌やウイルスに対する防御力が低下します。その結果、風邪や感染症にかかりやすくなります。
  • 感染症リスクの増加:亜鉛はビタミンAやビタミンDと共に、粘膜のバリア機能維持など免疫機能に重要な役割を果たしています。亜鉛が不足すると、バリア機能が低下して感染症(例:風邪、インフルエンザ)の感染リスクが高まります。
  • 自己免疫疾患:自己免疫疾患の発症にはT細胞が重要な役割を担っています。亜鉛不足は自己免疫疾患(例:多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ)のリスクを増加させる可能性があります。

3. 疲労感、代謝の低下

  • 慢性疲労感
    エネルギー代謝に関わる酵素の働きにも亜鉛が関与しているため、亜鉛が不足するとエネルギーが効率的に生成されなくなり、慢性的な疲労感を感じることがあります。

4. 貧血、亜鉛欠乏性貧血

  • 貧血
    鉄だけでなく亜鉛も血液の形成に関与しているため、亜鉛不足が続くと貧血の症状が現れることがあります。

4. 皮膚や粘膜などへの影響

  • 皮膚や粘膜の乾燥と損傷
    亜鉛は細胞の成長や修復に関与しており、不足すると皮膚炎や湿疹、乾燥肌が見られることがあります。亜鉛は特に皮膚のバリア機能を維持する上で重要です。
  • 味覚の異常
    味覚を感じるためには、舌の味蕾細胞が正常に働く必要があります。亜鉛はこれらの細胞の機能に関与しており、不足すると食べ物の味が感じにくくなる、または無味になる「味覚障害」が起こります。

5. その他の健康への影響

  • 成長遅延
    成長期の子供では、亜鉛不足が成長遅延を引き起こすことがあります。これは、骨の発育や細胞の分化分裂に亜鉛が必要なためです。
  • 生殖機能の低下
    亜鉛は生殖機能にも関与しています。不足すると、生殖能力が低下し、不妊のリスクが高まる可能性があります。
  • 認知機能の低下:亜鉛脳内に高濃度で含まれ、神経情報の伝達や興奮性制御に重要な役割を果たしています。亜鉛が不足すると認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクが増加する可能性があります。
  • がんや腫瘍:亜鉛はT細胞の正常な働きに関与し、ガンの発症にも関係しています。亜鉛不足では大腸ガンや前立腺がんなど腫瘍のリスクが高まる可能性があります。
  • 脱毛
    亜鉛は髪の成長と健康維持にも必要です。不足すると、毛根の働きが弱まり、髪が抜けやすくなる「脱毛症」や髪の成長が遅くなることがあります。
  • 精神症状
    亜鉛不足は脳の神経伝達に影響を与え、不安、うつ症状、集中力の低下、さらには記憶力の低下を引き起こすことがあります。特にストレスに対して脆弱になることが報告されています。

亜鉛は現代人において不足しやすいミネラルと言われており、老若男女問わず不足のリスクが高い栄養素です。例えば、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」、平成30年「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の男性の一日当たりの推奨量は11mgに対し、摂取量は9.3mgでした。また、20歳以上の女性では一日当たりの推奨量が8.0mgに対し、摂取量は7.6mgと男女ともに推奨量を下回っていました。

20歳以上の男女別亜鉛摂取状況。男女ともに、一日の推奨摂取量を下回っていた

また、亜鉛はとても吸収しにくい栄養素としても知られていて、亜鉛吸収率は、年齢と共に吸収率が低下していきます。例えば、若い男性の亜鉛吸収率は31%程度でしたが、60歳を超えた男性の亜鉛吸収率は平均17%と有意に低下していました。

亜鉛はとても吸収されにくい栄養素で、年齢とともに吸収率が低下していく

同じく女性においても、20〜50歳で5%、70歳以上では10%以上の方に亜鉛欠乏性貧血がみられると言われています。特に女性は月経によって毎月定期的に出血し、赤血球を失っていくことから、若い頃から亜鉛不足には注意が必要です。

女性では、20〜50歳で5%、70歳以上になると10%以上の方に亜鉛欠乏性貧血が見られた

このように、亜鉛は老若男女問わず不足しやすい栄養素です。食品に含まれている亜鉛の吸収率は個人差が大きく、食べた分が全て吸収されるとは限りません。吸収率は食べ物や食べ方によっても異なり、植物性や動物性の食べ物でも大きく異なります。特に、吸収率は食事中に含まれるタンパク質や酸などとの組み合わせに影響を受けるため、料理の仕方によっても吸収率は大きく異なります。

加えて、低タンパク栄養状態では亜鉛の吸収や利用が低下し、日常的に飲酒をする方や肝疾患、腎疾患、糖尿病などの病気を抱えている方は亜鉛の消耗が増加する事が知られています。亜鉛の吸収量は加齢と共に減少し、亜鉛の需要は病態の有無や生活習慣の影響も受けます。そのため、推奨量がその人にとっての必要量であるとは限りません。

夜盲症を抱えている方や、アトピーなどの皮膚疾患を抱えている方、飲酒をする方、妊娠している方や高齢者の方は、より多くの亜鉛摂取が必要です。このことから、一人一人に必要な亜鉛の摂取量は異なり、推奨量よりも多くの亜鉛を摂取することが必要となる事があります。

例えば、妊娠している方や授乳中の方、成長期のお子さんは特に不足しやすいと言われています。これは、お腹にいる赤ちゃんや成長期のお子さんは、骨や細胞、血液を作るために亜鉛の需要が大幅に増加するためです。他にも、肝疾患や腎疾患、糖尿病を抱えている方などは亜鉛が不足しやすいと言われています。

亜鉛不足になりやすい人とその原因

  • 乳幼児(早産児、低体重児は特に)
    乳幼児は成長が早く、亜鉛の需要が高い一方で、母乳に含まれる亜鉛の量が不足する場合があります。また、固形食を始める時期には亜鉛が豊富な食品を摂取しないと不足するリスクがあります。
  • 妊婦および授乳中の女性
    妊娠中や授乳期には、胎児や乳児の成長のために多くの亜鉛が必要です。母体の亜鉛が優先的に赤ちゃんに使われるため、母体自身の亜鉛が不足しやすくなります。また、食欲不振や悪阻(つわり)による栄養摂取不足も一因です。
  • 成長期の子ども・青少年、初潮を迎えたお子さん
    成長期には骨、筋肉、臓器などの急速な発達が行われるため、亜鉛の需要が増加します。特に思春期にはホルモンの変化によって亜鉛の必要量が大幅に増えるため、十分に摂取できないと成長に支障をきたす可能性があります。また、偏食やジャンクフードの多い食事も不足の原因です。この他、初潮を迎えた女の子は月経によって毎月定期的に出血するため、鉄・亜鉛が不足しやすくなります。
  • 高齢者
    高齢者は消化器官の働きが低下し、亜鉛の吸収能力が衰えるため、不足しがちです。さらに、食欲の低下や食事内容の偏りも原因となります。また、亜鉛の排泄量が加齢により増えることも影響します。高齢者では免疫機能や創傷治癒能力の低下が特に問題となるため、亜鉛不足は深刻です。
  • 消化器疾患を持つ人(クローン病、セリアック病、IBDなど)
    クローン病やセリアック病、炎症性腸疾患(IBD)などの消化器疾患は、腸の吸収機能を損なうため、亜鉛の吸収が十分に行われません。また、下痢や消化不良が長期化することにより、体内の亜鉛が失われやすくなります。これらの疾患を持つ人は、栄養の吸収自体が不十分になるため、他の栄養素も同様に不足しやすくなります。
  • アルコール依存症の人
    アルコールの過剰摂取は、胃粘膜や肝臓にダメージを与え、亜鉛の吸収不良や尿中排泄量の増加を招きます。また、亜鉛はアルコールの解毒に関わっており、過剰なアルコール摂取は亜鉛の消費を増加させます。さらに、アルコールは胃粘膜にダメージを与えてタンパク質を始めとした栄養の消化・吸収を低下させ、結果的に亜鉛の不足を招くことがあります。
  • 菜食主義者やビーガン
    植物性食品に多く含まれるフィチン酸は、亜鉛と結びついて腸内での吸収を妨げます。亜鉛は主に肉や魚など動物性食品のほうが吸収率が高いため、ベジタリアンやヴィーガンは亜鉛不足に陥りやすいです。
  • 胃酸分泌が十分に無い方
    亜鉛は主に肉や魚など動物性食品に多く含まれているため、これら食品やタンパク質を消化吸収するためには、十分な胃酸の分泌が必要です。もし、十分に消化出来なかった場合は、未消化のタンパク質が腸内へと流れ、悪玉菌のエサとなって腸内環境を悪化させてしまうことに繋がります。腸内環境が悪化すると、有用菌が減少し、短鎖脂肪酸産生量が減少して亜鉛の吸収率が低下してしまうことがあります。
  • 慢性疾患(糖尿病、慢性腎疾患など)を持つ人
    慢性疾患は亜鉛の利用効率を低下させることがあります。例えば、糖尿病の人は腎臓から亜鉛が多く排泄されるため、体内の亜鉛が不足します。慢性腎疾患の患者も同様に亜鉛の排泄が増加し、体内の亜鉛バランスが崩れやすくなります。
  • 特定の薬物を服用している方
    降圧剤、抗生物質、抗痙攣剤、抗うつ剤、ステロイド剤などは亜鉛をキレートして尿中排泄量を増加させます。
  • 長期間ストレス下にいる人
    ストレスが長期化すると、ストレスホルモンであるコルチゾールが増加し、亜鉛の消耗が加速します(コルチゾールの合成に亜鉛が必要)。加えて、ストレスによって食事の質が低下する場合が多く、これも亜鉛不足を招く要因となります。免疫機能の低下や精神的な不調も亜鉛不足を助長します。
  • 激しい運動をする方、アスリートの方
    アスリートは大量の汗をかくことでミネラルの喪失が激しくなります。亜鉛も汗とともに排出されるため、運動量が多い人ほど不足するリスクが高まります。また、運動による筋肉の修復やエネルギー代謝の亜鉛需要が増加するため、亜鉛が不足するとパフォーマンスの低下を招くことがあります。
  • ダイエットをしている方、加工食品の摂取量が多い方
    栄養失調やダイエットなどで十分な食事を摂取できていない場合、亜鉛の摂取量が不足しやすくなります。また、バランスの悪い食事や加工食品が多い食事を続けると、亜鉛欠乏症のリスクが高まります。特に食品添加物に使われるリン酸塩などは、亜鉛とキレートを形成して亜鉛の吸収を妨げてしまいます。

このように、亜鉛は一人一人に必要な量が異なり、推奨量よりも多くの亜鉛が必要となる場合があります。特に現代人においてはレバーや牡蠣など亜鉛を多く含む食品を食べる機会が減り、逆に加工食品の摂取量が増加して慢性的に亜鉛が不足しやすい状態です。

もし上述のリストに当てはまる方は、亜鉛が不足している可能性があります。次の亜鉛不足チェックと亜鉛不足を調べる検査項目を参考に、亜鉛が不足していないかどうかをチェックしてみて下さい。

ナンナン

なるほど・・・
栄養摂取目安は最低限必要な量で、その量を摂っていれば足りているわけじゃ無いんだね💧

はる かおる

そうそう。亜鉛の推奨量は病気ではない健康な人を前提にした摂取量になっているから、その量を摂っていれば足りているわけじゃ無いんだよ。オマケに妊婦さんやお子さんなど亜鉛の需要が高い人もいるから、推奨量が必要量とは限らないんだ

亜鉛不足チェックと亜鉛不足を調べる検査項目

亜鉛不足をチェックする方法としては、体内の栄養状態を知る血液検査と、眼や皮膚の状態など自覚症状をチェックする方法があります。

まずは、次の亜鉛不足チェックリストの中から当てはまる項目をチェックし、亜鉛不足のリスクがどれだけ高いかをチェックしてみて下さい。多く当てはまるほど、亜鉛不足のリスクが考えられます。

亜鉛不足チェックリスト

1.眼の不調

  • 夜間や薄暗い場所での視力が悪くなっていると感じる。(夜盲症)

2. 乾燥肌や皮膚のトラブル

  • アトピー性皮膚炎を抱えている
  • 肌が荒れる、乾燥する、治りにくい傷がある。
  • 口内炎が出来やすいと感じる

3.免疫力の低下やがんなどを抱えている

  • 風邪やインフルエンザ、他の感染症にかかりやすくなったと感じる。
  • 花粉症や鼻炎を抱えている
  • ガンや腫瘍などの病気を抱えている
  • リウマチなどの自己免疫性疾患を抱えている

4. 集中力の低下や記憶力の問題

  • 集中できない、物忘れが多くなった。

5. 疲労感や無気力

  • 疲れやすく、エネルギーが不足していると感じる。

6. ストレスや不安の増加

  • ストレスや不安が増している。

7. 味覚や嗅覚の低下

  • 食べ物の味が薄く感じたり、においを感じにくくなったと感じる。

8.特定の薬を服薬している

  • 降圧剤、抗生物質、抗痙攣剤、抗うつ剤、ステロイド剤などの薬を服用している

9. 食生活の問題

  • 亜鉛が豊富なレバー、赤身肉、牡蠣、魚などをあまり摂取していない。
  • 菜食主義やダイエットを行っている。
  • アルコールを頻繁に摂取している。

10.妊娠中や成長期

  • 妊娠中や授乳中で、栄養素を十分に摂取していないかもしれないと感じている。
  • 赤ちゃんや成長期のお子さんなど亜鉛の需要が高い状態にある
  • 成長の発達が遅いと感じる。

11.消化器疾患や糖尿病などを抱えている

  • 消化器の不調や下痢が続いている。
  • ポリープができやすい
  • 糖尿病を抱えている
  • 腎臓病を抱えている

12.爪や髪の異常

爪が薄く割れやすい、髪が抜けやすくなったり、薄くなったと感じる。

13.関節や骨の異常

  • 関節が痛い、骨粗しょう症を抱えている

14.血液の状態

  • 貧血がなかなか治らないと感じる

また、このチェックリスト以外にも、先ほど挙げた「亜鉛不足になりやすい人」に当てはまる方は、亜鉛不足のリスクが高いので注意が必要です。亜鉛不足チェックに多く当てはまった方や、亜鉛不足になりやすい人に当てはまる方は、次の検査も受けて亜鉛不足の状態やリスクを知り、適切な対応を取るようにしましょう。

亜鉛不足を調べる検査項目

亜鉛不足かどうかをチェックする検査としては、血液検査があります。血液検査ではおおまかに体内の亜鉛の不足状態と亜鉛の需要を調べることが可能です。

例えば、次の血液検査項目などでおおまかに亜鉛の不足状態や需要を知ることが出来ます。

スクロールできます
検査項目意味 亜鉛不足や需要との関連
WBC
白血球数
血液中の白血球の総数。
骨髄で産生される
感染症や血液の病気によって
上昇または低下する
N
好中球
細菌感染防御に関わる細胞
運動やストレスでは上昇する
ウィルス感染で低値
細菌感染で高値となる
L
リンパ球
ウィルス感染防御に関わる細胞ウィルス感染で高値
細菌感染で低値となる
Eo
好酸球
体内に侵入した異物と闘う細胞
アレルギーやストレスで低下する
アレルギーや寄生虫感染
などで上昇
CRP
C反応性タンパク 
炎症で反応するタンパク質感染症や炎症、がんなどで上昇する
RBC
赤血球
酸素を運搬する細胞。
骨髄で産生される
溶血性貧血
亜鉛欠乏性貧血では減少
HB
ヘモグロビン
酸素を運搬するタンパク質。溶血性貧血
亜鉛欠乏性貧血では減少
RET
網状赤血球
骨髄から出たばかりの若い赤血球。
骨髄の造血機能を反映
亜鉛不足など造血栄養素
の不足では低下
血清フェリチン体内の貯蔵鉄量。
がんや慢性炎症があると上昇する
がんや慢性炎症、
鉄の利用障害などによって上昇
鉄欠乏性貧血などで低下
 CHE
コリンエステラーゼ
肝臓で作られる酵素。
アセチルコリンを分解する働きがある
肝機能低下で数値が低下
肥満や飲酒、脂肪肝などで上昇。
γ-GPT
γ-グルタミル
トランスペプチダーゼ
グルタチオンなどのγ-グルタミル基
の反応に関わる酵素。胆汁うっ滞や
飲酒、脂肪肝などで上昇
胆汁うっ滞や飲酒、脂肪肝
などによって上昇
PGⅠ
ペプシノーゲンⅠ
胃酸の分泌機能を示す胃酸の分泌機能低下で数値が低下
胃酸抑制剤の服用で擬高値
PGⅡ
ペプシノーゲンⅡ
胃粘膜の炎症の状態を示すアルコールやピロリ菌などの影響
で胃粘膜に炎症が発生すると上昇
PGⅠ/PGⅡ比
ワン・ツー比
PGⅠとPGⅡの比。
低値は胃粘膜の萎縮を示す
アルコールやピロリ菌などの影響
で胃粘膜に萎縮が発生すると低下
尿潜血反応腎疾患で陽性。月経による出血や
尿路感染症で擬陽性
尿路感染症では、場合によって
粘膜の強化を推奨
Zn
血中亜鉛濃度
血液中の亜鉛濃度
低値は亜鉛不足、皮膚炎など
亜鉛不足、皮膚炎などでは
数値が低下、溶血性貧血、
多血症などで高値
Cu
血中銅濃度
血液中の銅濃度
低値はウィルソン病、高値は白血病など
食事量の不足で低値
亜鉛不足で高値となる事がある
Zn/Cu
亜鉛/銅比
亜鉛と銅の比。亜鉛と銅比が1.1以下では亜鉛不足
の可能性
BS
血糖値
血液中のブドウ糖濃度
※空腹時に測定
糖尿病、インスリン抵抗性
などで高値
HBA1c
ヘモグロビンエーワンシー
1〜3ヶ月の平均血糖値糖尿病、インスリン抵抗性
などで高値
ALP
アルカリホスファターゼ
亜鉛含有酵素
骨粗しょう症や成長期などで高値
低値は亜鉛不足の可能性
成長期や骨粗しょう症などで高値
亜鉛の需要と不足を調べる検査項目(主要なもの一部を掲載)

これら検査では、免疫力や免疫の異常、皮膚や粘膜の状態、貧血の状態や糖代謝の状態を知ることができ、亜鉛の不足と需要の状態を知ることが出来ます。これら検査結果と先ほどの自覚症状チェックとも併せて、亜鉛の必要状態を判断してみて下さい。

特に、亜鉛は血中亜鉛濃度として直接検査することが可能です。血中亜鉛濃度は、80㎍/dL〜130㎍/dLが分子栄養学を実践する上での基準となります。これより低い場合は、60㎍/dL未満で亜鉛欠乏症、60㎍/dL〜80㎍/dL未満では潜在性亜鉛欠乏と判断する事が出来ます。

亜鉛は、血中亜鉛濃度として直接検査することが可能。分子栄養学的基準値では、80㎍/dL〜130㎍/dLを保つことが理想

また、亜鉛の不足や需要の増加については、血中亜鉛濃度以外にも血清アルカリホスファターゼ(ALP)という酵素を調べることでも判断する事が出来ます。これは、ALPは亜鉛を必要とする酵素であり、亜鉛が不足すると低下することがあるためです。

ALPは主にリン酸化合物を分解する酵素で、血液検査の項目として肝臓や胆道の病気を調べる際に用いられています。ALPは肝臓や腎臓、骨、小腸などの細胞でつくられ、通常は胆汁とともに排泄されますが、肝臓や胆道の病気で胆汁の排泄が妨げられると血液中に漏れ出し、値が上昇します。

他にも、ALPは骨の代謝に関わっていて、骨が壊されたり作られたりすると値が上昇することがあります。特に、骨の成長速度が著しい成長期や、骨粗しょう症や骨折など骨が壊れているときに上昇することが知られています。

骨の代謝に関わる酵素のアルカリホスファターゼには亜鉛が含まれる。そのため、アルカリホスファターゼの値が低い場合は亜鉛不足の可能性が疑われる

そのため、ALPの低値は通常臨床的に異常とはされていませんが、分子栄養学ではALPの値が低い場合は亜鉛不足の可能性があると考えられています。また、成長期や骨折、骨粗しょう症など骨に関することで値が高くなっている場合は、ALPの需要が高まっており、亜鉛の需要が高いと判断する事が出来ます。この事からも、ALPの値が低い場合も高い場合のどちらも、亜鉛の需要が高まっている可能性を疑ってみて下さい。

ちなみに、ALPは甲状腺機能低下症やタンパク質不足、マグネシウム不足などでも低下することがあります。これは、ALPがタンパク質や亜鉛で出来ており、酵素の活性化にはマグネシウムが関係しているためです。これらの栄養素が不足した場合や、代謝障害などによって値が低下することもありますので、自己判断で分子栄養学を実践せず、必ず血液検査など検査を受けて状態をきちんと確認してから行うようにして下さい。

ナンナン

亜鉛不足の状態って、血液検査で直接調べることが出来るんだね
ボクの結果は100㎍/dLだったから、亜鉛は足りているって事でいいかな✨

はる かおる

うーん、分子栄養学をあまり理解していない人に多いんだけど、血中亜鉛濃度が80㎍/dL〜130㎍/dLにおさまっていたとしても亜鉛が足りているとは限らないんだ。

ナンナン

えっ、どういうこと❗❓

はる かおる

血中亜鉛濃度は、溶血性貧血や多血症などによっても上昇することがあるよ。だから、数値が基準値内に収まっていたとしても、亜鉛が足りていると判断する事は出来ないんだ。亜鉛の不足や需要の状態については、他にも様々な関連項目を参考にする必要があるよ。

ナンナン

そうなんだ・・・💧
特定の数値だけを見て素人が判断するのは危ないね💦
実践するときは、ちゃんと検査を受けて専門家のアドバイスを受けるようにするよ

亜鉛不足に対する分子栄養学的アプローチ

亜鉛不足や亜鉛の需要が高い時に対する分子栄養学的アプローチのご紹介です。ここでは、亜鉛摂取に対する基本的な考え方やアプローチの仕方と、ガンや免疫力アップに関わる分子栄養学的アプローチ、貧血に対する分子栄養学アプローチをご紹介します。

まず、亜鉛が不足しているかどうかは、血中亜鉛濃度のみで判断するのでは無く、亜鉛と銅の比率を見る事が大切です。亜鉛と銅は体内で拮抗作用をもって働いているため、亜鉛欠乏が起こると銅が過剰になっていきます。この時、例え血中亜鉛濃度が最適な基準値内に収まっていたとしても、血中銅濃度が上昇していた場合は、潜在性亜鉛不足の可能性があります。そのため、亜鉛不足かどうかは必ず亜鉛と銅の比率を見るようにして下さい。

亜鉛と銅の比率の関係。亜鉛と銅は拮抗作用を持っているため、この2つのバランスを見る事が重要

この亜鉛と銅の比は、1.1が理想とされています。例えば、血中亜鉛濃度が80㎍/dL、血中銅濃度が100㎍/dLの場合、80÷100=0.8となり、潜在性の亜鉛不足が考えられます。逆に、血中亜鉛濃度が110㎍/dL、血中銅濃度が100㎍/dLの場合、110÷100=1.1となり、理想のバランスであると考えられます。

KYBクリニックの調べでは、亜鉛欠乏・潜在性亜鉛欠乏の方が約2割存在していることが分かった

この亜鉛不足について、KYBクリニックの調べでは、亜鉛欠乏・潜在性欠乏の方は約2割存在していることが分かっています。また、このうい亜鉛・銅比が1.0未満の方は約8割を占めているという結果になりました。

そのため、亜鉛が充足しているかどうかは必ず亜鉛と銅の比で見るようにしましょう。この亜鉛と銅の比率を目安に補給する事が分子栄養学の基本となります。具体的には、血清亜鉛値が80㎍/dL未満では一日当たり60mg〜、亜鉛と銅の比率が1.1未満であれば一日45mg〜が目安です。この他にも、ALP等の項目も参考に調節してみて下さい。

亜鉛摂取の目安。血清亜鉛値の状態で、摂取量の調節を行っていく

それから、亜鉛不足の場合や亜鉛の需要が高いときには、亜鉛に加えてタンパク質とビタミンB群、ビタミンAとビタミンDをセットで摂ることが分子栄養学の基本になります。「亜鉛が不足しているなら亜鉛だけを補給すれば良いのでは?」と思うかも知れませんが、亜鉛だけを摂取してもあまり意味はありません。亜鉛は酵素の材料として使われるほか、細胞の分化分裂に関与している栄養素です。これらはタンパク質を元に作られ、ビタミンB群やビタミンA、ビタミンDと協力して働いていますので、亜鉛を補給する場合はこれらも同時に摂取するようにしましょう。

また、亜鉛は骨を作るためにも必要な栄養素です。成長期や骨粗しょう症など、骨の成長や骨ケアが必要な場合は、カルシウムとマグネシウムも併せて摂るようにして下さい。特に、ビタミンDが働くためにはマグネシウムが必要で、カルシウムが働くためにはビタミンDが必要です。このことから、カルシウムとマグネシウム、ビタミンDは必ずセットで摂りましょう。同じく、糖尿病や慢性腎疾患を抱えている方は、亜鉛に加えてカルシウムやマグネシウムの尿中排泄量も増加しやすくなります。当てはまる方はカルシウムとマグネシウム、ビタミンDも積極的に摂取するようにして下さい。

このカルシウムとマグネシウムを摂取する際は、カルシウムとマグネシウムの摂取バランスが重要になります。最適な比率は人にもよりますが、食事からのマグネシウムの摂取量不足やストレスによる排泄量の増加などを加味すると、カルシウム:マグネシウムを1:1のバランスで摂取することが理想です。

カルシウムやマグネシウム、ビタミンDの詳しい事については、次の記事でも解説しています。詳しく知りたい方は、是非ご覧下さい。

これらの基本を踏まえると、亜鉛不足や需要が高いときに対する基本的な分子栄養学的アプローチは次のようになります。

亜鉛不足や需要が高い時に対する基本的な分子栄養学的アプローチ例(1日あたり)

  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ビタミンD 4,000IU〜8,000IU
  • ビタミンA 10,000IU〜(マルチカロテノイド含む)
  • 亜鉛 15〜60mg

必要に応じて次も追加

  • カルシウム 600mg〜
  • マグネシウム 300mg〜600mg
  • ヘム鉄 15mg〜45mg
ビタミンAとビタミンDの摂取目安。この2つは亜鉛と協力して働くので、同時摂取を推奨

これら栄養素の摂取に加えて、食事の見直しや生活習慣の見直しなども同時に行いましょう。特に過度な飲酒や甘い物の摂りすぎは亜鉛の消耗に繋がりますので控えるようにしましょう。また、加工食品の摂りすぎや菜食主義、ダイエットなども亜鉛不足に繋がります。亜鉛は動物性食品に多く含まれているため、なるべく加工食品に頼らず新鮮な食材を使って、バランス良く摂取することが大切です。

この他、骨については骨は十分な刺激が与えられないと弱くなるため、運動する習慣を身につけることも重要です。運動には精神的なストレスを軽減したり自律神経を整える効果もあり、ストレス対策にもなります。

更に、骨を作るためには骨に刺激を与えることも必要。運動や生活習慣の見直し等も必要に応じて行う

将来にわたって健康な骨を維持するためにも、無理なダイエットや偏食、過度な飲酒は避け、バランスの良い食事と運動する習慣を取り入れるようにしましょう。

ナンナン

なるほど、血中亜鉛濃度が低いからといって、亜鉛だけを補給すれば良いってもんじゃ無いんだね

はる かおる

そうそう、亜鉛は補因子として利用される物だから、その他にもタンパク質やビタミンB群、ビタミンA、ビタミンD、カルシウムやマグネシウムなど様々な栄養が必要だよ。亜鉛が不足しているからといって、亜鉛だけ足そうとするのは間違いだから気をつけてね

亜鉛不足に対する分子栄養学的アプローチ応用編

ここからは、亜鉛不足に対する分子栄養学的アプローチの応用編です。亜鉛には細胞の分化・分裂や免疫の調整、貧血の改善など様々な働きがある事から、それぞれによって最適なアプローチが異なります。ここでは、簡単にそれぞれの分子栄養学的アプローチについての例をご紹介します。

ガンや免疫力アップに関わる分子栄養学的アプローチ

亜鉛には、粘膜や皮膚などのバリア機能の正常化に加えて、免疫力を調節する働きがあります。このバリア機能の正常化などにおける正常な細胞の分化分裂は、ガン細胞の抑制にも関係していると言われています。そのため、がん対策においては亜鉛の強化も重要です。

免疫力の源となる免疫細胞(白血球など)は細胞で出来ていることから、細胞を作るための材料としてタンパク質を始めとした様々な栄養が必要になります。例えば、免疫強化のための分子栄養学的アプローチとしては次のようなものがあげられます。

免疫強化のための栄養アプローチ例①
免疫強化のための栄養アプローチ②

免疫強化のための分子栄養学的アプローチ

  • タンパク質
  • BCAA(分岐鎖アミノ酸)
  • グルタミン
  • ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • EPA・DHA
  • オリーブ葉エキス

また、抗がん対策としては更なる免疫強化のアプローチと、必要に応じて貧血の改善も必要になります。抗がん対策としての栄養アプローチとしては、次のようなものがあげられます。

抗がん対策としての栄養アプローチ。免疫の調節や強化に亜鉛やビタミンA、Dが関わっており、その他にもタンパク質やビタミンBなども必要

抗がん対策としての分子栄養学的アプローチ

  • タンパク質
  • グルタミン
  • ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • トコトリエノール
  • ヘム鉄
  • 亜鉛
  • EPA・DHA
  • オリーブ葉エキス
  • プロバイオティクス
  • フコイダン・βグルカンなどのプレバイオティクス

特に免疫細胞の約7割は腸に存在していることから、免疫力を高めるには腸内環境を整えることも重要です。腸は体内にありながら、食品などに付着した細菌や病原体が常に侵入してくる部分でもあります。この病原体の侵入を食い止めるため、腸内には免疫細胞全体の約6割〜7割が存在し、侵入してくる敵と戦っています。

そして、この腸内の免疫細胞を活性化してくれる働きがあるのが、腸内の善玉菌である「乳酸菌」や「酪酸菌」などです。これらは腸内の悪玉菌と闘ったり、腸のエネルギー源として使える「短鎖脂肪酸」を生成したりしてくれるなど、私達の身体に有益な働きをしてくれます。

免疫細胞の7割は腸に存在している。そのため、免疫力強化には腸内環境の改善も重要

そのため、免疫力を強化するためにはプロバイオティクス(腸内環境を整える微生物)と、それを増殖・活性化するプレバイオティクス(食物繊維)の摂取も同時に行いましょう。食物繊維は善玉菌の餌となり、善玉菌の増殖と活性化を促します。

腸内環境の悪化によって引き起こされる「リーキーガット症候群」や、アトピー・アレルギーなどのケアとも繋がる部分がありますので、分子栄養学的アプローチを行う際は是非とも腸ケアも同時に行ってみて下さい。

上述の分子栄養学アプローチ例は、がんの治療を目的としたものではありません。あくまで、健康な細胞の分化分裂を誘導することと、がん治療における栄養消耗を補うサポートを行うためのものです。分子栄養学は、栄養素の多量摂取により、ガンなどの疾病を治癒するものでは無い点にご注意ください

鉄欠乏性貧血・亜鉛欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチ

次に、貧血に対する分子栄養学的アプローチです。亜鉛は赤血球の膜を強くし、貧血にも関連していることから、貧血対策においても重要な栄養素です。貧血といえば「鉄分」を思い浮かべるかも知れませんが、鉄分だけを補給しても貧血を改善することは出来ません。

亜鉛欠乏性貧血では赤血球の膜が弱くなり、血管とこすれて赤血球が破裂してしまう

造血には、鉄分以外にもタンパク質やビタミンB群、ビタミンAやビタミンD、亜鉛など様々な栄養が必要です。そのため、造血を促すためにはこれら栄養素もセットで摂るようにしましょう。

ビタミンAとDは幹細胞の分化に関わることから、貧血対策としても必要な栄養素

例えば、貧血として最も多い「鉄欠乏性貧血」に対する分子栄養学アプローチとしては、次のようなものがあげられます。

鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチ例

  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • ヘム鉄
  • ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
  • ビタミンD
  • 亜鉛
  • マンガン
  • セレン
鉄欠乏性貧血に対する栄養アプローチ例

この貧血には必ず原因が隠れており、鉄分や亜鉛などの摂取不足以外にも消化管出血や婦人科疾患など様々な原因があります。そのため、具体的なアプローチにつきましてはオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。また、貧血に対する分子栄養学的アプローチや鉄分の働きについては、次の記事で解説しています。より詳しく知りたい方は、是非参考にしてみて下さい。

ナンナン

亜鉛は、味覚の異常以外にも体の様々なところで働いているんだね

はる かおる

亜鉛の働きについて理解できたかな❓
亜鉛の必要量や需要は人それぞれ違うから、最適な摂取量についてはオーソモレキュラー療法の検査を受けてみてね

亜鉛の需要は人それぞれ。栄養状態の改善には必ずオーソモレキュラー療法を受けましょう。

亜鉛の不足や需要の増加には、亜鉛の摂取不足以外にも、タンパク質不足やガン、消化器系疾患、肝臓や腎臓の状態など様々な疾病が関係しています。また、この他にも貧血や眼の健康とも関係していて、人によって複数の原因が複雑に絡み合っていることも多くあります。

また、亜鉛を利用するためには、ビタミンB群やビタミンA、ビタミンDなどの栄養状態が関わっており、人それぞれ栄養状態も異なります。そのため、単に亜鉛を補給するのでは無く、これら状態や原因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の血液検査を受けてみましょう。

オーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査項目に加え、消化吸収能の状態やピロリ菌感染の有無、甲状腺の検査、副腎疲労や短鎖脂肪酸検査、リーキーガット症候群検査などを必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。

複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの栄養不足の根本原因がどこから来ているのかが分かります。また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。

このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。
亜鉛には様々な働きがありますが、あくまで「栄養素」であり、体内で利用されなければ意味がありません。亜鉛を利用するためには、タンパク質やビタミンB群、ビタミンAやビタミンDなど様々な栄養が必要です。このタンパク質の消化能力や栄養の需要は人それぞれ異なりますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。

オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。

また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。

分子栄養学の実践は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用しましょう

オーソモレキュラー療法では、血液検査や各種検査の結果に応じて分子栄養学実践専用に設計されたサプリメントで栄養アプローチをしていきます。

分子栄養学実践専用サプリメントとは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。また、原材料には天然由来の生体内物質が使用されていたり、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。

そのため、分子栄養学実践専用サプリメントは、市販されているサプリメントや海外サプリメントと比べて非常に高価となっています。

しかし中には、「市販されているサプリメントや海外サプリメントを利用して実践したい」と思っている方も多いかもしれません。市販されているサプリメントや海外サプリメントは、分子栄養学実践専用サプリメントと比べて非常に安価です。

ですが、市販されているサプリメント海外サプリメントなどで販売されているサプリメントで分子栄養学を実践をするのはオススメしません。

市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、そもそも消化吸収能が低下した方や病態を抱えた方が摂取するようには設計されておらず、胃や腸でも全く溶けない粗悪品も流通しています。

市販されているサプリメントの中には胃や腸で溶けずにそのまま便に排泄される物もある

また、原材料に人工的に加工されたものや合成されたもの、天然界には存在しない化学構造のものなどが使われていることもあり、これらを大量に摂取することはむしろ生体内の分子を乱してしまうことにも繋がります。

加えて、栄養素が酸化・劣化して効力を失っているものや、そもそも有効成分自体が殆ど含まれていないものなどもあります。このことから、市販されているサプリメントや海外サプリメントを使って分子栄養学を実践することはオススメしていません。

分子栄養学を実践する際は、このようなサプリメントの善し悪しを学ぶことも非常に重要です。分子栄養学実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの違いについては、下記の記事を参考にして下さい。

そして、分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する際は必ず「分子栄養学実践専用サプリメント」を使用しましょう。

サプリメントは、きちんと消化吸収・利用されて初めて意味があります。分子栄養学実践専用サプリメントでは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。

また、分子栄養学では一般的な量よりも遙かに多くの栄養素を摂取します。この時、栄養素同士が反応して効力を失ってしまったら意味がありません。分子栄養学実践専用サプリメントでは、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。

このことから、分子栄養学を実践する際は、必ず分子栄養学実践専用サプリメントを用いるようにして下さい。

ナンナン

サプリメントは何を選んでもいいわけじゃないのか❗

はる かおる

そうだよ、サプリメントは同じように見えてもその中身や設計や全く異なっているんだ質の悪いサプリメントを使うと逆効果になるから、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用に作られた作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね

分子栄養学実践用に設計されたケンビックスシリーズ

亜鉛とは? 亜鉛の働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説まとめ

以上が、亜鉛の働きと代謝の基本、亜鉛不足に対する分子栄養学的アプローチについてでした。

亜鉛は赤身肉や魚、牡蠣、穀物や種実類などに多く含まれていますが、吸収率は動物性食品と植物性食品で大きく異なります。特に亜鉛は吸収を阻害するフィチン酸やリン酸などの影響を受けやすく、とても吸収しにくい栄養素です。

また、亜鉛を利用するためには、タンパク質を始めとして、ビタミンB群やビタミンA、ビタミンDなど様々な栄養素が必要になります。これらもきちんと消化・吸収、利用するためには、胃腸の働きや胆汁の分泌など、肝機能や腎機能が正常に働けていることも重要です。

特に、ビタミンAやビタミンDの吸収にはコレステロールから作られた胆汁が必要で、コレステロールの合成やビタミンA、ビタミンDを血液中で運搬するためにはタンパク質も必要になります。分子栄養学では、このような栄養素同士の働きや、吸収・代謝をよく理解することが大切です。

分子栄養学やオーソモレキュラー療法というと単にサプリメントを飲むだけの療法だと思われがちですが、この記事で解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。もし、オーソモレキュラー療法に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。

分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。

オーソモレキュラー療法の申し込み方法については、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で詳しくご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。

参考情報

  1. 亜鉛 ↩︎
  2. 亜鉛吸収を向上させる食品因子の探索 ↩︎
  3. 大豆食品中のフィチン酸の加水分解及び微量ミネラル利用効率の改良 ↩︎
  4. 生体内カドミウム・マンガン輸送における亜鉛輸送体ZIP8の役割 ↩︎
  5. 「米に含まれるカドミウム」に関するQ&A ↩︎
  6. 金子塾下巻 194頁 ↩︎
  7. ビタミンBの吸収・代謝には亜鉛栄養が重要 ↩︎

※当サイトは分子栄養学の普及を目的に、個人が独学で学んだ情報を発信しているサイトです。情報の正確性には配慮しておりますが、サイトに記された情報については、必ずしも正確性を保証するものではありません。また、サイトに示された表現や再現性には個人差があり、必ずしも利益や効果を保証したものではございません。
※当サイトは、薬機法を遵守して運営しています。記事内容や表現において何かお気づきの点が御座いましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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これを読む前に分子栄養学を実践するのは危険です❗

世の中には、たくさんの健康情報が溢れています。
「この症状にはこのサプリメントを飲むと良い」「この不調にはこの食べ物がいい」
様々な情報が発信されているにもかかわらず、実際に不調が改善されていない人が多いのは何故でしょうか?

それは、現在のネット情報では個体差を考慮していない表面的な情報しか手に入らないからです。例えば、ネット上に書かれているオススメの食事内容が、あなたにとって消化吸収出来る最適な食事とは限りません。また、オススメされている栄養素をサプリメントで摂ったとしても、そのサプリメントがきちんと消化吸収、利用出来る分子構造で製造されているとは限りません。

分子栄養学においても同じで、現在では「なんちゃって分子栄養学」と呼ばれるいい加減な情報発信が多くされています。

分子栄養学・オーソモレキュラー療法を効果的に、かつ安全に実践するためには、このような間違った情報を排除し、正しい分子栄養学の知識を身につけることが重要です。また、栄養やサプリメントの知識以外にも、栄養療法を成功させるためには、栄養療法に対する考え方や取り組み方、生き方などの改善も欠かせません。

このメルマガでは、分子栄養学に関する正しい知識はもちろん、栄養療法を行う上でのコツや考え方、ココでは解説しきれなかった事、記事では公開できないような内容を配信しています。

これから分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する方にとって、成否に関わる非常に重要な情報となっていますので、ご興味のある方は是非ご購読下さい。

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この記事を書いた人

はる かおるのアバター はる かおる 分子栄養療法ナビゲーター ディレクター

春木 敏徳(はる かおる)
分子栄養療法ナビ(このサイト)の管理人のはる かおるです。
現在は「字が書けないライター」兼、KYBクラブのディレクターとして活動しています。

僕自身、発達障害の一種である「書字障害」を抱え、幼少の頃から両親からの虐待や学校でのいじめなど、数々の困難や体調不良を経験してきました。
育った環境の悪さから18歳頃からうつ病を発症し、その後10年近く精神薬での治療を行っています。また、他にも小・中・高校生時代は朝起きられず、殆ど学校にも行っていません。

今では「あれは起立性調節障害だったな」と思えるのですが、当時はそのような病気の認識は殆どありませんでした。そのため、非常に風当たりの強い中、幼少時代を過ごしてきています。

また、幼少期から続く極度の栄養失調により、低血糖症や甲状腺機能低下症、SIBO、リーキーガット症候群、副腎疲労、脂肪肝など様々な病気を経験しました。現在では分子栄養学に出会ったことで体調も大きく回復しており、これら病気の改善に必要な知識も豊富です。

インターネットの登場によって間違った分子栄養学も広まってきており、それによって体調を崩してしまう人も多くなってきています。このような中、分子栄養療法ナビ(このサイト)や情報発信を通じて、多くの人に正しい分子栄養学が広められるよう現在も奮闘中。

得意とする分野
うつ病、発達障害、ADHD、起立性調節障害、貧血、不妊症、ガン、甲状腺機能障害、ピロリ菌感染症、SIBO、リーキーガット症候群、低血糖症、副腎疲労、脂肪肝、ダイエット、更年期障害、PMSなど。全般的に幅広い知識を有する。

ほか、文章を書くのが得意で、ライティングやマーケティング、投資などお金に関する知識や生き方に関するアドバイスも得意。

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