ビタミンAとは? ビタミンAの働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説
「風邪をひきやすい」「眼が乾きやすい」「アトピーやアレルギーがある」「ニキビや肌荒れがある」などの症状は、もしかしたらビタミンA不足が原因かもしれません。ビタミンAは眼の健康や視力に関わる栄養素と言われており、それ以外にも皮膚や粘膜の健康、貧血改善などにも関係しています。
ビタミンAが不足すると、眼球乾燥症(ドライアイ)を引き起こしたり、白内障や緑内障などの眼の病気になりやすくなったり、アトピーやアレルギーなどが起こりやすくなったりなど、様々な不調へと繋がってしまう原因になります。
今回は、このビタミンAの基本についてと、ビタミンAがどのように吸収・代謝されているのか、白内障や緑内障など眼の病気や、アトピーやアレルギー、ガンなどを含めたビタミンA不足に対する分子栄養学的アプローチを解説します。
ビタミンAとは
目が、目がぁぁ〜❗❗❗
ど、どうしたの❗❓
め、目が乾燥して痛くて目が開けてられないんだ💦
目が乾燥❓❓
そりゃ酷いドライアイだね…💧
うん…
ちょっと目を開けてるだけで痛くて涙が出てくるんだ💧
うーん……、もしかして目の粘膜がかなり弱っちゃってるのかもね。
ちゃんとビタミンA摂ってる❓❓
び、ビタミンA❓❓
ビタミンAって、摂りすぎると危険って言われているビタミンだよね。それが目の乾燥とどう関係してるの❓❓
ビタミンAは、涙液の生成と分泌に関係していて、目の角膜や結膜を健康に保つ働きがあるよ。不足すると、最悪の場合は失明に至ることもあるね
なるほど・・・💧
でも、ビタミンAの摂りすぎは危険って言われているから、あまり摂らないようにしてきたんだよね💧
怖いけど、ちゃんと摂った方が良いのかな❓
ビタミンAは摂りすぎると危険って言われていることがよくあるけど、実は食品やサプリメントから摂る分にはそこまで危険では無いんだ。むしろ、現代人はビタミンAが不足していると言われているよ。このあたりの話は結構複雑だから、もっと詳しく解説してあげるね。
ビタミンAは、眼の健康や皮膚などバリア機能の維持に重要な役割を果たす脂溶性ビタミンの一つです。1913年に眼球乾燥症(ドライアイ)からビタミンAが見つかり、学術名を「アクセロフトール」と名付けられます。その後、眼の網膜にもビタミンAが関与していることが分かり、学術名を網膜の「レチナ」にちなんで「レチノール」と名付けられました。
ビタミンAにはいくつかの種類があり、人参やカボチャなど緑黄色野菜に多く含まれるものが「αカロテン」や「βカロテン」で、魚や卵、乳類など動物性食品に含まれるものが「レチノール」です。αカロテンやβカロテンは構造が違うビタミンAの仲間(プロビタミンA)で、体内では必要な分だけビタミンAに変換されて利用されています。
このビタミンAは現代人に不足しているビタミンと言われています。その理由は、ビタミンA自体がそもそも摂取しにくい栄養素である事に加え、無理なダイエットや偏った食生活、高齢化などによる食生活の変化などによって、「現代型栄養失調」に陥っている人が多くなっているためです。
現代型栄養失調とは、カロリーなどエネルギーの摂取は十分に足りているにもかかわらず、タンパク質やビタミン、ミネラルといった身体に必要な栄養素が十分に摂れていない状態の事です。ビタミンAは「牛レバー」や「豚レバー」など動物の肝臓や、緑黄色野菜に多く含まれていますが、現代人ではこれらレバー類や緑黄色野菜の摂取量はそれほど多くありません。対して、ラーメンやパスタ、うどんやパンなど炭水化物に偏った食生活を送っている方が多くなっています。このことから、ビタミンAは意識的に摂取しないと不足しやすい栄養素です。
ビタミンAには眼の健康を維持する以外にも、細胞の正常な分化分裂に関係しており、生殖機能の維持や貧血の改善にも関わっています。不足すると白内障や緑内障を発症しやすくなったり、眼球乾燥症(ドライアイ)になりやすくなったり、アトピーやニキビ、タコやウオノメなど皮膚の異常が起こりやすくなったり、貧血になりやすくなります。ビタミンAは亜鉛やビタミンDと協力して働いており、これらもあわせてビタミンAは積極的に摂取したい栄養素の1つです。
ビタミンAが多く含まれる食品
ビタミンAには大きく分けて二種類あり、豚や牛などのレバー(肝臓)や、ウナギ、乳製品などに多く含まれているものと、人参やカボチャ、ニラなどの色の濃い野菜(緑黄色野菜)に多く含まれているプロビタミンA(βカロテン)があります。これら野菜は緑色や黄色・橙色などの色をしていて、この色は主にカロテノイドの含有量によるものです。
緑黄色野菜と言えば「色の付いた野菜」というイメージですが、実は「100g当たり600㎍以上のβカロテンを含む野菜」を緑黄色野菜と呼びます。トマトやピーマンなども緑黄色野菜として知られていますが、100g当たりのβカロテン量は600㎍未満とそれほど多くありません。ですが、トマトやピーマンなどは食べる回数や量が多いため、100g当たりのβカロテン含有量が少なくても緑黄色野菜として扱われています。
また、緑黄色野菜に含まれているカロテノイド類(プロビタミンA)は、β-カロテン以外にも「α-カロテン」や「β-クリプトキサンチン」などがあり、これらはβ-カロテンと同じく必要な分だけビタミンAに変換されて利用されています。ただ、β-カロテンのビタミンA活性が100とした場合、α-カロテンは50程度、β-クリプトキサンチンは50〜60程度と、およそβ-カロテンの半分程度しかありません。
おまけにα-カロテンとβ-クリプトキサンチンはβ-カロテンに比べて含有量が少ない傾向にあります。そのため、一般的にプロビタミンAと言えばβ-カロテンのことを指すことが一般的です。
このビタミンAの含有量は、一般的に「RE(レチノール当量)」や国際単位である「IU」で表示されています。豚レバーや牛レバーなど動物性食品に含まれるビタミンA「レチノール1㎍」を1RE(レチノール当量)とし、1REはβ-カロテン12㎍に相当します。また、α-カロテンなど他のプロビタミンAでは24㎍が1RAEです。このβ-カロテンのレチノール活性当量は「サプリメント」と「食品に含まれるもの」で異なっており、サプリメントのβ-カロテンは2㎍で1RAE、食品に含まれるβ-カロテンは12㎍で1RAEです。(RAEはレチノール活性当量。レチノール活性当量とは、「プロビタミンAをレチノールで換算したらどのくらいか」を示す単位)
この違いは、食品に含まれるβ-カロテンと、サプリメントに含まれるβ-カロテンでは吸収率が異なるためです。サプリメントでは、β-カロテンを油に溶かした状態となっているため、食品と比べて吸収率が高くなっています。そのため、サプリメントと食品由来のβ-カロテンでは扱いが異なる点に注意して下さい。
サプリメントのβ-カロテンと食品由来のβ-カロテンの違い
上述したように、サプリメントと食品由来のβ-カロテンでは、扱いが異なっています。サプリメントのβ-カロテンは2㎍で1RAEに対し、食品に含まれるβ-カロテンは12㎍で1RAEしかありません。この違いは一体何なのでしょうか?
これは、食品由来のβ-カロテンと、サプリメントのβ-カロテンでは吸収率が異なるためです。ビタミンAやβ-カロテンは脂溶性ビタミンのため、吸収するためには油が必要です。サプリメントのβ-カロテンは既に油に溶かした状態になっているため、食品由来のβ-カロテンと比べると、大幅に吸収しやすくなっています。対して、緑黄色野菜などにはほとんど油が含まれていません。そのため、食品由来のβ-カロテンの吸収率は、サプリメントと比べて1/7程度となっています。日本では、これをアメリカ・カナダの食事摂取基準にならって1/6としています。
そして、β-カロテンからレチノールへの転換効率は、50%程度(1/2)と見積もると、食品由来の由来のβ-カロテンのビタミンA生体利用率は、1/12(=1/6×1/2)となります。このことから、食品由来のβ-カロテンは12㎍でレチノール 1㎍(1RAE)として換算されています(α-カロテンはβ-カロテンよりも更に転換効率が低く、β-カロテンの50%(1/2)程度しかありません。そのため、α-カロテンは24㎍で1RAEとなっています)
対してサプリメントのβ-カロテンは食品由来のβ-カロテンと比べて吸収率低減による影響を考慮しません。そして、β-カロテンからレチノールへの転換効率は、50%程度(1/2)と見積もられているため、2㎍のβ-カロテンで1㎍のレチノールに相当するとされているわけです。(胆汁の分泌量など個体差の吸収率は考慮されていない点に注意)
以上のように食品由来のβカロテンとサプリメントのβ-カロテンでは吸収率が異なることから、両者のβ-カロテンは扱いが異なっています。
そして、このレチノール1㎍(1RE)は、国際単位で約3.33IU(1IU=0.3㎍)に相当します。国際単位IUは、主にサプリメントでビタミンAの効力を表記する際に用いられている単位です。そのため、サプリメントや食品に含まれるビタミンAを参考にする場合はこの事も知っておく必要があります。
レチノール1㎍=1RE(レチノール当量)
レチノール1㎍=1RE=約3.33IU(1IU=0.3㎍)
β-カロテン12㎍=1RAE(食品由来)
β-カロテン2㎍=1RAE(サプリメント由来)
α-カロテン・β-クリプトキサンチン 24㎍=1RAE(食品由来)
例
豚レバー生(100g)レチノール13000㎍×3.33IU=43,290IU
人参 生(100g)β-カロテン8600㎍÷12㎍=717㎍
717㎍×3.33IU=2,387IU
サプリメントのビタミンA 10,000IU=レチノール3000㎍(3000RE)
※日本食品標準成分表では、β-カロテン以外にα-カロテン、β-クリプトキサンチンなど含まれている全ての成分が考慮されて「レチノール活性当量:RAE」として表示されています
例えば、豚レバー生(100g)には、レチノールとして13000㎍が含まれています。これを国際単位IUに直すと、レチノール13000㎍×3.33IU=43,290IU相当となります。もう一方のβ-カロテンでは、人参 生(100g)に対し8600㎍のβ-カロテンが含まれています。これを国際単位IUに直すと、β-カロテン8600㎍÷12㎍=717㎍、717㎍×3.33IU=2,387IUです。(日本食品標準成分表では、この他にα-カロテンやβ-クリプトキサンチン分も考慮されて「レチノール活性当量:RAE」として表示されています)
レチノール活性当量(㎍RAE)=レチノール(㎍)+β-カロテン(㎍)×1/12+α-カロテン(㎍)×1/24+β-クリプトキサンチン(㎍)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(㎍)×1/24
このように、レチノールとβカロテン、国際単位でビタミンAの効力や意味が大きく変わってきます。同じように見えるビタミンAでも、単位や含まれているものでビタミンAの活性量が異なりますので注意して下さい。
ビタミンAが多い食品 |
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ビタミンA(レチノール)を多く含む食品 豚レバー生(100g) ……13000㎍ 牛レバー生(100g)……1100㎍ 鶏レバー生(100g)……14000㎍ タラの肝油(100g)……37000㎍ うなぎ蒲焼き(100g)……1500㎍ 牛乳(100g)……38㎍ バター(100g)……500㎍ チーズ(100g)……240㎍ 生卵(100g)……210㎍ プロビタミンAカロテノイド(β-カロテン)を多く含む食品(β-カロテン当量) 人参 生(100g)……8600㎍(レチノール活性当量 720㎍) カボチャ生(100g)……1400㎍(レチノール活性当量 120㎍) ほうれん草 生(100g)……4200㎍(レチノール活性当量 350㎍) にら 生(100g)……3500㎍(レチノール活性当量 290㎍) パプリカ 生(100g)……1100㎍(レチノール活性当量 88㎍) マンゴー(100g)……610㎍(レチノール活性当量 51㎍) ※『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』より作成 |
このほか、カロテノイドには、ビタミンAに変換されるα-カロテンやβ-カロテン、β-クリプトキサンチン以外にも、トマトに多く含まれる「リコピン」や、ブルーベリーなどに含まれる「ルテイン」、鮭などに含まれる「アスタキサンチン」や「ゼアキサンチン」などがあります。
これらはプロビタミンAのカロテノイドと違って、ビタミンAに変換されることはありません。ビタミンAには変換されませんが、優れた抗酸化作用を持っています。この抗酸化作用は、がんの発生に対して予防的に働いたり、白内障や加齢性黄斑変性症のリスクを減少するなどの働きがあります。また、レチノールなどのビタミンAは抗酸化作用を持っていませんが、β-カロテンなどプロビタミンAは優れた抗酸化作用を持っています。
そのため、これらカロテノイドはビタミンAと併せて積極的に摂取したい栄養素の1つです。サプリメントなどでビタミンAを摂取する際は、ビタミンA(レチノール)に加えて複数のカロテノイドを配合した「マルチカロテノイド含有」のサプリメントを選ぶのがオススメです。
な、なるほど・・・
なんとなく分かったような分からないような・・・💦
ビタミンAはビタミンの中でも難しい方だね💧
でも、このあたりは基本中の基本だから、何度も読み返して理解を深めておくのが良いね。
ビタミンAの吸収と代謝
体内におけるビタミンAの供給源は、食事からの摂取が主な供給源です。ビタミンAにはいくつかの種類があり、豚や牛などの肝臓に含まれている物は「レチニルエステル」、タラの肝油など魚油には「レチノール」が含まれています。この他、緑黄色野菜に多く含まれる「β-カロテン」や「α-カロテン」「β-クリプトキサンチン」などがあり、これらは小腸の上部で脂肪(脂質)と一緒に吸収され、カロテノイド類は必要に応じて「レチナール」に変換されます。
このレチナールは、主に網膜に存在し、視覚に関与しているビタミンAの形態です。このレチナールは、体内で必要に応じて「レチノイン酸」という形に変化します。レチノイン酸は、細胞の分化・分裂をコントロールし、免疫細胞や皮膚、粘膜細胞などの正常な分化・分裂、角化の正常化(皮膚の一番外側にある角質細胞が生まれ、剥がれ落ちるまでの過程)に関わっています。(詳しくは後述)
これら食品に含まれるビタミンAは脂溶性のため、水に溶けにくく脂に溶けやすいという特性があります。そのままでは水分の多い血液に溶けず、馴染むことが出来ません。そのため、体内では脂質や脂溶性ビタミンを水と混ざりやすくするために、肝臓から「胆汁酸」が分泌されています。この胆汁酸は、あぶらと水を混ざりやすくする「乳化」という働きがあり、あぶらやビタミンAなど脂溶性ビタミンの吸収を助けています。この胆汁酸は肝臓で合成され、胆のうから分泌されていることから、肝臓や胆のうの健康状態もビタミンAの吸収において重要です。
そして、その後の吸収や代謝は「レチニルエステル」や「レチノール」と「β-カロテン」で異なります。レチニルエステルの場合では、すい臓から分泌される消化酵素「膵リパーゼ」と小腸粘膜から分泌されるエステラーゼの働きにより、レチニルエステルはレチノールと脂肪酸(パルミチン酸など)に分解されます。分解されたレチノールは、腸管内のミセルと呼ばれる脂質の微粒子に溶解し、腸粘膜細胞(エンテロサイト)に吸収されます。
この時、一部は「細胞内レチノール結合タンパク質(CRBP)」と呼ばれるビタミンAを運ぶトラックと結合するほか、「細胞内レチノール結合タンパク質(CRBP)」と結合しない遊離のレチノールは、再び活性の低い貯蔵型のビタミンAである「レチニルエステル」に再合成され、キロミクロンと呼ばれるリポタンパク質に包まれてリンパ系に運ばれます。その後、血流を通じて全身の組織に運ばれ、主に肝臓に貯蔵されます。
この肝臓では、ビタミンAを最も活性の低い「レチニルエステル」という形で貯蔵しています。貯蔵されたレチニルエステルは、必要に応じて「レチノール」に変換し、「レチノール結合タンパク質(RBP)」と結合して血流に放出し、各組織に届けられます。この理由としては、レチノールのままでは極めて酸化されやすく、水(血液)にも溶けにくいためです。レチノールが「レチノール結合タンパク質(RBP)」と結合すると、水溶性となって血液に溶けやすくなり、かつ酸化しにくくなります。「レチノール結合タンパク質(RBP)」は、タンパク質で出来ていることから、ビタミンAの輸送や貯蔵、利用するためには十分なタンパク質の摂取が必要です。
また、ビタミンAを活性化して利用するためには、肝臓で作られる酵素の働きが必要です。具体的には、レチノールからレチナールへの変換にレチノールデヒドロゲナーゼ(レチノール脱水素酵素)、レチナールからレチノイン酸への変換にはレチナールデヒドロゲナーゼ(レチナール脱水素酵素)などアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アルデヒド脱水素酵素)という酵素が関与しています。1
これら酵素は肝臓で作られていることから、肝臓が元気である事が重要です。特に「アルデヒドデヒドロゲナーゼ」は、アルコールの解毒にも関与している酵素ですので、お酒を飲みすぎていた場合はこれら酵素を消耗し、ビタミンAの活性化にも影響を与えてしまうことがあります。これは、レチノールはアルコール系、レチナールはアルデヒド系の構造をしているためです。
加えてこれら酵素を活性化して利用するためにはビタミンB群や亜鉛の働きも必要です。先ほどのレチノールからレチナールへの変換に必要なレチノールデヒドロゲナーゼ(アルコール脱水素酵素)の活性化にはビタミンB3(ナイアシン)、亜鉛が必要ですし、レチナールからレチノイン酸への変換に必要なレチナールデヒドロゲナーゼ(アルデヒド脱水素酵素)の活性化にはビタミンB3(ナイアシン)が必要です。
さらに、これらビタミンB群は肝臓で活性化されて初めて機能を発揮します。この肝機能が低下していた場合、ビタミンB群の活性化が抑制され、ビタミンAの代謝も悪化してしまいます。
肝臓はビタミンAを貯蔵したり、必要に応じて放出したり活性化したりしている臓器です。肝臓疾患や慢性肝炎などでは、ビタミンAの貯蔵量や代謝量が低下してしまう原因になってしまいます。そのため、ビタミンAの不足や需要を予測する際は、肝臓の状態をよく確認することも大切です。
もう一つのβ-カロテンでは、他の脂質や脂溶性ビタミンと同様に、胆汁酸と結合してミセルを形成し、小腸上皮細胞に吸収されます。β-カロテンは、特に腸上皮細胞の細胞膜を通じて受動的に拡散し、細胞内に取り込まれます。
この時、腸上皮細胞内でβカロテンの一部は酵素(β-カロテン15,15’-モノオキシゲナーゼ)によってビタミンA(レチナール)に変換されます。これらは「細胞内レチノール結合タンパク質Ⅱ(CRBPⅡ)」と結合して「CRBPⅡ・レチナール」として貯蔵される他、レチナールがレチノールに変換(還元)されて「CRBPⅡ・レチノール」として貯蔵されます。
また、変換されなかったβ-カロテンは、キロミクロンに取り込まれ、リンパ系を通じて直接血流に運ばれます。この時、血中で運ばれたβ-カロテンが脂肪組織や皮膚に蓄積されることがあり、摂取量によってはβ-カロテンの色素によって肌が黄色く見える「柑皮症(かんぴしょう)」を引き起こすことがあります。
柑皮症では、特にβ-カロテンは角層の厚い手のひらや足の裏、皮下脂肪の豊富なほっぺなどに沈着しやすく、黄色っぽくなります。高度の場合、爪や鼻の下なども黄色くなることがありますが、全身が黄色くなることはまれです。
柑皮症は、その見た目から肝臓が悪くて生じる「黄疸(おうだん)」と間違われることがありますが、柑皮症は黄疸と違って、白目まで黄色くなることはありません。そのため、柑皮症か黄疸かを見分ける際は、白目の部分が黄色くなっていないかをよく確認してみましょう。
また、柑皮症は皮膚が黄色く見えるだけで特に異常は無く、一過性の現象です。そのため、特別な治療は必要ありません。柑皮症はβ-カロテンの摂り過ぎによって引き起こされると言われていますが、分子栄養学的にはタンパク質やビタミンB群、亜鉛の不足が原因の1つと言われています。
これは、β-カロテンからレチナールに変換する際には、「β-カロテン15,15’-モノオキシゲナーゼ」という酵素や、「細胞内レチノール結合タンパク質Ⅱ(CRBPⅡ)」が関わっているほか、β-カロテンが血液中で運ばれる際には「リポタンパク質」と呼ばれるタンパク質と結合する必要があるためです。
これらはタンパク質やビタミンB群を材料に作られている事から、タンパク質やビタミンB群の摂取量が不足しているとこれらの代謝がうまくいかなくなって柑皮症を引き起こしやすくなります。また、「レチノール結合タンパク質(RBP)」の合成や、レチナールからレチノールの還元(レチナール還元酵素)には「ビタミンB群」や「亜鉛」が関わっています。そのため、分子栄養学やオーソモレキュラー療法の実践において柑皮症が発症した場合は、タンパク質やビタミンB群、亜鉛を十分に摂取することが大切です。併せて、胃や肝臓を含めた消化吸収能や脂質代謝に問題が無いかどうかの確認と、場合によっては消化酵素の追加や脂質代謝の改善、自己乳化型のビタミンAサプリメントに変えるなど消化サポートも行うようにして下さい。
ビタミンAの吸収・代謝を助けてくれるもの
- タンパク質
ビタミンAは肝臓に運ばれた後、必要に応じて「レチノール」に変換し、「レチノール結合タンパク質(RBP)」と結合して血流に放出される。そのため、ビタミンAの利用にはタンパク質が必要 - 脂肪(油脂類)
ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、脂肪と一緒に摂取することで吸収が促進される。食事に含まれる良質な脂肪(オリーブオイル、アボカド、ナッツなど)が役立つ。 - 胆汁酸
胆汁酸は、脂肪の消化を助け、ビタミンAの吸収を促進する。胆汁酸は肝臓で生成され、胆のうから分泌される。そのため、肝臓の健康状態に影響を受ける。 - 亜鉛
亜鉛は「レチノール結合タンパク質(RBP)」の合成やレチノールからレチナールの変換、またはその逆に関わる。亜鉛は牛の赤身肉やウナギ、牡蠣などに多く含まれる。 - ビタミンE
ビタミンEはβ-カロテンやレチノールの酸化を抑制し、その利用率を高める働きがある。ビタミンEは、アーモンドやひまわりの種、すじこやたらこなどに多く含まれる。 - ビタミンB群
レチノールからレチナールへの変換に必要なレチノールデヒドロゲナーゼ(レチノール脱水素酵素)や、レチナールデヒドロゲナーゼなどの酵素活性に関わる。特にビタミンB1やナイアシンが重要
ビタミンAの吸収・代謝を阻害してしまうもの
- 脂肪摂取不足
ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、十分な脂肪がないと吸収が低下します。脂肪の摂取不足は、ビタミンAの腸からの吸収を阻害します。 - タンパク質不足
ビタミンAの吸収・運搬・貯蔵・利用には多くの酵素や結合タンパク質が関わる。タンパク質不足では、ビタミンAの吸収から利用まで一連の代謝が妨げられる恐れがある。 - ビタミンB群の不足
レチノールをレチナールに酸化する反応は、「レチノールデヒドロゲナーゼ」と呼ばれる酵素によって触媒されます。また、レチナールは「レチナールデヒドロゲナーゼ」という酵素によってさらに酸化されて「レチノイン酸」になります。これら酵素にはビタミンB群の一種である「ナイアシン」が関わっていることから、ビタミンB群の不足はビタミンAの利用を妨げてしまう可能性があります。 - 胆汁酸欠乏
胆汁酸はビタミンAの吸収に必要です。胆汁酸の分泌が不足していると、吸収が大幅に低下します。 - 吸収不良症候群
クローン病やセリアック病など、腸の吸収機能が低下する疾患では、ビタミンAの吸収が阻害されます。 - アルコール摂取・喫煙
アルコールの過剰摂取は、肝臓にダメージを与え、肝機能低下を引き起こす原因です。肝機能低下はビタミンAの代謝を妨げ、ビタミンAの肝臓への蓄積や排出を乱します。また、喫煙と飲酒はβ-カロテンの血中濃度を低下させます。 - 薬物の影響
オーリスタット(脂肪吸収抑制薬)は脂肪の吸収を抑制することで、ビタミンAの吸収も同時に阻害します。コレスチラミン(胆汁酸結合樹脂)は胆汁酸と結合し、脂溶性ビタミンの吸収を阻害します。 - 低コレステロール
脂質や脂溶性ビタミンの吸収に不可欠な胆汁酸は、コレステロールを元に肝臓で作られている。低コレステロールの場合や、コレステロールを下げる薬(スタチン系)などを服用している場合は、ビタミンAの吸収と代謝を妨げる恐れがある。 - 肝臓の病気
肝臓はビタミンAの吸収に必要な胆汁酸の分泌や、代謝に重要な役割を果たす。肝硬変や肝炎などの肝臓の疾患は、胆汁酸の分泌量低下や、ビタミンAの吸収や貯蔵、代謝を阻害し、不足を引き起こす可能性がある。 - 亜鉛欠乏症
亜鉛はビタミンAの代謝と輸送に重要な役割を果たします。亜鉛が不足すると、レチノール結合タンパク質の合成が減少し、ビタミンAの体内輸送が阻害されます。 - 鉄欠乏症
鉄はビタミンAの代謝に関わるシトクロムP450の産生に関わっています。シトクロムP450とは、体内で様々な物質の代謝に関わるヘム鉄含有の酵素群の総称です。このシトクロムP450はビタミンAの酸化反応(レチノールからレチナールなど)に関与していることから、鉄不足ではシトクロムP450の活性が低下してビタミンA代謝が阻害されてしまう可能性があります。 - 高フィチン酸摂取
穀物や豆類に含まれるフィチン酸は、亜鉛や鉄と結合して吸収を妨げ、それが結果的にビタミンAの代謝を妨げる可能性があります。 - 過剰な食物繊維
食物繊維は消化管内で栄養素と結合し、その吸収を妨げることがあります。特に過剰な食物繊維は、亜鉛や鉄と結合して吸収を妨げ、それが結果的にビタミンAの代謝を妨げる可能性があります。 - ビタミンD欠乏
ビタミンDは、ビタミンAと共に細胞の正常な分化・分裂や角化の正常化に関わっています。ビタミンAとDはセットで働くため、ビタミンD欠乏ではビタミンAの利用が妨げられてしまう可能性があります。 - 腎臓の病気
腎臓はビタミンDの活性化に重要な役割を果たしています。慢性腎臓病や腎不全は、ビタミンDの1α-ヒドロキシ化を阻害し、活性形態のビタミンDが不足する原因となる。また、慢性腎臓病や心血管疾患などの慢性疾患を持つ人は、ビタミンDの活性化に必要なマグネシウムの代謝や排泄が正常に行われず、マグネシウム不足のリスクが高まる。
ビタミンAは、生体内で必要に応じて様々な形に変化しています。体内では、「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」という三種類の活性型があり、活性の強さとしては「レチノール」が最も活性が低く、次いで「レチノール」、「レチノイン酸」と続きます。
これらはそれぞれの活性に応じて働きが異なり、最も活性の低い「レチノール」は、皮膚や粘膜など上皮組織の分化や維持、生殖機能の維持や成長促進などの働きがあります。次いで活性の強い「レチナール」は、主に網膜に存在して視覚作用に関係しています。β-カロテンは、一部がレチナールに変換されて利用されるため、「プロビタミンA」と呼ばれています。
そして、最も活性の高い「レチノイン酸」は、成長促進や細胞の増殖・分化をコントロールする働きがあります。このレチノイン酸は最も活性が高く、お薬でも使われている形態のため、過剰摂取には注意が必要です。
対して食品に含まれているビタミンAの場合は、お薬で使われるビタミンA製剤と違って過剰摂取の心配は殆どありません。この理由としては、ビタミンAの体内動態は厳密にコントロールされているため、食品からビタミンAを摂取しても、過剰に働くことが無いようコントロールされているためです。
例えば、食品に含まれるビタミンAは、「レチニルエステル」と「レチノール」「β-カロテン」などがあります。レチニルエステルは「レチノール」として吸収され、β-カロテンは必要に応じて「レチナール」に変換されます。この「レチノール」と「レチナール」は相互に変換することができ、レチナールが余剰になればレチノールに変換されます。
そして、レチノールが余剰になれば、レチノールはビタミンAとしての活性が無い貯蔵型のビタミンAである「レチニルエステル」に変換することが可能です。変換されたレチニルエステルは、主に肝臓の星細胞に貯蔵されています。
逆に最も活性の高い「レチノイン酸」は、「レチナール」から変換されますが、その逆である「レチノイン酸」から「レチナール」への変換は出来ません。しかし、レチナールからレチノイン酸への変換は厳密にコントロールされています。そのため、食品からビタミンAを摂取したとしても、必要以上にレチノイン酸は作られないようになっています。
つまり、体内ではビタミンAを安全な形で貯蔵・利用できる仕組みが備わっており、必要以上に活性化されないようコントロールされています。このようにビタミンAには様々な種類や働きがあり、分子栄養学ではこの違いや働きをよく理解することが大切です。難しいかもしれませんが何度も読み返して理解を深めてみてください。
び、ビタミンAって色んな形があって色んな働きをしているのか💦
そうそう。ビタミンAの働きを理解するためには、それぞれのビタミンAの特徴や働きなんかもよく理解する必要があるよ。おまけに、ビタミンAはその他の栄養素とも協力して働いているから、このあたりもよく理解しておいた方が良いね。
ビタミンAの種類と、サプリメントのビタミンA、病院で処方されるビタミンA製剤の違い
ビタミンAは食品やサプリメント以外に、お薬としても用いられています。主な物としては、夜盲症や結膜乾燥症、角膜乾燥症の治療薬として使われている「チョコラA(レチノール誘導体)」や、尋常性乾癬、魚鱗癬、掌蹠膿疱症、掌蹠角化症などに使われる「チガソン(エトレチナート)」、急性前骨髄球性白血病に使われる「ベサノイド(トレチノイン)」「アムノレイク(タミバロテン)」などがあります。
お薬に使われるビタミンA製剤の代表的な種類例 | ||
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尋常性ざ瘡 | ディフェリン(アダパレン) | |
重症・難治性ニキビ | アクネトレント(イソトレチノイン) | |
熱傷潰瘍、糖尿病性潰瘍 下腿潰瘍など | 褥瘡、皮膚潰瘍オルセノン(トレチノイン トコフェリル) | |
魚鱗癬、掌蹠膿疱症 掌蹠角化症など | 尋常性乾癬チガソン(エトレチナート) | |
結膜乾燥症、角膜乾燥症 角膜軟化症など | 夜盲症チョコラA(レチノール誘導体) | |
難治性急性前骨髄球性白血病など | 急性前骨髄球性白血病ベサノイド(トレチノイン) アムノレイク(タミバロテン) | |
皮膚病変を有する 成人T細胞白血病リンパ腫 | 皮膚T細胞性リンパ腫タルグレチン(ベキサロテン) |
これら大半は「活性型のビタミンA」を含み、治療を目的としたお薬のため、栄養補給を目的とした用途では使われていません。もし栄養補給を目的として日常的に摂取した場合は、ビタミンA過剰症やレチノイン酸症候群を引き起こすリスクがあり、大変危険です。また、妊娠中にイソトレチノイン(重度のにきびの治療に用いられるビタミンA誘導体)を摂取すると、胎児に先天性異常が起こる原因としても知られています。レチノイン酸症候群になると、発熱、呼吸困難、胸水貯留、肺浸潤、間質性肺炎、肺うっ血、心嚢液貯留、低酸素血症、低血圧、肝不全、腎不全及び多臓器不全等が現れ、重篤な場合では死に至る場合があります。
この理由としては、活性型のビタミンA(レチノイン酸)は細胞の分化・分裂をコントロールする働きがあり、お薬で投与した場合は細胞の分化・分裂を薬で強制的にコントロールしてしまうためです。体は必要に応じて肝臓でビタミンAを活性化させ、必要な量だけレチノイン酸に変換・代謝するよう調節していますが、お薬で活性型のビタミンAを投与した場合は、体がレチノイン酸の代謝を制御できなくなってしまいます。このため、お薬のビタミンA製剤をサプリメント代わりに使用する事は出来ません。また、逆にサプリメントのビタミンAもお薬の代わりにはなりません。
もし今現在、角化症の治療や、白血病の治療などで活性型のビタミンA製剤を服用している方は、必ず医師の指示の元服用して下さい。
一方で食品やサプリメントに含まれるビタミンAは、「レチニルエステル」や「β-カロテン」です。これらは活性型になる前の「前駆体」と呼ばれる状態で、お薬の活性型ビタミンAと比べて活性はありませんが、どれくらい活性化させて利用するかなどは身体の中でコントロールすることが出来ます。
食品やサプリメントに含まれるビタミンA | お薬に含まれるビタミンA |
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レチニルエステル(豚、牛の肝臓など) レチノール(タラの肝油など) β-カロテン(緑黄色野菜) | 活性型ビタミンA(レチノイン酸) レチノール誘導体 |
そのため、栄養補給を目的として日常的に摂取する場合は、食品やサプリメントを利用しましょう。ビタミンAのサプリメントは過剰摂取の危険性が度々話題になる事がありますが、薬のビタミンAと違ってあまり過剰摂取の心配はありません。
前述したようにサプリメントや食品に含まれるビタミンAは、お薬のビタミンA製剤と違って活性化前の前駆体です。前駆体のビタミンAは体内でコントロールする事が出来ることから、お薬と比べて安全性が非常に高いビタミンAです。ビタミンAの必要量や不足状態は人によって違いがありますので、最適な摂取量については最後に解説するオーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。
このように、ビタミンAと一言で言っても様々な種類があります。食品やサプリメントに含まれるビタミンAと、病院で処方されるビタミンAでは、役割が全く違いますので注意しましょう。
β-カロテン過剰摂取によるがんリスクと、ビタミンA過剰症について
ここからは、もう少し踏み込んでビタミンA過剰症についてと、β-カロテン過剰摂取によるがんリスクについて解説します。
一般的に、妊婦ではビタミンA(レチノール)の大量摂取は奇形が発生する危険性があると言われています。これは、レチノールからレチナール、レチノイン酸と変換されるため、この時期にビタミンAが遺伝に対して過剰に働いてしまうと、奇形のリスクが高まってしまう恐れがあるためです。妊娠初期では主要な器官の元が作られる時期であり、最も薬物や放射線の影響を最も受けやすい時期です。そのため、妊婦のビタミンA摂取は控えるよう言われていることが一般的です。
しかし、コホート研究(ユーザーを一定条件でグループに分け、それぞれの時間経過に伴う行動の変化を分析する研究手法)の結果では、妊娠中にビタミンA(レチノール)を10,000IU/日以上摂取した群における奇形の発生率は、自然発生率を超えないことが確認されました。
これは、食品やサプリメントに含まれるビタミンAは活性化前の「レチノール」であり、遺伝子には直接作用しない形のためです。レチノールとして摂取した場合、前述の通り体内では必要に応じて必要な形に代謝され、利用されます。この代謝は厳密にコントロールされているため、レチノールとしてビタミンAを摂取する限り、ビタミンAの過剰症は心配ありません。
逆に、遺伝子に作用するのは、お薬などに含まれる活性型の「レチノイン酸」です。こちらは遺伝子に直接作用する形のため、過剰摂取には注意が必要です。また、ビタミンA過剰摂取や副作用の報告については活性型である「合成のレチノイン酸」を大量投与した結果であって、決して「レチノール」や「βカロテン」でテストされたものではありません。
ビタミンA過剰症についての注意喚起では、その情報の多くが活性型のレチノイン酸と「レチノール」「βカロテン」などを混同しています。基本的にレチノールやβカロテンでは、活性を持たないことから安全性が高いビタミンAです。
加えて、「レチノール」と「レチナール」は体内で必要に応じて相互に変換することができ、体内でビタミンAを運ぶ際や貯蔵する際にも「レチニルエステル」というエステル化(コーティングのようなもの)が行われます。例え食品からビタミンAを摂りすぎたとしても、体内では「レチナール」を活性の低い「レチノール」にしたり、レチニルエステルという非常に安定性が高い状態にして肝臓に貯えることが出来ます。
そのため、「レチノール」や「βカロテン」をサプリメントで摂ったとしても、基本的に過剰摂取の心配はありません。逆に、レチノイン酸はレチナールやレチノールへと変換できないことから、薬によるレチノイン酸の大量投与は過剰摂取の危険性があるので注意が必要です。
それから、体内では必要に応じて「レチノイン酸」に活性化して利用されますが、この体内で作られる「レチノイン酸」と薬で用いられる「レチノイン酸」の作用は異なります。
例えば、体内でレチノイン酸が生成される場合、その生成量やタイミングは生体の調節機構によって厳密に制御されています。一方、薬など外部から投与される場合は、一度に大量のレチノイン酸が体内に供給されるため、自然な生体調節とは異なる影響を及ぼす可能性が高くなります。
つまり、体内で作られるレチノイン酸は、作られる量や作られた後の分解量、分解するタイミングなどを身体がコントロールできるのに対し、外部から投与したレチノイン酸は、身体がコントロールする事が出来ません。このため、外部から投与するレチノイン酸の作用と、身体の中で作られるレチノイン酸の作用は、同一視してはならないのです。
このように、ビタミンAの過剰症については「レチノール」や「β-カロテン」として摂取する限り安全性が高く、過剰に心配したり避ける必要はありません。むしろ、妊娠期に過剰にビタミンAの摂取を避け続けると、ビタミンA不足によって胎児の正常な発育が阻害され、早産や胎児の死亡、先天性異常などの合併症を伴うリスクが高くなります。
これは、ビタミンAには細胞の正常な分化・分裂に関与しているため、赤ちゃんの成長にはビタミンAが欠かせないためです。特に妊娠中は赤ちゃんの成長によってより多くのビタミンAが必要になります。現代の加工食品が多い食生活では、ビタミンAの過剰摂取よりも不足の方がリスクが高いため、むしろ積極的に摂取することが必要です。
それから、ビタミンAについては「β-カロテン」や「レチノール」のサプリメントを摂るとガンのリスクが上昇すると言われていることがあります。例えば、フィンランドで行われたα-トコフェロール・β-カロテンがん予防試験(ATBC)で、29,000人以上の男性喫煙者に20mg/日のβ-カロテンおよび/または50mg/日のα-トコフェロールを与えて効果を調べた研究があります。
また、米国で行われたβ-カロテンおよびレチノール有効性試験(CARET)では、30mg/日のβ-カロテンと25,000IU/日のレチノール(ビタミンA)の組み合わせを、喫煙者、以前に喫煙していた者、または職業的にアスベストに接していた18,000人以上の男女に与えて効果を調べた研究があります。2
この結果としては、β-カロテンのサプリメントを摂っていたグループの肺がんリスクが、ATBCの参加者で6年後に16%増加し、CARETの参加者でも4年後に28%増加したという結果になりました。
このことから、1996年にアメリカ国立がん研究所が「β-カロテンにはがん予防効果が無く、また喫煙者では逆に肺がんを増加させる恐れがある」という研究結果を発表しています。多くの専門家は、特に喫煙者やその他のハイリスク集団においては、高用量β-カロテン補給の危険性の方ががん予防効果を凌ぐのではないかと考えているようです。
このように聞くと、サプリメントでビタミンAを摂取する事はむしろ危険な行為のように思えますよね。ですが、27,000人以上の男性喫煙者を14年間調べたフィンランドでの研究では、β-カロテンを除いて全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンの食事からの摂取が、逆に肺がんリスクを有意に減らしていたという結果になりました。また、全カロテノイド、α-カロテン、およびリコピンの摂取が最も多かった男女は、摂取が最少であった男女よりも有意に肺がんリスクが低かったという研究結果があります。3
この結果から、食事などから全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンなどを摂取した場合はガンのリスクを低下させ、逆に合成のα-トコフェロールや合成のβ-カロテン、レチノールなど特定の栄養素を大量に摂取した場合はむしろガンリスクを増加させてしまう恐れがあると考えられます。
特に、前者の研究(ATBCやCARET)で被験者に投与されていたのは合成のβ-カロテンでした。合成のβ-カロテンでは100%オールトランスβ-カロテンで構成されています。
通常、食品に含まれる天然のカロテノイドには、オールトランスβ-カロテンの他にもシス体のβ-カロテンやα-カロテン、リコピンなど様々なカロテノイドを含んでいます。何か1種類のカロテノイドだけが大量に含まれているなんてことは基本的にありません。
このような何か特定の1種類のカロテノイドを大量に摂取した場合、他のカロテノイドの吸収や組織での利用を妨げてしまう可能性があります。また、ある種の抗酸化剤が単独で大量に存在すると、条件によっては抗酸化剤としてよりも酸化促進剤として作用してしまう可能性があります。
そのため、サプリメントを選ぶ際は食品由来の原材料を使用した高品質なサプリメントを選ぶことが大切です。特定の成分のみしか含まれていないサプリメントを大量摂取すると、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性がありますので注意して下さい。
市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、上述したように合成のβ-カロテンのみや、レチノールのみ、酢酸 d-α-トコフェロールや酢酸dl-α-トコフェロールのみといったように、特定の栄養成分しか含まれていない物が殆どです。このようなサプリメントでは特定の栄養成分しか含まれていないことから、大量に摂取すると生体内の分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性があります。
対して、分子栄養学では、天然由来の食品成分を原材料として使用した、なるべく食品と同じになるよう複数のカロテノイドや複数のトコフェロール、トコトリエノールなどの栄養成分が含まれている「分子栄養学実践専用サプリメント」が用いられています。分子栄養学を実践する際は、このような設計や製造がされているサプリメントを選ぶことが、安全に分子栄養学を実践する際のポイントです。
同じように見える栄養素やサプリメントでも、含まれている栄養成分や使われている原材料には大きな違いがあります。また、それによって得られる結果も変わってくる恐れがありますので、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用するようにして下さい。
なるほど・・・
食品に含まれているビタミンAと、お薬のビタミンAは、全く違うものなんだね💦
そうそう。だから、お薬のビタミンA製剤をサプリメントの代わりにする事は出来ないよ。薬とサプリメントに含まれるビタミンAは用途が違うから、このあたりはしっかり認識しておいてね
ビタミンAの働き
ビタミンAは、網膜のロドプシン合成に関与して眼の健康や視力に関わったり、ビタミンDと共に細胞の分化分裂に関わって、角化の正常化や貧血改善に関わったりと様々な働きがあります。他にも、カロテノイド類における強力な抗酸化作用によって活性酸素のダメージから体を守ったり、白血球の異常な増殖を防いで白血病の予防・改善に役立つなど、眼の健康以外にも様々な働きが期待されています。
ビタミンAの主な働き
- 網膜のロドプシン合成に関与し、眼の健康や視力に関わる
- ビタミンDと共に細胞の分化分裂、角化の正常化に関わる
- ビタミンDと共に幹細胞の分化分裂に関わり、貧血改善や正常な白血球の分裂に関わる
ビタミンAの働き① 網膜のロドプシン合成に関与し、眼の健康や視力に関わる
ビタミンAの働きとして最も知られているのが、網膜のロドプシン合成に関与し、眼の健康維持や視力の維持をする働きです。活性型のビタミンAである「レチナール」は、眼で物を見るときに必要なロドプシンの再合成を行って光を信号に変換することで、夜間など暗い場所での視力維持に役立ちます。
また、ビタミンAは目の表面(角膜や結膜)を健康に保つために必要な栄養素であり、涙液の生成と分泌にも深く関与しています。ビタミンAが不足すると結膜や角膜が乾燥する「眼球乾燥症(ドライアイ)」を引き起こし、最悪の場合は失明にも繋がることから、ビタミンAは眼の正常な機能維持や視力の維持に関わっています。
ビタミンAと眼の関係を知るためには、まず眼の基本的な構造や仕組みを理解することが重要です。眼は脳の一部とも言われており、むき出しになった臓器(脳)の一部です。
この眼がものを見る仕組みとしては、まず眼に入った光は角膜(かくまく)を通過して、次に瞳孔(どうこう)を通ります。瞳孔の大きさは虹彩(こうさい)によって調整され、適切な量の光が水晶体(すいしょうたい)に到達します。この虹彩と瞳孔の違いは、眼球の色がついている部分を虹彩(こうさい)と言い、その真ん中にある「黒目」と呼ばれている部分が瞳孔です。
虹彩によって適切な量に調節された光は水晶体を通り、水晶体はレンズのように光を屈折させてピントを合わせ、網膜(もうまく)に焦点を合わせます。そして、網膜に届いた光は視細胞によって電気信号に変換され、これらの信号が視神経を通って脳に送られます。脳はこれらの信号を処理し、視覚情報として色や形、大きさ、距離などを脳が解釈することで、私たちは物を見ることができるのです。
この網膜には、「ロドプシン」と呼ばれる色素が存在しています。ロドプシンは光の刺激を受けると分解されますが、すぐまた再合成されされます。この再合成の連続作用により光を信号に変え、脳に伝達して「ものを見て」います。
このロドプシンの合成に関わっているのが、ビタミンA(レチナール)です。レチナールは網膜でビタミンA(レチノール)から作られるため、ビタミンAが欠乏すると夜間や暗部など暗い所で視力が低下する「夜盲症」に繋がります。
また、ビタミンAは角膜上皮細胞に入ってムチンを分泌する杯細胞(さかずきさいぼう)を再生させ、涙液の主要成分である「ムチン(ヒアルロン酸)」の産生を促す働きがあります。ムチンとは、糖とタンパク質が結合してできた多糖類の一種で、粘液の主成分です。ムチンは涙液の粘稠性(ねんちゅうせい、ネバネバしていること)を保ち、目の表面を滑らかに覆う役割を果たしています。ビタミンAが不足すると、ムチンの産生が減少し、涙液の質が低下してドライアイを引き起こすことがあります。
加えて、ビタミンAは角膜の上皮細胞の成長と分化、修復に必要です。これが不足すると、角膜が乾燥し、ドライアイの症状が悪化する可能性があります。また、ビタミンAの不足は、角膜の乾燥や傷つきやすさを増加させ、視力に影響を及ぼすこともあります。このように、ビタミンAは眼の健康や視力の維持に深く関係している栄養素です。
ちなみに、角膜でレチノールからレチナールへ変換するには「亜鉛」が必要で、分解されたロドプシンの再合成促進にはブルーベリーなどに含まれる「アントシアニン」が関わっています。また眼の健康に必要な「ムチン」を作るためには「グルコース(ブドウ糖)」の他に「グルコサミン」などが関わっています。眼の健康や視力の維持には、ビタミンA以外にもこれらの栄養素も同時に摂取するようにしましょう。
なるほど、ビタミンAには眼の健康やドライアイの改善を促す働きがあるのか❗
そうだよ、だからビタミンAが不足すると、眼の病気や失明になるリスクが高まってしまうんだ
よし、ちょっとビタミンA摂ってくる❗❗
ビタミンAの働き② ビタミンDと共に細胞の分化分裂、角化の正常化に関わる
ビタミンA(レチノイン酸)は、ビタミンDと共に細胞の分化分裂、角化(皮膚の一番外側にある角質細胞ができてから剥がれ落ちるまでの過程)の正常化に関わっています。
具体的には、細胞内の受容体(レチノイン酸受容体:RARやレチノイン酸X受容体:RXR)に結合することで、遺伝子発現を調節する働きがあります。この働きにより、特定の遺伝子を活性化、不活性化することによってタンパク質合成を促進したり、抑制したりして、特定の細胞を適切に分化させ、異常な細胞の増殖を抑制します。
この働きはビタミンDと共に行われていて、ビタミンAはビタミンDと協力して細胞の正常な分化、分裂や角化の正常化を行っています。そのため、ビタミンAはビタミンDと共に、しわや肌の状態(ターンオーバー)を改善するなど肌の栄養素でもあり、喉や鼻、腸、眼球の乾燥やトラブルを改善する粘膜の栄養素です。
例えば、皮膚が正常に角化出来ないと、皮膚の角質層が厚く硬くなる「角化症」を発症する事が知られています。この角化症でよく見られるのが、足の裏に出来る「うおのめ」や「たこ」などで、他にも肘や膝など皮膚が厚く硬くなること全般を「角化症」と言います。角化症は、進行すると乾燥が進んでひび割れることもあります。
この角化症の原因には様々あり、日光や外傷による刺激、感染症や遺伝的要因なども関係していると言われています。代表的な角化症としては、扁平苔癬や尋常性乾癬、掌蹠角化症、汗孔角化症、毛孔性苔癬などです。
代表的な角化症
扁平苔癬(へんぺいたいせん)
扁平苔癬は、かゆみを伴う炎症が起こる皮膚疾患です。
- 原因: 表皮と真皮の細胞に障害を与える反応と考えられています。
- 症状: 紅斑や丘疹などが現れ、前腕や手首、足首などに出来ることが多いですが、口の中や性器周辺、爪にできることもあります。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
代表的な炎症性角化症の一つです。
- 原因: 遺伝的要因、外的要因、免疫学的要因が考えられています。
- 症状: 赤くて盛り上がった発疹ができ、銀白色のフケが付着します。
掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)
手のひらと足の裏の角質が厚くなる皮膚疾患です。
- 原因: 先天性と後天性があり、先天性の場合は様々な遺伝子異常が関連していることが知られています。
- 症状: 皮膚が硬く厚くなり、ひび割れることがあります。
汗孔角化症(かんこうかくかしょう)
皮膚の角化異常によって生じる疾患の一つです。
- 症状: 四肢や体幹、顔面などの皮膚に、小さなブツブツができてざらざらした感じになります。
毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)
毛孔性角化症の一種で、「さめ肌」と呼ばれることもあります。
- 症状: 主に二の腕や太ももの外側、お尻などに、角化した粟粒ほどの大きさのブツブツ・ザラザラした発疹がたくさんできます。
これらには角化の異常が関わっているとされ、角化の正常化にはビタミンAが関係している事から、これらの治療にはビタミンAのお薬が使われています。前述の「ビタミンAの種類とサプリメントのビタミンA、病院で処方されるビタミンA製剤の違い」でも解説した様に、チガソン(エトレチナート)は尋常性乾癬や魚鱗癬、掌蹠角化症などの治療を目的として使われているお薬です。
また、ビタミンAとDは、肌以外にも喉や鼻、腸粘膜や眼球など粘膜の正常な角化にも関わっています。鼻や喉の粘膜は、皮膚と同じく外部からの細菌の侵入を防いだり、異物が体内に入ることを防ぐバリア機能としての働きがあります。この他、ビタミンAとビタミンDは、侵入してきた細菌やウィルスなどをやっつける白血球などの分化分裂や、抗体産生にも関わっています。
ビタミンAとビタミンDが不足すると、このバリア機能が低下して鼻や喉が乾燥して異物や細菌が侵入しやすくなったり、免疫細胞や抗体産生の数が減って風邪などの感染症にかかりやすくなります。そのため、ビタミンAはビタミンDと共に免疫力にも深く関係している栄養素です。
ビタミンAとDは、皮膚と同じように粘膜の細胞の分化・分裂に関わり、不足すると粘膜が乾燥したり萎縮したりして粘膜機能やバリア機能が低下します。同じく眼球も細胞や粘膜で出来ていることから、不足すると眼球乾燥症「ドライアイ」の原因にもなります。
また、免疫細胞である白血球は、骨髄で作られる「幹細胞」が分化することで作られています。この分化にはビタミンAとビタミンDが関係していて、この2つが足りない場合は白血球などの免疫細胞が正常に作られなくなってしまいます。このように、ビタミンAは肌や粘膜における角化の正常化や、免疫細胞の増殖に関わることから、皮膚と粘膜のバリア機能や免疫機能の維持に欠かせない栄養素です。
ビタミンAの働き③ ビタミンDと共に幹細胞の分化分裂に関わり、貧血改善や正常な赤血球の分裂に関わる
それから、他にもビタミンAが関わっているものとして「貧血」があります。貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が減少して身体が低酸素状態になる事で、動悸や息切れ、立ちくらみやめまいなど様々な不定愁訴(ふていしゅうそ)に繋がる原因になるものです。
通常、ヘモグロビンは赤血球と呼ばれる細胞に多く含まれているのですが、貧血の状態では、正常な状態に比べて赤血球に含まれるヘモグロビンが減少しています。加えて、貧血が進行するにつれて赤血球も減少してきます。
この貧血改善には一般的に「鉄分が良い」と言われていますが、実はそれだけでは不十分です。酸素の運搬に関わっている赤血球は細胞で出来ていることから、赤血球の分化分裂を正常に促すためにはビタミンAとビタミンDが必要です。
具体的には、赤血球は白血球と同じく骨髄で作られる「幹細胞」が分化することで作られています。この分化にはビタミンAとビタミンDが関係していて、この2つが足りない場合は骨髄で血液成分が作られなくなってしまいます。この骨髄で血液成分が作られなくなって血液中の赤血球や白血球、血小板のすべての血球が減少してしまう病気を「再生不良性貧血」と言います。
ビタミンAとDは赤血球を作る幹細胞の正常な分化・分裂にも関与していることから、貧血改善に必要な栄養素です。また、貧血以外にも全身の正常な細胞の分化分裂に関係している事から、がん細胞の増殖を抑制し、正常な細胞の分化分裂を促す働きもあります。
私達の体はおよそ60兆個の細胞が集まって出来ていて、その一つ一つが細胞分裂を繰り返して機能を維持しています。ビタミンAとビタミンDは、お互い協力して働くことで全身の細胞の分化・分裂に関わっていることから、ビタミンDとビタミンAはセットで摂ることが大切です。
ビタミンAは、眼の健康以外にも肌や骨の健康にも関わっているんだね
そうそう。ビタミンAは正常な細胞の分化分裂に関与しているから、最近では抗がん作用にも注目されているよ。ビタミンAの摂りすぎが危険と言われているけど、むしろ不足している方がガンや免疫力低下など全身の健康状態に悪影響なんだ
ビタミンA不足になりやすい人とその原因
ビタミンAの働きでも解説した様に、ビタミンAは眼の健康や視力の維持に関わるほか、細胞の正常な分化・分裂、角化の正常化に関与するなど様々な代謝に関わっています。そのため、不足すると様々な疾患を引き起こします。
例えば、ビタミンA不足が引き起こす症状と影響としては次のようなものが挙げられます。
ビタミンA不足が引き起こす症状と影響
1. 眼の健康に関する影響
- 夜盲症(暗所での視力低下)
ビタミンAは視覚に関与するロドプシンという光感受性色素の成分です。ビタミンAが不足すると、暗闇での視力が低下する夜盲症が起こりやすくなります。 - 角膜乾燥症(ドライアイ)
ビタミンAは目の表面を保護するムチンの分泌に関わり、角膜や結膜の健康を保ちます。不足すると、角膜や結膜が乾燥し、ドライアイが進行します。 - 角膜軟化症
重度のビタミンA不足では、角膜が乾燥して軟化し、最終的には失明に至る可能性があります。これは角膜軟化症と呼ばれる重篤な症状です。
2. 免疫系への影響
- 免疫機能の低下
ビタミンAは免疫細胞の分化・分裂を制御し、免疫系の働きをサポートします。不足すると、感染症に対する抵抗力が低下し、特に呼吸器感染症や下痢などのリスクが増加します。 - 感染症リスクの増加:ビタミンAは粘膜のバリア機能維持など免疫機能に重要な役割を果たしており、不足すると感染症(例:風邪、インフルエンザ)の感染リスクが高まります。
- 自己免疫疾患:ビタミンA不足は自己免疫疾患(例:多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ)のリスクを増加させる可能性があります。
3. 皮膚や粘膜などへの影響
- 皮膚や粘膜の乾燥と損傷、角化症
ビタミンAは皮膚や粘膜の細胞の成長や分化を促進します。不足すると、皮膚が乾燥し、鱗屑(りんせつ)状になったり、尋常性乾癬や掌蹠角化症など角化症の原因となることがあります。 - 脂漏性皮膚炎
ビタミンAが不足すると、皮膚の脂質バランスが崩れ、脂漏性皮膚炎の症状が現れることがあります。 - 味覚・嗅覚・聴覚の異常
ビタミンAが不足すると舌の味を感知する味蕾(みらい)細胞に角化異常が起こり、味覚の異常が起こります。また、嗅覚や聴覚も低下します。
4. その他の健康への影響
- 成長遅延
成長期の子供では、ビタミンA不足が成長遅延を引き起こすことがあります。これは、骨の発育や細胞の分化にビタミンAが必要なためです。 - 生殖機能の低下
ビタミンAは生殖機能にも関与しています。不足すると、生殖能力が低下し、不妊のリスクが高まる可能性があります。 - 認知機能の低下:ビタミンAは脳の健康にも重要で、不足すると認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクが増加する可能性があります。
- がんや腫瘍:ビタミンAは正常な細胞に対しては増殖促進作用を持ち、ガン細胞など異常な細胞に対しては増殖抑制、分化誘導、アポトーシス(細胞の自然死)を誘導すると考えられている。そのため、ビタミンA不足ではがんや腫瘍のリスクが高まる可能性があります。
ビタミンAは現代人において不足しやすいビタミンと言われており、老若男女問わず不足のリスクが高い栄養素です。例えば、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、30~49歳の男性では一日当たり900㎍RAE/日(約3000IU)、30~49歳の女性では一日当たり700㎍RAE/日(約2400IU)と定められています。(ビタミンAの摂取基準には、レチノールだけでなくビタミンAの前駆体すべて合わせた、レチノール活性当量(RAE)として算出した値が用いられています)
しかし、日本人のビタミンAの一日の平均摂取量は、令和元年国民健康・栄養調査によると534.1㎍RAEとなっており、ほとんどの世代、性別で足りていないことが分かります。また、この摂取量については、食品群別の摂取量で見ると、野菜類からの摂取量が最も多く、次いで肉類、卵類、乳類の順に多く摂取されているようです。4
この状況を前提に、もう一度ビタミンAが多い食品を見てみましょう。にんじん(100g)にはビタミンA 720㎍(RAE)、ほうれん草(100g)には350㎍(RAE)が含まれていることから、一見すると基準値よりも十分な量を摂取出来ているように思えますよね。
ビタミンAが多い食品 |
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ビタミンA(レチノール)を多く含む食品 豚レバー生(100g) ……13000㎍ 牛レバー生(100g)……1100㎍ 鶏レバー生(100g)……14000㎍ タラの肝油(100g)……37000㎍ うなぎ蒲焼き(100g)……1500㎍ 牛乳(100g)……38㎍ バター(100g)……500㎍ チーズ(100g)……240㎍ 生卵(100g)……210㎍ プロビタミンAカロテノイド(ベータカロテン)を多く含む食品(βカロテン当量) 人参 生(100g)……8600㎍(レチノール活性当量 720㎍) カボチャ生(100g)……1400㎍(レチノール活性当量 120㎍) ほうれん草 生(100g)……4200㎍(レチノール活性当量 350㎍) にら 生(100g)……3500㎍(レチノール活性当量 290㎍) パプリカ 生(100g)……1100㎍(レチノール活性当量 88㎍) マンゴー(100g)……610㎍(レチノール活性当量 51㎍) ※『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』より作成 |
しかし、食品に含まれているβ-カロテンの吸収率は個人差が大きく、食べた分が全て吸収されるとは限りません。吸収率は野菜の調理法によっても異なり、加熱しているかどうかでも吸収率は異なります。また、吸収率は食事中に含まれる脂質の量に影響を受けるため、料理の仕方によっても吸収率は大きく異なります。
加えて、低タンパク栄養状態ではビタミンAの吸収や利用が低下し、喫煙や飲酒では血中β-カロテン濃度を低下させる事が知られています。ビタミンAの吸収量は加齢と共に減少し、ビタミンAの需要は病態の有無や生活習慣の影響も受けます。そのため、推奨量がその人にとっての必要量であるとは限りません。
ドライアイを抱えている方や、角化症を抱えている方、喫煙や飲酒をする方、妊娠している方はより多くのビタミンA摂取が必要です。このことから、一人一人に必要なビタミンAの摂取量は異なり、推奨量よりも多くのビタミンAを摂取することが必要です。
例えば、妊娠している方や授乳中の方、成長期のお子さんは特に不足しやすいと言われています。これは、お腹にいる赤ちゃんや成長期のお子さんは、骨や細胞、血液を作るためにビタミンAの需要が大幅に増加するためです。他にも、肝疾患を抱えている方などはビタミンAが不足しやすいと言われています。
ビタミンA不足になりやすい人とその原因
- 乳幼児
乳幼児は成長が早く、ビタミンAの需要が高い一方で、母乳に含まれるビタミンAの量が不足する場合があります。また、固形食を始める時期にはビタミンAが豊富な食品を摂取しないと不足するリスクがあります。 - 妊婦および授乳中の女性
妊娠中や授乳中は、母体が胎児や乳児にビタミンAを供給するため、通常よりも多くのビタミンAを必要とします。不十分な摂取が続くと不足に繋がることがあります。 - 脂質吸収障害を持つ人
ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、脂肪と共に吸収されます。クローン病や嚢胞性線維症、慢性膵炎、肝疾患など、脂質の吸収が阻害される病気を持つ人は、ビタミンAの吸収が不十分になりやすいです。 - アルコール依存症の人
アルコールの過剰摂取は肝臓に負担をかけ、ビタミンAの代謝を妨げます。さらに、アルコールは胃粘膜にダメージを与えて栄養の吸収を阻害し、ビタミンAの不足を招くことがあります。 - 肝疾患を抱えている方
ビタミンAは肝臓で貯蔵、活性化されるため、肝機能が低下するとビタミンAの不足を招く可能性があります。 - 低脂肪ダイエットを実施している人
極端な低脂肪ダイエットを行っていると、脂肪と一緒に吸収されるビタミンAの摂取が不足する可能性があります。これにより、長期間にわたるビタミンA不足が生じることがあります。 - 菜食主義者やビーガン
ビタミンAは主に動物性食品に含まれます。植物性食品にはビタミンAの前駆体であるβカロテンが含まれますが、それを活性型ビタミンAに変換する効率が低い場合があります。特に、βカロテンの吸収率が低い人は不足するリスクが高まります。 - 胆汁分泌・コレステロールが十分に無い方
脂質の吸収にはコレステロールから作られる胆汁が必要。肝機能が低下するとコレステロールが低下し、胆汁の分泌量が減少してビタミンAの吸収量が不十分になる。 - 特定の薬物を服用している方
オーリスタット(脂肪吸収抑制薬)は脂肪の吸収を抑制することで、ビタミンAの吸収も同時に阻害します。コレスチラミン(胆汁酸結合樹脂)は胆汁酸と結合し、脂溶性ビタミンの吸収を阻害します。また、コレステロールを下げる薬(スタチン系)などを服用している場合は、ビタミンAの吸収と代謝を妨げる恐れがあります。 - タンパク質不足の方
ビタミンAの吸収、運搬、貯蔵など全ての代謝においてタンパク質が必要。低タンパク栄養状態ではビタミンAの吸収や利用が低下することが知られている。
このように、ビタミンAは一人一人に必要な量が異なり、推奨量よりも多くのビタミンAが必要となる場合があります。特に現代人においてはレバーやタラの肝油などビタミンAを多く含む食品を食べる機会が減り、慢性的にビタミンAが不足している状態です。
もし上述のリストに当てはまる方は、ビタミンAが不足している可能性があります。次のビタミンA不足チェックとビタミンA不足を調べる検査項目を参考に、ビタミンAが不足していないかどうかをチェックしてみて下さい。
なるほど・・・
栄養摂取目安は最低限必要な量で、その量を摂っていれば足りているわけじゃ無いんだね💧
そうそう。ビタミンAの推奨量は病気ではない健康な人を前提にした摂取量になっているから、その量を摂っていれば足りているわけじゃ無いんだよ。オマケに妊婦さんやお子さんなどビタミンAの需要が高い人もいるから、推奨量が必要量とは限らないんだ
ビタミンA不足チェックとビタミンA不足を調べる検査項目
ビタミンA不足をチェックする方法としては、体内の栄養状態を知る血液検査と、眼や皮膚の状態など自覚症状をチェックする方法があります。
まずは、次のビタミンA不足チェックリストの中から当てはまる項目をチェックし、ビタミンA不足のリスクがどれだけ高いかをチェックしてみて下さい。多く当てはまるほど、ビタミンA不足のリスクが考えられます。
ビタミンA不足チェックリスト
1.眼の不調
- 夜間や薄暗い場所での視力が悪くなっていると感じる。(夜盲症)
- 目が乾燥している、異物感がある、目がかすむことが増えた。(ドライアイ)
- 眼が疲れやすい、涙目になる、眼の疾患を抱えている
2. 乾燥肌や皮膚のトラブル
- 皮膚がカサカサしやすく、かゆみや湿疹、鱗屑(りんせつ)がある。
- タコやウオノメなど、角化症を抱えている
- アトピー性皮膚炎を抱えている
- ニキビや吹き出物ができやすい
3.免疫力の低下やがんなどを抱えている
- 風邪やインフルエンザ、他の感染症にかかりやすくなったと感じる。
- 花粉症や鼻炎を抱えている
- ガンや腫瘍などの病気を抱えている
- リウマチなどの自己免疫性疾患を抱えている
4.特定の薬を服薬している
- スタチン系などコレステロールを低下させる薬を服用している
5. 食生活の問題
- ビタミンAが豊富なレバー、卵黄、乳製品、魚などをあまり摂取していない。
- 低脂肪ダイエットを行っている。
- アルコールを頻繁に摂取し、肝機能に影響を与えている。
6.妊娠中や成長期
- 妊娠中や授乳中で、栄養素を十分に摂取していないかもしれないと感じている。
- 赤ちゃんや成長期のお子さんなどビタミンAの需要が高い状態にある
7.消化器系や肝臓疾患などを抱えている
- 消化器の不調や下痢が続いている。
- ポリープができやすい
- 肝臓に疾患があり、ビタミンAの代謝が正常に行われていない可能性がある。
また、このチェックリスト以外にも、先ほど挙げた「ビタミンA不足になりやすい人」に当てはまる方は、ビタミンA不足のリスクが高いので注意が必要です。ビタミンA不足チェックに多く当てはまった方や、ビタミンA不足になりやすい人に当てはまる方は、次の検査も受けてビタミンA不足の状態やリスクを知り、適切な対応を取るようにしましょう。
ビタミンA不足を調べる検査項目
ビタミンA不足かどうかをチェックする検査としては、血液検査があります。血液検査ではおおまかに体内のビタミンAの不足状態とビタミンAの需要を調べることが可能です。
例えば、次の血液検査項目などでおおまかにビタミンAの不足状態や需要を知ることが出来ます。
検査項目 | 意味 | ビタミンA不足との関連 |
---|---|---|
白血球数 | WBC血液中の白血球の総数。 骨髄で産生される | 感染症や血液の病気によって 上昇または低下する |
N 好中球 | 細菌感染防御に関わる細胞 運動やストレスでは上昇する | ウィルス感染で低値 細菌感染で高値となる |
Eo 好酸球 | 体内に侵入した異物と闘う細胞 アレルギーやストレスで低下する | アレルギーや寄生虫感染で上昇 |
C反応性タンパク | CRP炎症で反応するタンパク質 | 感染症や炎症、がんなどで上昇する |
RBC 赤血球 | 酸素を運搬する細胞。 骨髄で産生される | 再生不良性貧血では減少 |
血小板 | PLT血液中の血小板の数。骨髄で産生され 止血する役割をもつ | 肝疾患や再生不良性貧血 では減少 |
血清 | フェリチン体内の貯蔵鉄量。 がんや慢性炎症があると上昇する | がんや慢性炎症では 鉄の利用障害によって上昇 鉄欠乏性貧血で低下 |
総コレステロール | TC血液中に含まれる コレステロールの総数 | コレステロール低値では ビタミンAの吸収が抑制される。 |
コリンエステラーゼ | CHE肝臓で作られる酵素。 アセチルコリンを分解する働きがある | 肝機能低下で数値が低下 肥満や脂肪肝で上昇。 |
γ-グルタミル トランスペプチダーゼ | γ-GPTグルタチオンなどのγ-グルタミル基 の反応に関わる酵素。胆汁うっ滞や 飲酒、脂肪肝などで上昇 | 胆汁うっ滞や飲酒、脂肪肝 などによって上昇 |
ペプシノーゲンⅠ | PGⅠ胃酸の分泌機能を示す | 胃酸の分泌機能低下で数値が低下 胃酸抑制剤の服用で擬高値 |
ペプシノーゲンⅡ | PGⅡ胃粘膜の炎症の状態を示す | アルコールやピロリ菌などの影響で 胃粘膜に炎症が発生すると上昇 |
ワン・ツー比 | PGⅠ/PGⅡ比低値は胃粘膜の萎縮を示す | PGⅠとPGⅡの比。アルコールやピロリ菌などの影響で 胃粘膜に萎縮が発生すると低下 |
尿潜血反応 | 腎疾患で陽性。月経による出血や 尿路感染症で擬陽性 | 尿路感染症では、場合によって 粘膜の強化を推奨 |
Zn 血中亜鉛 | 血液中の亜鉛濃度 低値は亜鉛不足、皮膚炎など | レチノールからレチナール への変換に亜鉛が関わる |
これら検査では、免疫力や免疫の異常、皮膚や粘膜の状態を知ることができ、ビタミンAの不足と需要の状態を知ることが出来ます。これら検査結果と先ほどの自覚症状チェックとも併せて、ビタミンAの必要状態を判断してみて下さい。
ちなみに、ビタミンAは血液中に含まれていますが、この血中濃度でビタミンAの不足状況を判断する事は出来ません。理由としては、ビタミンAは肝臓に大量に貯えられており、ビタミンAの摂取が不足していても、肝臓のビタミンAが血中に放出されて血中濃度が常に一定に保たれるようになっているためです。
ビタミンAの血中濃度は、肝臓でのビタミンA貯蔵量が 20㎍/g 以下に低下するまで血液中濃度低下は見られません。そのため、ビタミンAの血中濃度で過不足を判断する事は出来ず、その他の項目でビタミンAの不足や需要を予測する必要があります。
ビタミンA不足って、血液検査で直接調べることは出来ないの❓❓
そうだね。ビタミンAは肝臓に貯えられていて、不足しても血中濃度があまり変化しないようになっているよ。だから、血液検査でビタミンAの不足を直接調べることは出来ないんだ。ビタミンAの不足や需要は、その他の関連項目で推測するしかないね
ビタミンA不足に対する分子栄養学的アプローチ
ビタミンA不足やビタミンAの需要が高い時に対する分子栄養学的アプローチのご紹介です。ここでは、ビタミンA摂取に対する基本的な考え方やアプローチの仕方と、ドライアイや眼精疲労、眼病に対する分子栄養学的アプローチをご紹介します。ガンなどに対する免疫力強化や粘膜などバリア機能の強化、角化症に対する分子栄養学的アプローチについては、ビタミンDのページでも詳しく解説していますので参考にして下さい。
まず、ビタミンA不足の場合やビタミンAの需要が高いときには、ビタミンAに加えて、タンパク質、ビタミンB群、カルシウム・マグネシウム、ビタミンD、亜鉛をセットで摂取することが基本です。
「ビタミンAが不足しているならビタミンAだけを補給すれば良いのでは?」と思うかも知れませんが、ビタミンAだけを摂取してもあまり意味はありません。肝臓に貯蔵されたビタミンAは、「レチノール結合タンパク質(RBP)」というタンパク質と結合し、血中に放出されています。また、レチノールからレチナールへと活性化させて利用するためには亜鉛も必要になります。そのため、ビタミンAを吸収して利用するためには、ビタミンA以外にもタンパク質や亜鉛など、その他ビタミンAと協力して働く栄養素も同時に摂取することが必要です。
例えば、ビタミンAの吸収・合成と代謝でも解説した様に、食事からのビタミンAを摂取する場合、ビタミンAは脂溶性のため、水に溶けにくく脂に溶けやすいという特性があります。そのため、体内では脂質や脂溶性ビタミンを水と混ざりやすくするために、肝臓から「胆汁酸」が分泌されています。この胆汁酸は、あぶらと水を混ざりやすくする「乳化」という働きがあり、あぶらやビタミンAなど脂溶性ビタミンの吸収を助けています。この胆汁酸はコレステロールを元に肝臓で合成され、分泌されていることから、ビタミンAの吸収には十分なコレステロールが必要です。コレステロールは、タンパク質と脂質を材料に肝臓で合成されています。
そして、これら血中に入ったビタミンAは、肝臓に貯蔵された後、必要に応じて血液中で安定して運ぶためにタンパク質で出来たトラック(レチノール結合タンパク質)と結合し、血中に放出されています。つまり、ビタミンAを吸収、貯蔵、運搬、利用するには、十分なタンパク質とコレステロールが必要です。
また、ビタミンAはビタミンDと協力して働くため、ビタミンDを利用するために必要な栄養素も同時に摂取することが大切です。ビタミンDを利用するためには肝臓や腎臓作られる酵素の働きによって活性化されることが必要になります。もし、この酵素が上手く作られなかったり足りなかったりする場合は、ビタミンDを十分に活性化して利用することが出来なくなってしまいます。この酵素の材料となるのが「タンパク質」や「ビタミンB群」で、さらに酵素の活性化に関わっている重要な栄養素が「マグネシウム」です。
このことから、ビタミンAを摂取する際は、タンパク質やビタミンB、ビタミンD、カルシウム・マグネシウム、亜鉛も同時に摂取するようにしましょう。よく、ビタミンA不足の方に対して、ビタミンAのサプリメントを推奨することがありますが、それだけでは不十分です。
ビタミンAは吸収・活性化されて初めて利用されます。この吸収や活性化には肝臓の状態やタンパク質、亜鉛の摂取、油脂類との同時摂取、ビタミンDとの協力などが関係していますので、ビタミンAを摂取するときは必要に応じてこれらの摂取も行うようにして下さい。
この事を前提に、ビタミンA不足や需要が高い場合に行う基本的な分子栄養学的アプローチとしては、次のようになります。
ビタミンA不足や需要が高い時に対する基本的な分子栄養学的アプローチ(1日あたり)
- タンパク質
- ビタミンB群
- カルシウム 600mg〜
- マグネシウム 300mg〜600mg
- ビタミンD 4,000IU〜8,000IU
- ビタミンA 10,000IU〜(マルチカロテノイド含む)
- 亜鉛
特にタンパク質を利用するためには補酵素としてビタミンB群が必要です。ビタミンBには8種類あり、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類を総称してビタミンB群(コンプレックス)と言います。
このビタミンB群が無いとタンパク質が十分に利用出来なくなってしまうことから、タンパク質を摂るときは必ずビタミンB群も摂るようにして下さい。併せて、ビタミンAはビタミンDと共に働き、ビタミンDを利用するためにはマグネシウムが必要です。これらはお互い協力して働くので、必ずセットで摂取するようにしましょう。
それから、ビタミンAを活性化しているのは主に肝臓ですので、脂肪肝や肝炎など肝臓の働きが悪くなっていないか、お酒を飲みすぎていないかなどもチェックし、摂取したビタミンAが体内できちんと働けているかどうかもチェックしながら行って下さい。
特に、ビタミンAは脂溶性のビタミンのため、消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。
繰り返しになりますが、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂質を摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。
そのため、オーソモレキュラー療法で使用するビタミンAのサプリメントは、脂質を上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。
このようなサプリメントを用いることで、加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方でも、吸収のサポートを行う事が可能になります。分子栄養学を実践する際は、これらも必要に応じて取り入れてみてください。
ビタミンA不足に対する分子栄養学的アプローチ応用編
ここからは、ビタミンA不足に対する分子栄養学的アプローチの応用編です。ビタミンAには細胞の分化・分裂や角化の正常化、免疫の調整など様々な働きがある事から、それぞれによって最適なアプローチが異なります。ここでは、簡単にそれぞれの分子栄養学的アプローチについての例をご紹介します。
角化症、バリア機能の強化に対する分子栄養学的アプローチ
まず、角化症の改善や腸粘膜などバリア機能の強化に対する分子栄養学的アプローチです。
角化症の改善には、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を正常化させ、紫外線や乾燥などのダメージや、加齢による老化を抑制することがポイントとなります。
この角化の正常化にはビタミンAとDが必要で、その他に上皮角質細胞層の角化の正常化には真皮コラーゲン繊維の増生を促すことが必要になります。このコラーゲンとは、動物特有の繊維状のタンパク質のことで、皮膚や軟骨、血管、角膜などあらゆる組織を構成している成分の事です。コラーゲンは身体の約30%を占めており、組織や細胞をつなぎ合わせる接着剤のような役割を果たしています。
このコラーゲンは、肌の健康や角化の正常化に不可欠で、肌のハリや弾力性、柔軟性や皮膚の水分含有量を高める役割を担っています。そのため、角化の正常化にはコラーゲン繊維の増産を促すアプローチも同時に必要です。
具体的には、コラーゲン繊維の材料となるタンパク質、ビタミンB群、ビタミンC、ヘム鉄、亜鉛などです。これと併せて、細胞の正常な分化・分裂に必要なビタミンAやビタミンDも摂取しましょう。
角化症、バリア機能の強化に対する分子栄養学的アプローチ例(アトピー・アレルギーを含む)
- タンパク質
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンE
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンD
- マグネシウム
- ヘム鉄
- 亜鉛
このアプローチは、リーキーガット症候群や眼球乾燥症(ドライアイ)、アトピーやアレルギーなどの改善に対してもほぼ同様のアプローチです。リーキガット症候群やアトピー・アレルギーの場合は消化吸収の低下も関係している事から、「アミノ酸」や「グルタミン」などでタンパク質を摂取することも必要となる場合があります。また、腸ケアや副腎疲労対策などその他のケアも必要となる場合があります。アプローチは人それぞれ異なりますので、具体的なアプローチにつきましてはオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。
ちなみに、ビタミンDはビタミンAと同じく、細胞の分化分裂、角化の正常化に関わっています。ビタミンDはキノコや魚の内臓などに含まれています。
ビタミンDはビタミンAと同じく脂溶性のビタミンのため、あぶらに溶けやすく水に溶けにくいという特徴があります。そのため、ビタミンAとDを摂るときはあぶらと一緒に摂ることで吸収率がアップします。
このビタミンDの摂取目安としては、人にもよりますが一日あたり4000IU〜が目安です。人によって更に必要となることもありますので、具体的な必要量についてはオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。
ガンや免疫力アップに関わる分子栄養学的アプローチ
続いて、ガンや免疫力アップに関わる分子栄養学的アプローチについてです。ビタミンAには、粘膜や皮膚などのバリア機能の正常化に加えて、免疫力を調節する働きがあります。このバリア機能の正常化などにおける正常な細胞の分化分裂は、ガン細胞の抑制にも関係していると言われています。そのため、がん対策においてはビタミンAの強化も重要です。
免疫力の源となる免疫細胞(白血球など)は細胞で出来ていることから、細胞を作るための材料としてタンパク質を始めとした様々な栄養が必要になります。例えば、免疫強化のための分子栄養学的アプローチとしては次のようなものがあげられます。
免疫強化のための分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- BCAA(分岐鎖アミノ酸)
- グルタミン
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンD
- ビタミンE
- ヘム鉄
- 亜鉛
- EPA
- オリーブ葉エキス
また、抗がん対策としては更なる免疫強化のアプローチと、必要に応じて貧血の改善も必要になります。抗がん対策としての栄養アプローチとしては、次のようなものがあげられます。
抗がん対策としての分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- グルタミン
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンD
- ビタミンE
- トコトリエノール
- ヘム鉄
- 亜鉛
- EPA
- オリーブ葉エキス
- プロバイオティクス
- フコイダン・βグルカンなどのプレバイオティクス
特に免疫細胞の約7割は腸に存在していることから、免疫力を高めるには腸内環境を整えることも重要です。腸は体内にありながら、食品などに付着した細菌や病原体が常に侵入してくる部分でもあります。この病原体の侵入を食い止めるため、腸内には免疫細胞全体の約6割〜7割が存在し、侵入してくる敵と戦っています。
そして、この腸内の免疫細胞を活性化してくれる働きがあるのが、腸内の善玉菌である「乳酸菌」や「酪酸菌」などです。これらは腸内の悪玉菌と闘ったり、腸のエネルギー源として使える「短鎖脂肪酸」を生成したりしてくれるなど、私達の身体に有益な働きをしてくれます。
そのため、免疫力を強化するためにはプロバイオティクス(腸内環境を整える微生物)と、それを増殖・活性化するプレバイオティクス(食物繊維)の摂取も同時に行いましょう。食物繊維は善玉菌の餌となり、善玉菌の増殖と活性化を促します。
先ほどの「リーキーガット症候群」やアトピー・アレルギーなどのケアとも繋がる部分がありますので、分子栄養学的アプローチを行う際は是非とも腸ケアも同時に行ってみて下さい。
※上述の分子栄養学アプローチ例は、がんの治療を目的としたものではありません。あくまで、健康な細胞の分化分裂を誘導すること、がん治療における栄養消耗を補うサポートを行うためのものです。栄養素の多量摂取により、ガンなどの疾病を治癒するものでは無い点にご注意ください
貧血に対する分子栄養学アプローチ
次に、貧血に対する分子栄養学的アプローチです。ビタミンDとAは赤血球の分化分裂にも関連していることから、貧血対策においても重要な栄養素です。貧血といえば「鉄分」を思い浮かべるかも知れませんが、鉄分だけを補給しても貧血を改善することは出来ません。
貧血を改善するためには、鉄分以外にもタンパク質やビタミンB、鉄や亜鉛など様々な栄養が必要です。例えば、貧血として最も多い「鉄欠乏性貧血」に対する分子栄養学アプローチとしては、次のようなものがあげられます。
鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- ビタミンB群
- ヘム鉄
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンD
- 亜鉛
- マンガン
- セレン
- 銅
この貧血には必ず原因が隠れており、鉄分の摂取不足以外にも消化管出血や婦人科疾患など様々な原因があります。そのため、具体的なアプローチにつきましてはオーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。また、貧血に対する分子栄養学的アプローチや鉄分の働きについては、次の記事で解説しています。より詳しく知りたい方は、是非参考にしてみて下さい。
眼精疲労、ドライアイに対する分子栄養学的アプローチ
ビタミンAには、粘膜や皮膚などのバリア機能を正常化する以外にも、眼の網膜にあるロドプシンの再合成に関与しています。このバリア機能の正常化とロドプシンの再合成には、角膜の保護や眼精疲労にも関係していると言われています。そのため、ドライアイや眼精疲労対策においてもビタミンAの強化が有効です。
特に現代では、パソコンやスマートフォンの普及により、長時間「ブルーライト」に晒される時間が増えてきました。ブルーライトとはパソコンやスマートフォン等の液晶などから発生する高エネルギーの光のことです。このブルーライトは、紫外線の次に眼にダメージを与える要因となっています。
そして、このブルーライトによるダメージに加え、パソコン、スマートフォンなど近くの物を長時間直視することで「眼精疲労」を抱える方も多くなっています。眼精疲労は、眼を使う作業を続けていくことで眼が疲れ、かすみやまぶしさ、充血、眼の痛み、めまい、頭痛、吐き気、肩こり、イライラなど様々な症状をきたす状態の事です。
また、眼精疲労は同時に「眼球乾燥症(ドライアイ)」の原因にもなっており、ドライアイになると眼が疲れやすくなったり眼が乾いた感じがしたりと、眼に不快感が表れます。
このような眼精疲労・ドライアイ対策には、VDT作業(パソコンやスマートフォン、タブレットなどの「VDT機器」を使用して、データの入力や検索、文章や画像の作成や編集、プログラミング、監視などを行う作業)を行う際に一定時間毎に休憩を入れることと、眼を酷使することで消耗する栄養素をしっかりと補給することが大切です。
特に、ビタミンAは光によって分解される「ロドプシン」の合成に関与しています。このロドプシンの合成を促進するためにも、ビタミンAをしっかり補給しましょう。この時、ビタミンAはカロチノイドを含むマルチカロテノイド含有ビタミンAを選ぶことと、アントシアニン、ビタミンCなど抗酸化対策効果がある栄養素も同時に摂取すると効果的です。
併せて、視神経を活性化させて筋肉の疲れを和らげるビタミンB群やコエンザイムQ10の同時に摂取しましょう。これらを組み合わせて摂る事で、眼の粘膜細胞の正常化や血流改善を促し、眼精疲労やドライアイ対策になります。
これらをまとめると、眼精疲労・ドライアイ対策としての分子栄養学的アプローチとしては次のような感じです。
眼精疲労対策・ドライアイとしての分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンE
- コエンザイムQ10
- アントシアニン
- 亜鉛
これら栄養素の補給と、生活習慣の改善なども併せて行ってみて下さい。ドライアイや眼精疲労はすぐさま命の関わるものではありませんが、放置すると生活の質や全身の健康状態を大きく低下させる要因になります。眼は脳の一部でもあり、眼のストレスは脳のストレスに直結します。脳のストレスは自律神経系を乱して全身の健康状態に影響を与えてしまう事から、「たかがドライアイ」と放置せずに、早めに対処しましょう。
眼精疲労やドライアイ対策には、ビタミンA以外にもタンパク質やビタミンB群、亜鉛やビタミンEなんかも摂った方が良いんだね
そうそう。これらはお互い協力して働くから、セットで摂った方が良いよ。この時に摂取するビタミンAは、必ずマルチカロテノイド含有のビタミンAを選んでね
白内障、緑内障、黄斑変性症に対する分子栄養学的アプローチ
続いて、白内障や緑内障、黄斑変性症などに対する分子栄養学的アプローチについてです。これらは加齢や眼圧の上昇、喫煙や飲酒など生活習慣に起因するほか、生まれつきのものや眼の怪我によって発症するもの、アトピー性皮膚炎や糖尿病などの合併症やステロイド剤の長期使用などによって引き起こされることがあります。
ここでは、最も原因が多い加齢や眼圧の上昇、喫煙や飲酒など生活習慣により起因する対策に絞って解説していきます。
まず、白内障とは、眼のレンズである水晶体が白く濁ってものが見えにくくなる病気の事です。水晶体は凸レンズのような形をしていて、ピントを合わせて光を網膜に届ける働きをしています。この水晶体が曇ってしまうと、光がよく通らなくなってものが見えにくくなったり、眩しくなったりなどの症状が起こります。
この白内障は、レンズの役割をしている水晶体が、何らかの原因で変性してしまったことが主な原因です。水晶体はタンパク質で出来ており、光からの刺激や活性酸素などの影響によってタンパク質が変性してしまうと、白く濁って元に戻らなくなります。
例えば、「生卵」の白身は透明でゼリー状になっていますが、加熱して「ゆでたまご」にすると白く固まってしまいますよね。この白く固まったゆでたまごを、元の「生卵に戻せ」と言われても、戻すことは出来ません。これは、加熱によってタンパク質が変性し、分子構造が変化してしまったためです。
そのため、白内障の分子栄養学的アプローチとしては、白内障になる前から水晶体のタンパク質変性を防ぐ事とが重要です。特に、糖尿病と白内障には密接な関係があります。糖尿病では眼の水晶体に糖や糖化タンパクが蓄積し、白内障に繋がることから、糖尿病のコントロールや生活習慣の改善が第一優先です。これらと併せて、水晶体のタンパク変性を防ぐためにも、抗酸化作用のある栄養摂取を行いましょう。具体的な分子栄養学的アプローチとしては、次のようになります。
白内障の分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ビタミンE
- グルタチオン
- アントシアニン
1つ注意点としては、白内障に対する分子栄養学アプローチは、白内障になってしまった状態を治すものでは無い点に注意して下さい。先ほども解説した様に、一度でもタンパク質が変性してしまうと二度と元に戻すことは出来ません。そのため、白内障に対する分子栄養学アプローチは、あくまで白内障にならないよう予防することが目的です。白内障は糖尿病など基礎疾患や生活習慣とも密接な関係がありますので、これらの改善や分子栄養学アプローチも同時にアプローチするようにして下さい。
次に、緑内障に対する分子栄養学アプローチについてです。緑内障とは、眼からの情報を脳に伝達する「視神経」に障害が起こり、視野が狭くなる病気です。主な原因は眼圧の上昇ですが、その他に他の病気と合併して発症したり、先天性のものもあります。
緑内障になると、初期は一部が少しかすむ程度ですが、中期になるとモヤが徐々に広がるようになります。さらに後期になると霧の中にいるようにぼんやりとし、視野が大きく欠けてきます。欠けてしまった視野は元に戻せず、治療が遅れると失明に至る場合もある恐ろしい病気です。
この緑内障は、白内障と同じく一度視野が欠けてしまうと分子栄養学的アプローチをもってしても元に戻すことは出来ません。そのため、緑内障の分子栄養学的アプローチとしては、緑内障になる前から眼圧を整えて予防することが大切です。
眼圧を整えるためには、異常な眼圧の原因となるストレスのコントロールや、眼圧を整えるための血流改善、糖尿病を始めとした生活習慣病の改善と栄養状態の適正化が重要です。具体的な分子栄養学的アプローチとしては、次のようになります。
緑内障の分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群(B12・葉酸)
- ビタミンC
- ビタミンE
- アントシアニン
緑内障は治療が遅れると失明に至る場合もあるため、自覚症状がある場合は必ず病院で治療を受けて下さい。緑内障に対する分子栄養学アプローチは、緑内障の治療ではありません。あくまで、緑内障の予防、悪化を防ぐ目的で行うものです。また、併せてストレスコントロールや生活習慣、食生活の見直しなども必要になります。分子栄養学的アプローチを行う際は、必ずこれらも併せて行って下さい。
次に、黄斑変性症(おうはんへんせいしょう)に対する分子栄養学的アプローチについてです。黄斑変性症とは、網膜の「黄斑」と呼ばれる部分が、何らかの原因で変性してしまう疾患の総称です。黄斑は視力との関わりが深く、色を識別する細胞のほとんどがこの部分に存在しています。黄斑は加齢に伴う変化によって視力が低下し、高齢者の失明原因の1つとなっています。
黄斑変性症になると、視野の中心部が波打つようにゆがんで見えたり、かすんで見えたりします。この時、周囲は歪み無く正しく見えるのが特徴です。さらに症状が進行すると、中心部に黒い影のようなものが現れ、見ようとするところが見えにくくなります。
この黄斑変性症の主な原因は「加齢」ですが、歳を重ねるにつれて受け続ける紫外線のダメージや、喫煙、生活習慣の乱れなども関係しています。そのため、黄斑変性症の分子栄養学アプローチとしては、日頃からサングラスなどによる紫外線防御や、眼にダメージを与えてしまう活性酸素への対策、喫煙など生活習慣の改善が必要です。具体的な分子栄養学的アプローチについては、次のようになります。
黄斑変性症の分子栄養学的アプローチ
- タンパク質
- ビタミンA(マルチカロテノイド含む)
- ビタミンB群(B12・葉酸)
- ビタミンC
- ビタミンE
- アントシアニン
- CoQ10
- 亜鉛
黄斑変性症は、緑内障や白内障と同じく、一度変性して失明してしまったら元に戻すことは出来ません。そのため、分子栄養学アプローチでは黄斑変性症になる前から予防していくことが大切です。特に日頃からサングラス着用による紫外線の防御と、生活習慣の改善、栄養状態の改善が必要になりますので、分子栄養学アプローチと併せてこれらも同時に行うようにして下さい。
げげっ、眼の病気って、一度なると栄養で治す事は出来ないのか💦
そうそう、一度なってしまうと、栄養で治す事は出来ないよ。だからこそ、病気になる前にしっかり栄養アプローチを行って予防することが大切なんだ
ビタミンAの需要は人それぞれ。栄養状態の改善には必ずオーソモレキュラー療法を受けましょう。
ビタミンAの不足や需要の増加には、ビタミンAの摂取不足以外にも、タンパク質不足や脂質の摂取不足、ガン、消化器系疾患、角化症など様々な疾病が関係しています。また、この他にも貧血や眼とも関係していて、人によって複数の原因が複雑に絡み合っていることも多くあります。
また、ビタミンAを利用するためには肝臓などの健康状態が関わっており、人それぞれ状態も違います。そのため、単にビタミンAを補給するのでは無く、これら状態や原因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の血液検査を受けてみましょう。
オーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査項目に加え、消化吸収能の状態やピロリ菌感染の有無、甲状腺の検査、副腎疲労や短鎖脂肪酸検査、リーキーガット症候群検査などを必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。
複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの栄養不足の根本原因がどこから来ているのかが分かります。また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。
このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。
ビタミンAには様々な働きがありますが、あくまで「栄養素」であり、体内で利用されなければ意味がありません。ビタミンAを利用するためには、タンパク質やビタミンB群、ビタミンDや亜鉛など様々な栄養が必要です。このタンパク質の消化能力や栄養の需要は人それぞれ異なりますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。
オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。
また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。
分子栄養学の実践は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用しましょう
オーソモレキュラー療法では、血液検査や各種検査の結果に応じて分子栄養学実践専用に設計されたサプリメントで栄養アプローチをしていきます。
分子栄養学実践専用サプリメントとは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。また、原材料には天然由来の生体内物質が使用されていたり、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。
そのため、分子栄養学実践専用サプリメントは、市販されているサプリメントや海外サプリメントと比べて非常に高価となっています。
しかし中には、「市販されているサプリメントや海外サプリメントを利用して実践したい」と思っている方も多いかもしれません。市販されているサプリメントや海外サプリメントは、分子栄養学実践専用サプリメントと比べて非常に安価です。
ですが、市販されているサプリメント海外サプリメントなどで販売されているサプリメントで分子栄養学を実践をするのはオススメしません。
市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、そもそも消化吸収能が低下した方や病態を抱えた方が摂取するようには設計されておらず、胃や腸でも全く溶けない粗悪品も流通しています。
また、原材料に人工的に加工されたものや合成されたもの、天然界には存在しない化学構造のものなどが使われていることもあり、これらを大量に摂取することはむしろ生体内の分子を乱してしまうことにも繋がります。
加えて、栄養素が酸化・劣化して効力を失っているものや、そもそも有効成分自体が殆ど含まれていないものなどもあります。このことから、市販されているサプリメントや海外サプリメントを使って分子栄養学を実践することはオススメしていません。
分子栄養学を実践する際は、このようなサプリメントの善し悪しを学ぶことも非常に重要です。分子栄養学実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの違いについては、下記の記事を参考にして下さい。
そして、分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する際は必ず「分子栄養学実践専用サプリメント」を使用しましょう。
サプリメントは、きちんと消化吸収・利用されて初めて意味があります。分子栄養学実践専用サプリメントでは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。
また、分子栄養学では一般的な量よりも遙かに多くの栄養素を摂取します。この時、栄養素同士が反応して効力を失ってしまったら意味がありません。分子栄養学実践専用サプリメントでは、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。
このことから、分子栄養学を実践する際は、必ず分子栄養学実践専用サプリメントを用いるようにして下さい。
サプリメントは何を選んでもいいわけじゃないのか❗
そうだよ、サプリメントは同じように見えてもその中身や設計や全く異なっているんだ。質の悪いサプリメントを使うと逆効果になるから、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用に作られた作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね
ビタミンAとは? ビタミンAの働きと代謝の基本について分子栄養学的観点から解説まとめ
以上が、ビタミンAの働きと代謝の基本、ビタミンA不足に対する分子栄養学的アプローチについてでした。
ビタミンAは肝臓や魚の油、緑黄色野菜などに多く含まれ、それぞれ含まれているビタミンAの種類や働きなどが異なります。このビタミンAの吸収にはコレステロールから作られた胆汁が必要で、コレステロールの合成やビタミンAを血液中で運搬するためにはタンパク質も必要になります。分子栄養学では、このようなビタミンAの働きや、吸収・代謝をよく理解することが大切です。
また、ビタミンAの活性化には亜鉛も必要なので、ビタミンAを摂取する際は亜鉛をセットで摂取することが基本です。加えて、ビタミンDやカルシウム・マグネシウムなどもビタミンAと協力して働く栄養素なのでセットで摂取するようにしましょう。
分子栄養学やオーソモレキュラー療法というと単にサプリメントを飲むだけの療法だと思われがちですが、この記事で解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。もし、オーソモレキュラー療法に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。
分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。
オーソモレキュラー療法の詳細については、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ でお申し込み方法などをご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。
参考情報