鉄分とは? 鉄分の働きと鉄代謝の基本、鉄欠乏性貧血に対するアプローチを分子栄養学的観点から解説
「めまい、立ちくらみがする」「息切れがひどい」「朝起きられない」「疲れやすい」「寒がり、冷え性」などの症状は、もしかしたら鉄分不足が原因かもしれません。鉄は、血液中の成分である赤血球やヘモグロビンの材料となって、全身に酸素を運んでいます。鉄が不足すると、全身のエネルギー不足や酸欠を招き、様々な不調へと繋がってしまう原因です。
今回は、この鉄の基本についてと、鉄がどのように吸収・代謝されているのか、鉄欠乏性貧血を含めた貧血に対する分子栄養学的アプローチを解説します。
鉄分とは
うぅぅ・・・
何だかふらふらする・・・💧
ナンナン、どうしたの❓
じつは、最近調子が悪くって💧
朝起きられないし、疲れやすいし・・・
オマケに、ちょっとしたことでイライラしちゃうんだ
うーん・・・
何が原因だろうね。もしかして貧血かな。
貧血?
うん、貧血は赤血球やヘモグロビンの濃度が下がりすぎて様々な不調が引き起こされる症状だよ。
なるほど・・・💧
でも、どうして貧血だって分かるの❓
そうだね。たしか、ナンナンってここ最近ずっと野菜ばっかり食べてなかったっけ❓
うん、実は健康のためにお肉は減らして野菜を多く摂るようにしているよ。ダイエットにも良いって効くし、やっぱりお肉の摂りすぎは身体に悪いからね。
あー原因はそれだね、ナンナン。
お肉を食べる量を減らして野菜を多くすると貧血になりやすくなるんだ。
えぇっ!!
お肉を食べる量を減らすと貧血になりやすくなるの❗❓
ちゃんと鉄分も摂れるようにプルーンとかほうれん草もしっかり食べてたのにどうして❓❓
実は鉄分にも種類があって、吸収されやすい鉄分もあれば吸収されにくい鉄分もあるんだ。お肉に含まれる鉄分は吸収されやすくて、野菜に含まれる鉄分は吸収されにくいんだよ。
ナンナンの貧血改善のためにも、このあたりもっと詳しく教えて上げるね。
鉄は、肉や魚・野菜などに含まれる栄養素(ミネラル)です。人の身体には成人でおよそ3~5gほど存在し、酸素の運搬や脳の神経伝達物質の合成など、体内でとても重要な働きをしています。
また、鉄はカビなどの細菌や植物、動物などあらゆる生き物(乳酸菌以外)に必要であると考えられていて、人の腸内にも生息しているカンジダ菌の餌になる事も知られています。
鉄分の種類と吸収経路の違い
鉄分には大きく分けて肉や魚などに含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀類に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
非ヘム鉄は豆類や葉物類に多く含まれ、その中でもほうれん草に多く含まれていることは有名です。もう一つのヘム鉄では、豚レバーや鶏レバーなど肝臓の部分に多く含まれるほか、牛肉などの赤身肉、カツオやマグロなどの赤身肉にも多く含まれています。
非ヘム鉄が多い食品 | ヘム鉄が多い食品 |
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(可食部100g当たりの含有量) レンズ豆(全粒・ゆで)……4.3mg 納豆……3.3mg 小松菜……2.8mg 枝豆……2.7mg ひじき(鉄釜・ゆで)……2.7mg 厚揚げ……2.6mg サラダ菜……2.4mg そら豆…………2.3mg 水菜…………2.1mg ほうれん草…………2.0mg ※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成 | (可食部100g当たりの含有量) 豚レバー(生)……13.0mg 鶏レバー(生)……9.0mg 赤貝(生)……5.0mg 牛レバー(生)……4.0mg 牛肉(生・赤身)……2.8mg めざし(生)……2.6mg 砂肝(生)……2.5mg まいわし(生)……2.1mg かつお(生)……1.9mg まぐろ(生・赤身)……1.8mg ※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成 |
このヘム鉄は主にヘモグロビンやミオグロビンなどいわゆる血液成分や筋肉組織に含まれている鉄分のことで、吸収率が10%〜30%と高いことが特徴です。対して非ヘム鉄は鉄そのものの状態であり、植物に含まれるものや鉱物に含まれるものなどがあります。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて、吸収率が低くなっています(5%以下)。
これら二つの鉄分の吸収率が異なる理由は、ヘム鉄と非ヘム鉄でそれぞれ吸収経路が異なることが挙げられます。鉄分は小腸粘膜の上皮細胞で吸収されており、ヘム鉄はヘム鉄専用の吸収経路である「ヘムトランスポーター」から吸収されています。この専用の吸収経路から効率的に吸収されることで、ヘム鉄は非ヘム鉄よりも効率的な吸収が可能になっています。
対して非ヘム鉄では、亜鉛や銅など他のミネラルと同じ吸収経路である「DMT1」という経路を使って吸収されています。この吸収経路は亜鉛や銅など他のミネラルと同じ吸収経路となっているため、例えば亜鉛を大量に摂取するなどした場合、鉄の吸収が阻害されてしまうことがあります。
また、非ヘム鉄には「二価鉄」と「三価鉄」があり、二価鉄をFe2+、三価鉄をFe3+と言います。野菜や穀類に含まれる鉄分は三価鉄のFe3+が殆どで、体内では一度二価鉄のFe2+に変化させてから吸収されています。
なぜ三価鉄のFe3+から二価鉄のFe2+へ変化させる必要があるかというと、鉄の吸収経路であるDMT-1は、二価鉄のFe2+のみしか結合して輸送できないためです。三価のFe3+の状態では非常に安定しおり、そのままの状態ではDMT-1と結合させて輸送することが出来ません。
そのため、野菜や穀類に含まれるFe3+の非ヘム鉄を吸収する際には、ビタミンCの助けや小腸粘膜から分泌される鉄還元酵素によって二価鉄であるFe2+に還元されて吸収されています。この過程が必要な事から、非ヘム鉄はヘム鉄と比べて非常に吸収効率が悪くなっています。
加えて、非ヘム鉄は鉄そのもののため、一緒に食べた食べ物の影響も受けやすくなっています。特に影響を受けやすいものとしては、野菜や海藻に含まれる「食物繊維」、コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれる「タンニン」、玄米や豆類などに含まれる「フィチン酸」などがあります。これらは非ヘム鉄と結合して吸収を妨げてしまう作用があるため、注意が必要です。
とは言え、野菜や海藻、豆類など食物繊維が含まれる食べ物については、過剰に避ける必要はありません。食物繊維は、腸内に存在する「大腸菌」「酪酸菌」「乳酸菌」「ビフィズス菌」などの餌となり、これらが産生する酪酸や酢酸、プロピオン酸などの有機酸(短鎖脂肪酸)が鉄やマグネシウム、カルシウムや亜鉛などミネラルの吸収を助けてくれる効果があります。
また、これら短鎖脂肪酸は酸性の成分なので、短鎖脂肪酸が出来ると腸内環境を弱酸性に傾けてくれます。腸内環境が弱酸性に保たれていると、カンジダ菌など有害菌の増殖を抑えたり、有害菌の出す酵素活性を抑えてくれたりするなど、様々なメリットがあります。
逆に食物繊維の摂取量が少ない場合や短鎖脂肪酸の産生量が少ない場合は、腸内環境がアルカリ性に傾いてカンジダ菌など有害菌が増殖しやすくなってしまいます。カンジダ菌はカビ菌の一種で、鉄を餌にして増殖する菌です。これら有害菌が多いと鉄の吸収が妨げられたり、有害菌が出す毒素によって腸粘膜にダメージを受けたりしてしまうことがあります。
食物繊維はデメリットよりもメリットの方が大きい栄養素ですので、不足しないよう十分な量を摂るようにしましょう。
他に非ヘム鉄の吸収を助けてくれるものとしては、果物に含まれる「ビタミンC」や牛乳・ヨーグルトなどに含まれる「カゼインホスホペプチド(CPP)」、肉や魚などの「タンパク質(アミノ酸)」があります。非ヘム鉄を摂取する際は、これらと一緒に摂ると効果的です。
鉄の吸収を助けてくれるもの | 鉄の吸収を妨げるもの |
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カゼインホスホペプチド(CPP) ビタミンC タンパク質(アミノ酸) 短鎖脂肪酸(食物繊維) | 食物繊維(野菜、海藻類など) タンニン(コーヒー、紅茶、緑茶等) フィチン酸(玄米、豆類など) リン酸塩(加工食品に多い) |
ヘム鉄の場合はこれら吸収を阻害する物質からの影響を受けにくいため、特に気にする必要はありません。また、鉄をエサにする有害菌にとっても、ヘム鉄(トランスフェリン・ラクトフェリンを含む)よりもFe2+やFe3+などの遊離鉄の方が利用しやすい傾向があります。
そのため、非ヘム鉄は有害菌のエサになりやすい傾向にありますが、ヘム鉄は有害菌のエサになりにくい傾向があります。このような違いも、ヘム鉄と非ヘムとで吸収率が異なる理由です。
なるほど❗
鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があって、それぞれ含まれている食べ物や吸収率が違うんだね❗
そうだね。だから、菜食主義など肉を食べない人は鉄の吸収が悪く、貧血になりやすいと言われているんだ
ヘム鉄の基本構造
ヘム鉄と非ヘム鉄では、吸収率の違い以外にも分子構造的な違いがあります。ヘム鉄ではタンパク質で出来たカプセルのようなものに鉄分子が入っているのに対し、非ヘム鉄ではこのようなカプセルには入っておらず、鉄分子がむき出しの状態となっています。
具体的には、ヘム鉄はタンパク質の一種である「アミノレブリン酸(5-ALA)」が8つ集まって出来た「プロトポルフィリン環」の真ん中に二価鉄という鉄分子が包まれて出来ています。これは、私達の血液中や筋肉中に存在するヘモグロビンやミオグロビンに含まれる鉄分と同じ構造です。
私達が肉や魚から摂取したヘム鉄は、ヘムトランスポーターで吸収された後に「ヘム分解酵素」によってポルフィリン環が分解され、中の鉄分子が取り出されて利用されています。勘違いされやすい部分なのですが、摂取したヘム鉄がそのまま血液として利用されているわけではありません。
そして、この取りだした鉄分子を利用して血液を作るためには、体内で「ポルフィリン環」を再度作る必要があります。このポルフィリン環を作る材料となるのが、「アミノレブリン酸(5-ALA)」です。
この「アミノレブリン酸(5-ALA)」は「グリシン」というアミノ酸や「スクシニル-CoA」と呼ばれる有機化合物を材料に合成されています。更に、このアミノレブリン酸からポルフィリン環を作るためには、亜鉛を含む酵素の働きによって作られています。
そのため、私達の血液の材料となるポルフィリン環を作るためには、グリシンを始めとしたタンパク質とビタミンB6、亜鉛が必要になります。鉄分を摂取する際は、タンパク質を始めビタミンB群と亜鉛も同時に摂取することが大切です。
ヘム鉄はこのような構造から非ヘム鉄に比べて非常に安定性が高く、タンニンやフィチン酸など鉄吸収を妨げてしまう食べ物の影響を受けにくくなっています。対して「非ヘム鉄」は、このポルフィリン環に包まれていない鉄分子そのものの状態のため、タンニンやフィチン酸、食物繊維などの影響を受けやすくなっています。
サプリメントの鉄と病院で処方される鉄分の違い
鉄分には、食品に含まれている以外にもサプリメントや薬に含まれているものもあります。主な物としては、病院で処方されている鉄剤や、海外サプリメントの「アミノ酸キレート鉄(フェロケル)」などがあります。
病院で処方される鉄剤は「非ヘム鉄」
鉄剤は、主に「鉄欠乏性貧血」と診断された場合に処方されています。特に「フェロム」や「フェロミア」が処方されること多く、これら鉄剤はすべて「非ヘム鉄」になります。
鉄剤には大きく分けてクエン酸やフマル酸などの有機酸と結合した「有機鉄(キレート鉄)」と、有機酸と結合していない「無機鉄」があります。有機酸と結合した有機鉄は吸収が高く、胃腸障害などの副作用は発生しにくいとされています。
もう一つの無機鉄の場合は、有機鉄と比べて吸収率が低く、胃腸障害などの副作用が発生しやすいと言われています。
病院で処方される非ヘム鉄の例
- フェロム (フマル酸第一鉄) 有機鉄
- フェロミア (クエン酸第一鉄) 有機鉄
- リオナ (クエン酸第二鉄) 有機鉄
- インクレミンシロップ (溶性ピロリン酸第二鉄) 有機鉄(食品添加物としても使われる)
- フェロ・グラデュメット(硫酸第一鉄)無機鉄 発色剤の一種。食品添加物としても使われる。
また、鉄剤には「第一鉄」の「第二鉄」の2種類があります。これは鉄イオンの状態を表していいて、第一鉄が二価鉄のFe2+、第二鉄が三価鉄のFe3+です。何だか難しい話しですが、簡単に言えば鉄が元気をちょっと失った状態(電子2個分)が第一鉄であり、二価鉄やFe2+と表されます。
第二鉄は鉄が元気をもっと失った状態(電子3個分)で、三価の鉄やFe3+と表されます。二価や三価は、失った元気(電子)の数だと思ってください。この二価の鉄が酸素と反応すると、酸素が二価の鉄から元気(電子)を1つ奪っていきます。すると、二価の鉄は元気(電子)をさらに1つ失って、三価の鉄になります。逆に、三価の鉄がビタミンCや水素などによって元気(電子)1つ受け取ると、ちょっと元気になって二価の鉄になります。これを酸化還元反応と言います。
先ほども解説した様に、二価鉄と三価の鉄は、この違いから二価の鉄は水に溶けやすく、腸から吸収されやすい性質を持ちます。逆に、三価の鉄は水に溶けにくく、腸から吸収しにくい性質があります。
第一鉄である「フェロム」や「フェロミア」は二価の鉄が含まれていることから、比較的吸収は良いとされています。対して第二鉄が含まれる「リオナ」は、三価の鉄が含まれているため、第一鉄と比べて吸収率はあまり良くありません。有機酸と結合していない無機鉄の「フェロ・グラデュメット」は更に吸収率が下がります。
また、鉄の吸収を行うためには三価鉄のFe3+から二価鉄のFe2+に変換(還元)する必要がありますが、この時には多量の活性酸素(フリーラジカル)が発生します。この活性酸素は、その活性から胃や腸の細胞膜を傷つけ、細胞膜障害を引き起こして様々な疾患に繋がる原因です。
特に無機鉄の鉄剤や第二鉄の鉄剤を摂取した場合にフリーラジカルが発生しやすく、これによって胃粘膜や腸粘膜が傷つけられ、胃がムカムカするなどの副作用を起こしやすくなる問題を抱えています。そのため、分子栄養学及びオーソモレキュラー療法では、これら鉄剤の摂取は非推奨となっています。
アミノ酸キレート鉄(フェロケル)の構造と吸収
アミノ酸キレート鉄とは、本来吸収効率の悪い鉄(二価鉄)を「グリシン」と呼ばれるアミノ酸でサンドイッチ(キレート加工)する事で、飛躍的に吸収効率を高めた鉄サプリメントです。正式名称は「ビスグリシン酸第一鉄」といい、「フェロケル」は米国・アルビオン社の登録商標です。鉄剤と同様、非ヘム鉄になります。
アミノ酸キレート鉄は天然界には存在しない成分であり、日本では食品として認められていません。そのため、日本では製造、販売がされておらず、主に米国を中心とした海外で販売されています。
アミノ酸キレート鉄の吸収経路としては、胃酸によってグリシンと鉄分子(Fe2+)が切り離される「イオン化」が起こり、その他の非ヘム鉄と同様に「DMT-1」から吸収されます。このため、胃酸分泌の低下している方、制酸剤を服用している方では、ビスグリシン酸第一鉄のイオン化がおこらず、吸収率が低下する可能性があります。
また、DMT-1は鉄以外にも亜鉛や銅などのミネラルと共通の吸収経路です。非ヘム鉄以外にも亜鉛や銅などを多量に摂取した場合には、吸収経路が競合し、吸収率が低下すると考えられます。
一方で、小腸内には鉄をエサとする腸内細菌が一定数存在し、小腸粘膜で吸収される前にこれらの腸内細菌がアミノ酸キレート鉄を含む非ヘム鉄を奪い取ることがあります。この場合、腸内細菌に鉄が奪われた分だけ小腸粘膜で吸収出来る鉄の量が減少します。また、鉄をエサとして腸内細菌(有害菌)が増殖した場合、有害菌の出す毒素によって下痢や不快な胃腸症状が増強することもあります。
ただし、アミノ酸キレート鉄の吸収経路に関しては、上述したイオン化後にDMT-1から吸収する以外にも、グリシンと結合したまま小腸粘膜の上皮細胞にある「アミノ酸の吸収経路」から吸収されているという説もあります。
アミノ酸キレート鉄は、多量に摂取した場合や長期間漠然と摂取した場合に、体内の貯蔵鉄である「フェリチン値」が大幅に上昇する事例が散見123されており、フェリチン値は炎症反応でも上昇することから、鉄過剰摂取による炎症反応である可能性が考えられています。
通常、体内で鉄が足りている場合には小腸粘膜からの鉄吸収が抑制され、鉄の過剰摂取にはならないよう調節する仕組みが備わっています。これにより、ヘム鉄や非ヘム鉄を取り過ぎたとしても、吸収されずに便から排泄されるため、過剰摂取に至ることは希です。
しかし、アミノ酸キレート鉄を長期間、多量に摂取した場合は貯蔵鉄である「フェリチン値」が大幅に上昇する事例が散見されることから、この調節機構を無視して「アミノ酸の吸収経路」から吸収されているとも考えられています。一般的にフェリチン値は高くても150〜200ng/ml程度であり、これ以上フェリチンが大幅に上昇した場合は、何らかの炎症が発生している可能性が考えられますので、注意が必要です。
うーん、何だか難しい話しだけど、鉄剤とアミノ酸キレート鉄は摂り過ぎると良くないんだね💧
そうだね、非ヘム鉄は取り過ぎると活性酸素を発生させて細胞にダメージを与えてしまう可能性があるよ。だから、分子栄養学では鉄剤やアミノ酸キレート鉄の使用は非推奨となっているんだ。
鉄の貯蔵と運搬
小腸粘膜の上皮細胞にあるDMT-1もしくはヘムトランスポーターから吸収された鉄は、貯蔵鉄である「フェリチン」として貯蔵されるほか、血管内に吸収され、鉄を運ぶ専用のトラックである「トランスフェリン」と結合して全身の必要な細胞に運ばれています。
トランスフェリンは鉄を結合し、血液中を安全に輸送するためのタンパク質です。DMT-1もしくはヘムトランスポーターから吸収された二価鉄のFe2+は、一度三価鉄のFe3+に変換された後、トランスフェリンと結合し、全身の必要な細胞に運ばれます。
鉄と結合したトランスフェリンを「血清鉄(Fe)」と言い、鉄と結合していないトランスフェリンを「不飽和鉄結合能(UIBC)」と言います。この血清鉄と不飽和鉄結合能を足したものが、「総鉄結合能(TIBC)」です。
鉄が不足した場合には空のトランスフェリンである「不飽和鉄結合能(UIBC)」が上昇し、鉄と結合したトランスフェリンである「血清鉄(Fe)」が減少します。また、慢性炎症性疾患や高度なタンパク質不足の状態では、「血清鉄(Fe)」「不飽和鉄結合能(UIBC)」「総鉄結合能(UIBC)」が低下します。
トランスフェリンは体内で最も代謝回転の速いタンパク質の一つであるため、トランスフェリンや総鉄結合能(TIBC)はタンパク質栄養状態の指標の一つとなっています。
もう一方のフェリチンは、鉄を結合し細胞内で鉄を安全に貯蔵するためのタンパク質です。鉄はタンパク質と結合していない状態では酸化して活性酸素を発生させてしまうため、細胞内では必ずタンパク質と結合して運搬、貯蔵されています。
トランスフェリンと同様、DMT-1もしくはヘムトランスポーターから吸収された二価鉄のFe2+は、一度三価鉄のFe3+に変換された後、一時的にフェリチンタンパク内に貯蔵されます。その後、必要に応じてフェリチンタンパク内から鉄が取り出され、血管内に吸収された後はトランスフェリンと結合して全身の必要な細胞に運ばれています。
また、フェリチンは小腸粘膜の粘膜以外にも様々な組織に存在し、主に肝臓やすい臓、骨髄に多く存在しています。血液中のトランスフェリンと結合した鉄は、必要に応じてこれら組織の細胞に届けられ、細胞内でフェリチンとして貯えられます。
細胞内に貯蔵されたフェリチンは一定の割合で溶け出すことから、血液検査では「血清フェリチン値」として測定されています。血清フェリチン値は、鉄欠乏性貧血の指標としてや、鉄補給による治療の経過観察マーカーとして極めて有用な値となっています。
ただし、炎症や脂肪肝、感染症においては鉄の利用障害が起こることから血清フェリチン値が上昇します。フェリチン値の上昇は、単に鉄の充足を表すだけでは無い点には注意が必要です。
鉄欠乏性貧血の場合 | 慢性炎症に伴う貧血 | |
---|---|---|
フェリチン | 低下する | 上昇傾向 |
Fe | 血清鉄低下する | 低下する |
TIBC | 総鉄結合能上昇する | 低下する |
MCV | 低下する | 低下する |
CRP | 正常範囲 | 上昇する |
ふむふむ、鉄を運ぶタンパク質と鉄を貯蔵するタンパク質があるのか。貧血といえば赤血球やヘモグロビンの低下ってイメージだけど、貧血の場合はこれらも低下するんだね
そうそう、鉄を運んだり貯蔵するためにはタンパク質が必要だから、タンパク質が不足している場合も貧血になる事があるんだ
鉄の働き
鉄は、成人の体内に3〜5g存在すると言われており、とても重要な働きをしています。主なものとしては、血液の主成分である赤血球やヘモグロビンの材料となって全身に酸素を運ぶ役割のほか、神経伝達物質の合成やエネルギー代謝に関わるなど多岐にわたります。これら機能を維持するためには鉄が必要なため、人間の身体は鉄なしでは機能することが出来ません。
主な鉄の働き
- 赤血球・ヘモグロビンの材料となり、酸素を全身に運ぶ
- 活性酸素を除去する
- 補酵素としてエネルギー代謝に関わる
- コラーゲン合成に関わる
- 神経伝達物質の材料となる
鉄の働き①赤血球の材料となり、酸素を全身に運ぶ
鉄は、体内でヘモグロビンや赤血球の材料となり、酸素を全身の細胞に運ぶ役割をしています。
ヘモグロビンは先ほど解説した「ヘム鉄」と「グロビン」というタンパク質が結合して構成されていて、ヘム鉄とグロビンが合わさった物である事から「ヘモグロビン」と呼ばれています。ヘモグロビン濃度は成人男子で14~17g/dL、成人女子で12~15g/dLほど血中に含まれています。
赤血球はこのヘモグロビンを多く含んでいる細胞で、血液を構成する細胞成分の一つです。血液全体の約40~50%を占め、男性では1μLあたり約500万個、女性では約450万個存在します。
赤血球の主要な役割である酸素運搬は、主にこのヘモグロビンによって行われています。鉄は酸素と結びつきやすいことはご存じですよね。ヘモグロビンには鉄が含まれており、この鉄に酸素を結びつけることで全身に運搬する重要な働きを担っています。血液が赤く見えるのは、赤血球に含まれるヘモグロビンによるものです。
血液中に流れる赤血球は、肺胞で酸素を受け取ると各組織へ運び、そこで酸素を放出します。その後は、組織から出た二酸化炭素を受け取り、肺胞まで運ばれて呼気中に排泄されます。
これらヘモグロビン濃度や赤血球の数が少なくなった状態が貧血です。赤血球の数は、男性で400万/μl、女性で350万/μlより低値のとき、貧血と診断されます。貧血になると脳が酸素不足になり、立ちくらみ、めまい、失神など様々な症状が起こります。
逆に、男性で650万/μl、女性で600万/μlより高値のとき、多血症と診断されます。多血症とは血液中のヘモグロビンや赤血球の量が基準値よりも多くなって血液の粘り気が増す病気で、顔面の紅潮やめまい、頭痛など、貧血と同じような症状が出ることがあります。
鉄の働き②活性酸素を除去する
鉄は、酸素を運搬するヘモグロビンや赤血球の材料となる以外にも、活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素とは、体内に取り込まれた酸素の一部が化学的に変化し、活性が高くなったものです。活性酸素は体内に少量存在していて、免疫機能やシグナル伝達などの重要な役割を果たしています。しかし、活性酸素が体内で過剰になると、細胞やDNAを傷つけ、老化や病気の原因になるなど人体に悪影響を及ぼすと考えられています。
体内では様々な働きによって過剰な活性酸素が除去されていますが、その中に「カタラーゼ」と「ペルオキシターゼ」という抗酸化酵素があります。この2つは鉄を材料に作られていることから、鉄には活性酸素を除去する働きがあります。
「カタラーゼ」は、主に過酸化水素を分解する酵素です。過酸化水素は、活性酸素の中でも特に強い毒性を持つ分子で、不安定である事から様々な物質と反応しやすい性質があります。もう一つの「ペルオキシターゼ」は、過酸化水素やヒドロペルオキシルラジカルなどの活性酸素を除去する酵素で、グルタチオンと呼ばれる物質と協力して働きます。
もし体内で鉄が不足すると、カタラーゼやペルオキシターゼなどの酵素の働きが低下し、活性酸素による細胞やDNAのダメージが蓄積しやすくなります。その結果、老化が促進されたり、がんや動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まったりすることが分かっています。
鉄の働き③補酵素としてエネルギー代謝に関わる
鉄は、全身に酸素を運ぶためのヘモグロビンの材料して使われる以外にも、ATPを生み出すための代謝に関わる補酵素として使われています。
ATPとは細胞の中にあるミトコンドリアが作り出す「エネルギーの素」のことで、私達の身体はこのATPを利用することで筋肉を動かしたり体温を維持したりしています。
具体的には、私達が食べた糖質や脂質、タンパク質などは胃で消化され、小腸で吸収された後に血液中にのって全身へと運ばれます。全身へと運ばれた栄養素は細胞内のミトコンドリアへと運ばれ、ミトコンドリアがこれら栄養素を利用してエネルギーの素であるATPを産生しています。
このミトコンドリアがATPを生み出すためには、鉄分を始めとしたミネラルやビタミンB群などが必要です。そのため、鉄不足の場合はミトコンドリアがエネルギーを作る事が出来なくなってしまい、不定愁訴に繋がる恐れがあります。
また、鉄分から作られるヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割も担っています。ミトコンドリアがエネルギーを産生するときには、この酸素も欠かせません。酸素が不足してしまうと、更にエネルギー産生能力が低下し、糖のエネルギー利用や糖代謝が更に低下してしまうことに繋がります。
このように、鉄はミトコンドリアがATPを生み出すための補酵素として使われているほか、ミトコンドリアに酸素を届ける働きも担っています。どちらも体内でエネルギーを作るために鉄が関わっているため、エネルギー産生には鉄が不可欠です。
鉄の働き④コラーゲン合成に関わる
鉄は、補酵素としてコラーゲン合成にも重要な役割を果たしています。コラーゲンとは、皮膚、骨、軟骨、腱など、体全体の結合組織を構成する主要なタンパク質のことです。コラーゲンは、体の構造を維持し、弾力性や柔軟性を与える役割を担っています。
コラーゲンにはアミノ酸配列の違いや分子形態の違いによってⅠ型、Ⅱ型、Ⅳ型と異なる型のコラーゲン分子が存在しています。そのうち体内で最も多くを占めるのはⅠ型コラーゲンで、主に皮膚の真皮や骨、靱帯、骨、腱などの主要成分になっています。私達が「コラーゲン」と聞くと真っ先に思い浮かべるのがこちらです。
一方のⅡ型コラーゲンは主に関節軟骨の主成分で、Ⅳ型コラーゲンは皮膚や腎臓、消化管などの基底膜を構成する主要成分です。どのコラーゲンも、三本のタンパク質を束ねてらせん構造にした「コラーゲン三重らせん構造」によって構成されています。
このコラーゲン三重らせん構造を構成するためには、補酵素として「ビタミンC」と「鉄」が関わっています。また、コラーゲン三重らせん構造を維持するためには「亜鉛」も必要です。
鉄不足の状態では、コラーゲンの三重らせん構造を構成する際に重要な働きをする酵素の働きが低下し、コラーゲン合成が阻害されます。その結果、皮膚の弾力性の低下、関節痛、骨粗鬆症などの症状が現れることがあります。
鉄の働き⑤神経伝達物質の材料となる
鉄分は、脳の神経伝達物質の材料としても使われています。脳の神経伝達物質とは、分泌されると幸せな気分になったり、感情をコントロールしている物質のことです。よく聞くものとしては、うつ病の原因と関係があると言われている「セロトニン」などが有名です。
このセロトニン以外にも「ノルアドレナリン」や「ドーパミン」など様々な神経伝達物質がバランス良く分泌されて、私達の精神や自律神経が保たれています。
これら脳内神経伝達物質は主にタンパク質を原料として作られていて、合成する際に鉄が必要です。
具体的には、脳内神経伝達物質を合成するための材料として「アミノ酸」が必要になります。このアミノ酸は、肉や魚などのタンパク質を胃で分解し、小腸で吸収することで補給しています。このアミノ酸にはおよそ20種類ありますが、そのうち脳の神経伝達物質として利用出来るのは「L-グルタミン」と「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」です。
これら3つのアミノ酸がそれぞれ「鉄」や「葉酸」「ナイアシン」などを利用して「L-グルタミン酸」や「L-チロシン」「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」などに合成され、最終的に「GABA」や「ドーパミン」「セロトニン」や「メラトニン」などに合成されて利用されています。
例えば、「L-フェニルアラニン」から「L-チロシン」に合成する際や、「L-トリプトファン」から「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」に合成する際にも鉄が使われています。
もし、体内で鉄分が不足していた場合は、これら脳の神経伝達物質を合成するための材料が足りなくなってしまい、自律神経の乱れやうつ症状、感情が抑えられない、ストレスの増加、頭痛やめまい、PMSや消化不良による腸内環境の悪化など様々な体調不良が引き起こされてしまう恐れがあります。
また、「セロトニン」と「メラトニン」は、体内時計や質の良い睡眠を司っており、リラックスするための副交感神経を優位にするホルモンです。これら脳の神経伝達物質合成がうまく出来なくなってしまうと、リラックス出来ない状態が続いてしまい、夜眠れない、寝付きが悪いなど睡眠に悪影響が現れることがあります。
鉄って血液の材料になる以外にも様々な働きがあるのか❗
そうそう、だから貧血になるとエネルギー代謝が低下したり、自律神経が乱れたりして様々な不調が引き起こされてしまう原因になるんだよ
貧血とは? 鉄欠乏の原因と貧血症状チェック
体内で鉄が不足した場合、最も危惧されるのが「貧血」です。貧血は一般的に鉄不足によって血液が薄くなるとイメージされていますが、血液自体が薄くなるわけではありません。
正確には、血液中のヘモグロビン濃度が減少して身体が低酸素状態になる事を貧血と言います。
貧血の状態では、正常な状態に比べて赤血球に含まれるヘモグロビンが減少しています。正常な赤血球では大量のヘモグロビンが含まれ、効率よく酸素を運ぶ事が出来るのに対し、貧血では赤血球中のヘモグロビン濃度が減少して酸素の運搬能力が低下しています。
また、このような赤血球中のヘモグロビン濃度が減少する以外にも、赤血球の膜がもろくなって壊れやすくなる「溶血性貧血」や、赤血球の大きさが大きくなりすぎたり小さくなりすぎてしまう小球性貧血、大球性貧血など様々な貧血があります。それぞれ原因や対処法が異なり、適切な対処が必要です。
貧血の種類と原因
- 鉄欠乏性貧血
鉄の摂取量が少ない場合に起こる貧血。消化吸収能の低下でも引き起こされることがある。 - 悪性貧血
葉酸やB12が不足した事による貧血。アルコール多飲や胃腸機能の低下、食事の偏りなどが原因となる。 - 溶血性貧血
赤血球がもろくなって壊れてしまう貧血。亜鉛不足や酸化ストレス、スポーツなど様々な原因がある - 再生不良性貧血
骨髄の造血機能が低下してしまう事で起こる貧血 - 腎性貧血
腎臓病など腎機能が低下したことにより、赤血球を作る働きが低下してしまう貧血 - 慢性炎症・炎症性疾患による貧血
関節リウマチや膠原病など、慢性炎症によって体内の鉄代謝が低下してしまう貧血 - 悪性腫瘍による貧血
ガンや腫瘍など悪性腫瘍によって出血したりがん細胞骨髄へ入り込むことによって造血が出来なくなってしまう貧血。胃がんでは胃の切除によって悪性貧血を伴うこともある。 - 肝硬変・肝障害による貧血
アルコール多飲やガンなどによって肝機能が低下し、タンパク質代謝や鉄代謝が低下して起こる貧血。赤血球の形が変形したり、壊れやすくなったりもする。 - 消化管・婦人科疾患など出血を伴う貧血
大腸ガンや胃潰瘍など消化管からの出血や、子宮筋腫など婦人科疾患による出血によって進行してしまう貧血。
この中でも、特に日本人に多く見られるのは「鉄欠乏性貧血」です。鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄が不足してしまう事によって起こる貧血で、主に成長期のお子さんや月経年齢の女性、高齢者(70歳以上の男女)に多く見られます。
鉄不足になりやすい人とその原因
- 有経女性
月経による出血、婦人科疾患による喪失 - 妊娠・出産、授乳期の女性
赤ちゃんの成長や血液の増加による需要増
出産後の母乳にも鉄が含まれ、授乳中にも鉄需要が増加 - 菜食主義・ダイエットをしている方
食事からの鉄分摂取不足によって貧血になりやすい
野菜に含まれているのは「非ヘム鉄」で、動物性の「ヘム鉄」よりも吸収が悪く、鉄欠乏になりやすくなる - 赤ちゃんから成長期のお子さん
発育による皮膚、骨など体組織の増加や血液の増加における需要増
女子では月経の出血による喪失
スポーツをするお子さんは衝撃によって血液が壊れることから更に貧血になりやすい - スポーツ選手や激しい運動を行っている方
スポーツによる衝撃や活性酸素によって赤血球が壊れ、貧血になりやすくなる
筋肉の肥大に伴う需要の亢進
体重制限種目における不適切な食事、栄養摂取量の低下 - 高齢者
加齢や服薬による鉄の吸収阻害、食欲不振による食事量低下
消化器疾患やがんなどによる出血など
鉄不足の検査項目と貧血症状チェック
体内で鉄が不足すると、様々な不調が起こる原因となります。代表的なものとしては、めまいや立ちくらみ、頭痛がする、爪が割れやすくなる、寒がり・冷え性になるなど、その症状は多岐にわたります。
貧血チェック
- めまい、立ちくらみがある
- 頭痛、耳鳴りがする
- 疲労感がある、何となくだるい
- むくみやすい
- 軽い動作で動悸や息切れがする
- 寒がり、冷え性である
- 朝起きられない
- 食欲がない
- 顔色が悪い
- 毛穴が開いている、肌のきめが粗い
- 化粧ののりが悪い
- 抜け毛、キレ毛が多い、艶がなく、パサついている
- 爪先が割れる、もろい
- 風邪を引きやすい、風邪が長びく
- 下痢をしやすい
- イライラしやすい
- 注意力が低下している
- 喉に違和感がある、カプセルが飲みにくい
- 口内炎ができやすい、口の中が荒れやすい
- 歯茎から出血しやすい
- 知らないうちにあざ(内出血)ができている
- 好き嫌いが多い、菜食主義である
- 痩せている(BMI*が18以下)
- ダイエット中、ダイエット歴がある
【生理について】
- 多い日が3日以上ある
- 1日に何度も生理用品を交換しなければならない
- 生理周期が25日未満である
- 血の塊が出る
鉄不足の検査項目
鉄不足を調べる検査としては、血液検査が一般的です。主にRBC(赤血球数)、HB(ヘモグロビン)、Fe(血清鉄)、UIBC(不飽和鉄結合能)、血清フェリチン値などの項目があります。
これら項目をチェックし、異常があれば早めに対処するようにしましょう。
検査項目 | 意味 | 鉄不足では |
---|---|---|
赤血球 | RBC酸素を運搬する 細胞の数 | 低下することが多い |
ヘモグロビン | HB酸素を運搬する タンパク質の濃度 | 貧血の診断基準 貧血の重症度を反映 |
Fe | 血清鉄HB合成に利用 出来る鉄の量 | 鉄欠乏の他、鉄利用の 障害によっても低下する |
UIBC | 不飽和鉄結合能鉄の運搬能力 | 上昇する |
血清フェリチン | 体内の貯蔵鉄量を反映 | 低下する 鉄不足に対し、最も鋭敏に反応する |
貧血にも色々な種類があるんだね💧
貧血症状チェックにも多く当てはまるから、多分貧血なのかも💧
そうだね、貧血にも色々種類があるから、症状だけで鉄欠乏性貧血と決めつけず、きちんと検査を受けることが大切だよ
隠れ鉄欠乏貧血に注意!貧血と診断されていなくても注意しましょう。
貧血かどうかを判断する上で特に気をつけて頂きたいことがあります。それが、病院の検査では貧血と診断されていないけど貧血になっている「隠れ貧血」と呼ばれる状態です。
現在の病院では、「赤血球」や「ヘモグロビン」という値が低いかどうかだけで貧血かどうかの診断を行っています。しかし、ヘモグロビン値や赤血球値の低下は確かに貧血を診断する指標となるのですが、この値が一定以下にまで低下していない限り、仮にギリギリ下限の値だったとしても貧血と診断されません。
この貧血と診断されていなくても貧血の状態になっている「隠れ貧血」の方が非常に多くなってきているのです。
隠れ貧血とは、赤血球やヘモグロビン値が正常範囲内に収まっているにもかかわらず、体内の貯蔵鉄量である「フェリチン値」のみが低値を示している状態のことです。
この貯蔵鉄が減少しているだけの状態は「隠れ貧血」や「潜在性鉄欠乏」、「隠れ鉄欠乏性貧血」などと呼ばれ、若い女性のおよそ30%〜50%が隠れ貧血を抱えていると言われています。
この隠れ貧血では、貧血と診断されていなくても貧血と同じような不調が引き起こされていきます。特に起こりやすい不調としては、動悸や息切れ、めまい、眠気、鬱、頭痛や寒がりになる、疲れやすくなる、食欲が低下するなどです。
この隠れ貧血は鉄の摂取不足が主な原因の1つであり、鉄欠乏は緩やかに進行していくことから、このような不調を本人が自覚していない場合も多くあります。そのため、鉄不足かどうかは自覚症状や赤血球数、ヘモグロビン値だけで判断するのでは無く、体内の貯蔵鉄である「血清フェリチン値」を含めた検査項目で判断する事が大切です。
では、なぜこのフェリチン値の低下が、隠れ貧血を始めとした貧血と関連していると言われているのでしょうか。それは、体内で鉄が不足すると、貯蔵鉄であるフェリチンから真っ先に鉄が補充されるためです。
身体は、一時的な出血や短期的な鉄の摂取不足の状態でもすぐさま貧血にならないよう、鉄を体内に貯蔵しておく機能が備わっています。それが貯蔵鉄であるフェリチンです。
そして、貧血が進行していく際にはこの貯蔵鉄を材料にしてヘモグロビンや赤血球を作り、貧血になることを防いでいます。
しかし、もしこの貯蔵鉄の量が少なくなっていた場合、いざ出血してしまったときにヘモグロビンなどに使う鉄が足りません。すると、月経などで出血した場合にはすぐに貧血に陥ってしまいます。このような、普段は貧血では無いのに出血するとすぐに貧血となってしまう状態が、隠れ貧血と言われている状態です。
貧血が進行する際は、最初にこの貯蔵鉄であるフェリチンから減り始め、次に血清鉄や赤血球、ヘモグロビンの減少と続きます。病院の検査では、この赤血球数やヘモグロビンの減少が高度に引き起こされてから初めて貧血と診断されるため、既に中程度から高度な貧血の状態に陥ってしまっている状態となっています。
病院で貧血と診断されていなくてもフェリチン値減少による貧血は進行している可能性がありますので、病院で貧血と診断されていなくても貧血になっている「隠れ貧血」にはご注意下さい。
か、隠れ貧血❗❓
病院では貧血って言われてなくても貧血になるんだね💦
そうそう、貧血と診断されていなくても貧血になっている「隠れ貧血」の人は多く存在しているよ。隠れ貧血でも貧血と同じ症状が引き起こされるから、まずは隠れ貧血が無いかどうかをオーソモレキュラー療法の血液検査で調べてみるのが良いね。
鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチ
ここからは、貧血に対する分子栄養学低アプローチの一例をご紹介します。まず、貧血といえば「鉄分補給」というイメージですが、単に鉄分を補給したとしても、貧血が改善出来るわけではありません。
貧血とは赤血球量やヘモグロビン量が減少する「症状」の事を指し、よくある症状(コモン ディジーズ)の1つです。貧血は様々な原因や病気によって引き起こされる症状であるため、病名や診断名ではありません。
そして、この貧血に陥る際には必ず理由や原因があります。そのため、貧血を改善させるためには「なぜ貧血になったのか?」という原因(基礎疾患)を探ることが必要です。
例えば、ガンなどで消化管出血を引き起こしている場合や、過多月経・子宮筋腫など婦人科疾患によって過剰に出血している場合も貧血となります。このような場合は、貧血の対策に加えて貧血の原因となっている疾患の治療も同時に行う事が必要です。
また、ピロリ菌の感染や腸内環境の悪化による消化吸収不良、ストレスや自律神経の乱れによる消化吸収能の低下によっても貧血を引き起こすことがあります。これは、消化吸収能が低下することによってタンパク質がうまく消化吸収出来なくなり、タンパク質が不足しやすくなるためです。タンパク質は赤血球やヘモグロビンを作るために必要な材料で、鉄分の摂取不足以外にも、このタンパク質が不足することでも貧血を引き起こします。
そのため、貧血対策を行う前には必ず貧血となった原因があるかどうかを調べてみて下さい。特にチェックしておきたい事としては、次のようなことが挙げられます。
貧血対策を行う前にチェックしておきたいこと
- ピロリ菌に感染していないか
- 胃酸は十分に分泌されているか
- 子宮筋腫などの婦人科疾患はないか
- 消化管出血はないか
- 肝臓や腎臓の状態に問題はないか
- PMS(月経前症候群)や低血糖症などによる自律神経の乱れは無いか
- 過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど消化管の不調はないか
これらのチェックに当てはまる方は、分子栄養学の実践と併せて、必ず疾患の治療も同時に行ってくようにして下さい。
分子栄養学実践におけるタンパク質の重要性
そして、分子栄養学を実践する際には、タンパク質の消化能力がとても重要になります。貧血といえば「鉄分補給」というイメージですが、単に鉄分を補給したとしても、貧血が改善出来るわけではありません。造血をしたり貧血を改善させるためには、鉄分に加えて「タンパク質」も必要です。
タンパク質は、酸素を運搬して全身に運ぶ役割を担う赤血球やヘモグロビンの材料となるほか、鉄を安全に運搬するための「トランスフェリン」や、鉄を安全に貯蔵するための「フェリチン」を作るための材料としても必要になります。
鉄は、タンパク質と結合していない状態で体内に存在していると、その反応性の高さから活性酸素を発生させて細胞にダメージを与えてしまいます。そのため、身体はこの鉄から発生する活性酸素から身を守るために、鉄を運搬、貯蔵、利用する際は必ずタンパク質と結合して利用しています。これが、トランスフェリンやフェリチンなどです。
つまり、鉄を安全に運搬、利用するためにはタンパク質が絶対に欠かせません。いくら鉄分を多く補給しても、安全に貯蔵、運搬、利用出来るためのタンパク質がない状態では、貧血を改善させることが出来ないのです。
このことから、オーソモレキュラー療法では、貧血改善をするためには鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂ることも行っています。
タンパク質は肉や魚などから摂取することが可能で、タンパク質の摂取目安量としては体重(kg)×1~1.5グラムが理想だと言われています。
これは例えば、体重が60kgであれば、一日に必要なタンパク質はその体重分の60gといった感じです。意外と少なく感じるかも知れませんが、これは肉を60グラム食べるという意味ではありません。お肉には水分や脂質などタンパク質以外のものが多く含まれています。また、加熱など調理によってもお肉に含まれるタンパク質は減ってしまいます。そのため、純粋なタンパク質量で換算すると、肉で言えばおよそ800g相当です。
ただ、お肉を毎日800g食べるのは現実的ではありませんよね。そのため、オーソモレキュラー療法では「プロテイン」を利用しています。プロテインなら、ものにもよりますが一食につき10g〜20g程度のタンパク質を手軽に補給することが可能です。このプロテインと併せて、ヘム鉄やタンパク質を利用するために必要な補酵素のビタミンB群をセットで摂取する事が基本になります。
とは言え、単にプロテインを飲めば良いという訳ではありません。タンパク質を消化吸収するためには胃や腸がしっかり働いていることが重要です。中には自律神経の乱れやピロリ菌などの感染症、胃酸の分泌量低下などによってタンパク質をうまく消化吸収出来なくなっている方もいます。
そのような方に対しては、ピロリ菌の除菌を行ったり、消化酵素を併用したり、プロテインよりも消化吸収が良いアミノ酸などから補給したりするなどアプローチが変わってきます。まずは、タンパク質がきちんと消化吸収出来るかどうかを確認する為にも、胃のチェックを必ず行うようにして下さい。
検査項目 | 意味 | 数値の目安(単位省略) |
---|---|---|
ピージーワン | PGⅠ胃酸分泌の程度 | 40〜60 |
ピージーツー | PGⅡ胃粘膜の炎症程度 | 10以下 |
ワンツー比 | PG Ⅰ/Ⅱ胃粘膜萎縮の程度 | 3.1以上 |
ヘリコバクター ピロリ抗体 | Hp抗体ピロリ菌感染の有無 | 10未満 |
胃の状態は、血液検査である程度知ることが出来ます。胃の状態を調べる血液検査の項目としては、胃酸の分泌量を表すPG1や粘膜の炎症程度を表すPG2、胃粘膜萎縮の程度を見るPG1/2比、ピロリ菌感染の有無を調べるHp抗体などがあります。
このHp抗体の数値が10以上だった場合は、ピロリ菌に感染している可能性があります。Hp抗体は「ヘリコバクター・ピロリ抗体」と言って、免疫機能がピロリ菌と闘っていると増える抗体のことです。もしこの抗体の数値が10以上や、9以上など10に近い場合は「胃カメラ」を受けてピロリ菌がいるかどうかを確認してください。
この他、胃の状態を知る方法として、PG1やPG2などがあります。PG1は胃酸の分泌程度を表し、40〜60程度が理想です。もう一つのPG2は胃粘膜の炎症の程度を表し、10以下であれば問題ないと言えます。
もしPG1の数値が目安よりも低い場合、胃酸の分泌量が少なく、タンパク質をしっかり消化吸収することが出来ていない可能性があります。また、人によってはストレス過多や胃酸分泌抑制剤の服用等によりPG1の値が高かったりする場合があります。この場合も同じく消化能力に問題があると判断出来ますので、これらの検査を参考に、タンパク質がしっかり消化吸収出来ているかを確認してみましょう。
ちなみに、過去にピロリ菌の除菌をしている場合は、ピロリ菌の除菌に成功していてもピロリ菌抗体が残る場合があります。この場合、胃カメラによる目視でピロリ菌感染が否定された場合は、ピロリ菌抗体が10以上あったとしても問題ありません。また、血液検査によるピロリ菌の検査は、血液中に含まれるピロリ菌の抗体量を調べる検査です。ピロリ菌の有無を直接調べているわけではないので注意して下さい。
これら胃の状態をチェックすることに加え、特定の血液検査項目をチェックすることでもタンパク質不足かどうかをチェックすることが出来ます。タンパク質の不足が見られた場合、胃の状態に問題が無くても消化サポートの併用などが必要になる場合があります。
検査項目 | 意味 | 数値の目安(単位省略) |
---|---|---|
総タンパク | TP血清中のタンパク質 | 7.0〜7.5 |
アルブミン | ALB血清中の輸送タンパク質 | 4.5〜5.0 |
尿素窒素 | BUN血清中の尿素に含まれる窒素 | 13.0〜15.0 |
ヘモグロビン | HB酸素を結合するタンパク質 | 13.0以上 |
UIBC 不飽和鉄結合能 | 鉄を運ぶタンパク質 | 200〜300 |
タンパク質不足をチェックする血液検査項目としては、TP(総タンパク)やALB(アルブミン)、BUN(尿素窒素)やHB(ヘモグロビン)、UIBC(不飽和鉄結合能)などがあります。これらをチェックして、タンパク質が不足していないかどうかをチェックしてみて下さい。
やっぱり、貧血改善にはタンパク質が重要なんだね💦
健康のためにお肉を避けていたけど、逆効果だったのか💦
そうだね、タンパク質は身体を作ったり血液を作る材料として必要だから、お肉を避け続けるとタンパク質不足になりやすいよ。
タンパク質不足だと貧血は改善出来ないから、しっかりとお肉やお魚も食べた方が良いね
分子栄養学実践におけるヘム鉄摂取の意義
鉄分には、食品から摂れる鉄分や病院で処方される鉄剤など様々な種類の鉄分がありますが、分子栄養学を実践する際は「ヘム鉄」を選ぶことが重要です。
ヘム鉄は肉や魚などに含まれている動物性の鉄のことで、非ヘム鉄に比べて吸収率が高く、安全性が高いという特徴があります。対して病院で処方される鉄剤や植物に含まれている鉄は非ヘム鉄です。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が悪く、大量に摂取すると活性酸素を発生させて細胞にダメージを与えてしまうリスクがあります。
そのため、鉄分の選び方を間違えてしまうと、貧血改善どころか身体にダメージを与えてしまって逆効果にもなりかねません。その中でも特に気をつけたいのが「病院で処方される鉄剤」です。
貧血と診断された場合や治療と言えば、真っ先に「鉄剤」が思い浮かびますよね。「鉄欠乏性貧血」と言われているくらいですから、鉄を補給すれば貧血が改善出来ると思われがちです。
しかし、病院で処方される鉄剤を飲んでも、貧血を十分に改善することは出来ません。むしろ、鉄剤を摂取する事により大量の活性酸素が発生し、胃や腸の粘膜にキズを付けてしまう可能性があります。
この原因は、病院で処方される鉄剤の多くが「非ヘム鉄」である事が原因です。非ヘム鉄は、摂取すると体内で多量のフリーラジカル(活性酸素)が発生し、胃や腸の細胞膜を傷つけて様々な疾患の原因に繋がります。
また、非ヘム鉄は吸収率が悪い事から、吸収出来なかった鉄分はそのまま大腸へと流れ、それがカンジダ菌など悪い腸内細菌のエサとなってしまうことも挙げられます。鉄分は人体に限らず細菌やカビ菌などにも必須の栄養素で、鉄分がなければ増殖することが出来ません。
消化吸収出来ずに大腸へと流れた鉄分は、カンジダ菌などのエサとなって悪い腸内細菌がドンドン増殖してしまいます。すると、今度は増殖した悪い菌が毒素を出して腸粘膜などを傷つけたり、血管内に毒素が入り込んで様々な悪影響を引き起こしてしまいます。病院の鉄剤を摂取すると胃がムカムカしたり便秘になりやすくなるのは、このような理由があるためです。
そのため、非ヘム鉄である病院の鉄剤を多量に摂取すると、腸内環境の悪化や消化吸収能の低下、SIBO、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群(IBS)など炎症性の腸疾患や肝炎、非アルコール性脂肪肝などに進行してしまうリスクが高まります。この事から、病院で処方される鉄剤で貧血対策を行う事はオススメしません。
また、海外で販売されている「アミノ酸キレート鉄」も分子栄養学では非推奨となっています。アミノ酸キレート鉄とは、本来吸収効率の悪い鉄を「グリシン」と呼ばれるアミノ酸でサンドイッチする事で、飛躍的に吸収効率を高めた鉄サプリメントです。
キレート鉄を摂取するとフェリチンが上昇しやすいと言われ、メガビタミン健康法など一部の方の間ではブームとなっています。ただ、このアミノ酸キレート鉄のサプリメントは良いことばかりではありません。
一見すると、鉄分の吸収率がとても高い事は良いことのように思えますよね。しかし、アミノ酸キレート鉄を長期間、多量に摂取した場合は貯蔵鉄である「フェリチン値」が大幅に上昇する事例が散見されています。フェリチン値は炎症によっても上昇することから、鉄過剰摂取による炎症反応の可能性が考えられます。
また、アミノ酸キレート鉄は鉄分だけを無理矢理大量に吸収させることから、とても利用効率が悪くなります。造血には鉄以外にも亜鉛や銅、セレンやマンガン、タンパク質なども必要で、これらが足りない場合は造血することが出来ません。特に、アミノ酸キレート鉄では鉄だけを大量に吸収させることから、他のミネラルとのバランスを崩しやすくなります。
鉄を多く摂取すれば貧血が改善出来るような気がしますが、鉄だけ大量に補給しても造血することは出来ません。造血するには「亜鉛」も必要で、鉄欠乏性貧血の方は同時に亜鉛欠乏性貧血も抱えている場合が多くあります。このような理由から、アミノ酸キレート鉄及び病院から処方される非ヘム鉄の摂取は、むしろ亜鉛欠乏性貧血や炎症による貧血を引き起こしやすくなるとも言えます。
そのため、分子栄養学を実践する際は病院の鉄剤やアミノ酸キレート鉄などの非ヘム鉄では無く、安全性の高いヘム鉄を利用することが大切です。ヘム鉄はポルフィリン環と呼ばれるタンパク質のカプセルのような物に包まれていることから、上述した非ヘム鉄に比べて活性酸素は殆ど発生しません。
また、非ヘム鉄はお茶やコーヒーなどに含まれるタンニンと結合し、吸収率が落ちてしまいますが、ヘム鉄であればこれらの影響をあまり受けずに吸収することが出来ます。特に吸収率においてはヘム鉄の方が高く、吸収効率が10%〜30%程度あるのに対し、非ヘム鉄は僅か5%以下しかありません。
このようにヘム鉄で鉄分を摂取する方が身体へのダメージが少なく、メリットが大きいことから、分子栄養学で鉄分を補給する際はヘム鉄で摂取するのがオススメです。
このヘム鉄を摂取する際は、血清フェリチン値を目安に判断します。血清フェリチン値は男女で基準値の違いがありますが、おおよそ40ng/mL未満では貧血と判断することが出来ます。この場合は、ヘム鉄として一日45mgを目安に摂取してみて下さい。
また、血清フェリチン値が40〜100ng/mLの間では、貧血では無いものの貯蔵鉄がやや不足している状態です。この場合も、十分な貯蔵鉄が貯えられるよう、一日あたりヘム鉄として15mg程度補給してみて下さい。継続していくにつれてフェリチン値は徐々に上がっていき、血清フェリチン値が125ng/mL程度になるのが理想と言われています。
ただし、有経女性の場合は毎月月経があるのでフェリチン値はなかなか上昇しない傾向にあります。有経女性の場合は血清フェリチン値が60ng/mL前後を保てていれば大丈夫ですので、それ以上フェリチンが下がらないようキープすることに努めましょう。
それから、フェリチン値は貧血の判断以外にも「炎症」を見るためのマーカーでもあります。フェリチン値は体内で炎症が発生していても上昇することがあり、ガンなどでは著しく上昇する場合もあります。特に、フェリチン値が200ng/mLを超えていたり、フェリチン値が高くてヘモグロビン値が低い場合は何らかの炎症が関与している可能性が高いです。この場合は、炎症の原因となっている原因を調べ、適切に対処するようにして下さい。
市販の安いヘム鉄サプリにはご注意!
ヘム鉄のサプリと言えば、ドラッグストアーなどで安く販売されている物を見かけることがありますよね。ヘム鉄が補給出来るなら、安くて量が摂れるに越したことはありません。しかし、同じヘム鉄といえどその質にはピンからキリまであります。特に、「ヘム鉄パウダーの量」と「ヘム鉄含有量」は全く違うものですので注意して下さい。
ヘム鉄は豚の血液を精製して作られており、ヘム鉄パウダーと呼ばれるパウダー状の中にヘム鉄が1%もしくは2%含有している物が一般的です。例えば「一粒でヘム鉄50mg」と書かれていても、これはヘム鉄パウダーが50mg含まれているだけであり、実際にはその中の1%〜2%である0.5mg〜1mgしかヘム鉄が含まれていない計算になります。このように、多く含まれているように見せかけて、実際にはヘム鉄が殆ど含まれていない物があるのです。
また、繰り返しますが貧血改善にはヘム鉄以外にも微量ミネラルと呼ばれるセレンやマンガン、銅や亜鉛など他のミネラルの補給も重要です。ヘム鉄として市販されている商品の多くはヘム鉄のみなど鉄分の補給しか出来ません。加えて、ヘム鉄の製造管理には高度な技術が必要で、生体内利用効率まで考慮すると安く作る事は不可能です。物によっては、製造管理体制が悪く、品質が劣化している物もあります。
この事から、同じように見えるヘム鉄サプリメントであっても、体内での利用効率が悪く、貧血が改善出来ない場合があります。これを避けるためにも、ヘム鉄を摂取する際は生体内のミネラルバランスや生体内利用効率などを考慮した質が高いものを選ぶようにして下さい。分子整合栄養医学で使われているヘム鉄製品は、「鉄の取り込み」「利用」「貯蔵」「排泄」など貧血改善における鉄分本来の働きが安全に出来るよう考慮されています。ヘム鉄を選ぶ際は、値段や含有量にとらわれず、体内で安全に利用出来る安心、安全な製品を選びましょう。
げげっ❗今まで病院で処方された鉄剤を飲んでいたけど、これがむしろ体調を悪化させる原因になっちゃうのか❗
そう。同じく海外サプリメントにある「アミノ酸キレート鉄」も利用効率が悪くて身体にダメージを与える原因になる可能性があるよ。だからこそ、鉄分を補給するときは利用効率を考えてヘム鉄を摂ることがオススメだね。この時、ヘム鉄以外に亜鉛もちゃんと摂るようにしてね。
貧血は「鉄欠乏」だけじゃない!貧血改善に大きな役割を果たす亜鉛の重要性
貧血というと「鉄分だけが不足している」というイメージが強いですが、鉄不足だけが貧血の原因ではありません。鉄以外にも様々なミネラルやタンパク質が関係していて、その中でも特に「亜鉛」が重要な働きをしています。亜鉛はヘモグロビンの材料となる「ポルフィリン環」の合成に必要な材料であるほか、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの合成にも必要です。
この亜鉛が不足してしまうと、貧血が改善出来なかったり、亜鉛欠乏性貧血を引き起こしてしまう原因になります。
この図は、赤血球を構成しているヘモグロビンの構成を表した物です。ヘモグロビンは「ヘム」というポルフィリン環と鉄がくっついた物で、グロビンはタンパク質です。この2つが組み合わさることで、ヘモグロビンは構成されています。
よく見ると、ヘム鉄の元になる「ポルフィリン環」の材料に亜鉛が必要と書いてありますよね。ポルフィリン環とはタンパク質のカプセルのような物で、ヘム鉄はこのタンパク質に包まれていることが最大の特徴です。
私達が摂った鉄分はこのポルフィリン環に包まれた「ヘム鉄」と呼ばれる状態に合成され、ヘモグロビンの合成などに利用されています。この時に亜鉛が不足しているとポルフィリン環が十分に合成できなくなり、ヘモグロビンの合成量低下に繋がります。このことから、亜鉛は造血をする際にも必要な栄養素です。
他にも、亜鉛欠乏は「亜鉛欠乏性貧血」とも関係しています。亜鉛欠乏性貧血とは、亜鉛が不足することによって赤血球の膜が破れやすくなり、毛細血管通過時に血管とこすれて壊れてしまう状態の事です。
赤血球が壊れてしまうと、その中に含まれるヘモグロビンも壊れてしまいます。もし、せっかく作ったヘモグロビンや赤血球が次々に壊れてしまうと、これら合成量よりも破裂量が多くなって、貧血が進行する原因になります。亜鉛は、この赤血球の膜を丈夫にし、壊れにくくするために必要な栄養素です。
この亜鉛欠乏は、一見すると鉄欠乏性貧血と関係ないように思えますよね。しかし実は、亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血には密接な関係がある事が分かっています。ある鉄欠乏性貧血の女性グループを調べたところ、鉄欠乏性貧血の女性は健常な女性と比較して、血清亜鉛濃度が低いことが分かりました。
この研究では、鉄欠乏性貧血の女性30名のうち、血清亜鉛濃度が70μg/dL(正常値80μg/dL)を下回っている女性が27名とおよそ90%の女性が亜鉛欠乏状態でした。対して鉄欠乏性貧血で無い健常の女性30名では、血清亜鉛濃度が70μg/dLを超えている女性が29名と、殆どの方に亜鉛欠乏が見られなかったのです。
このことから、亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血には相関関係があり、鉄欠乏性貧血を抱える女性の殆どは亜鉛欠乏も同時に抱えていることが予想されます。鉄欠乏貧血の方は、同時に亜鉛欠乏が無いかどうかも調べて見て下さい。
また、亜鉛欠乏性貧血は加齢と共に増えていき、女性では20歳〜50歳で5%以上、70歳以上になると10%以上に亜鉛欠乏性貧血が見られると言われています。
この亜鉛欠乏を引き起こしやすい理由としては、亜鉛自体がとても吸収されにくい栄養素である事が挙げられます。亜鉛の吸収率は年齢と共に低下していき、例えば20代男性では31%の吸収率があったのに対し、60代の男性では17%と大幅に低下していました。
亜鉛はウナギや牡蠣などの食品にも含まれていますが、十分な量を摂取するのは難しい栄養素です。このような理由も、加齢と共に亜鉛不足や亜鉛欠乏性貧血になりやすい理由です。
この亜鉛が不足しているかどうかは、血液検査で調べることができます。主な検査項目は「血清アルカリホスファターゼ(ALP)」と「血清亜鉛」の2つです。
アルカリホスファターゼ(ALP)とは、肝臓や骨、腸や腎臓などで作られる酵素のことです。主にカルシウムの吸収と利用に関わっており、骨の形成と代謝や細胞膜の機能維持、胆汁の生成などに関与しています。
このアルカリホスファターゼ(ALP)は、材料として亜鉛が使われていることから、亜鉛が不足すると低下することが知られています。そのため、アルカリホスファターゼ(ALP)の値が低い場合は、亜鉛不足の可能性が考えられます。
また血清亜鉛の数値も、亜鉛不足かどうかの目安になります。血清亜鉛の基準値は80〜130μg/dLで、これより低い60〜80μg/dL未満では潜在性亜鉛欠乏、それ以下の60μg/dL未満では亜鉛欠乏症と見ることが出来ます。
検査項目 | 意味 | 数値の目安(単位省略) |
---|---|---|
血清アルカリホスファターゼ | ALPリン酸化合物を分解する酵素 | 50 U/L (成長期、骨粗しょう症などでは上昇) |
血清亜鉛 | 血清中の亜鉛濃度 | 80〜130μg/dL |
銅/亜鉛 比 | 銅と亜鉛の比 | 1:1 |
もし、これら検査項目で亜鉛不足が見られた場合、鉄分以外に「亜鉛」も同時に摂取していきましょう。摂取目安は年齢や状態にもよりますが、一日あたり15mg~45mg程度が目安です(分子栄養学実践専用サプリメントの場合)。
亜鉛は十分な量の摂取が難しく、とても吸収されにくい栄養素の1つです。年齢と共に更に吸収率が低下していきますので、必要な場合はサプリメントも上手く取り入れてみて下さい。
貧血改善には鉄以外にも亜鉛が重要なのか❗
そうそう、鉄以外にも、銅や亜鉛も必要だよ。鉄欠乏性貧血と亜鉛欠乏には関係性が深いから、ヘム鉄以外に亜鉛もちゃんと摂るようにしてね
鉄欠乏性貧血の改善に必要なその他の栄養素と分子栄養学アプローチ
ここまでのまとめとして、鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチと、その他に必要な栄養素を解説します。
まず、貧血改善において最も重要なのは「タンパク質」です。先ほども解説したように、赤血球やヘモグロビン自体はタンパク質で出来ていることから、貧血を改善させるためにはタンパク質が欠かせません。
この赤血球やヘモグロビンをしっかり作れるようにするためにも、鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂るようにしましょう。最低でも一食当たり100g〜200g程度の肉や魚は取り入れたいところです。足りない分は、プロテインなどを活用するのも良いですね。
この際、タンパク質がしっかり消化吸収出来ているかどうかや、胃腸機能がしっかり働いているかどうかをきちんと検査してから行うようにして下さい。タンパク質が十分に消化吸収出来ない状態では、むしろ体調を悪化させてしまうことがあります。
それから、タンパク質を利用するためには補酵素である「ビタミンB群」も必要です。ビタミンBはタンパク質を加工して利用するために必要で、これが無ければタンパク質を体内で上手く利用することが出来ません。ビタミンBは8種類あり、この8種類すべてをまとめてビタミンB群と言います。ビタミンB群はお互いに助け合って機能していますので、摂取する際はビタミンB群として8種類すべてを摂取することが大切です。このビタミンB群も貧血改善には絶対に必要となりますので、同時に摂取するようにして下さい。
そして、メインとなる鉄分については「ヘム鉄」を選びましょう。ヘム鉄は、非ヘム鉄に比べて吸収率が高く、安全です。このヘム鉄を摂取する際は、血清フェリチン値を目安に判断します。血清フェリチン値は男女で基準値の違いがありますが、おおよそ40ng/mL未満では貧血と判断することが出来ます。この場合は、ヘム鉄として一日45mgを目安に摂取してみて下さい。
さらにこのヘム鉄の補給に加えて、亜鉛の補給も重要です。亜鉛は、上述したようにポルフィリン間の材料となったり、赤血球の膜を強くしたりと、貧血にも大きく関係している栄養素です。この亜鉛を同時に摂取する事で、更に貧血を改善しやすくなるという結果が出ています。
このヘム鉄をベースに、鉄代謝や造血に必要なビタミンやミネラルなども併せて摂るようにしましょう。貧血改善に必要な栄養素は次の通りです。
鉄欠乏性貧血の改善に必要な栄養素
- タンパク質
- ビタミンB群
- ヘム鉄
- ビタミンA
- ビタミンD
- 亜鉛
- マンガン
- セレン
- 銅
ビタミンAとビタミンDは、細胞の正常な分化や赤血球の元となる幹細胞の分化に関わる栄養素です。他にも、免疫の調節や粘膜の修復、炎症の抑制などに関わり、消化管出血などの修復を助けたり、慢性炎症に伴う鉄の利用障害の改善に役立ちます。ビタミンAとビタミンDはお互いに協力して働くので、この2つは一緒に摂ることがオススメです。
銅は赤血球の成熟過程に必要な栄養素で、鉄や亜鉛と共に血液を作る際に重要となる栄養素です。通常、食事量がしっかり摂れていれば欠乏することは殆どありません。セレンやマンガンは微量ミネラルの一種で、活性酸素を分解する酵素の構成成分などに関わっています。鉄欠乏性貧血を改善させるために非ヘム鉄や亜鉛など特定のミネラルを多く摂取すると、セレンやマンガンなどの吸収が上手くいかなくなってしまう可能性があります。これを避けるためにも、セレンやマンガンなど微量ミネラルの同時摂取も大切です。
その他、溶血性貧血の場合は酸化ストレスから赤血球の膜を守るためにも積極的な抗酸化対策が必要になります。特にビタミンEやビタミンCでは体内の活性酸素を除去し、赤血球の膜を活性酸素から守ってくれる働きがあります。スポーツをする方や、ガンなど慢性炎症性疾患を抱えている方、酸化ストレスが多い方は積極的に補給してみて下さい。
ビタミンB12と葉酸は、赤血球の大きさが大きくなってしまう大球性貧血の改善に必要な栄養素です。ビタミンB12と葉酸はピロリ菌の感染やお酒の飲み過ぎなどによる胃腸機能の低下で不足しやすくなります。他にも、菜食主義の方や、葉物などの野菜を食べない方も不足しやすい栄養素です。ビタミンB12は主に牛肉や豚肉などの肉に多く含まれ、葉酸は葉物野菜などに多く含まれています。これらの摂取不足や、ビタミンB12と葉酸が不足している方は、摂取量を強化するのがオススメです。
ただし、繰り返しになりますが貧血には必ず原因があります。貧血対策は、必ず原因を調べてから根本原因に対してアプローチを行っていく事が必要になります。そのため、これら分子栄養学的アプローチは当てずっぽうで行うのでは無く、必ずオーソモレキュラー療法の血液検査を受けてから行うようにして下さい。オーソモレキュラー療法では、根本原因を調べるためにも様々な検査項目を見ながらアプローチを行っていきます。
この記事では紹介していませんが、貧血の状態や分子栄養学アプローチを判断するための血液検査項目は多岐にわたります。これらを総合的に見ながら行う事が大切ですので、よく分からない方は自己判断で行わず、必ずオーソモレキュラー療法の血液検査を受けて下さい。
分子栄養学的貧血関連項目
- 赤血球数 RBC
- ヘモグロビン HB
- ヘマトクリット HT
- 平均赤血球容積 MCV
- 平均赤血球HB量 MCH
- 平均赤血球HB濃度 MCHC
- 網状赤血球 RET
- 血小板数 PLT
- 血清鉄 Fe
- 不飽和鉄結合能 UIBC
- フェリチン
- C反応性タンパク CRP
- GOT(AST)
- GPT(ALT)
- γ-GPT
- 25-OHビタミンD
また、使用するサプリメントの質や栄養素の種類にはくれぐれもご注意下さい。病院で処方される鉄剤やアミノ酸キレート鉄は、鉄のみしか補給出来たいため、これらを大量に摂取すると亜鉛を含めたミネラルバランスを崩す原因になり得ます。これでは余計に体調を崩す原因になりますので、摂取する栄養素の種類や質にはくれぐれも注意しましょう。
ふむふむ、貧血は単に鉄が足りないだけじゃ無くて、タンパク質やビタミン、ミネラルが同時に不足している状態無いんだね
そうなんだ。だからこそ、タンパク質やビタミン、ミネラルをバランスよく摂る事が大切なんだ。逆に、鉄剤やアミノ酸キレート鉄での鉄分補給は、亜鉛欠乏や炎症を引き起こす原因になる可能性があるから、むやみやたらに鉄分だけを補給することはしないようにしてね。
鉄分の多い食べ物を食べれば貧血は改善出来る? 食事だけで貧血改善はほぼ不可能です。
ここまでは、貧血に対する分子栄養学的栄養アプローチをご紹介してきました。基本的に分子栄養学では、足りない栄養素はサプリメントで補給していきます。しかし、人によっては「サプリメントなんか使わなくても食事で改善出来るのでは?」と思うかもしれません。
貧血改善に必要な栄養素
- タンパク質
- ビタミンB群
- ヘム鉄
- 亜鉛等のミネラル
- 食物繊維
- 酪酸菌やビフィズス菌、納豆菌など
タンパク質は肉や魚から摂れますし、ヘム鉄も肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。また、亜鉛は牡蠣やウナギなどに多く含まれていますし、食物繊維は野菜などから多く摂ることが出来ます。酪酸菌やビフィズス菌、納豆菌などは、納豆や味噌などの発酵食品を食べれば何とかなりそうな気がしますよね。
しかし、これら食事だけで必要な栄養素を補給して不調を改善させることは不可能です。
理由としては主に4つあり、一つは食事で摂れる栄養素の量が少ないこと、もう一つは貧血や低血糖症などによって消化能力が低下してしまった状態では十分に消化吸収出来ないこと、もう一つはむしろサプリメントよりもコストが高くなってしまうこと、最後の一つは毎日同じ物を食べ続けることで飽きが来たり食事の楽しみが無くなってしまうことが理由です。
例えば、タンパク質やヘム鉄ビタミンB群、亜鉛を多く含む食べ物として「赤身肉」や「レバー」があります。赤身肉のヒレやランプ、モモの部位には、100gあたり20gのタンパク質と、2.5mg程度のヘム鉄が含まれています。この肉を多く食べれば、十分にタンパク質もヘム鉄も補給出来そうな気がしますよね。
しかし、肉に含まれるタンパク質は、そのすべてが得られるわけではありません。牛肉に含まれるプロテインスコアは80と低く、これは牛肉に含まれるアミノ酸のバランスがあまり良くない事を表しています。
プロテインスコアとは、そのタンパク質の「良質度」のことです。この数値が高いほど、そのタンパク質の利用効率が高くなります。この利用効率に加えて、調理による損失も加わります。肉は加熱調理をして食べますので、これを加味すると100gの肉を食べてもたった8gのタンパク質しか補給出来ない計算です。
また、肉に含まれるヘム鉄は肉汁(ドリップ)と共に流れ出てしまいます。特に煮物や茹でこぼしでは多く鉄分が溶出し、30分から1時間程度煮込むだけでおよそ30%〜50%ほどの鉄分が溶出してしまいます。肉に含まれるビタミンB群も水溶性ビタミンですので、加熱調理や煮込むことで大部分が失われます。食べ物の栄養損失は、思っている以上に大きいのです。
この事を前提に、食事で必要な栄養を賄うとしましょう。体重が60kgの成人が一日に必要なタンパク質は、その体重分の60gと言われています。仮に50kgの方なら50g必要です。また、貧血の人は一日あたり45mgのヘム鉄が必要になります。
もし体重が60kgの人が肉だけでタンパク質を補給しようとすると、およそ800gもの肉を毎日食べなければなりません。ヘム鉄に至っては、赤身肉100gあたり2.5gとすると、45mg補給するためにはおよそ一日2kgも必要になります。一日に800gや2kgもの肉なんて、到底食べる事は不可能ですよね。
加えて、これら摂取した肉がすべて消化吸収出来るとは限りません。貧血を抱えている方は、自律神経の乱れから消化吸収能力が低下してしまう傾向にあります。そうなると、摂取出来るタンパク質量やヘム鉄量は更に低いと考えられます。消化吸収能が落ちている場合は摂取タンパク質の半分程度が消化吸収出来れば良い方で、場合によっては全く消化吸収出来ない可能性も高いです。
消化できなかったタンパク質はそのまま小腸や大腸に流れ、悪玉菌のエサとなって更に腸内環境の悪化を招きます。肉を大量に食べることは更なる腸内環境の悪化と消化吸収の低下を招くことから、むしろ体調が悪化していく原因にもなるのです。
そして、当然ながらこれら肉や食材にはお金がかかります。毎日肉を1kgも2kgも買えば、出費も相当な額になるでしょう。例えば、2023年一月の全国牛肉平均価格は100gあたり342円となっています。物価の高騰で徐々に値上がりしており、今後も値上がりが続くと思われます。この肉を毎日2kg購入するとなると、物価上昇の影響を考慮に入れなくても一日あたり6,840円の出費です。
これに家族分を加えたり、一ヶ月分まで算出すると、とてもじゃありませんが現実的ではありませんよね。購入した肉が問題なく消化吸収出来るならまだしも、消化吸収できない場合は便器にお金を棄てるようなものです。そんなことを続けるのは、よほどお金に余裕がある人でも不可能だと思います。
また、毎日毎日肉を食べ続けるのは精神的苦痛も伴います。いくらレシピや食べ方を工夫しても、毎日食べていれば当然飽きてきます。食べたくもないのに健康のために食べ続けることは、もはや苦痛でしかありません。
そんな事をしてまで健康を手に入れることに何の意味があるのでしょうか。人生において重要な事は、健康的な食事を追求する事ばかりではありません。食事を楽しむことや食べたことがない食べ物を食べる事も、人生の喜びや楽しみ、幸福感を得るために必要な行為です。
ですので、健康のために同じ物を毎日食べることはオススメしません。これでは人生自体がつまらなくなってしまいます。つまらない人生は余計にストレスを増大させ、自律神経の乱れや消化能力の低下を引き起こします。そんなつまらない人生を送るよりも、必要な栄養素は都度補いながら毎日の食事を楽しむようにしましょう。
毎日の食事を楽しみながら必要な栄養素を追加する手段としては、サプリメントを取り入れるのが最も手軽で簡単です。サプリメントなら、普段の食事に加えて摂取する事で、食事では摂れないような高容量の栄養素を摂取することが出来ます。
例えば、ヘム鉄のサプリメント1カプセルあたり5mgのヘム鉄が含まれていたとしたら、2カプセル飲むだけで牛の赤身肉400g程度に相当します。一回2カプセルを三食食後に飲むだけで、牛の赤身肉では1.2kg相当です。また、タンパク質をプロテインで摂った場合は、そのプロテインの質にもよりますが1回あたり20g~30g程度のタンパク質が摂取出来ます。
これは、牛の赤身肉で換算すると300g〜400g程度になります。サプリメントの場合は普段の食事に加えて摂取しますので、摂取出来る栄養素の量はこれだけではありません。そう考えると、サプリメントを必要に応じて取り入れることがどれだけ効率が良くコストパフォーマンスが良いかが分かって頂けるでしょう。
ただし、サプリメントといってもピンからキリまであります。そこら辺で売ってるサプリメントを買ってきてただ飲めば良いというわけではありません。サプリメントの中には、胃や腸で全く溶けずに便で排泄されてしまうような粗悪品も多く流通しています。
加えて消化吸収能の問題もありますので、サプリメントやプロテインの種類も消化吸収能や状態に合わせて選んだり量を調節する事が重要です。このような最適な栄養アプローチを行うためにも、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。オーソモレキュラー療法とは、68項目にも及ぶ血液検査項目でその方の状態を解析し、その方に最適な栄養アプローチをご提案する栄養療法です。
お肉いっぱい食べれば大丈夫かと思ったけど、逆に食生活が偏ったり健康に悪かったりするんだね💧
そうだね、食事だけで必要な栄養素を補うのは至難の業だよ。むしろ体調を悪くする原因にもなるから、質の良いサプリメントを自分の状態に合わせて適切に使う方が良いね
貧血にも必ず原因がある。単に鉄分を補給せず、貧血になった根本原因から対処しましょう。
貧血には鉄分の摂取不足以外にも様々な原因が関係しており、胃腸機能の低下や婦人科疾患、溶血性貧血など様々な原因が関係しています。病院では貧血と診断されていなくても隠れ貧血に陥っている人も多く、注意が必要です。
また、ピロリ菌の感染やカンジダ菌の増殖、腸内環境の悪化や口腔内の環境の悪化などによっても貧血が引き起こされる場合があります。
この他にも自律神経の乱れやストレス、ガンなど様々な疾病や栄養不足が関係していて、ここでは解説しきれなかった原因や疾患が沢山あります。ですので、上述した原因も含め、人によって複数の原因が複雑に絡み合っていることも多く、検査もなしに適切な栄養アプローチを行うのは困難です。
例えば、肝硬変や肝障害によっても貧血になる事がありますし、腎機能が低下して貧血になっている方もいます。単に鉄の摂取量が少ないだけの方もいれば、鉄を十分に補給しても鉄が上手く吸収出来ない方もいます。同じように見える貧血でも、それぞれ全くアプローチは異なります。
貧血の種類と原因
- 鉄欠乏性貧血
鉄の摂取量が少ない場合に起こる貧血。消化吸収能の低下でも引き起こされることがある。 - 悪性貧血
葉酸やB12が不足した事による貧血。アルコール多飲や胃腸機能の低下、食事の偏りなどが原因となる。 - 溶血性貧血
赤血球がもろくなって壊れてしまう貧血。亜鉛不足や酸化ストレス、スポーツなど様々な原因がある - 再生不良性貧血
骨髄の造血機能が低下してしまう事で起こる貧血 - 腎性貧血
腎臓病など腎機能が低下したことにより、赤血球を作る働きが低下してしまう貧血 - 慢性炎症・炎症性疾患による貧血
関節リウマチや膠原病など、慢性炎症によって体内の鉄代謝が低下してしまう貧血 - 悪性腫瘍による貧血
ガンや腫瘍など悪性腫瘍によって出血したりがん細胞骨髄へ入り込むことによって造血が出来なくなってしまう貧血。胃がんでは胃の切除によって悪性貧血を伴うこともある。 - 肝硬変・肝障害による貧血
アルコール多飲やガンなどによって肝機能が低下し、タンパク質代謝や鉄代謝が低下して起こる貧血。赤血球の形が変形したり、壊れやすくなったりもする。 - 消化管・婦人科疾患など出血を伴う貧血
大腸ガンや胃潰瘍など消化管からの出血や、子宮筋腫など婦人科疾患による出血によって進行してしまう貧血。
このように貧血には様々な原因があり、個人個人バラバラの原因によって引き起こされています。同じ貧血に見えても対処法は全く異なりますので、これら原因となる要因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。
その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の血液検査を受けてみましょう。
オーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査項目に加え、消化吸収能の状態やピロリ菌感染の有無、甲状腺の検査、副腎疲労や短鎖脂肪酸検査、リーキーガット症候群検査などを必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。
複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの貧血の根本原因がどこから来ているのかが分かります。また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。
このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。
根本原因からきちんと対処していくことが出来れば、より安全、確実に貧血改善が出来る可能性が高まります。同じように見える貧血でも人によって全くアプローチが違いますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。
オーソモレキュラー療法の詳細については、下記ページからご覧頂けます。
また、検査をご希望の方は、上記リンクか記事最後尾のプロフィールに記載されている「オーソモレキュラー療法申し込みページ」からご相談下さい。検査に必要な手続きなどをご案内致します。
分子栄養学の実践は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用しましょう
オーソモレキュラー療法では、血液検査や各種検査の結果に応じて分子栄養学実践専用に設計されたサプリメントで栄養アプローチをしていきます。
分子栄養学実践専用サプリメントとは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。また、原材料には天然由来の生体内物質が使用されていたり、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。
そのため、分子栄養学実践専用サプリメントは、市販されているサプリメントや海外サプリメントと比べて非常に高価となっています。
しかし中には、「市販されているサプリメントや海外サプリメントを利用して実践したい」と思っている方も多いかもしれません。市販されているサプリメントや海外サプリメントは、分子栄養学実践専用サプリメントと比べて非常に安価です。
ですが、市販されているサプリメント海外サプリメントなどで販売されているサプリメントで分子栄養学を実践をするのはオススメしません。
市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、そもそも消化吸収能が低下した方や病態を抱えた方が摂取するようには設計されておらず、胃や腸でも全く溶けない粗悪品も流通しています。
また、原材料に人工的に加工されたものや合成されたもの、天然界には存在しない化学構造のものなどが使われていることもあり、これらを大量に摂取することはむしろ生体内の分子を乱してしまうことにも繋がります。
加えて、栄養素が酸化・劣化して効力を失っているものや、そもそも有効成分自体が殆ど含まれていないものなどもあります。このことから、市販されているサプリメントや海外サプリメントを使って分子栄養学を実践することはオススメしていません。
分子栄養学を実践する際は、このようなサプリメントの善し悪しを学ぶことも非常に重要です。分子栄養学実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの違いについては、下記の記事を参考にして下さい。
そして、分子栄養学・オーソモレキュラー療法を実践する際は必ず「分子栄養学実践専用サプリメント」を使用しましょう。
サプリメントは、きちんと消化吸収・利用されて初めて意味があります。分子栄養学実践専用サプリメントでは、その人それぞれの体質に合わせてアプローチが出来るよう、消化吸収能が考慮された設計や製造が行われていることが特徴です。
また、分子栄養学では一般的な量よりも遙かに多くの栄養素を摂取します。この時、栄養素同士が反応して効力を失ってしまったら意味がありません。分子栄養学実践専用サプリメントでは、成分同士が反応して効力を失わないよう、反応抑制のためのコーティングが行われていたりなど、非常に高品質なサプリメントとなっています。
このことから、分子栄養学を実践する際は、必ず分子栄養学実践専用サプリメントを用いるようにして下さい。
サプリメントは何を選んでもいいわけじゃないのか❗
そうだよ、サプリメントは同じように見えてもその中身や設計や全く異なっているんだ。質の悪いサプリメントを使うと逆効果になるから、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用に作られた作られたサプリメントでしっかりアプローチしてね
鉄分とは? 鉄分の働きと鉄代謝の基本、鉄欠乏性貧血に対するアプローチを分子栄養学的観点から解説まとめ
以上が、鉄の働きと鉄代謝の基本、鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチについてでした。
鉄にはヘム鉄や非ヘム鉄などの種類があり、それぞれ吸収経路や吸収率、安全性などに違いがあります。分子栄養学では、このような鉄の働きや代謝をよく理解することが大切です。
また、貧血については、赤血球やヘモグロビンが減少すること以外にも、貯蔵鉄であるフェリチンが減少している隠れ鉄欠乏性貧血を抱えている方が増えています。貧血かどうかは、このフェリチン値も検査して判断するようにしましょう。
貧血に対する分子栄養学的アプローチは、貧血に関連する様々な項目や検査を参考にし、なぜ栄養が不足してしまったのか、なぜ貧血ととなったかの根本原因からアプローチしていくことが大切です。決して、安易な自己判断による分子栄養学アプローチは行わないようにして下さい。
正しいオーソモレキュラー療法では、それぞれの消化吸収能力を考慮したり、病態を考慮したりと、個人個人に合わせた最適な栄養アプローチ(至適量)を行います。そして、この使用するサプリメントは何でも良いというわけではなく、きちんと消化吸収などが考慮されたオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを使用する事が大切です。
分子栄養学やオーソモレキュラー療法というと単にサプリメントを飲むだけの療法だと思われがちですが、この記事で解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。もし、オーソモレキュラー療法に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。
分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。
オーソモレキュラー療法の申し込み方法については、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で詳しくご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。
参考情報