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分子整合栄養医学と医学の違いとは? それぞれの役割と違いについて解説

近年、クリニックでは栄養療法や高濃度ビタミンC点滴など分子整合栄養医学を取り入れる所が増えてきました。また、健康意識の高まりによってインターネット上では様々な健康情報が飛び交っています。その中でも、分子栄養学や分子整合栄養医学、オーソモレキュラー療法といった言葉も多く目にするようになってきました。

この分子整合栄養医学とは一体どのようなものなのでしょうか? 分子整合栄養医学とオーソモレキュラー療法とでは、何が違いがあるのでしょうか?

今回は、医学と分子整合栄養医学の違いについてと、分子整合栄養医学の基礎についてわかりやすく解説します。

目次

分子整合栄養医学とは? 分子整合栄養医学における役割と、西洋医学、東洋医学における役割の違い

ナンナン

ねえねえ、最近よく分子整合栄養医学って言葉を耳にするけど、分子整合栄養医学って一体何なの❓ サプリメントを使う療法みたいだけど・・・

はる かおる

分子整合栄養医学はね、簡単に言うと身体のエネルギーや材料として使われる栄養をしっかり補給することで、身体本来の機能を取り戻す療法のことだよ。

ナンナン

へー、じゃあ栄養を摂ることで病気が治ったり良くなったりする療法ってこと❓

はる かおる

うーん、認識としては間違っていないんだけど、分子整合栄養医学は通常医療や医学と違って、治療では無いんだ。

ナンナン

えっ、薬の代わりにサプリメントを使って病気を治す治療だと思ってたけど、違うの❓❓

はる かおる

うん、確かにサプリメントを使って身体の調子を整えたり不調の改善を図ったりしているけど、その認識は間違いだね。サプリメントは薬の代わりにはならないし、分子整合栄養医学はサプリメントだけで病気を治す療法じゃないよ。このあたりの間違った認識も広まっているから、もう少し詳しく解説してあげるね。

私達の身近な医療として、お薬や手術で病気を治す西洋医学と、漢方や鍼灸などで治療を行う東洋医学があります。これらと分子整合栄養医学とでは、一体何がどのように違うのでしょうか?

まず、西洋医学と東洋医学、分子整合栄養医学では、その目的もやり方も全く異なります。現代医学とも言われる西洋医学では、主に「悪くなっているところを検査で調べて客観的に分析し、症状の原因となっている病巣を科学的根拠に基づいて排除しましょう」というのが西洋医学の基本的な考え方です。

例えば、頭痛がする、頭が痛い、足が痛いなどの症状に対し、血液検査やレントゲンなどの画像診断、触診や問診などの検査を行います。そして、これら検査結果を統合して可能性のある疾患を絞っていき、病気かどうかの診断を行います。

もし、この時に病気と診断できた場合は、主に原因となっている部位に対してのみ治療薬を投与したり、手術を行うなどして治療を行います。このように、西洋医学では科学的根拠に基づく原因のハッキリした病態が得意です。

もう一つの東洋医学では、「病気や不調が引き起こされる背景には必ず原因があるとし、体全体をみてその根本原因から改善させていきましょう」というのが東洋医学の考え方となります。

例えば、西洋医学では頭が痛いという症状があった場合、脳神経外科を受診して画像診断を行います。そこで特に病気と判断出来なければ、痛み止めを処方されて治療はいったん終わりです。

対して東洋医学では、なぜ頭痛が起きているのかを、頭痛以外の症状や状態を伺いながら根本原因を探っていきます。一般的に、同じ頭痛の症状でも、その他の症状については人によって様々です。これら人それぞれ異なる症状をお伺いし、どのような体質で、どうなっているから頭痛が出ているのかを見ていくのが東洋医学です。

具体的には、生活環境や季節性のストレスが無いか、花粉症や冷え性などが無いかなど、患者さんの体全体に起こっている症状をお伺いします。この時、患者さんの状態が本来の健康な状態からどのようにバランスを崩しているかを独自の診察法を用いて判断します。

そして、その崩れたバランスを正したり、自己治癒力を高めるために漢方や鍼灸などで改善を図っていきます。このように、東洋医学では個人差を重視し、原因まで追及して治療を行っていくのが東洋医学です。東洋医学では、「なんとなく調子が悪い」など病気とは診断されていないけど不調が起こっている「未病」と呼ばれる状態に対し、体全体から整えていくことを得意としています。

この2つはどちらも得意とすることが違い、どちらが良いとか優れているとかではありません。西洋医学はウィルス感染や細菌感染、ガン、骨折などの治療においては多大なる貢献と実績があります。一方、東洋医学では原因のハッキリしない不調に対する治療や、体質改善が得意です。主にスポーツや美容、介護など様々な分野で重宝されています。どちらも、それぞれ得意・不得意を考慮してうまく使い分けたり、組み合わせたりすることが大切です

ナンナン

へー、西洋医学と東洋医学でそんな違いがあったんだね💦 この違いもよく知らなかったよ💦

はる かおる

現代における医療は、この2つの医学でアプローチすることが一般的だね。

分子整合栄養医学とは?

では、分子整合栄養医学とは一体どのような医学なのでしょうか?

分子整合栄養医学(ぶんしせいごうえいよういがく)とは、食物から摂取した栄養素や食品成分が、体内でどのように働くかを分子レベルで解明する学問のことです。分子整合栄養医学は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナス・ポーリング博士(1901-1994 年)とエイブラム・ホッファー博士(1917- 2009 年)により確立されました。

分子整合栄養医学は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナスポーリング博士とエイブラムホッファー博士により確立された

先ほどの医学は、病気を予防したり治療を行うことが目的なのに対し、分子整合栄養医学では、私たちの身体がもつ本来の力を最大限に引き出し、オプティマムヘルス(単に病気を予防するだけに限らず、心身ともに最高・最善の健康状態)の実現を目指す事が最大の目的です。

分子整合栄養医学は、生体内の分子を整えて生体機能を向上させる学問。分子整合栄養医学は、分子栄養学やオーソモレキュラー療法とも呼ばれている。

分子整合栄養医学は、人によって分子栄養学(ぶんしえいようがく)やオーソモレキュラー療法、オーソモレキュラーニュートリション、栄養療法などと呼ばれることもありますが、基本的にどれも同じものを指しています。

これら言葉の利用傾向としては、基礎理論である座学に対して分子栄養学や分子整合栄養医学などと呼ぶことが多く、対してクリニック等で提供している分子整合栄養医学を元にしたサービスに対しては、オーソモレキュラー療法や栄養療法と呼ばれる傾向にある印象です。

このサイトでも、わかりやすく解説するために分子整合栄養医学の基礎理論を解説する場面においては「分子栄養学」とし、クリニックで提供されている分子整合栄養医学を元にしたサービスを解説する場面においては「オーソモレキュラー療法」という表現を用いています。

オーソモレキュラー”Orthomolecular”という言葉の意味は、ギリシャ語の「正しい」という意味に由来するortho(正常な)と molecule(分子)を組み合わせた造語です。この言葉は、ノーベル賞受賞者でもあり、分子栄養学の第一人者であるライナス・ポーリング博士が提唱しました。

分子整合栄養の理念

多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる。

ノーベル化学賞受賞 ライナス・ポーリング博士

ポーリング博士は、自身が研究する鎌状赤血球症という病気の背景に、ヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見し、「分子病」という病気の概念を新たに確立したことで知られています。

鎌状赤血球症とは、本来丸いお餅の真ん中をへこませたようなへん平な形をしている赤血球が、草を刈る鎌のような三日月に変形してしまう病気です。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っていて、本来のへん平な形をしていれば、細い毛細血管内でも柔軟に形を変えて通り抜けることが出来ます。

左が正常な赤血球で、右が鎌状赤血球症。正常な赤血球はお餅の真ん中をへこませたような形をしているのに対し、鎌状赤血球症では三日月型に変形している。

しかし、赤血球が三日月型に変形してしまうと、毛細血管など細い血管が通れなくなって詰まってしまい、壊れやすくなってしまいます。その結果、慢性溶血性貧血、慢性疲労、疼痛、臓器障害など、さまざまな症状につながってしまうのです。

ポーリング博士は、この鎌状赤血球症という病気の背景に、赤血球の中のヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見しました。ヘモグロビンは、アミノ酸など様々な分子が組み合わさって出来ています。このヘモグロビンに含まれるたった1つのアミノ酸分子の違いが、鎌状赤血球症の原因となってしまうのです。この発見こそが、分子の乱れが人間の病気の原因になることを世界で初めて示した瞬間でした。

それ以降、ポーリング博士は自身の研究を通じて「生体内の分子の乱れが病気の発症に関与しているのではないか」と考えるようになります。そして、前述した「多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる」事を提唱したのです。

これは、私たちの身体の中に正常にあるべき分子(molecule)を至適濃度に保つ(ortho)充分量の栄養素(nutrition)を摂取し、それを適切に消化・吸収・代謝することによって生体機能が向上し、病態改善が得られるという理論です。

ここで言う分子とは、私達が普段摂取しているタンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなどの栄養素のことを指しています。例えば、私達の身体は200種類以上、およそ数十兆個の細胞が集まって出来た細胞の集合体です。これら細胞が集まることで心臓や脳、肺や血管、皮膚や筋肉などの組織が作られ、組織が集まることによって私達の身体が作られています。

私達の身体は、数十兆個の細胞が集まって構成されている。この細胞は、すべて私達が食べた食べ物(栄養素)で出来ている

では、この細胞自体を作ったり、動かしたりするエネルギー源や材料は一体何なのでしょうか?

これこそが、「タンパク質」「脂質」「糖質」「ビタミン」「ミネラル」などの栄養素(分子)であり、生命活動を営むために欠かせない成分のことです。

細胞は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどを利用して身体を作ったり、動かしたりしている

私達の皮膚や組織などの細胞を一つ一つもっと深く見ていくと、やがてこれ以上小さく見ることが出来ない「分子」という状態になります。

分子はビタミンやミネラル、アミノ酸などの分子(栄養素)のことで、これら分子(栄養素)が集まって構成された物が細胞です。

そして細胞は、糖質や脂質などの分子(栄養素)をエネルギーとして利用することで体温を作り出したり、身体を動かしたりしています。

この細胞は、すべて栄養素で出来ていて、私達の食事を通じて必要な栄養素を得て生命活動を行っている

私達の筋肉や臓器、骨なども、タンパク質やミネラル等で作られている事はご存じですよね。これらタンパク質やミネラル、糖質や脂質などは、胃や腸などの消化管を通じて消化(繋がった分子をバラバラに)した後、血管を通って細胞に必要な分子が送り届けられています。

つまり、私達は食事を通じて細胞に必要な分子(栄養素)を得て、組織の機能を維持し、生命活動を行っているのです。もし、この時に胃や腸などの消化管に問題があったり、食事の内容やバランスが悪くなったりしていると、体内の分子(栄養素)の量やバランスが乱れてしまい、細胞の正常な働きが出来なくなってしまいます。

この乱れた分子(栄養素)を個人個人、必要な量を補給することで、細胞の働きを本来あるべき状態に整え、病態の改善や予防、オプティマムヘルス(心身ともに最高・最善の健康状態)を目指すのが分子栄養学です。

具体的には、分子栄養学では消化管である口、胃、小腸や大腸、胆嚢などの状態や、酵素の量、働き、ホルモンや自律神経など身体の代謝全般と、個人個人の状態や病態を考慮し、「分子栄養学実践専用サプリメント」を用いて栄養補給を行います。また、分子栄養学では消化、吸収した栄養素が血液に運ばれて実際に利用されるまでを考慮します。

例えば、ピロリ菌に感染して胃粘膜が荒れていたり、ストレスがかかったりして胃腸の機能が低下しているとタンパク質などの消化能力が低下します。タンパク質の消化能力が低下していると、タンパク質が体内に上手く取り込めなくなってタンパク質が不足し、貧血や自律神経の乱れなど様々な不調が引き起こされてしまいます。

分子栄養学ではこのような消化吸収能力を調べるために血液検査を行い、必要であればピロリ菌の除菌など西洋学的アプローチも行います。その上で、その人の消化能力に合わせて最適なタンパク質の摂取量や消化酵素の摂取量などのアドバイスを行っています。

そして、単に治療や病気の予防、足りない栄養を補給するといった枠に捕らわれず、「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」など個人的な目標や要望に合わせて最適な栄養アプローチを行っていく事が最大の特徴です。

対して一般的な医学では、病気や不調に対する治療は行いますが、このような消化吸収能の低下や個人差に合わせた栄養補給、生体内分子の乱れなどの考慮は行っていません。このあたりが医学と分子整合栄養医学の大きな違いです。

このように、分子整合栄養医学は、西洋医学や東洋医学と比べてその中身は全く違うものです。分子整合栄養医学については下記の記事で更に詳しく解説していますので、もっと詳しく知りたい方は是非ご覧下さい。

ナンナン

えっと・・・一般的な医学ではお薬や漢方薬を使って身体を整えていて、分子栄養学では代わりにサプリメントで身体を整えるって事だよね❓ そしたら、やっぱり分子栄養学はサプリメントで病気を治す療法なんじゃないの❓❓ 病院のお薬の中にも、ビタミンBとかDとかあるしさ。それと何が違うの❓

はる かおる

確かに、病院で処方されるお薬の中には、ビタミンB製剤やビタミンD製剤、カルシウム製剤なども扱っているね。でも、栄養とお薬はそれぞれ役割も働き方も全然違うよ。具体的にどのように違うかの例も解説してあげるね

医療で使われる薬の役割と、分子栄養学で使われるサプリメントの役割の違い

分子栄養学では、病気の改善や予防のためにサプリメントで必要な栄養素を摂取して頂く事があります。例えば、骨粗しょう症の場合であれば、カルシウム・マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどのサプリメントです。

対して、病院で行われている骨粗しょう症の治療においても、カルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK製剤、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」などのお薬が処方されています。

このように見ると、分子栄養学では単に薬をサプリメントに置き換えただけなのでは?と感じますよね。

しかし、薬とサプリメント、分子栄養学と一般的な医療では目的も役割も全く異なります。分子栄養学を理解する上で、この目的と役割の違いをしっかりと理解することが重要です。

薬と栄養素の役割の違い。薬は主に症状を抑えるためのもの。対して栄養素は壊れた細胞を修復するためにある。

まず、薬と栄養素ではその役割が異なります。薬の役割は、症状を抑えたり、病気の悪化を防ぐためのものです。対して栄養素の役割は、壊れた細胞を修復するための材料として補給する物になります。

先ほどの骨粗しょう症の例で言えば、骨を壊してしまう破骨細胞の働きを強制的に薬で抑えたり、骨を形成する骨芽細胞の働きを薬によって強制的にコントロールしたりするのが現代の医療であり、医学です。

このお薬によるアプローチでは、体内で行われている代謝を薬によって強制的にコントロールする事から、必ず「副作用」が伴います。分かりやすい例で言えば、ビタミンD製剤は食品に含まれるビタミンDに比べて、過剰摂取による高カルシウム血症や高カルシウム尿症のリスクが高く、他にも吐き気や下痢などの症状を引き起こす可能性があります。

これは、ビタミンD製剤に含まれるビタミンDが「活性型」であるためです。食品に含まれているビタミンDに比べて働きが強いことから、ビタミンD製剤の使用は医師の管理下の元、慎重に投与量が決められて処方が行われています。

対して栄養素の場合、薬と比べて重篤な副作用はあまりありません。食品やサプリメントに含まれている栄養素は、薬と違って生体内で自由にコントロールする事が出来ます。この、体内での栄養素の働きを身体にまかせるのか、それとも強制的にコントロールするのかが、薬と栄養素の大きな違いです。

分子栄養学と薬物療法の違い

薬物療法

  • 既に活性化したもの(薬物)を投与する
  • 栄養素や体内での働きを強制的にコントロールする
  • 速効性がある、誰にでも同じように効果が期待出来る

→副作用がある

分子栄養学

  • 天然物を投与する
  • 栄養素の利用は生体内のコントロールに任せる
  • 速効性は無いが、人それぞれにあった効果が期待出来る。

→副作用が少ない

では、一見すると同じ栄養素が含まれているように感じる薬とサプリメントですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

薬の中にもビタミンA製剤やビタミンD製剤など栄養素の名前が付いたお薬がありますし、サプリメントの中にもビタミンAやビタミンDなどがあります。同じ名前が付いているので、どちらも同じように感じますよね。

しかし、薬とサプリメントではその働きが全く異なります。その理由は、薬に含まれているのが「活性型」であるのに対し、食品やサプリメントに含まれているのは「前駆体」であるためです。

栄養素には、同じように見えても「活性型」と「前駆体」があります。食品などに含まれる栄養素は、体内に入ってもそのままの形では働くことが出来ません。いったん身体の中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。

前駆体は、この活性型になる前の状態を言い、食品やサプリメントに含まれる栄養素のことです。体内では、酵素の働きによって必要に応じて前駆体から活性型に変換されて利用されています。対して活性型の栄養素とは、骨粗しょう症の治療に用いられているビタミンD製剤や、ニキビの治療薬として使われている「ビタミンA製剤」などです。お薬で使われる栄養素は、既に活性型として配合されているため、速効性があり、誰に対しても同じように効果が期待出来ます。

例えば、ビタミンAには「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」という3つの種類があります。また、ビタミンAの一種と言われているβカロテンも必要に応じてレチナールに変換されています。このうち、「βカロテン」「レチノール」が前駆体で、「レチナール」と「レチノイン酸」が活性型です。(※正確にはレチノール、レチナール、レチノイン酸共に活性型ですが、ここでは分かりやすくするためにレチノールを前駆体としています)

単にビタミンAといっても、その中には様々な種類がある。特に前駆体であるレチノールやβカロテンと、活性型であるレチノイン酸は働きが異なるので、区別することが大切

レチノールは主にレバーや魚の脂肪部分、肝臓部分に含まれていて、普段私達が食品から得られるビタミンAです。また、βカロテンは主に緑黄色野菜に含まれています。これらは体内で必要な量を必要なだけ、必要に応じて「レチナール」や「レチノイン酸」に変換(活性化)されて利用されています。

対して、皮ふ科などの治療で用いられているのが、既に活性型のビタミンAである「レチノイン酸」です。レチノイン酸には細胞の分化・増殖を促進し、皮膚の細胞分化やターンオーバー(新陳代謝)を調節する働きがあります。このことから、主にニキビの治療薬として使われています。

このように聞くと、栄養素は前駆体で摂らずに活性型で摂った方が効果が高いのでは?と思いますよね。しかし、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

例えば、レチナールは主に網膜に存在し、視覚に関与するのに対し、レチノイン酸では細胞の分化・増殖に関与しています。同じビタミンAに属していますが、この2つは全く働きが異なります。もし、眼の健康を目的としているのに、同じビタミンAだからと「レチノイン酸」を大量に摂取してしまった場合、レチナールとしての働きは得られないどころか、レチノイン酸による副作用によってむしろ健康を害してしまう結果になりかねません。

また、ビタミンAといえばよく過剰症について言われることがありますよね。ビタミンAを摂り過ぎると、死に至るなど危険が伴うというものです。

ビタミンA過剰症や副作用報告は合成のレチノイン酸の大量投によるもので、前駆体であるレチノールでテストされたものではない

この点については、前駆体である「βカロテン」や「レチノール」ではそのような危険性はありません。なぜなら、副作用の報告のすべては活性型である「合成のレチノイン酸」を大量投与した結果であって、決して「レチノール」や「βカロテン」でテストされたものではないからです。

ビタミンA過剰症についての注意喚起では、その情報の多くが活性型のレチノイン酸と「レチノール」「βカロテン」などを混同しています。基本的にレチノールやβカロテンでは、活性を持たないことから安全性が高いビタミンAです。

加えて、「レチノール」と「レチナール」は体内で必要に応じて相互に変換することができ、体内でビタミンAを運ぶ際や貯蔵する際にも「レチニルエステル」というエステル化(コーティングのようなもの)が行われます。例え食品からビタミンAを摂りすぎたとしても、体内では「レチナール」を活性の低い「レチノール」にしたり、レチニルエステルという非常に安定性が高い状態にして肝臓に貯えることが出来るのです。

そのため、「レチノール」や「βカロテン」をサプリメントで摂ったとしても、基本的に過剰摂取の心配はありません。逆に、レチノイン酸はレチノールへと変換できないことから、薬によるレチノイン酸の大量投与は過剰摂取の危険性が高まってしまうのです。

また、体内では必要に応じて「レチノイン酸」に活性化して利用されますが、この体内で作られる「レチノイン酸」と薬で用いられる「レチノイン酸」の作用は異なります。

例えば、体内でレチノイン酸が生成される場合、その生成量やタイミングは生体の調節機構によって厳密に制御されています。一方、薬など外部から投与される場合は、一度に大量のレチノイン酸が体内に供給されるため、自然な生体調節とは異なる影響を及ぼす可能性が高くなるのです。

つまり、体内で作られるレチノイン酸は、作られる量や作られた後の分解量、分解するタイミングなどを身体がコントロールできるのに対し、外部から投与したレチノイン酸は、身体がコントロールする事が出来ません。このため、外部から投与するレチノイン酸の作用と、身体の中で作られるレチノイン酸の作用は、同一視してはならないのです。

このように、同じ栄養素に見える薬とサプリメントでは、その働きも目的も全く異なります。医学は活性型の薬を投与して体内での働きを強制的にコントロールするのに対し、分子栄養学では前駆体の栄養素であるサプリメントを用いて、栄養素の利用は生体内のコントロールに任せます。

この体内での栄養素の働きを理解し、「なぜ栄養素が不足してしまったのか?」や「体内で栄養素がきちんと働くためにはどうすればいいか?」を考えてアプローチを行っていくのが分子栄養学であり、医学との大きな違いです。

ナンナン

薬とサプリメントって、働きが全く違うのか❗

はる かおる

そうだよ。同じ栄養素の名前だからって、薬をサプリメントのように栄養補給で使用するのは危険なんだ。分子栄養学を理解する上で、この違いを理解することが重要だね。

分子栄養学的アプローチと、医学的なアプローチの具体的な違い

では、分子栄養学的なアプローチとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

分子栄養学では、前述したように前駆体の栄養素をサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて補給を行います。この時、単に足りない栄養素を補給するだけで無く、個人差に応じた最適な摂取量の考慮や、補給した栄養素がきちんと消化・吸収されているか、補給した栄養素が体内できちんと活性化されて利用されているかを考慮して行われているのが分子栄養学です。

どういう事かというと、私達が食べた食べ物は、胃で消化され、腸から吸収されていますよね。そして、腸から吸収された栄養素は肝臓で代謝され、その後は血液にのって全身の細胞へと運ばれ、必要に応じて利用されています。

そして、栄養素というものは単体で機能することは殆どありません。他のビタミンやミネラル、タンパク質などの助けを受けたり、協力したりして働きながら、利用されています。この一連の流れがきちんと行われるために、その人の状態に合わせた至適量の栄養補給を行っていくのが分子栄養学的アプローチです。

例えば、先ほど解説した「ビタミンA」の場合、ビタミンA(レチノール)を全身に運ぶためには、「レチノール結合タンパク質」というタンパク質が欠かせません。もしタンパク質が不足してしまっている場合は、ビタミンA(レチノール)が血液に乗せて運べなくなってしまい、ビタミンA不足につながってしまいます。

ビタミンAは「レチノール結合タンパク質」に結合して全身に運ばれる。この材料となるタンパク質が不足していると、ビタミンAの不足に繋がる。

また、ビタミンAを活性化して利用するためには、肝臓で作られる酵素の働きが必要です。具体的には、レチノールからレチナールへの変換にレチノールデヒドロゲナーゼ(レチノール脱水素酵素)、レチナールからレチノイン酸への変換にはアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アルデヒド脱水素酵素)やレチナールデヒドロゲナーゼ(レチナール脱水素酵素)という酵素が関与しています。1

これら酵素は肝臓で作られていることから、肝臓が元気である事が重要です。特に「アルデヒドデヒドロゲナーゼ」は、アルコールの解毒にも関与している酵素ですので、お酒を飲みすぎていた場合はこれら酵素を消耗し、ビタミンAの活性化にも影響を与えてしまいます。

肝臓はアルコールを無害な形に解毒してくれる働きがある。この解毒に使われる酵素とビタミンAの活性化に使われる酵素は同じ。

加えてこれら酵素を活性化して利用するためにはビタミンB群の働きも必要です。先ほどのレチノールからレチナールへの変換に必要なレチナールデヒドロゲナーゼの活性化にはビタミンB1やB2、ビタミンB3(ナイアシン)やビタミンB6が必要ですし、レチナールからレチノイン酸への変換に必要なアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性化にはビタミンB3が必要です。

さらに、これらビタミンB群は肝臓で活性化されて初めて機能を発揮します。この肝機能が低下していた場合、ビタミンB群の活性化が抑制され、ビタミンAの代謝も悪化してしまいます。

酵素の働きに必要なビタミンB群は、肝臓で活性化されてはじめて全身で働けるようになる。このことから、栄養素を利用するためには肝臓の健康状態が鍵となる。

肝臓はビタミンAを貯蔵したり、必要に応じて放出したり活性化したりしている臓器です。肝臓疾患や慢性肝炎などでは、ビタミンAの貯蔵量や代謝量が低下してしまう原因になってしまいます。

このように、1つの栄養素だけを見ても、様々な栄養や臓器の働きが関係している事が分かります。これら臓器での栄養素の代謝や、栄養素が身体の中でどのように運ばれたり使われたりしているかを理解し、その人にとって至適量となる栄養素を補給していくのが分子栄養学です。

先ほどのビタミンAで言えば、その人の体内でビタミンAが不足してしまった原因は、もしかするとタンパク質不足が関係しているかも知れません。このタンパク質が不足してしまった原因は、もしかするとピロリ菌に感染していて消化能力が低下しているのかも知れませんし、機能性ディスペプシアやSIBOなど、栄養を吸収する働きをしている腸に何かしら問題があることも考えられます。

また、ビタミンB群の不足や、肝機能の低下も影響しているかも知れません。それとも、単にビタミンAの摂取不足であるとも考えられますし、ビタミンAの吸収に不可欠な胆汁の分泌に問題があることも考えられます。

このように、栄養素1つとっても、体内でうまく働けずに不足してしまう原因は様々です。ですが、このような憶測をもとに勝手にその人の状態を決めつけることは出来ませんよね。そこで、分子栄養学では68項目に及ぶ血液検査(尿検査と唾液検査を含む)を実施し、その人の栄養状態や生活習慣などを把握する検査を行っています。

KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査を実施し、栄養状態や生活習慣病の状態などを把握している

この検査では、肝臓で作られている酵素の量や、血清タンパク量、血球量などを調べることにより、体内でタンパク質やビタミン、ミネラル等が十分に足りているか、上手く代謝出来ているかどうかを調べています。また、血糖値や脂質代謝関連などを見る事によって、血液の状態や摂取エネルギーが足りているかどうかも判断しています。これらは単一の項目で見るのでは無く、複数を組み合わせて総合的に見る事が重要です。

加えて、胃病変を調べるためのピロリ菌抗体検査や、胃酸の分泌量などをしらべるペプシノゲン量の検査、肝臓の状態を調べる検査や糖尿病の検査、SIBO(小腸内細菌増殖症)やリーキーガット症候群(腸漏れ症候群)などの検査をオプションで追加する事によって、更に詳しく状態を把握できるようにもなっています。

もし、これら検査を行って問題が発覚した場合、必要に応じて画像検査や超音波検査などの目視で確定診断を行い、必要に応じて西洋医学的アプローチを取り入れていることも特徴です。

KYBクラブでは、消化吸収能力を調べるために初回検査時にピロリ菌感染の有無とペプシノゲンの分泌量を測定するPG1・PG2の検査をオススメしている。

例えば、ケンビックスのオーソモレキュラー療法ではKYB運動(健康自主管理運動)開始初期(ピロリ菌の除菌が保険適用になる前)からHp抗体やPG1/2の血液検査とピロリ菌除菌治療を取り入れていました。その結果、多くの方がピロリ菌除菌により栄養状態が上昇し、栄養状態の改善効果を立証しています。

そして、ケンビックスでは、血液検査を受けた方に下図のようなレポートを発行しています。このレポートは、血液検査結果や栄養相談シートに基づいて専門医が一人一人を解析し、個別に作成しているものです。

ケンビックスのオーソモレキュラー療法で発行されるレポートの例

メディカルレポートでは、血液検査結果についての総合評価や解説、前回からの変化などが記載され、現在の身体の状態が分かります。また、栄養レポートでは、血液検査結果の分析に基づく栄養アドバイスが解説されており、どの栄養素をどのくらい摂ったら良いのかが解説されています。

このような、栄養状態の把握や病気の予測、予防を目的としたスクリーニングの血液検査を行い、ピロリ菌の除菌など必要に応じて西洋医学的な治療も取り入れつつ、その人がきちんと栄養を消化吸収、利用出来るように至適量の栄養補給を行っていただくのがオーソモレキュラー療法(分子栄養学)です。

つまり、オーソモレキュラー療法とは、科学的根拠に基づいた西洋医学的アプローチを取り入れつつ、「病気や不調が引き起こされる背景には必ず原因があるとし、体全体をみてその根本原因から改善させていきましょう」という東洋医学的な考えも併せ持った、完全個別アプローチを行っていくものと例えることが出来ますね。

ここまでの説明でもまだ分かりにくいと思いますので、もう少し具体的な例で見てみましょう。先ほどのビタミンAでの場合、仮にAさんの検査結果が次のような状態だったとします。

Aさんの検査結果例
  • Hp抗体陽性
  • GOT、GPT高値
  • お酒多くを飲んでいる
  • 脂肪肝と診断されている
  • 総タンパク、アルブミン低値

このような場合、分子栄養学では、まずは必要に応じてピロリ菌の除菌を行い、胃腸機能と胃粘膜の修復を試みます。そして、お酒を飲んでいることから肝機能の低下とビタミンB群の不足、胃腸機能と肝機能の低下によるタンパク質不足を考慮し、次のような栄養補給を行って頂く事が考えられます。

Aさんの分子栄養学的アプローチの例
  • 消化酵素
  • プロテイン
  • ビタミンB群
  • ナイアシン
  • グルタチオン
  • ウコン
  • ビタミンA
  • ビタミンD
  • ビタミンC
  • 亜鉛

※それぞれの摂取量は個人差に応じて最適な量が異なります。

この栄養補給では、主にピロリ菌によってダメージを受けた胃粘膜の修復と、お酒によってダメージを受けた肝臓のケアが考慮されています。胃粘膜にダメージを受けていたら場合はタンパク質の消化能力が低下することから、消化酵素と合わせて消化の良いプロテインを選択することが必要です。併せて、肝機能のケアにビタミンB群やグルタチオン、ウコン、胃粘膜の修復にビタミンAやビタミンD、亜鉛などが必要です。

他にも、貧血があるかどうかや、腸内環境の状態によってもアプローチは変化します。分子栄養学では、単にビタミンAが不足しているからビタミンAを摂取すれば良いというのでは無く、ビタミンAをきちんと消化吸収、利用するために必要なその他の栄養素や臓器の状態も加味していることが特徴になります。

もう一つ、骨粗しょう症の例でも見てみましょう。分子栄養学の場合、骨粗しょう症のケアには、カルシウム・マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどのサプリメントを用いています。併せて、必要に応じて西洋医学的なアプローチも取り入れ、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」なども取り入れることがあります。

一方、病院で行われている骨粗しょう症の治療においても、カルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK製剤、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」などのお薬が処方されています。

この2つのアプローチは非常に似ていますが、一体どこが違うのでしょうか? 大きな違いとしては「マグネシウム」の摂取を重視し、身体が自然な形でカルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどが使えているかどうかです。

骨を形成するためにはカルシウムに加えてマグネシウムも同時に摂取することが重要。一般的な医療では、カルシウム製剤が処方されるのに対し、分子栄養学ではカルシウムとマグネシウムも同時に摂取する。

現在の西洋医学的な骨粗しょう症の治療法では、基本的にマグネシウムは処方されずに「カルシウム製剤のみ」処方されています。これは、お薬で使われているマグネシウム製剤は骨粗しょう症の治療目的には当てはまらず、主に便秘の解消を目的とした下剤としてや、胃の不調に対する制酸剤として処方されているためです。

また、骨粗しょう症の治療で用いられるビスフォスフォネート薬とマグネシウムを同時に摂取すると、マグネシウムがビスホスホネート薬の吸収を低下させてしまうことが知られています。このため、マグネシウム製剤の同時処方は殆ど行われていません。

対して分子栄養学では、骨粗しょう症の治療においてもカルシウムと同時にマグネシウムの摂取も重視しています。これは、骨の形成にはカルシウム以外にもマグネシウムが必要な点と、ビタミンDの活性化にマグネシウムが必要なためです。分子栄養学では、必要な栄養素を前駆体で補給し、後の利用は身体に任せることで、より自然に体内で栄養が使える状態を目指しています。

カルシウムの吸収促進、利用にビタミンDが必要な事は有名だが、ビタミンDを利用するためにマグネシウムが必要な事はあまり知られていない。

そして、分子栄養学ではカルシウムの吸収やビタミンDの吸収、利用に至るまでを考慮するのが特徴です。例えば、カルシウムの吸収を促進したり、阻害したりしてしまう原因としては次のような影響があります。

カルシウムの吸収を促進する因子と阻害する因子。カルシウムを摂取する際は、吸収を促進してくれる成分を含む食べ物を一緒に摂るのが良い。

カルシウムの吸収を促進するもの

  • 胃酸
  • アミノ酸やペプタイド
  • 乳糖
  • ビタミンD
  • マグネシウム

カルシウムの吸収を阻害してしまうもの

  • H2ブロッカー、ステロイドなどの服薬
  • 高リン酸の食事
  • 高食物繊維の食事
  • 高脂肪な食事
  • ストレス

カルシウムは胃酸の分泌量やアミノ酸(タンパク質)によっても影響を受けるので、分子栄養学ではピロリ菌感染の有無など胃腸機能もチェックします。

また、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、吸収するためには十分な胆汁の分泌量も必要です。この胆汁がしっかり分泌されているかどうかや、吸収したビタミンDを活性型に変換するために重要な役割を果たしている肝臓と腎臓の健康状態も重視します。

加えて、吸収を阻害してしまうような食生活やストレスなど生活習慣も見直すようアドバイスしたり、運動して筋肉をつけることも積極的にアドバイスを行っています。

これは、単に骨を作る材料であるカルシウムやマグネシウムなどを摂ったとしても、骨に刺激が無ければ骨の修復は行われないためです。併せて、骨を支えているのは筋肉であることから、筋肉量も重視します。このため、骨粗しょう症のアプローチにおいても、タンパク質の摂取量やビタミンB群の摂取量など、骨に関する栄養素以外のアプローチも同時に行います。

また、糖尿病など他の疾病によっても骨粗しょう症になることから、他の疾病や臓器の状態もトータルで見てアプローチしていきます。このように、骨粗しょう症のアプローチでも様々な面を考慮し、根本原因から解決していくようアプローチを行っていくのが分子栄養学です。

対して西洋医学的な骨粗しょう症の治療では、ビタミンD製剤として活性型のビタミンDが処方されるなど、体内での栄養素の働きを人為的にコントロールします。また、アプローチにおいても骨に特化したアプローチしか行われません。

つまり、西洋医学的な薬とは、多くの場合、症状に対して上から叩くものです。問題が引き起こされた部分のみの対処しか行われないので、その他の臓器の状態などは考慮されていません。

薬は症状を抑えることには役立つが、身体を修復する材料としては不十分。薬と栄養補給は組み合わせて、行っていく事が大切
分子栄養学は自費診療となるので高額となる。一方で、病院での治療は健康保険制度によって破格の値段で受ける事が可能。この2つは、どちらが優れているとかでは無く上手く組み合わせることが大切。

これに比べて分子栄養学では、個人個人の状態や臓器の機能等も把握し、個人差に応じた最適な摂取量の考慮や、補給した栄養素がきちんと消化・吸収されているか、補給した栄養素が体内できちんと活性化されて利用されているかを考慮して行われています。

単に薬をサプリメントに置き換えたり、対処療法的に足りない栄養素を補給したりしているわけではありません。このような、各臓器の働きと栄養素の働きを理解し、身体の機能を本来あるべき状態に整えていくのが分子栄養学であり、医学との大きな違いです。この2つは、どちらが良いとか優れているとかでは無く、お互いを上手く組み合わせて行っていく事が大切です。

ナンナン

なんとなく分子栄養学について分かってきた❗ 分子栄養学は単に薬をサプリメントに置き換えただけの療法かと思っていたけど、元々のやり方や考え方には大きな違いがあるんだね❗

はる かおる

そうそう。このあたりの違いをしっかりと理解することが、分子栄養学を理解する上で重要だね。ただ、中には分子栄養学をしっかり理解していない人が分子栄養学の情報を発信していることもあるよ。このあたりの情報には十分注意してね。

間違った分子栄養学の情報に注意!

近年、インターネットやSNSが発展したことから、健康に関する様々な情報が飛び交っています。分子栄養学においても、分子栄養学を学べるセミナーや講座が増えた事によって、これらを学んだ人達による情報発信が急激に増えてきました。

このような中で問題となってくるのが、間違った分子栄養学の情報です。分子栄養学の情報の中には間違った情報や、分子栄養学をしっかり理解せずに情報発信されたもの、独自理論を組み合わせたものや、自身の経験のみで語られた客観性、エビデンスのない情報なども発信されています。酷いものでは、全く分子栄養学でも何でも無いのに分子栄養学だと語られているものもあります。

例えば、以下のような情報は間違った分子栄養学の例です。

  • メガドーズ、メガビタミン療法
  • 食事内容の改善や、特定の食材を摂取するだけで至適量の栄養が得られ、病気が改善するとしているもの
  • この不調にはこの栄養素」といったように、単に不調の症状だけを元に栄養アプローチを行うもの
  • 海外サプリメント、単に安価なサプリメントなど、安全性、有効性が確認されていないサプリメントで分子栄養学の実践をおこなっているもの
  • 前駆体では無く、活性型の栄養素を用いているもの
  • ファスティングと分子栄養学を組み合わせるなど、独自理論が組み合わされたもの
  • 薬は一切使わない、栄養療法だけで病気が治るなど極端なもの
  • 病態や不調の根本原因を調べるための検査に誘導しないなど、栄養欠損となった原因をきちんと調べずに行っているもの
  • 医師免許を持たない者が、血液検査データを扱う、サプリメントを処方する、食事指導を行うなど、医療機関を通さずに分子栄養学の指導を行っているカウンセラー など

このような情報は間違った分子栄養学であり、実践することで病態や体調が悪化するなどむしろ命に関わる危険性があります。事実、当方にもこれら誤った情報を元に実践した方からの健康被害に関するご相談も増えてきました。

現代では個人がSNSで気軽に情報発信が出来る世の中になっています。このような時代だからこそ、間違った分子栄養学の情報にはくれぐれもご注意ください。

分子栄養学では、なぜ大量の栄養素をサプリメントで摂取するのか? ドーズレスポンスと至適量の栄養補給を行う重要性

ここまで、一般的な医学と分子栄養学の違いについて解説してきました。分子栄養学は、各臓器の働きを理解し、体内で栄養素がどのように働いているかを分子レベルで解明する学問です。

そして、個体差に応じて最適な栄養摂取の量をサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いてアプローチしていきます。

ただ、この時に「サプリメントなんか使わなくても、食事から必要な栄養素を摂取すればいいのでは?」と思う方も多いですよね。

お医者さんの中には、サプリメントに反対している方も多く、「必要な栄養素は食事から摂りましょう」とアドバイスしている方も多くいます。また、食事療法など医師の指導による食事改善と薬物療法などを併せれば、それで十分だと考えている方も少なくありません。

さらに、分子栄養学では一般的な栄養学と比べて遙かに高容量の栄養素をサプリメントで補給していきます。この時、「過剰摂取の危険性が高いのでは」という意見を頂くことも多くあります。

これらに対し、まずは分子栄養学が一般的な栄養学や医師指導の下に行われる食事療法とは全く違うこと、そして分子栄養学では必要量や個体差に応じて「ドーズレスポンス」による栄養補給や「至適量」の栄養摂取を行っていることを理解することが大切です。

ドーズレスポンスとは、一定以上の栄養素量をまとめて摂る事で薬理効果が得られる量のことです。至適量とは、その人が持っている酵素の働きなどを考慮し、一人一人に最適な栄養の摂取量を行う事です。この2つを行うに当たっては、食事から得られる栄養素に比べて遙かに多くの量の栄養素量が必要となります。

このため、特定の栄養素をピンポイントで摂取出来るサプリメントを用いるほうが安全です。もし、特定の栄養素を大量に摂取するために、食事だけで分子栄養学を実践しようとすると、逆に脂質や炭水化物、糖質などの余分な栄養素も多く摂取する事になってしまいます。

これでは逆に栄養バランスが崩れてしまい、生体内の分子の乱れに繋がりかねません。これを防ぐためにも、分子栄養学を実践する際は必ずサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて行うことが必要です。

一般的な栄養学や食事療法と、分子栄養学の違い

では、一般的な栄養学や医師指導の下に行われる食事療法では、なぜ分子栄養学で必要とされる栄養素の量が摂取出来ないのでしょうか?

これについて、一般的な栄養学では「この栄養が足りないとこんな病気になるので、その病気にならないようにこの栄養素を十分に摂りましょう」というのが一般的な栄養学です。主に健康な人を対象に、病気の予防や欠乏症を予防とした栄養素の摂取量を定めたものがこれに当たります。

この栄養学では、個人差に応じた栄養素の摂取量は考慮されていないので、一般的な栄養学だけで人それぞれ必要な栄養素の量を補うのは不可能です。

一般的な栄養学と分子栄養学の違いについては、次の記事で詳しく解説していますので併せてご覧下さい。

次に食事療法です。食事療法は、主に糖尿病などの病気を改善させることを目的に、カロリー制限食を指導したり、低GI食を指導したり、食生活の改善を目的としたものです。食事をコントロールする事で、病気の予防や健康を維持することを目指します。こちらも、分子栄養学のような個別の栄養摂取量については考慮されていません。

対して分子栄養学では、食事だけでは補えない栄養素をサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)で補給し、身体本来の機能を取り戻す療法です。

食事療法と分子栄養学の具体的な違いについては、おおよそ次のようになります。

スクロールできます
食事療法分子整合栄養医学
消化吸収能力
考慮しない

考慮する
栄養素の質、劣化、損失量
考慮しない

考慮する
病態に応じた摂取量
治療に必要な範囲内のみ

考慮する
個人差に応じた摂取量
治療に必要な範囲内のみ

考慮する
薬、栄養素との飲み合わせ
治療に必要な範囲内のみ

考慮する
栄養摂取後のサポート
経過観察

治療に必要な範囲内のみ

あり

栄養摂取の目的
病気の予防
健康維持
病態の改善・予防
オプティマムヘルスの推進
食事療法と栄養療法の違い。食事療法は特定の病気の改善や予防を目的としたものに対し、栄養療法では食事だけでは補えない栄養素をサプリメントで補給し、QOLを改善させることを目的としている。

食事療法では、基本的に特定の病気に対して行われるものですので、その他の栄養素のバランスやその人の消化吸収能力の考慮は行われていません。また、バランスの良い食事内容などをアドバイスされることがありますが、その食事に含まれている栄養素が、その人にとって本当に必要な量が摂れているとは限らないわけです。

対して、分子栄養学ではその人の消化吸収能力を考慮し、その人に合わせた栄養アプローチを行います。食べた食べ物はしっかり消化・吸収されて初めて栄養となるので、いくらバランスの良い食事を行っても、食べた食べ物が消化吸収されなければ全く意味がありません。

食べ物はしっかりと消化吸収されて初めて栄養となる。一般的な栄養学では考慮しないが、分子栄養学では消化吸収能力も考慮する。

さらに、本来、個人ごとに必要な栄養素量は、年齢、性別、身体活動の程度、病態の有無などによって異なっています。栄養補給を行う際は、この個体差を考慮することが最も大切です。

この個人差に合わせた栄養アプローチを行うために必要なのが、ドーズレスポンスと至適量の栄養補給です。

分子栄養学の基本①『病態に応じた摂取量の考慮とドーズレスポンス』

例えば、一般的な栄養学では、「貧血」や「ガン」などの病態に応じた栄養摂取量などは考慮しないのに対し、分子栄養学ではこれら病態や個人差に合わせた栄養摂取量やアプローチを行います。

一般的な栄養学の指標として用いられている2020年版食事摂取基準の場合、ビタミンCの摂取量で言えば、成人では1日の推奨量が100mgと設定されています。これはあくまで健康な人が最低限摂取した方が良い目安であって、病態を抱えた方の目安量ではありません。

対して分子栄養学では、ビタミンCの摂取量についてもその人の状態や病気の状態などによって摂取量が大きく異なることが特徴です。人によっては1回に2000mg〜3000mgのビタミンCを摂取する事もありますし、場合によっては更に高濃度のビタミンCを点滴で入れる場合もあります。

これは、活動量が大きいときや、ストレスがかかったとき、風邪など病気のときでは栄養素の消費量が大きくなることから、栄養素の必要量が多くなるためです。また、慢性的な病気(糖尿病やアレルギー疾患、肝臓病など)やガンの時などは、更に必要量が大きくなります。

必要な栄養素量は人によっても、場合によっても異なる。状態に応じて必要な量を摂取することが重要

また、例え同一人物だとしても、加齢や生活習慣の変化、病態の変化、体調の変化は常に起こっています。日々の状態に合わせて必要量の栄養素を摂取していくことが、分子栄養学の基本です。

そして、栄養素による改善の際には、一定以上の量を補給していくことも重要です。特に栄養素においては、摂取量が少ないと殆ど身体に変化が現れないことから、栄養摂取の効果は用量に大きく依存しています。この一定以上の量を摂取することで栄養素の効果を発揮させることを「ドーズレスポンス」と言います。

栄養素は、一定以上の量を摂取してはじめて効果を発揮する。この一定以上の量を摂取することで栄養素の効果を発揮させることをドーズレスポンスという

例えばビタミンC(アスコルビン酸)の場合、血流に乗って全身の細胞に運ばれて抗酸化作用等を発揮するためには、ビタミンCの血中濃度を一定以上に維持することが必要です。

この抗酸化作用を発揮するためには、ビタミンCを一度に1,000mg以上摂取して初めて血中濃度の上昇が見られることが分かっています。ただし、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、摂取後3〜4時間で血中濃度が最大となり、その後は尿と共に徐々に体外へ排泄されてしまいます。

そのため、ビタミンCの血中濃度を維持するためには、一度にある程度まとまった量(1,000mg以上)を定期的に補給することが必要です。

更に、ビタミンCには美白作用や抗ウィルス作用、ヒスタミン抑制作用、抗がん作用などがあり、抗ウィルス作用が期待出来るビタミンCの血中濃度はおよそ10-15mg/dL、ヒスタミン抑制作用を発揮する血中濃度は88mg/dL程度と言われています。

このような違いがあることから、ビタミンCの摂取量はその人の状態や目的によっても大きく変わってきます。また、その人の状態や生活習慣、年齢や性別、酵素と基質の親和性の個体差などによっても摂取量は異なります。この状態や目的に応じて、最適な栄養素の量を摂取すること。これが至適量と呼ばれる量です。

分子栄養学では、このような病態や個人差を考慮した栄養の摂取を行っていく事が特徴です。一見すると過剰摂取のように思える量を補給しますが、必要量や個体差に応じて摂取量を調節するので過剰摂取の心配は殆どありません。また、不足している栄養素は定期的に血液検査によって把握し、元々不足している栄養素を補っていくので過剰摂取に陥るリスクも低いです。

対して一般的な栄養学や食事療法では、このような病態や個人差は考慮せず、あくまで欠乏症の予防や生活習慣病の予防を行う事が目的になります。この点が分子栄養学と大きく異なる点です。

ナンナン

栄養素の摂取量って、その人の状態や目的によってそんなに変わるのか❗

はる かおる

うん、特に病気の時は栄養の消費が多くなるから必要量も多くなるね。それに、場合によっては薬と栄養素との飲み合わせも考慮するよ。このあたりが、一般的な栄養学や食事療法と分子栄養学の大きな違いだね。

分子栄養学の基本②『個人差に応じた摂取量の考慮』

続いて、個人差に応じた摂取量の考慮についてです。これは先ほど解説した消化吸収能力の考慮や、病態、薬の考慮と同じように感じるかも知れませんが、全く異なるものです。

例えば、同じ病気を抱える方が、同じ消化吸収能力だったとしても、その人の年齢や性別、酵素活性や生活習慣、目指している目的などによっても必要な栄養素の量は変わってきます。

栄養素の必要量や不足している原因には個体差がある。必要な栄養素や必要量は千差万別

身体を動かすことが多い人も居れば、身体をあまり動かさない人も居ます。ストレスが多い人もいれば、ストレスなく過ごしている人もいます。当然、身体を動かす量が多い人や、ストレスが多い人ほど、より多くの栄養素の摂取が必要です。

また、摂取した栄養素(ビタミンなどの補酵素)は体内で酵素と結びついて初めて働けるようになります。この酵素と栄養素(ビタミンなどの補酵素)が結合するために必要な結合力や、結合出来る量(親和性)は、人によって異なっています。

栄養素は体内の酵素と結びついて初めて働けるようになる。この酵素と栄養素の親和性には個体差があることから、自身に必要な至適量を考慮することが大切

そのため、補酵素と酵素の親和性の個体差からビタミンの必要量にも大きな個体差が生じます。その差は、最大1:20にも及ぶとされ、ちょっと栄養補給すれば足りる人も居れば、摂っても摂っても全く足りない人も居るのです。

このような、個人差にあわせた最適な栄養素の量を摂取することを「至適量」と言います。一般的な栄養学や食事療法ではこのような個人差に応じた栄養素の摂取は考慮しませんが、分子栄養学では至適量の栄養摂取量をアドバイスしています。

また、人によっては「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」などの要望があったり、目標を掲げていたりする方もいます。このような個人的な要望や目標なども考慮し、最適な栄養摂取量をアドバイスすることも分子栄養学の特徴です。

この個人差や至適量などを考慮するかどうかが、一般の栄養学や食事療法と分子栄養学の大きな違いになります。

ナンナン

個人差の考慮か・・・
ナンナンも、もっと筋肉付けたいって言ったら考慮してくれるのかな❓

はる かおる

うん、分子栄養学ではその人の要望や目標なんかも考慮して栄養アプローチをアドバイスしてくれるよ。例えば、他にも花粉症を改善したいとか、眼精疲労を改善したいとか。個人の要望も考慮して栄養アドバイスを行うのが、分子栄養学の一番の特徴だね。

使用するサプリメントの質に注意!サプリメントにおいて重要なのは消化と吸収です。

分子栄養学の実践で用いるサプリメントで、最も気をつけたいのが、サプリメントの質です。

サプリメントには、上述した「活性型」と「前駆体」の違いに加えて、その栄養素がきちんと消化吸収されるか?ということも重要になります。

例えば、市販されているサプリメントの中には、胃や腸で全く溶けないものがある事が報告されています。胃や腸で溶けないものは、身体の中で不要と見なされ、そのまま便に排泄されてしまいます。

市販されているサプリメントの中には胃や腸で溶けずにそのまま便に排泄される物もある

そうなると、栄養素としての効果はほぼありません。栄養素は消化・吸収されて初めて意味があるので、きちんと消化・吸収されることが実証されているサプリメントを選ぶことが非常に重要です。

また、人によっては胃酸の分泌量が少ない、胆汁酸の分泌量が少ないなど消化吸収に問題を抱えている場合があります。胆汁は、水と馴染まない脂質や脂溶性のビタミンを水に馴染みやすく(乳化)して血管内に吸収出来るようにする働きをしています。

もし、胃酸の分泌量が少なかったり、胆汁酸の分泌量が少ない場合は、タンパク質が上手く消化できなかったり、脂質や脂溶性のビタミンが上手く吸収出来なくなってしまいます。

このような場合は、予めタンパク質が低分子化されているプロテインを選んだり、胆汁酸の分泌量が少なくても吸収出来るようにミセル(自己乳化型)加工されているものを選ぶことも重要です。

それから、サプリメントによっては栄養素よりも人工甘味料を始めとした添加物のほうが多いものや、栄養素が既に酸化・劣化して効力を失っている物、自然界に存在しない化学構造に加工された物、日本では承認されていない医薬品成分が混入しているものなどもあります。

サプリメントには法律で禁止されている成分が混入している場合がある。日本よりも質が良いと言われる米国製サプリメントであっても注意が必要

特に海外サプリメントの中には、日本で承認されていない医薬品成分が混入している事件が相次ぎ、厚生労働省も注意を呼びかけています。このような混入成分は、パッケージの成分表示には記載されていないことから、成分表示だけを見て混入しているかどうかを判断することは困難です。

また、海外サプリメントの中には自然界に存在しない化学構造のサプリメントも販売されています。特に流行っているものとしては、メガビタミン健康法でよく使われている「アミノ酸キレート鉄」です。

海外サプリメント通販で手軽に入手出来るアミノ酸キレート鉄。吸収率が高い代わりに鉄過剰のリスクが高い

アミノ酸キレート鉄とは、鉄分の吸収を高めるために、鉄分子をグリシンと呼ばれるアミノ酸と結合(キレート加工)された天然界には存在しない成分の事です。

アミノ酸キレート鉄は、その吸収力の高さから一部の人達から絶大な人気を誇っています。しかし、吸収力は高いものの、その利用効率は悪く、場合によってはフェリチン値が異常値まで上昇する、体調が悪くなるなどして病院に駆け込む事例も散見されています。

フェリチン値は炎症でも上昇することから、炎症によってフェリチン値が上昇しているものと考えられます。もし、このような状態のままサプリメントを摂取し続けた場合、むしろ肝臓へのダメージや、生体内の分子の乱れを引き起こしてしまう可能性が高いです。

ですので、分子栄養学を実践するときは必ず血液検査を受け、市販サプリや海外サプリで代用せず、必ず分子栄養学実践専用に設計・製造されたサプリメントでアプローチするようにしましょう。

質の良いサプリメントを選ぶ条件。含有量や値段で選ばずに、原材料の質や消化吸収を考慮した設計、汚染物質などのチェックがしっかりされているものを選ぶとよい。

将来に備えるオプティマムヘルス。分子栄養学を学び、自分の健康は自分で守りましょう。

最後に、分子栄養学と医学の大きな違いとして、分子栄養学と医学の「取り組み方」や「考え方」の違いがあります。

基本的に、現在の医療では治療をお医者さんにお願いして、言われたとおりの薬を飲む、治療はお医者さんに任せるというのが一般的ですよね。

対して分子栄養学では、自身の健康管理はお医者さんに丸投げせず、自ら分子栄養学を学んで、自ら健康管理を行っていく事が大切だと考えています。なぜなら、分子栄養学を十分に理解しないまま、分子栄養学を実践するのは非常に困難だからです。

例えば、この記事の途中でご紹介したAさんの場合で見てみましょう。Aさんはニキビを改善させたいと思っています。現在の医療では、ニキビに対して「このお薬を飲んだら良いですよ」と活性型のビタミンAのお薬が処方されていますよね。

対して分子栄養学の場合、ニキビの改善を希望している方に対し、「ピロリ菌の検査を受けましょう」とか「プロテインを飲みましょう」「お酒を控えましょう」「肝臓のケアをしましょう」などといったアドバイスを行います。普通に考えて、「ニキビを治したいだけなのに、何故そんな事が必要なの?」と疑問に思いますよね。

さらに、過剰摂取の危険性が言われているビタミンAにおいて、「あなたはかなりビタミンAが必要だから、ビタミンAを一日に40000IU摂りましょう」と言われても、過剰摂取が怖くて摂れない方が大半だと思います。

また、1つの症状に対するアプローチにつき、プロテインやビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、消化酵素など様々なサプリメントを用いることから、「サプリメントを売りつけたいがために言っているのでは?」と思われることも多いです。

このような誤解が多いことから、オーソモレキュラー療法は怪しいとか宗教とかトンデモ療法だと言われることが多くあります。しかし、分子栄養学の基礎理論をしっかり学び、理解すれば、非常に理にかなった納得のいく学問や療法であることはよく分かっていただけるはずです。

そのため、分子栄養学を実践するためには、まず分子栄養学の基礎となる理論をその人自身がしっかりと学ぶこと、そして自身の健康管理を医者に丸投げするのではなく、自分の身体は自分で守るという意識で取り組んで頂く事が大切だと考えています。

病気を治す、予防するだけに限らず、最適な健康状態を目指すのが分子栄養学です。

そして、もう一つ分子栄養学における重要な考え方として「オプティマムヘルス」があります。オプティマムヘルスとは、単に病気を予防するだけに限らず、心身ともに最高・最善の健康状態の実現を目指す事です。

私達は、病気になったり調子が悪くなったりすると、当然ながら気分が落ち込んだり、活動量が低下したりしてしまいますよね。逆に、体調が良い状態が続いていれば、気分も明るく活動的に過ごすことが出来ます。

ただ、中には体調不良の状態に慣れてしまって、不調であることの自覚がないまま、自分は健康だと思い込んでしまっている方もいます。また、分子栄養学で病気が治ったり、自分の中では健康だ、調子が良いと思っていたりしたとしても、分子栄養学的に見たら分子レベルではまだまだ改善の余地が残っている場合も多いです。

このような場合、ご自身では今が最高の状態だと思っていても、分子レベルで見たらパフォーマンスが低下している可能性があります。細胞それぞれの働きが低下している場合、あなたが本来が持っている能力をすべて発揮出来ているとは言えません。

例えば、自分の中では「よく眠れている」と思っていても、分子レベルで見たらまだまだ質の良い睡眠に改善出来る余地が残っている可能性があります。

また、ちょっとしたことでイライラしやすい、不安になりやすい、気分が落ち込むなどの精神的な症状や、疲れやすいといったことも、実は分子レベルで見たら改善出来る余地が残っているかもしれません。

あなたが「自分の性格だ」と思っていることや、「これが普通だ」と思っていることでも、実は栄養がまだまだ不足していることによって引き起こされている可能性があるのです。

このような不調や活動量の低下は、日々あなたの人生に影響を与え続けます。特にイライラしたり気分が落ち込むなどの精神的不調は、気がつかない間に人間関係や仕事などに影響を与えます。

もし、このような精神的な不調が無くなり、今よりももっと活動的になれたとしたらあなた自身でも気がついていないような能力やパフォーマンスがすべて発揮され、今よりももっと人生が変わると思いませんか?

この分子レベルで細胞を整え、あなた本来の能力をすべて引き出し、心身共に最高の状態を目指すことが、分子栄養学の最大の目的であり、オプティマムヘルス(最適な健康)と呼ばれる状態です。

分子栄養学は、単に病気を治したり予防したりするだけに留まらず、オプティマムヘルスを目指すことが目的です。

オプティマムヘルスとは、どのような環境下や激しいストレス下においても、常に最適な健康状態が維持できている状態の事です。人生では、その時々に応じて環境も変化しますし、良いこともあれば悪い事もあります。そのたびに体調が変化したり寝込んだりしていては、オプティマムヘルスの状態とは言えません。どのような状況下においても、最適な健康状態を維持できていることが理想です。

このオプティマムヘルスの状態を目指すためには、自ら分子栄養学を学び、自分の健康状態は自分で管理できることが必要です。

例えば、栄養の必要量は、運動や食事内容、体調によって日々変化します。オプティマムヘルスの状態を維持するためには、これらも考慮して、自らが日々分子栄養学を実践し続ける必要があります。

日常的な活動で言えば、

  • 今日はお酒を飲むからアルコール代謝に必要なナイアシンを多く摂っておこう
  • 今日はストレスが多くかかったから、カルシウム・マグネシウムを多く摂っておこう
  • 今日はいつもより運動量が多かったから、プロテインを多く摂ろう
  • 風邪を引いたみたいだから、ビタミンCを多めに摂ろう
  • 血液検査の結果でフェリチンが下がってきたから、ヘム鉄を多めに摂ろう

といった感じです。

このように分子栄養学では、単に病気の治療や予防という枠を超え、細胞レベルで常に最適な健康状態を得られるよう、その時々の状態に応じて最適な栄養補給を行っていく事が理想です。

そのためには、やはり自分自身の健康状態は自分で管理するという意識に加え、分子栄養学に関する知識も欠かせません。自分自身の状態は自分が1番理解していますので、自分に必要な栄養素は自分自身で判断出来ようになる事が重要です。

つまり、分子栄養学とは、自らの身体を自ら管理できるようになる学問でもあります。ここで解説した分子栄養学に関する事は、まだまだ基本中の基本で、学ばなければならないことは沢山あります。

もし、ここまで読んで分子栄養学に興味が湧いた方は、是非もっと深く分子栄養学を学んでみて下さい。分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「KYBクラブ」「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが可能です。

病気の予防、健康管理は一生続きます。病気が治ったからといって、その後に分子栄養学の実践が必要なくなるわけではありません。分子栄養学は、学び続けること、実践し続けることが一番大切です。是非、分子栄養学を学び、自分の健康は自分で守れるようになりましょう。

ナンナン

分子栄養学は、身体に良いと言われている食べ物だけを食べるとか、特定の栄養素で病気を治すとか、そういった小手先の健康法じゃないよ❗ しっかり分子栄養学を学んで、自分の健康状態は自分で管理できるようになってね❗

はる かおる

お、ナンナンも分子栄養学について語れるようになってきたね。分子栄養学は、学び続けることと実践し続けることが一番重要だよ。必要に応じて医療とも組み合わせて、最適な健康状態を目指していってね。

分子整合栄養医学と医学の違いとは? それぞれの役割と違いについて解説まとめ

以上が、一般的な医学と分子栄養学の違いでした。

一般的な医学は、主に「悪くなっているところを検査で調べて客観的に分析し、症状の原因となっている病巣を科学的根拠に基づいて排除しましょう」というのが一般的な医学です。主に、お薬や手術、食事療法などによって病気を治療することを目的としています。

対して分子栄養学は、生体内の分子の乱れ(栄養素)を整える事により、病気の予防や改善を図る療法です。主に血液検査によって個人差を判断し、分子栄養学実践専用サプリメントを用いて栄養補給を行います。

この時、分子栄養学では、それぞれの消化吸収能力を考慮したり、病態を考慮したりと、個人個人に合わせた最適な栄養アプローチ(至適量)を行います。そして、一般的な医療では活性型の栄養素(お薬)を使うのに対し、分子栄養学では前駆体の栄養素(サプリメント)を使って、栄養素の利用は身体に任せることが最大の違いです。

もし、分子栄養学に興味ある方は、是非分子栄養学を学んで実践してみて下さい。分子栄養学については、ここで解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。

分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「KYBクラブ」「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。

KYBクラブについては、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で入会方法などをご案内しておりますので、ご興味ある方は是非ご覧下さい。

  1. レチノイン酸供給におけるアルデヒド脱水素酵素の働き ↩︎

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この記事を書いた人

はる かおるのアバター はる かおる 分子栄養療法ナビゲーター ディレクター

春木 敏徳(はる かおる)
分子栄養療法ナビ(このサイト)の管理人のはる かおるです。
現在は「字が書けないライター」兼、KYBクラブのディレクターとして活動しています。

僕自身、発達障害の一種である「書字障害」を抱え、幼少の頃から両親からの虐待や学校でのいじめなど、数々の困難や体調不良を経験してきました。
育った環境の悪さから18歳頃からうつ病を発症し、その後10年近く精神薬での治療を行っています。また、他にも小・中・高校生時代は朝起きられず、殆ど学校にも行っていません。

今では「あれは起立性調節障害だったな」と思えるのですが、当時はそのような病気の認識は殆どありませんでした。そのため、非常に風当たりの強い中、幼少時代を過ごしてきています。

また、幼少期から続く極度の栄養失調により、低血糖症や甲状腺機能低下症、SIBO、リーキーガット症候群、副腎疲労、脂肪肝など様々な病気を経験しました。現在では分子栄養学に出会ったことで体調も大きく回復しており、これら病気の改善に必要な知識も豊富です。

インターネットの登場によって間違った分子栄養学も広まってきており、それによって体調を崩してしまう人も多くなってきています。このような中、分子栄養療法ナビ(このサイト)や情報発信を通じて、多くの人に正しい分子栄養学が広められるよう現在も奮闘中。

得意とする分野
うつ病、発達障害、ADHD、起立性調節障害、貧血、不妊症、ガン、甲状腺機能障害、ピロリ菌感染症、SIBO、リーキーガット症候群、低血糖症、副腎疲労、脂肪肝、ダイエット、更年期障害、PMSなど。全般的に幅広い知識を有する。

ほか、文章を書くのが得意で、ライティングやマーケティング、投資などお金に関する知識や生き方に関するアドバイスも得意。

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