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分子栄養学と一般的な栄養学の違いとは? それぞれの違いを具体的に解説

栄養学には、基本となる一般的な栄養学の他にも、様々な栄養学が存在します。その中でも、栄養療法や高濃度ビタミンC点滴など分子栄養学」を取り入れるクリニックが増えてきました。

分子栄養学は、人によって「分子整合栄養医学」や「オーソモレキュラー療法」などと呼ばれることもあります。この分子栄養学とは一体どのようなものなのでしょうか? 一般的な栄養学と分子栄養学とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

今回は、一般的な栄養学と分子栄養学の違いと、分子栄養学がどのようなものかについてわかりやすく解説します。

目次

分子栄養学と一般的な栄養学の歴史、目的の違い

ナンナン

ねぇねぇ、分子栄養学って栄養学があるみたいだけど、これって普通の栄養学と何が違うの❓ 栄養学の発展形が分子栄養学❓

はる かおる

栄養学と分子栄養学の違いについて知りたいの❓
分子栄養学は、一般的な分子栄養学と全く違うものだよ。

ナンナン

えっ❗❗同じ栄養学って言葉がついてるから、同じようなものなんじゃないの❓ じゃあ、具体的にどこがどう違うのさ❓❓

はる かおる

一般的な栄養学と分子栄養学とでは、その目的も方法も全く違うね。このあたり、もっと詳しく解説してあげるよ。

一般的な栄養学と分子栄養学とでは、一体何がどのように違うのでしょうか?

まず、この2つは、その歴史も目的も全く異なります。一般的な栄養学では「この栄養が足りないとこんな病気になるので、その病気にならないようにこの栄養素を十分に摂りましょう」というのが一般的な栄養学です。

例えば、ビタミンCが足りないと「壊血病」という病気になることが知られています。壊血病とは、ビタミンCが欠乏したことにより血管や皮膚がもろくなり、全身の至る所から出血して最終的には死に至る病気です。

壊血病は、古くは15−18世紀の大航海時代において、主に船乗り達に発症する病気でした。当時は冷蔵庫という物が無かったので、新鮮な野菜や果物を積まずに航海に出発することが当たり前の時代です。このような中、航海が長引くにつれて乗組員の多くが壊血病になり、次々に死亡していきました。

この壊血病で亡くなった人の数は、16世紀から19世紀に至るまでに200万人を超えるとも言われています。当時は柑橘類を食べると発症が抑えられることが経験的に分かってきたものの、依然として壊血病の原因は不明のままでした。

その後、抗壊血病物質であるビタミンCが発見されたのは、20世紀に入ってからのことです。それまで壊血病の予防、改善にビタミンCが有効である事は知られておらず、ましてやビタミンC自体も発見されていませんでした。何世紀にもわたって大勢の死者を出し、原因不明とされてきた壊血病に終止符が打たれたのは、ここ最近の出来事なのです。

このような歴史などから「特定の栄養素が不足すると病気になる」ことが広く認知されるようになりました。そして、病気の予防のために必要な栄養素を摂取するという考えが広まり、発展してきたのが「栄養学」です。今となっては壊血病の予防にビタミンCが有効である事は、誰もが知るところですよね。

このように、「この栄養が足りないとこんな病気になるので、その病気にならないようにこの栄養素を十分に摂りましょう」というのが一般的な栄養学です。

分子栄養学の歴史とその目的とは

では、分子栄養学とは一体どのような学問なのでしょうか?

分子栄養学(ぶんしえいようがく)とは、食物から摂取した栄養素や食品成分が、体内でどのように働くかを分子レベルで解明する学問のことです。分子栄養学は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナス・ポーリング博士(1901-1994 年)とエイブラム・ホッファー博士(1917- 2009 年)により確立されました。

分子栄養学は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナスポーリング博士とエイブラムホッファー博士により確立された

先ほどの栄養学は欠乏症や病気を予防することが目的なのに対し、分子栄養学では、私たちの身体がもつ本来の力を最大限に引き出し、オプティマムヘルス(単に病気を予防するだけに限らず、心身ともに最高・最善の健康状態)の実現を目指す事が最大の目的です。

分子栄養学は、生体内の分子を整えて生体機能を向上させる学問。分子栄養学は、分子整合栄養医学やオーソモレキュラー療法とも呼ばれている。

分子栄養学は、人によって分子整合栄養医学(ぶんしせいごうえいよういがく)やオーソモレキュラー療法、オーソモレキュラーニュートリション、栄養療法などと呼ばれることもありますが、基本的にどれも同じものを指しています。

これら言葉の利用傾向としては、基礎理論である座学に対して分子栄養学や分子整合栄養医学などと呼ぶことが多く、対してクリニック等で提供している分子栄養学を元にしたサービスに対しては、オーソモレキュラー療法や栄養療法と呼ばれる傾向にある印象です。

このサイトでも、わかりやすく解説するために分子栄養学の基礎理論を解説する場面においては「分子栄養学」とし、クリニックで提供されている分子栄養学を元にしたサービスを解説する場面においては「オーソモレキュラー療法」という表現を用いています。

オーソモレキュラー”Orthomolecular”という言葉の意味は、ギリシャ語の「正しい」という意味に由来するortho(正常な)と molecule(分子)を組み合わせた造語です。この言葉は、ノーベル賞受賞者でもあり、分子栄養学の第一人者であるライナス・ポーリング博士が提唱しました。

分子整合栄養の理念

多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる。

ノーベル化学賞受賞 ライナス・ポーリング博士

ポーリング博士は、自身が研究する鎌状赤血球症という病気の背景に、ヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見し、「分子病」という病気の概念を新たに確立したことで知られています。

鎌状赤血球症とは、本来丸いお餅の真ん中をへこませたようなへん平な形をしている赤血球が、草を刈る鎌のような三日月に変形してしまう病気です。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っていて、本来のへん平な形をしていれば、細い毛細血管内でも柔軟に形を変えて通り抜けることが出来ます。

左が正常な赤血球で、右が鎌状赤血球症。正常な赤血球はお餅の真ん中をへこませたような形をしているのに対し、鎌状赤血球症では三日月型に変形している。

しかし、赤血球が三日月型に変形してしまうと、毛細血管など細い血管が通れなくなって詰まってしまい、壊れやすくなってしまいます。その結果、慢性溶血性貧血、慢性疲労、疼痛、臓器障害など、さまざまな症状につながってしまうのです。

ポーリング博士は、この鎌状赤血球症という病気の背景に、赤血球の中のヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見しました。ヘモグロビンは、アミノ酸など様々な分子が組み合わさって出来ています。このヘモグロビンに含まれるたった1つのアミノ酸分子の違いが、鎌状赤血球症の原因となるのです。この発見こそが、分子の乱れが人間の病気の原因になることを世界で初めて示した瞬間でした。

それ以降、ポーリング博士は自身の研究を通じて「生体内の分子の乱れが病気の発症に関与しているのではないか」と考えるようになります。そして、前述した「多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる」事を提唱したのです。

これは、私たちの身体の中に正常にあるべき分子(molecule)を至適濃度に保つ(ortho)充分量の栄養素(nutrition)を摂取し、それを適切に消化・吸収・代謝することによって生体機能が向上し、病態改善が得られるという理論です。

ここで言う分子とは、私達が普段摂取しているタンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなどの栄養素のことを指しています。例えば、私達の身体は200種類以上、およそ数十兆個の細胞が集まって出来た細胞の集合体です。これら細胞が集まることで心臓や脳、肺や血管、皮膚や筋肉などの組織が作られ、組織が集まることによって私達の身体が作られています。

私達の身体は、数十兆個の細胞が集まって構成されている。この細胞は、すべて私達が食べた食べ物(栄養素)で出来ている

では、この細胞自体を作ったり、動かしたりするエネルギー源や材料は一体何なのでしょうか?

これこそが、「タンパク質」「脂質」「糖質」「ビタミン」「ミネラル」などの栄養素(分子)であり、生命活動を営むために欠かせない成分のことです。

細胞は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどを利用して身体を作ったり、動かしたりしている

私達の皮膚や組織などの細胞を一つ一つもっと深く見ていくと、やがてこれ以上小さく見ることが出来ない「分子」という状態になります。

分子はビタミンやミネラル、アミノ酸などの分子(栄養素)のことで、これら分子(栄養素)が集まって構成された物が細胞です。

そして細胞は、糖質や脂質などの分子(栄養素)をエネルギーとして利用することで体温を作り出したり、身体を動かしたりしています。

この細胞は、すべて栄養素で出来ていて、私達の食事を通じて必要な栄養素を得て生命活動を行っている

私達の筋肉や臓器、骨なども、タンパク質やミネラル等で作られている事はご存じですよね。これらタンパク質やミネラル、糖質や脂質などは、胃や腸などの消化管を通じて消化(繋がった分子をバラバラに)した後、血管を通って細胞に必要な分子が送り届けられています。

つまり、私達は食事を通じて細胞に必要な分子(栄養素)を得て、組織の機能を維持し、生命活動を行っているのです。もし、この時に胃や腸などの消化管に問題があったり、食事の内容やバランスが悪くなったりしていると、体内の分子(栄養素)の量やバランスが乱れてしまい、細胞の正常な働きが出来なくなってしまいます。

この乱れた分子(栄養素)を個人個人、必要な量を補給することで、細胞の働きを本来あるべき状態に整え、病態の改善や予防、オプティマムヘルス(心身ともに最高・最善の健康状態)を目指すのが分子栄養学です。

具体的には、分子栄養学では消化管である口、胃、小腸や大腸、胆嚢などの状態や、酵素の量、働き、ホルモンや自律神経など身体の代謝全般と、個人個人の状態や病態を考慮して栄養補給を行います。対して一般的な栄養学では、消化管の状態や自律神経、ホルモンの異常などの病態や個人差は考慮しません。

また、分子栄養学では消化、吸収した栄養素が血液に運ばれて実際に利用されるまでを考慮しますが、一般的な栄養学では栄養素を摂取するだけに留まっています。

このように、一見すると一般的な栄養学と分子栄養学は似ているように思えますが、その中身は全く違うものです。分子栄養学については下記の記事で更に詳しく解説していますので、もっと詳しく知りたい方は是非ご覧下さい。

ナンナン

えっと・・・一般的な栄養学は欠乏症や病気の予防が目的で、分子栄養学も病気の予防や病態の改善が目的なんだよね❓
分子がどうのこうのって言ってるけど、結局の所、栄養でどうにかする点はどちらも一緒なんじゃないの💦

はる かおる

確かに、栄養を扱っていることはどちらも一緒だね。でも、この2つはそれぞれ役割もやり方も全然違うよ。具体的にどのように違うかの例も解説してあげるね

一般的な栄養学と分子栄養学の具体的な違い

では、もっと踏み込んで、分子栄養学と一般的な栄養学の違いについて具体的に解説していきましょう。

まず、一般的な栄養学が用いられている場面としては、学校や病院などにおける給食計画や、健診における健康指導などがあります。主に「栄養士」「管理栄養士」の方が、厚生労働省の定めた栄養摂取基準である「日本人の食事摂取基準」に基づいて給食計画を立てたり、指導方針を決めたりしています。

この「日本人の食事摂取基準」とは、厚生労働省から出されているガイドラインの1つで、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示したものです。

例えば、ビタミンCの場合、成人では1日の推奨量が100mg(2020年版食事摂取基準)と設定されています。日本人の食事摂取基準では、年代と性別ごとに必要な栄養素量が記されていることが特徴です。

この説明文からも読み取れるように、一般的な栄養学では健康な人を対象として、主に食事からエネルギーや栄養素を摂取し、欠乏症の予防や生活習慣病などの予防を目的としていることが分かりますね。

また、似たようなものとして「栄養素等表示基準値」というものがあります。こちらは年代や性別関係なく、日本人一般に幅広く適用できる共通の“ものさし”として厚生労働省より設定されたものになります。

例えば、スーパーやコンビニなどで「これ一本で1日分のビタミンやミネラルが摂れる」というようなことが書かれた商品を目にしたことがありませんか? このような「1日分のビタミンやミネラル」という基準も、「栄養素等表示基準値」を元に設定されたものです。こちらも、日本人の食事摂取基準と同じように、栄養素欠乏症の予防などを目的として設定されたものになります。

このように見ていくと、一般的な栄養学だけでも十分な栄養が摂取出来るように思えるかもしれません。しかし、本来、個人ごとに必要な栄養素量は、年齢、性別、身体活動の程度、病態の有無などによって異なっています。

「日本人の食事摂取基準」や「栄養素等表示基準値」では、このような身体活動の程度や病態などの個人差までは考慮していません。あくまで、健康な人に対して欠乏症の予防、生活習慣病の予防などを目的として設定された目安です。つまり、これら基準値を守って栄養摂取を行っていたとしても、それが必ずしも自分にとって必要な栄養素の量とは限らず、生活習慣病の予防や健康維持に繋がるとは限らないわけです。

対して分子栄養学では、年齢や性別、身体活動の程度や病態の状態、消化吸収能の状態など個人差を考慮し、食事からの栄養摂取に加えてサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて必要な栄養素を摂取します。

更には、病気の予防や治療といった枠を超え、「肌の状態を良くしたい」とか「もっと筋肉を付けたい」「疲れ知らずの毎日を送りたい」など心身ともに最高・最善の健康状態を目指すことが最大の特徴です。

この個人差や全身の状態を把握するために、分子栄養学を実践する際は専用の血液検査を行っています。この血液検査は、保険診療による病気を診断するための血液検査と違い、栄養状態を把握するために行われるものです。

オーソモレキュラー療法の血液検査セットの例。KYBクラブでは68項目の検査を基本検査としている

この結果を基に医師が解析し、個人差や病態、薬とサプリメントとの飲み合わせなどを考慮したレポートが作成されます。その結果を参考に栄養アプローチを行っていくのが、分子栄養学であり、オーソモレキュラー療法です。

このような血液検査による個人差を考慮するか否かと、更により良い健康状態を目指すかどうかが、一般的な栄養学と分子栄養学の大きな違いになります。わかりやすくするために、次の表に一般的な栄養学と分子栄養学の違いを比較してみました。

一般的な栄養学と分子栄養学の違い

スクロールできます
一般的な栄養学分子栄養学
消化吸収能力
考慮しない

考慮する
栄養素の質、劣化、損失量
考慮しない

考慮する
病態に応じた摂取量
考慮しない

考慮する
個人差に応じた摂取量
年代、性別のみ

考慮する
薬、栄養素との飲み合わせ
考慮しない

考慮する
栄養摂取後のサポート
経過観察

なし

あり

栄養摂取の目的
欠乏症、病気の予防病態の改善・予防
オプティマムヘルスの推進

一般的な栄養学では、病態や活動量、消化吸収能力など個人差に応じた栄養摂取量は考慮されていないのに対し、分子栄養学ではいずれも個人差を考慮し、個人個人に合わせた栄養アプローチを行います。

具体的にどのような違いがあるのかを、1つずつ解説していきましょう。

一般的な栄養学と分子栄養学の違い①『消化吸収能の考慮』

まず、一般的な栄養学ではその方の消化吸収能力などを考慮しないのに対し、分子栄養学では個々に応じた消化吸収能を考慮します。

例えば、いくら栄養満点の食事を食べたとしても、それがきちんと消化、吸収されなければ全く意味がありません。食べ物に含まれる栄養素は、しっかり消化・吸収されて初めて栄養となります。

食べ物はしっかりと消化吸収されて初めて栄養となる。一般的な栄養学では考慮しないが、分子栄養学では消化吸収能力も考慮する。

一般的な栄養学では、食べ物に含まれる栄養素量が基準値以上摂れていれば、それだけで栄養が摂れたとされています。その食べ物がしっかりと消化・吸収されているかどうかまでは考慮しません。

対して、分子栄養学ではその人の消化酵素の分泌量や、ピロリ菌感染の有無、腸内環境の状態などを必要に応じて検査し、問題がある場合はケアをするなど個人個人に合わせた栄養アプローチを行っています。

例えば、食べ物をしっかり消化・吸収するためには「消化酵素」と呼ばれる酵素が十分に分泌されている必要があります。主な消化酵素としては、胃酸の分泌量を示す「ペプシノゲン」や脂質を消化吸収するために必要な「リパーゼ」、炭水化物を消化吸収するために必要な「アミラーゼ」などです。

体内で作られる消化酵素の例。主に唾液に含まれるアミラーゼや、胃酸に含まれるペプシン、すい臓から分泌されるリパーゼなどがある

食べた食べ物は、これら消化酵素がしっかり分泌され、きちんと消化・吸収されて初めて栄養となります。

しかし、このような消化酵素の分泌量には個人差や病態などが関係しているため、同じ食べ物を食べたとしても食べ物に含まれる栄養素の消化吸収量には個人差があります。同じ肉を100g食べたとしても、きちんと消化吸収出来る人も居れば、ほんの少ししか消化吸収出来ない人もいるのです。

このような差が出る原因としては、ピロリ菌の感染による慢性胃炎や、胆汁の材料となるコレステロール値の低下、慢性膵炎などによるアミラーゼやリパーゼの分泌量低下などが挙げられ、その人の状態によって食べ物の消化吸収能力は大きく異なります。また、加齢や遺伝的な要因でも消化吸収能力は変わってきます。

分子栄養学ではこのような消化吸収能を考慮し、必要な対策と栄養アプローチを行うために実施しているのが、血液検査によるスクリーニング検査です。

KYBクラブでは、消化吸収能力を調べるために初回検査時にピロリ菌感染の有無とペプシノゲンの分泌量を測定するPG1・PG2の検査をオススメしている。

例えば、初回の検査時には、基本検査と併せてピロリ菌の感染有無とペプシノゲンの分泌量を測定する「Hp抗体、PGⅠ/PGⅡ」検査をオススメしています。

この理由としては、先ほども解説したようにピロリ菌に感染していると胃腸機能の低下や胃がんなどの胃病変リスクが増加するためです。ピロリ菌に感染していると、慢性萎縮性胃炎を引き起こす原因となり、胃酸の分泌量が低下してタンパク質など食べ物を消化する能力が低下する恐れがあります。

また、胃酸に含まれるペプシノゲンはタンパク質の消化に関係している事から、ペプシノゲンが十分に分泌されているかどうかのチェックも重要です。もし、ペプシノゲンの分泌量に問題がある場合は、消化酵素の摂取など消化サポートをオススメする、プロテインの代わりに消化の必要が無いアミノ酸の摂取をオススメするなどの対応も必要に応じて行われています。

他にも、小腸や大腸の状態、腸内細菌叢のバランスなども消化吸収能力に影響を与える事から、これらの考慮も行っています。

分子栄養学では、胃の不調以外にも、SIBOやリーキーガット症候群など腸の異常も必要に応じて検査、考慮する

例えば、本来あまり腸内細菌が生息していないはずの小腸に腸内最近が大量に増殖してしまう小腸内細菌増殖症(SIBO)や、小腸粘膜の細胞同士に隙間が出来てしまい、そこから異物が漏れて血管内に侵入してしまうリーキーガット症候群、下痢と便秘を繰り返してしまう過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアの有無などです。

これら腸内環境の異常は、便秘や下痢を繰り返す、お腹が張る、アレルギーが引き起こされるなど様々な不調を引き起こす原因になり、食べ物の消化吸収能力も低下する原因です。

分子栄養学では、必要に応じてこれら検査も行い、必要に応じて対策や栄養アプローチを行います。このような、個人個人の状態や消化吸収能に合わせた栄養アプローチを行うか否かが、一般の栄養学と分子栄養学の大きな違いです。

ちなみに、一般的な栄養学における給食や病院食でも、その人の状態に応じて「刻み食」や「ミキサー食」などに加工する場合があります。こちらはどちらかというと消化吸収能力の考慮では無くは嚥下能力(飲み込む力)の低下を考慮したものです。

確かに刻み食やミキサー食にした方が消化の負担は少なくなりますが、同時に噛む回数が少なくなるため、噛むことによる健康効果は得られません。例えば、噛むことによって唾液が分泌され、唾液に含まれるアミラーゼが炭水化物の消化を助けてくれます。

このことから、分子栄養学ではきちんと「噛んで食べる」ことも重要だと考えています。刻み食やミキサー食はあくまでエネルギーや栄養素の欠乏症を防ぐために行われるものであって、分子栄養学ではありません。この違いを理解することが、一般の栄養学と分子栄養学の違いを理解する上で重要です。

ナンナン

分子栄養学って、食べ物の消化吸収までちゃんと考慮するんだね❗

はる かおる

そうそう。同じ物を食べても、人によって栄養吸収の状態が違うからね。それを、きちんと検査してその人に合った栄養アプローチを行っていくのが分子栄養学だよ。

一般的な栄養学と分子栄養学の違い②『栄養素の質、劣化、損失量の考慮』

次に、栄養素の劣化や損失など、質を考慮するかどうかの違いです。一般的な栄養学では栄養素の質などは殆ど考慮されませんが、分子栄養学では栄養素の働きを重視しているため、質や劣化、損失量なども考慮します。

例えば、栄養素は光や酸素、温度や湿度などで酸化、劣化、分解したり、栄養素同士が反応したりしてしまうものがあります。よく、調理の際に野菜を茹でるなど加熱して食べた場合、水溶性ビタミンのビタミンCやビタミンB、カリウムなど栄養素の一部が失われてしまうということを聞いたことがありませんか?

これは、調理される過程で水や油に栄養素が流れ出てしまったり、熱によって分解されたりして、その一部が失われてしまうためです。

また、調理をする前の段階であっても、食品の保管状況によっては栄養素が酸化、分解して効力を失ってしまう場合もあります。特に、野菜や果物の一部には、冷蔵庫など低温で保存すると細胞が変質し、水っぽくなったり栄養価が低下したりするものがあります。このような低温下におけるダメージを「低温障害」と言います。

例えば、次のグラフはサツマイモをそれぞれ7.5℃、15℃で保存し、アスコルビン酸(ビタミンC)の含有量の変化を調べたものです。貯蔵期間が長くなるにつれ、7.5℃で保存したものはアスコルビン酸の減少が大きく、10週後には殆ど0になってしまいました。

https://weathernews.jp/s/topics/201810/250165/amp.htmlより

このような低温障害に伴うビタミンCの減少は、パイナップルやレモン、バナナ、ナス、ピーマンなどでも確認されています。そして、一般的に家庭用冷蔵庫の野菜室は3〜8℃程度に設定されていることから、一部の野菜を冷蔵庫など低温保存していた場合、保管状況によっては栄養価の損失が進んでしまう場合があるのです。

このため、個人個人に必要な栄養素を食事から摂取しようとした場合、例えばビタミンCを1000mg摂ろうとしたときに、食材の保管方法や調理方法、食材の産地や摂れた時期、栽培方法などによって摂れる栄養素の量が変わってきます。これでは、必要な栄養素の量が本当に摂取出来ているかどうかの判別が出来ません。

加えて、ビタミンCには還元型の「アスコルビン酸」酸化型の「デヒドロアスコルビン酸」があります。両者の違いは、還元型のアスコルビン酸は活性酸素を消去する抗酸化作用があるのに対し、酸化型のデヒドロアスコルビン酸は既に酸化しているため、抗酸化作用が期待出来ない点です。

食品中に含まれるビタミンCは、先ほどの例のように保存状態や調理方法、温度などによって変化し、デヒドロアスコルビン酸に酸化したり分解されたり、流出したりして失われていきます。酸化型のデヒドロアスコルビン酸は体内でアスコルビン酸に還元することが出来ますが、それでもアスコルビン酸を摂取した場合と比べて抗酸化作用は期待出来ません。

一般的な栄養学では、アスコルビン酸とデヒドロアスコルビン酸の区別は無く、どちらも「ビタミンCの摂取量」としてカウントしています。これはデヒドロアスコルビン酸を摂取しても体内でアスコルビン酸に還元することが出来るためです。

それに対し、分子栄養学では「アスコルビン酸」のみを有効成分としてカウントしています。理由としては、分子栄養学ではアスコルビン酸における抗酸化作用によって、体内の活性酸素を消去したり、ガンの予防や進行抑制など、薬理効果を得ることが目的のためです。

このように食事からでは栄養素の劣化や損失などがある事から、分子栄養学では必要な栄養素を摂取するためにサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて補給します。サプリメントには様々な種類が販売されていますが、有効成分が高濃度に含有されているものや、天然由来の生体内物質が原材料として使われているものなど、一定の条件をクリアしたものを使用する事が基本です。

分子栄養学の実践で使われるサプリメントの条件。サプリメントは手軽に購入出来るものも多いが、その多くはこの条件に当てはまらないものが多い。

治療で使われるサプリメントの条件

  • 含有原料は、食品由来の生体内物質が使用されているか
  • 有効成分が効力を失わないまま、高濃度に含有されているか
  • 消化吸収を考慮した設計、配合内容になっているか
  • 体内での崩壊が考慮された設計、配合内容になっているか
  • 製品中の栄養成分同士が反応しないよう、反応抑制のためのコーティングはされているか
  • 栄養素は単体で摂取しても効果が無いため、複合体での設計、配合になっているか
  • 細菌・薬物など汚染物質のチェックは厳重に行われているか?
  • 製品管理システムはとられているか

このような高濃度、高品質なサプリメントであれば栄養素の損失も殆ど無く、劣化や酸化などしていない有効成分を一定量確実に摂取することが出来ます。

また、天然由来の生体内物質が使用されているサプリメントであれば、食事から栄養摂取したことと殆ど変わりません。天然由来の生体内物質というと分かりにくいかも知れませんが、サプリメントの中には人工的に合成したものや、天然には存在しない形に加工されたもの、元々天然由来の成分でも人工的に加工されたものなどがあります。(合成のビタミンE、アミノ酸キレート鉄など)

海外サプリメント通販で手軽に入手出来るアミノ酸キレート鉄。吸収率は高いが利用効率は悪い

これらは、同じ栄養素に見えても生体内では利用出来ず、「生体内異物」として蓄積、排泄されてしまうこともあることから、サプリメントを選ぶ際は人工的に加工されていない、食品由来の天然成分が原材料として使われているものを選ぶことが大切です

加えて、「非ヘム鉄」のように野菜など植物性の食品に含まれる天然成分であったとしても、大量に摂取することで胃腸障害を起こしたり活性酸素が発生してダメージを受けてしまう栄養素については非推奨となっています。そのため、分子栄養学では肉や魚などに含まれる動物性の鉄分である「ヘム鉄」の摂取を推奨しています。

鉄剤など非ヘム鉄の大量摂取は、体内で活性酸素を発生させる原因となり、細胞や粘膜にダメージを受けてしまう

このように、分子栄養学ではそれぞれの栄養素の働きを理解し、食品と同じ安全な有効成分が高濃度に含有されたサプリメントを用いて、個人個人に合わせた栄養アプローチを行います。

対して一般的な栄養学では、アスコルビン酸やデヒドロアスコルビン酸の摂取を区別したり、ヘム鉄、非ヘム鉄の摂取を区別したりすることはありません。

このような栄養素の質や働き、損失量などを考慮して行うか否かが、一般的な栄養学と分子栄養学の大きな違いです。

ナンナン

ふむふむ、一般的な栄養学は栄養素の質を考慮しないけど、分子栄養学は栄養素の質を考慮するんだね。

はる かおる

そうだよ。このあたりの細かい違いは他にもあるね。例えばビタミンEに関しては、一般的な栄養学はαトコフェロールのみが摂取対象だけど、分子栄養学ではαトコフェロール以外にα、β、γ、θトコトリエノールも必要に応じて摂取するとか。

ナンナン

うーん、よく分からないけど、分子栄養学は色々な栄養素も使い分けるんだね💦

一般的な栄養学と分子栄養学の違い③『病態に応じた摂取量の考慮』

次に、病態に応じた摂取量の考慮を行うか否かについてです。

一般的な栄養学では、例えば「貧血」や「ガン」などの病態に応じた栄養摂取量などは考慮しないのに対し、分子栄養学ではこれら病態や個人差に合わせた栄養摂取量やアプローチを行います。

例えば、2020年版食事摂取基準の場合、ビタミンCの摂取量で言えば、成人では1日の推奨量が100mgと設定されています。これはあくまで健康な人が最低限摂取した方が良い目安であって、病態を抱えた方の目安量ではありません。

対して分子栄養学では、ビタミンCの摂取量についてもその人の状態や病気の状態などによって摂取量が大きく異なることが特徴です。人によっては1回に2000mg〜3000mgのビタミンCを摂取する事もありますし、場合によっては更に高濃度のビタミンCを点滴で入れる場合もあります。

これは、活動量が大きいときや、ストレスがかかったとき、風邪など病気のときでは栄養素の消費量が大きくなることから、栄養素の必要量が多くなるためです。また、慢性的な病気(糖尿病やアレルギー疾患、肝臓病など)やガンの時などは、更に必要量が大きくなります。

必要な栄養素量は人によっても、場合によっても異なる。状態に応じて必要な量を摂取することが重要

また、例え同一人物だとしても、加齢や生活習慣の変化、病態の変化、体調の変化は常に起こっています。日々の状態に合わせて必要量の栄養素を摂取していくことが、分子栄養学の基本です。

そして、栄養素による改善の際には、一定以上の量を補給していくことも重要です。特に栄養素においては、摂取量が少ないと殆ど身体に変化が現れないことから、栄養摂取の効果は用量に大きく依存しています。この一定以上の量を摂取することで栄養素の効果を発揮させることを「ドーズレスポンス」と言います。

栄養素は、一定以上の量を摂取してはじめて効果を発揮する。この一定以上の量を摂取することで栄養素の効果を発揮させることをドーズレスポンスという

例えばビタミンC(アスコルビン酸)の場合、血流に乗って全身の細胞に運ばれて抗酸化作用等を発揮するためには、ビタミンCの血中濃度を一定以上に維持することが必要です。

この抗酸化作用を発揮するためには、ビタミンCを一度に1,000mg以上摂取して初めて血中濃度の上昇が見られることが分かっています。ただし、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、摂取後3〜4時間で血中濃度が最大となり、その後は尿と共に徐々に体外へ排泄されてしまいます。

そのため、ビタミンCの血中濃度を維持するためには、一度にある程度まとまった量(1,000mg以上)を定期的に補給することが必要です。

更に、ビタミンCには美白作用や抗ウィルス作用、ヒスタミン抑制作用、抗がん作用などがあり、抗ウィルス作用が期待出来るビタミンCの血中濃度はおよそ10-15mg/dL、ヒスタミン抑制作用を発揮する血中濃度は88mg/dL程度と言われています。

このような違いがあることから、ビタミンCの摂取量はその人の状態や目的によっても大きく変わってきます。また、その人の状態や生活習慣、年齢や性別、酵素と基質の親和性の個体差などによっても摂取量は異なります。この状態や目的に応じて、最適な栄養素の量を摂取すること。これが至適量と呼ばれる量です。

分子栄養学では、このような病態や個人差を考慮した栄養の摂取を行っていく事が特徴です。一般的な栄養学では、このような病態や個人差は考慮せず、あくまで欠乏症の予防や生活習慣病の予防を行う事が目的になります。

ちなみに、給食や病院食などで食物アレルギーに配慮した「アレルギー対応食」を提供することがありますが、これはアレルゲンとなる食品を省いたもので、分子栄養学とは違ったものです。

分子栄養学でも食物アレルギーに配慮しますが、他にもアレルギー症状の根本解決となり得る腸粘膜の改善や胃腸機能の改善など根本原因に対するアプローチも行います。この点が一般的な栄養学と分子栄養学とで大きく異なる点です。

ナンナン

栄養素の摂取量って、その人の状態や目的によってそんなに変わるのか❗

はる かおる

うん、特に病気の時は栄養の消費が多くなるから必要量も多くなるね。それに、場合によっては薬と栄養素との飲み合わせも考慮するよ。このあたりが、一般的な栄養学と分子栄養学の大きな違いだね。

一般的な栄養学と分子栄養学の違い④『薬、栄養素との飲み合わせ』

病態の考慮につづき、一般の栄養学では、医師による食事療法や食事指導と違って、薬や栄養素との飲み合わせは考慮していません。対して分子栄養学では、医師による血液検査結果の解析時に、その方が飲んでいる薬も考慮し、栄養素との相性なども考慮して栄養アドバイスが行われています。(ケンビックスの場合)

例えば、関節リウマチの治療薬の1つに「メトトレキサート」というお薬があります。このお薬は、ビタミンB群の一種である「葉酸」の働きを阻害することで、関節などで活発になっている免疫細胞の増殖をコントロール出来るお薬です。

葉酸は細胞が分裂、増殖するときに重要な物質で、これを抑えることによって免疫細胞の増殖をコントロール出来ます。仮にメトトレキサートを服用している状態で葉酸を取り過ぎてしまうと、メトトレキサートの効き目を妨げる恐れが出てきます。このため、メトトレキサートが処方される場合は、サプリメントなどから葉酸を大量に摂取することは控えるよう指導されることが一般的です。

サプリメントの中には、このような薬の効き目を妨げてしまう成分が高濃度に含有していることから、飲み合わせに注意が必要なものがあります。ケンビックスのオーソモレキュラー療法では、医師による血液検査結果の解析時に、その方が飲んでいる薬も考慮し、栄養素との相性なども考慮して栄養アドバイスが行われています。

ナンナン

ケンビックスのオーソモレキュラー療法なら、薬とサプリメントの飲み合わせも考慮してくれるから安心だね♪

一般的な栄養学と分子栄養学の違い⑤『個人差に応じた摂取量の考慮』

続いて、個人差に応じた摂取量の考慮についてです。一般的な栄養学では個人差に応じた摂取量を考慮しませんが、分子栄養学では個人差に応じた摂取量を考慮します。これは先ほど解説した消化吸収能力の考慮や、病態、薬の考慮と同じように感じるかも知れませんが、全く異なるものです。

例えば、同じ病気を抱える方が、同じ消化吸収能力だったとしても、その人の年齢や性別、酵素活性や生活習慣、目指している目的などによっても必要な栄養素の量は変わってきます。

栄養素の必要量や不足している原因には個体差がある。必要な栄養素や必要量は千差万別

身体を動かすことが多い人も居れば、身体をあまり動かさない人も居ます。ストレスが多い人も居れば、ストレスなく過ごしている人も居ます。当然、身体を動かす量が多い人や、ストレスが多い人ほど、より多くの栄養素の摂取が必要です。

また、摂取した栄養素(ビタミンなどの補酵素)は体内で酵素と結びついて初めて働けるようになります。この酵素と栄養素(ビタミンなどの補酵素)が結合するために必要な結合力や、結合出来る量(親和性)は、人によって異なっています。

栄養素は体内の酵素と結びついて初めて働けるようになる。この酵素と栄養素の親和性には個体差があることから、自身に必要な至適量を考慮することが大切

そのため、補酵素と酵素の親和性の個体差からビタミンの必要量にも大きな個体差が生じます。その差は、最大1:20にも及ぶとされ、ちょっと栄養補給すれば足りる人も居れば、摂っても摂っても全く足りない人も居るのです。

このような、個人差にあわせた最適な栄養素の量を摂取することを「至適量」と言います。一般的な栄養学ではこのような個人差に応じた栄養素の摂取は考慮しませんが、分子栄養学では至適量の栄養摂取量をアドバイスしています。

また、人によっては「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」などの要望があったり、目標を掲げていたりする方もいます。このような個人的な要望や目標なども考慮し、最適な栄養摂取量をアドバイスすることも分子栄養学の特徴です。

この個人差や至適量などを考慮するかどうかが、一般の栄養学と分子栄養学の大きな違いになります。

ナンナン

個人差の考慮か・・・
ナンナンも、もっと筋肉付けたいって言ったら考慮してくれるのかな❓

はる かおる

うん、分子栄養学ではその人の要望や目標なんかも考慮して栄養アプローチをアドバイスしてくれるよ。例えば、他にも花粉症を改善したいとか、眼精疲労を改善したいとか。個人の要望も考慮して栄養アドバイスを行うのは、分子栄養学の一番の特徴だね。

一般的な栄養学と分子栄養学の違い⑥『栄養摂取後のサポートや経過観察の有無』

そして最後に、栄養摂取後のサポートや経過観察の有無についてです。一般の栄養学は、医師が行う食事療法や食事指導と違って栄養摂取後のサポートや経過観察などはありません。対して分子栄養学では、定期的な血液検査によって経過を観察しています。(ケンビックスの場合)

食事から摂取した栄養素は、きちんと消化吸収、代謝され、それが血液に乗って運ばれた後に全身の細胞で使われて初めて意味があります。ただ単に食事をしているだけでは、この一連の流れが正常に行われているかどうかが分かりません。

この一連の流れが正常に行われているかどうかや、現在の健康状態を正確に把握するために行われているのが、オーソモレキュラー療法の血液検査です。

血液には、食事から取り込んだ栄養や代謝して産生した様々な物質が溶けている。この血液を定期的に調べることによって、栄養アプローチの経過を正確に把握することが出来る

血液中には、食事から取り込んだ栄養素や、それを代謝して体内で産生した様々な物質が溶けており、血液成分は食べた物や身体の状態を反映して常に変化しています。

この血液中の成分を詳しく調べることにより、食べた食べ物がきちんと消化・吸収されているかや、栄養素がきちんと利用されているかなどを正しく把握することが出来るというわけです。

例えば、ケンビックスで行っているオーソモレキュラー療法の血液検査では、口腔内の状態を確認するための唾液検査と尿検査を含めた全68項目の検査を行っています。

KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査を実施し、栄養状態や生活習慣病の状態などを把握している

この検査では、肝臓で作られている酵素の量や、血清タンパク量、血球量などを調べることにより、体内でタンパク質やビタミン、ミネラル等が十分に足りているかどうかを調べています。また、血糖値や脂質代謝関連などを見る事によって、血液の状態や摂取エネルギーが足りているかどうかも判断しています。これらは単一の項目で見るのでは無く、複数を組み合わせて総合的に見る事が重要です。

なぜ、このような68項目にも及ぶ血液検査を実施するのかというと、保険診療での血液検査や、健康診断の結果では、身体の栄養状態を正確に把握することは出来ないためです。なぜなら、保険診療の検査や健康診断の検査は「病気の発見や経過を観察する物」であって、栄養状態を把握する検査ではありません。

健康保険で行われる検査では、主に病気や病気の疑いがある場合に、その病気の状態を確認したり診断をするために行われています。そのため、検査項目は病気に関連する項目のみしか受ける事は出来ません。

また、健康診断や人間ドック検診で受ける検査は、病気の早期発見を目的に、病気か否かを判断するために行われているものです。こちらのは検査は、保険診療で行われる血液検査と比べて項目自体は多いものの、栄養状態を判断する目的としては行われていません。

健康保険で行われる検査と人間ドックで受ける検査、オーソモレキュラー療法の検査はそれぞれ役割も目的も異なる

そのため、栄養不足によって数値が低すぎたり、基準値ギリギリに収まっているような場合は、健康上問題なしとされてしまうのです。

例えば、コレステロールなどは数値が高いと病気と判断されますよね。反対に、数値が低すぎる場合はむしろ健康で問題が無いと判断されます。また、貧血の場合、ヘモグロビン値が正常範囲ギリギリで収まっていた場合は、貧血と診断されません。

ですが、病気と判断出来る基準値に当てはまっていなくても、数値が低すぎたり基準値ギリギリでは正常とは言えませんよね。数値が低すぎる場合は栄養が不足している可能性がありますし、栄養不足の原因となる消化器系の問題など、何らかの病気が隠れている可能性もあります。

このような目的の違いがあることから、栄養状態を正確に把握するために行われているのがオーソモレキュラー療法の血液検査です。オーソモレキュラー療法の血液検査では、保険診療や人間ドックなどと比べて多くの血液検査項目を調べることで、体内の栄養状態を把握します。

そして、個体差を考慮した複数項目を組み合わせて総合的に見る事で、それぞれに応じた栄養状態を把握し、最適な栄養アプローチを考慮していることが特徴です。そのため、必要な栄養素の種類や量、摂取方法などは誰一人として同じ人はおらず、それぞれ異なった最適なアドバイスを行っています。

KYBクラブでは、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けた方にメディカルレポートと栄養レポートを発行している

例えば、ケンビックスでは、血液検査を受けた方に上図のようなレポートを発行しています。このレポートは、血液検査結果や栄養相談シートに基づいて専門医が一人一人を解析し、個別に作成しているものです。

メディカルレポートでは、血液検査結果についての総合評価や解説、前回からの変化などが記載され、現在の身体の状態が分かります。また、栄養レポートでは、血液検査結果の分析に基づく栄養アドバイスが解説されており、どの栄養素をどのくらい摂ったら良いのかが解説されています。

このように、分子栄養学では栄養摂取前後のサポートや、摂取後の経過観察がありますが、一般的な栄養学ではこのような経過観察はありません。この点も分子栄養学と一般的な栄養学の大きな違いです。

そして、分子栄養学では、年齢や性別、身体活動の程度や病態の状態、消化吸収能の状態など個人差を考慮し、食事からの栄養摂取に加えてサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて必要な栄養素を摂取します。

対して一般的な栄養学では、主に食事から、欠乏症や生活習慣病の予防を目的として栄養を摂取します。この2つはそれぞれ目的も役割も異なることから、どちらが優れているとかではなく、お互いを上手く組み合わせて行っていく事が重要です。

ナンナン

栄養を摂るときは、ちゃんとその栄養素が使われているかどうかを定期的に調べていくことが大切なんだね。

はる かおる

そうそう。単に食事をしたりサプリメントを摂っただけでは、その栄養素がちゃんと使われているのか分からないからね。自分の状態を知るためにも、定期的に血液検査を受けることが大切だよ。

間違った分子栄養学の情報に注意!

近年、インターネットやSNSが発展したことから、健康に関する様々な情報が飛び交っています。分子栄養学においても、分子栄養学を学べるセミナーや講座が増えた事によって、これらを学んだ人達による情報発信が急激に増えてきました。

このような中で問題となってくるのが、間違った分子栄養学の情報です。分子栄養学の情報の中には間違った情報や、分子栄養学をしっかり理解せずに情報発信されたもの、独自理論を組み合わせたものや、自身の経験のみで語られた客観性、エビデンスのない情報なども発信されています。酷いものでは、全く分子栄養学でも何でも無いのに分子栄養学だと語られているものもあります。

例えば、以下のような情報は間違った分子栄養学の例です。

  • メガドーズ、メガビタミン療法
  • 食事内容の改善や、特定の食材を摂取するだけで至適量の栄養が得られ、病気が改善するとしているもの
  • この不調にはこの栄養素」といったように、単に不調の症状だけを元に栄養アプローチを行うもの
  • 海外サプリメント、単に安価なサプリメントなど、安全性、有効性が確認されていないサプリメントで分子栄養学の実践をおこなっているもの
  • 前駆体では無く、活性型の栄養素を用いているもの
  • ファスティングと分子栄養学を組み合わせるなど、独自理論が組み合わされたもの
  • 薬は一切使わない、栄養療法だけで病気が治るなど極端なもの
  • 病態や不調の根本原因を調べるための検査に誘導しないなど、栄養欠損となった原因をきちんと調べずに行っているもの
  • 医師免許を持たない者が、血液検査データを扱う、サプリメントを処方する、食事指導を行うなど、医療機関を通さずに分子栄養学の指導を行っているカウンセラー など

このような情報は間違った分子栄養学であり、実践することで病態や体調が悪化するなどむしろ命に関わる危険性があります。事実、当方にもこれら誤った情報を元に実践した方からの健康被害に関するご相談も増えてきました。

現代では個人がSNSで気軽に情報発信が出来る世の中になっています。このような時代だからこそ、間違った分子栄養学の情報にはくれぐれもご注意ください。

サプリメントを利用しなくても、食事だけで分子栄養学は実践できる?
食事から至適量の栄養を補給することはほぼ不可能です。

ここまで、一般の栄養学の違いと分子栄養学の違いについて解説してきました。一般的な栄養学では主に食事から栄養を摂取し、分子栄養学では分子栄養学実践専用サプリメントで栄養補給を行います。

ただ、人によっては「サプリメントなんか使わなくても食事だけで十分な栄養補給が出来るのでは?」と思いますよね。タンパク質は肉や魚から摂れますし、貧血改善に必要なヘム鉄も肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。

では、一般的な栄養学で行われているような食事内容を、個人個人に合わせて更に質を高めれば、至適量の栄養補給となるのでしょうか?

結論を先に言いますが、食事だけで分子栄養学を実践し、至適量の栄養素の補給を行うことはほぼ不可能です。
というのも理由としては主に4つあり、一つは食事で摂れる栄養素の量が少ないこと、もう一つは病気などによって消化能力が低下してしまった状態では十分に消化吸収出来ないこと、もう一つはむしろサプリメントよりも食事からの方がコストが高くなってしまうこと、最後の一つは毎日同じ物を食べ続けることで飽きが来たり食事の楽しみが無くなってしまうことが理由です。

例えば、タンパク質やヘム鉄ビタミンB群、亜鉛を多く含む食べ物として「赤身肉」や「レバー」があります。赤身肉のヒレやランプ、モモの部位には、100gあたり20gのタンパク質と、2.5mg程度のヘム鉄が含まれています。この肉を多く食べれば、十分にタンパク質もヘム鉄もビタミンB群も補給出来そうな気がしますよね。

肉から得られるタンパク質は損失量も考慮する。食品に含まれるタンパク質がそのまま得られるわけではない。
https://tamahari.com/3127/より

しかし、肉に含まれるタンパク質は、そのすべてが得られるわけではありません。牛肉に含まれるプロテインスコアは80と低く、これは牛肉に含まれるアミノ酸のバランスがあまり良くない事を表しています。

プロテインスコアとは、そのタンパク質の「良質度」のこと。この数値が高いほど、そのタンパク質の利用効率が高くなります。他に似た指標として「アミノ酸スコア」がありますが、こちらは必須アミノ酸がどれだけバランスよく含まれているかを表した物です。

肉からタンパク質を摂取する場合は、この利用効率に加えて、調理による損失も加わります。肉は加熱調理をして食べますので、一定量のタンパク質は損失してしまいます。これを加味すると、100gの肉を食べてもたった8gのタンパク質しか補給出来ない計算です。

また、肉に含まれるヘム鉄は肉汁(ドリップ)と共に流れ出てしまいます。特に煮物や茹でこぼしでは多く鉄分が溶出し、30分から1時間程度煮込むだけでおよそ30%〜50%ほどの鉄分が溶出してしまいます。肉に含まれるビタミンB群も水溶性ビタミンですので、加熱調理や煮込むことで大部分が失われます。食べ物の栄養損失は、思っている以上に大きいのです。

タンパク質は日々消費する。一日に必要な目安量は、体重(kg)×1〜1.5gが目安

この事を前提に、食事で必要な栄養を摂取するとしましょう。体重が60kgの成人が一日に必要なタンパク質の目安量は、その体重分の60gと言われています。仮に50kgの方なら50g必要です。また、貧血の人は一日あたり45mgのヘム鉄が必要になります。

もし体重が60kgの人が肉だけでタンパク質を補給しようとすると、およそ800gもの肉を毎日食べなければなりません。ヘム鉄に至っては、赤身肉100gあたり2.5g含まれているとすると、45mg補給するためにはおよそ一日2kgも必要になります。一日に800gや2kgもの肉なんて、到底食べる事は不可能ですよね。

加えて、これら摂取した肉がすべて消化吸収出来るとは限りません。消化管に問題や病気を抱えている方は、消化吸収能力が落ちてしまっている場合もあります。そうなると、摂取出来るタンパク質量やヘム鉄量は更に低いと考えられます。消化吸収能が落ちている場合は、摂取タンパク質の半分程度が消化吸収出来れば良い方で、場合によっては全く消化吸収出来ない可能性も高いです。

この消化できなかったタンパク質はそのまま小腸や大腸に流れ、悪玉菌のエサとなって腸内環境の悪化を招きます。消化吸収能力が低下している方が肉を大量に食べる行為は、むしろ体調が悪化してしまう原因にもなるのです。

そして、当然ながらこれら肉や食材にはお金がかかります。毎日肉を1kgも2kgも買えば、出費も相当な額になるでしょう。例えば、2023年一月の全国牛肉平均価格は100gあたり342円となっています。物価の高騰で徐々に値上がりしており、今後も値上がりが続くと思われます。この肉を毎日2kg購入するとなると、物価上昇の影響を考慮に入れなくても一日あたり6,840円の出費です。

これに家族分を加えたり、一ヶ月分まで算出すると、とてもじゃありませんが現実的ではありませんよね。購入した肉が問題なく消化吸収出来るならまだしも、消化吸収できない場合は便器にお金を棄ててしまうようなものです。そんなことを続けるのは、よほどお金に余裕がある人でも不可能だと思います。

また、毎日毎日肉を食べ続けるのは精神的苦痛も伴います。いくらレシピや食べ方を工夫しても、毎日食べていれば当然飽きてきます。食べたくもないのに健康のために食べ続けることは、もはや苦痛でしかありません。

加えて、食品から特定の栄養素を大量に摂取しようとした場合、必要ない栄養素の摂取量も多くなり、脂質の摂取量増加など逆に栄養バランスが崩れてしまう事も考えられます。食事だけで分子栄養学を実践しようとした場合、むしろ食事や栄養のバランスが崩れてしまうこともあり得るのです。

ですので、健康のために同じ物を毎日食べることはオススメしません。これでは人生自体がつまらなくなってしまいますし、逆に健康も害してしまいます。つまらない人生は余計にストレスを増大させ、自律神経の乱れや消化能力の低下を引き起こします。そんなつまらない人生を送るよりも、必要な栄養素は都度補いながら毎日の食事を楽しむようにしましょう。

毎日の食事を楽しみながら健康的に必要な栄養素を追加する手段としては、サプリメントを取り入れるのが最も手軽で簡単です。サプリメントなら、普段の食事に加えて摂取する事で、食事では摂れないような高容量の栄養素を摂取することが出来ます。それに、特定の栄養素をピンポイントで補給することが出来るため、必要ない栄養素を過剰に摂取してしまう心配もありません。

例えば、ヘム鉄のサプリメント1カプセルあたり5mgのヘム鉄が含まれていたとしたら、2カプセル飲むだけで牛の赤身肉400g程度に相当します。一回2カプセルを三食食後に飲むだけで、牛の赤身肉では1.2kg相当です。また、タンパク質をプロテインで摂った場合は、そのプロテインの質にもよりますが1回あたり20g~30g程度のタンパク質が手軽に摂取出来ます。

これは、牛の赤身肉で換算すると300g〜400g程度になります。サプリメントの場合は普段の食事に加えて摂取しますので、摂取出来る栄養素の量はこれだけではありません。そう考えると、サプリメントを必要に応じて取り入れることがどれだけ効率が良くコストパフォーマンスが良いかが分かって頂けるかと思います。

このように、食事だけで分子栄養学を実践することは、不可能ではありませんがオススメできません。大切なのは、食事だけ、サプリメントだけと偏るのでは無く、一般的な栄養学をベースに、その上で分子栄養学を実践するということです。

一般的な栄養学と分子栄養学を比べた場合、どちらが優れているとか劣っているなどと考えてしまいがちですが、この2つはそれぞれ目的も役割も異なっています。このため、どちらが優れているとかではなく、お互いを上手く組み合わせて行っていくようにしましょう。

つまり、一般的な栄養学に基づいてバランスの良い食事や栄養摂取を心がけ、それでも足りない栄養素を分子栄養学的アプローチによって補っていくという考え方です。サプリメントは食事ありきで摂取するものですので、ベースにバランスの良い食事が無ければサプリメントを摂っても意味を成しません。また、先ほど解説したように食事だけで個人個人に必要な栄養素を摂取することはほぼ不可能です。

なるべくサプリメントを使いたくないという方の意見や気持ちも分かりますが、サプリメントも食品成分から作られた安全なものであれば食事から摂取することとほぼ同じです。食事とサプリメント、一般的な栄養学と分子栄養学は、目的に応じてそれぞれ上手く組み合わせて行っていきましょう。

ナンナン

うひゃ〜、食事だけで分子栄養学を実践しようとすると、逆に身体に悪そうだしお金もかかりそうだね💦

はる かおる

食事だけで必要な栄養素を摂ろうとすると、むしろ必要ない栄養の摂取量も多くなって健康を害する可能性もあるね。サプリメントは見た目から薬みたいに見えるけど、ちゃんと作られたサプリメントなら食品と変わらないよ。特定の栄養素をピンポイントで補給することが出来るから、バランスの良い食事と合わせて必要なサプリメントを摂取するのが良いね。

食事には、栄養学だけでは量れないもっと大切なものが含まれている

そして、この際には栄養価以外のものにも目を向けてほしいと思います。栄養価以外のものというのは、その食品の歴史や製法、技術や生産者さんのこだわり、想いなど、その食べ物が持っているカルチャー(文化)のようなものです。

栄養学や分子栄養学を学ぶと、どうしても食品に含まれる栄養素の量や質だけで食品の優劣を判断しがちになります。すると、お店で何か食品を選ぶ際には、「こっちの食べ物よりこっちの食べ物の方が栄養価が高いからいいものだ」というように、栄養価や質だけでものの善し悪しを判断するようになってしまうのです。

また、あまりにも健康を追求するあまり、糖質や脂質が多い料理など身体に悪そうな食べ物は毒物だというような認識になったり、栄養価が高いと思われる食事や、健康に良いと思われる食品だけに偏ってしまう場合もあります。

このような偏った食事になってしまった場合、一見するとたくさんの栄養が摂れて健康そうに見えるかも知れません。しかし、肝心の「心の栄養」として見た時はどうでしょう?

それは本当に人間らしい食事といえるのでしょうか? また、その食事に人間的な成長機会は得られるのでしょうか?

食事をするときは、栄養素だけにとらわれず、その食品の歴史や伝統、製法など、カルチャー(文化)も大切にしてほしいと思います。

例えば、日本では昔から味噌を食べる習慣がありますよね。味噌は日本中の様々な地域で造られており、それぞれ特色があります。そこには歴史や伝統、原材料、製法の違い、味、見た目や香りの違いなど様々です。

そして、そこには生産者さんのこだわりや想い、技術など栄養価だけでは量れないものがあります。このような目に見えないものも意識して食べてこそ、人間が人間たる証であり、人間的な成長や学びが得られるのではないでしょうか。

もし、味噌に含まれる栄養価だけを比べて、こちらの味噌の方が栄養価が高いからそれしか食べないとか、栄養価が高い食べ物は善で、低い食べ物は悪のような考えになってしまっていたら、いくら肉体的には健康だとしても、人間的な心としては不健康です。

これでは食品の歴史や文化などの学びに触れる機会も失われてしまいますし、食事の多様性や楽しみ、人間的な成長機会や感謝の心も失われてしまいます。栄養価だけを重視してこのような学びや楽しみ、感謝の心が失われてしまうのは、残念でなりません。

このような残念な状態に陥らないためにも、食事をするときは食品のカルチャー(文化)や感謝の心も大切にするようにして下さい。

具体的には、一般的な栄養学をベースに、食べ物の歴史や生産者の思いなどカルチャーも一緒に触れて食べる。食べたこと無いものや見たことのないものを積極的に食べて、その食事の歴史や文化を学ぶ、楽しむ。作ってくれた人や、生き物の命を頂いていることに感謝する。そして、足りない栄養素は分子栄養学アプローチによってサプリメントで適切に補給する。

このように、食事を楽しみながら必要な栄養素も補給し、人間的な成長や学びも得ていきましょう。人間としての心を養っていくことも、健康の一部です。

栄養学や分子栄養学を実践する際は、栄養価だけに捕らわれず、目に見えない心の栄養にも目を向けて実践して頂きたいと思います。

ナンナン

栄養療法を実践するときは、感謝の心を持って頂くことも大切なんだね

はる かおる

そうだよ。それ以外に食事を通じて歴史や文化、生産技術、生産者の想いなど人としての心を養っていくことも大切だね。あまりにも栄養価だけに偏った見方をしていると、大切なものが見えなくなってしまうよ。それだと真の健康とは言えないから、栄養学や分子栄養学を行うときは栄養価以外の面も一緒に頂くようにしてね。

分子栄養学と一般的な栄養学の違いとは? それぞれの違いと役割について解説まとめ

以上が、一般的な栄養学と分子栄養学の違いでした。

一般的な栄養学は、主に「この栄養が足りないとこんな病気になるので、その病気にならないようにこの栄養素を十分に摂りましょう」というのが一般的な栄養学です。主に、食事から必要な栄養を摂取し、欠乏症の予防や生活習慣病の予防を目的としています。

対して分子栄養学は、生体内の分子の乱れ(栄養素)を整える事により、病気の予防や改善を図る療法です。主に血液検査によって個人差を判断し、分子栄養学実践専用サプリメントを用いて栄養補給を行います。

この時、分子栄養学では、それぞれの消化吸収能力を考慮したり、病態を考慮したりと、個人個人に合わせた最適な栄養アプローチ(至適量)を行います。この至適量の栄養アプローチを行うか否かが、一般の栄養学と分子栄養学との最大の違いです。

もし、分子栄養学に興味ある方は、是非分子栄養学を学んで実践してみて下さい。分子栄養学については、ここで解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。

分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「KYBクラブ」「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。

KYBクラブについては、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で入会方法などをご案内しておりますので、ご興味ある方は是非ご覧下さい。

※当サイトは分子栄養学の普及を目的に、個人が独学で学んだ情報を発信しているサイトです。情報の正確性には配慮しておりますが、サイトに記された情報については、必ずしも正確性を保証するものではありません。また、サイトに示された表現や再現性には個人差があり、必ずしも利益や効果を保証したものではございません。
※当サイトは、薬機法を遵守して運営しています。記事内容や表現において何かお気づきの点が御座いましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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これを読む前に分子栄養学を実践するのは危険です❗

世の中には、たくさんの健康情報が溢れています。
「この症状にはこのサプリメントを飲むと良い」「この不調にはこの食べ物がいい」
様々な情報が発信されているにもかかわらず、実際に不調が改善されていない人が多いのは何故でしょうか?

それは、現在のネット情報では個体差を考慮していない表面的な情報しか手に入らないからです。例えば、ネット上に書かれているオススメの食事内容が、あなたにとって消化吸収出来る最適な食事とは限りません。また、オススメされている栄養素をサプリメントで摂ったとしても、そのサプリメントがきちんと消化吸収、利用出来る分子構造で製造されているとは限りません。

分子栄養学においても同じで、現在では「なんちゃって分子栄養学」と呼ばれるいい加減な情報発信が多くされています。

分子栄養学・オーソモレキュラー療法を効果的に、かつ安全に実践するためには、このような間違った情報を排除し、正しい分子栄養学の知識を身につけることが重要です。また、栄養やサプリメントの知識以外にも、栄養療法を成功させるためには、栄養療法に対する考え方や取り組み方、生き方などの改善も欠かせません。

このメルマガでは、分子栄養学に関する正しい知識はもちろん、栄養療法を行う上でのコツや考え方、ココでは解説しきれなかった事、記事では公開できないような内容を配信しています。

これから分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する方にとって、成否に関わる非常に重要な情報となっていますので、ご興味のある方は是非ご購読下さい。

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この記事を書いた人

はる かおるのアバター はる かおる 分子栄養療法ナビゲーター ディレクター

春木 敏徳(はる かおる)
分子栄養療法ナビ(このサイト)の管理人のはる かおるです。
現在は「字が書けないライター」兼、KYBクラブのディレクターとして活動しています。

僕自身、発達障害の一種である「書字障害」を抱え、幼少の頃から両親からの虐待や学校でのいじめなど、数々の困難や体調不良を経験してきました。
育った環境の悪さから18歳頃からうつ病を発症し、その後10年近く精神薬での治療を行っています。また、他にも小・中・高校生時代は朝起きられず、殆ど学校にも行っていません。

今では「あれは起立性調節障害だったな」と思えるのですが、当時はそのような病気の認識は殆どありませんでした。そのため、非常に風当たりの強い中、幼少時代を過ごしてきています。

また、幼少期から続く極度の栄養失調により、低血糖症や甲状腺機能低下症、SIBO、リーキーガット症候群、副腎疲労、脂肪肝など様々な病気を経験しました。現在では分子栄養学に出会ったことで体調も大きく回復しており、これら病気の改善に必要な知識も豊富です。

インターネットの登場によって間違った分子栄養学も広まってきており、それによって体調を崩してしまう人も多くなってきています。このような中、分子栄養療法ナビ(このサイト)や情報発信を通じて、多くの人に正しい分子栄養学が広められるよう現在も奮闘中。

得意とする分野
うつ病、発達障害、ADHD、起立性調節障害、貧血、不妊症、ガン、甲状腺機能障害、ピロリ菌感染症、SIBO、リーキーガット症候群、低血糖症、副腎疲労、脂肪肝、ダイエット、更年期障害、PMSなど。全般的に幅広い知識を有する。

ほか、文章を書くのが得意で、ライティングやマーケティング、投資などお金に関する知識や生き方に関するアドバイスも得意。

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