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保険診療でオーソモレキュラー療法は出来る? 保険診療とオーソモレキュラー療法の違い、薬とサプリメントの違いとは

近年、オーソモレキュラー療法や高濃度ビタミンC点滴など分子整合栄養医学を取り入れるクリニックが増えてきました。オーソモレキュラー療法は、主に専用の血液検査を受け、専用のサプリメントを用いて行っていくサービスのことです。

ですが、このオーソモレキュラー療法で行われる検査やサプリメントは、保険診療と比べてとても高額になっています。受けようとした方は、あまりの金額の差に驚いたのでは無いでしょうか。

では、なぜオーソモレキュラー療法は保険診療と比べて高額なのでしょうか? また、オーソモレキュラー療法を保険診療で受けたり、保険診療の検査や薬を使ったりしてオーソモレキュラー療法は行えないのでしょうか?

今回は、保険診療の検査や薬を使ってオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについてと、保険診療とオーソモレキュラー療法の違い、薬とサプリメントの違いについて解説します。

目次

オーソモレキュラー療法は保険診療で受けられる? 検査代やサプリメントは、何故あんなに高いのか

ナンナン

ねぇねぇ、オーソモレキュラー療法を受けてみたいんだけどさ💦

はる かおる

うん、どうしたの❓
何か心配事でもあるの❓

ナンナン

そ、それがさ・・・料金がちょっと高くって💧 あれって健康保険適用にならないのかな❓❓

はる かおる

料金が高いことに躊躇してたのか💦 確かにオーソモレキュラー療法は高いもんね💧 なんたって、オーソモレキュラー療法は健康保険が適用外だからさ

ナンナン

やっぱり❗❓ でもさ、なんか健康保険が適用になる裏技みたいなのって無いの❓❓

ナンナン

検査代が健康保険適用になる裏技とか、サプリメントの代わりに処方箋で出る栄養剤みたいなのでやる方法とか💦 よく病院でもビタミン剤とかカルシウムとか処方されるじゃん❗あれあれ

はる かおる

処方箋で出る栄養剤かぁ。確かに、病院でもカルシウムやビタミンA、ビタミンB、ビタミンDとか処方されるもんね。もしそれが処方されたら、ナンナンはそれでオーソモレキュラー療法が出来ると思う❓❓

ナンナン

もちろん❗ だってサプリメントを買うより安く出来るじゃん❗ 病院で処方されたものの方が質も高そうだしね❗

はる かおる

そっかぁ。じゃあ、保険診療の検査や薬を使ってオーソモレキュラー療法が本当に出来るのかどうかについて、もっと詳しく解説してあげるね。

オーソモレキュラー療法とは、基本的にオーソモレキュラー療法に対応するクリニックで専用の採血を行い、その結果を基にサプリメントを用いてアプローチしていく療法です。

このサプリメントは1回購入して摂取するだけでは足りず、毎日定期的に摂取を行い、これを年単位で継続することではじめて意味があります。そして、自身に足りない栄養素を至適量補給することで細胞レベルから栄養状態を整え、身体が本来持っている機能を取り戻すことが出来るのがオーソモレキュラー療法と呼ばれている療法です。

この身体が持っている本来の機能を取り戻すことが結果的に病気の改善や予防へと繋がることから、オーソモレキュラー療法では様々な病気の改善も期待出来ると言われています。

改善が期待出来る具体的な病気・状態としては、次のようなものです。

オーソモレキュラー療法で改善が期待出来るもの

  • 美容・美白
  • アンチエイジング
  • デトックス
  • 花粉症・アレルギー
  • アトピー
  • 自律神経失調症
  • うつ病
  • めまい
  • パニック障害
  • 起立性調節障害
  • 関節リウマチなど自己免疫性疾患
  • メニエール病
  • へパーデン
  • 甲状腺機能障害
  • 糖尿病
  • 低血糖症
  • 睡眠障害
  • 脂肪肝
  • 脂質異常症
  • 痛風
  • 認知症
  • 発達障害
  • 副腎疲労
  • 貧血
  • 逆流性食道炎
  • ガン
  • ドライアイ
  • PMS・PMDD
  • SIBO
  • リーキーガット症候群
  • 不妊症
  • 更年期障害
  • 骨粗しょう症
  • 低身長 など、他様々な病気

このように、様々な病気や状態の改善に効果が期待出来るのがオーソモレキュラー療法になります。上記に当てはまる方なら、是非受けてみたいと思いますよね。

ただ、オーソモレキュラー療法を受けようと思った方はご存じかと思いますが、オーソモレキュラー療法の検査やサプリメントは、健康保険適用の検査や処方箋と比べて高額です。

例えば、人によっては検査代が2万円〜5万円、受けるクリニックによっては10万円や20万円以上するケースも見られます。また、使用するサプリメントは人によりますが一月に3万円〜10万円程度かかることもあります。保険診療で受ける検査が数千円から高くて1万円程度である事を考えると、かなり高額であることが分かりますよね。

では、なぜオーソモレキュラー療法の検査は高額なのでしょうか? オーソモレキュラー療法の検査代が高額になってしまう理由は、主に三つあります。一つは、「健康保険が適用されず、すべて自己負担となる自費診療」である事、二つ目は、「抱えている病態が多ければ必要な検査の数も増えてしまう」こと、三つ目は、「クリニックによって値段や検査項目などが違うこと」が主な理由です。

まず、オーソモレキュラー療法の検査が高くなってしまう第一の理由は、健康保険が適用されないことです。SIBO検査やリーキーガット症候群検査など、そもそも健康保険が適用されない検査も多くあります。このような検査では、そういうものとして納得していただくしかありません。

オーソモレキュラー療法の検査やサプリメントは、そもそも健康保険の適用外です!

また、オーソモレキュラー療法を受ける方は、現在何らかの不調や病気を抱えている方が殆どです。病院の治療を受けても体調が良くならなかった方、原因不明の体調不良が続いている方、ガンと診断されて治療法を模索していた方等、状態に差はありますが、ほぼ何らかの不調や悩みを抱えている方々になります。

そうなると、必要な検査の項目が増えてしまうのは仕方がないことです。当てずっぽうで行う事は出来ませんので、必要な検査は適切に行い、きちんと状態を把握してからオーソモレキュラー療法を行うのが当然の流れになります。

ということは、検査代が高額な方というのは、それほど状態が悪い方や病態を抱えている方ということになります。状態や病態が悪い方ほど検査代や治療代が高額になるのは、オーソモレキュラー療法に限った話しではありません。

ただ、オーソモレキュラー療法と一言で言っても、提供している組織やシステムは様々です。どこで受けても同じように見えるかも知れませんが、やり方も異なれば検査料金も異なります。安く提供してくれる所もあれば、高めに料金が設定されているクリニックもあります。

例えば、オーソモレキュラー療法を提供しているクリニックの中には、オーソモレキュラー療法の基本検査だけで25,000円以上、これに遅延型アレルギー検査や有害重金属を調べるための毛髪検査、食事指導などを受けるための相談料などがセットになっている事もあり、検査料金は10万円〜20万円以上する場合があります。

対して、オーソモレキュラー療法を受けられるKYBクラブの場合、人にもよりますが入会関連費を含めた初回検査で2万円を超えることは殆どありません。

この事から、一言でオーソモレキュラー療法と言っても、受けるクリニックによって料金や内容は様々です。当然ですが、より詳しく複数の検査を行うクリニックでは料金は高くなる傾向にあります。このクリニックの方針によって検査内容や料金に違いがあることも、オーソモレキュラー療法の検査が高くなってしまう一つの理由です。

では、オーソモレキュラー療法の検査は健康保険適用にならないのでしょうか? また、健康保険適用の検査結果で、オーソモレキュラー療法を行う事は出来ないのでしょうか?

結論としては、現時点でオーソモレキュラー療法の検査が健康保険適用になる事はありません。これは健康保険の制度的な問題で、保険適用にするには政治や健康保険制度そのものが変わらないと無理な話です。

ただ、逆に「健康保険適用で受けた検査結果でオーソモレキュラー療法が出来るのでは?」と思う方もいますよね。普段通っているかかりつけのクリニックで受けた検査結果をもとにオーソモレキュラー療法が出来れば、一石二鳥です。

また、会社の健康診断や人間ドックで受けた検査結果でオーソモレキュラー療法が出来たら、かなり安く済ませることが出来ます。

果たして、これら保険診療で受けた検査や健康診断の検査結果で、オーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?

オーソモレキュラー療法の検査と保険診療、健康診断で受ける検査の違い

保険診療や健康診断で受ける血液検査でも、オーソモレキュラー療法で受ける血液検査といくつか項目が同じ場合があります。これらを活用すれば、保険診療で受けた検査や健康診断の検査結果で、オーソモレキュラー療法が出来そうな気がしますよね。

しかし、保険診療や健康診断で行う血液検査でオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。なぜなら、オーソモレキュラー療法で受ける血液検査と、病気の時に受ける血液検査や、健康診断などで受ける血液検査とは全く異なるものだからです。

では、保険診療や健康診断で受ける検査と、オーソモレキュラー療法で受ける検査では、一体何が違うのでしょうか?

オーソモレキュラー療法の血液検査と、その他の血液検査との違い。保険適用で行われる検査は主に病気の発見や経過観察を目的としているのに対し、分子栄養学では栄養状態を把握することを目的としている

まず、保険診療や健康保険で行われている検査と、オーソモレキュラー療法で行われる検査では、その目的と判断基準が異なります。

例えば、病気の時など健康保険を使って行われる血液検査は、病気である場合や病気の疑いがある事が前提に行われる検査です。こちらは、主に病気に関連する項目のみで、病気を診断したり経過を観察したりする目的で行われています。

もう一つの人間ドックや健康診断などで受ける検査は、病気が隠れていないかを判断するためのものです。こちらは保険で行われている検査と比べて項目数は多いですが、栄養状態を把握するためには使われていません。

対してオーソモレキュラー療法の血液検査では、体内での栄養状態や、体内で栄養がどのように働いてるかを調べるためのものです。血液には、食事から取り込んだ栄養素や、それを代謝して体内で産生した様々な物質が溶けています。この血液中の成分を詳しく調べることにより、身体の栄養状態や健康状態を正確に把握することが可能です。

血液には食事から取り込んだ栄養素が溶け込んでいることから、血液を調べることによって栄養状態を正しく把握することが可能

例えば、KYBクラブで行っているオーソモレキュラー療法の血液検査では、口腔内の状態を確認するための唾液検査と、腎機能などを調べる尿検査を含めた全68項目の検査を行っています。

KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査を実施し、栄養状態や生活習慣病の状態などを把握している

この検査では、肝臓で作られている酵素の量や、血清タンパク量、血球量などを調べることにより、体内でタンパク質やビタミン、ミネラル等が十分に足りているかどうかを調べています。また、血糖値や脂質代謝関連などを見る事によって、血液の状態や摂取エネルギーが足りているかどうかも判断しています。これらは単一の項目で見るのでは無く、複数を組み合わせて総合的に見る事が重要です。

なぜ、このような68項目にも及ぶ血液検査を実施するのかというと、保険診療での血液検査や、健康診断の結果では、身体の栄養状態を正確に把握することは出来ないためです。なぜなら、保険診療の検査や健康診断の検査は「病気の発見や経過を観察する物」であって、栄養状態を把握する検査ではありません。

例えば、女性に多い不調として「身体が冷える」「眠れない」「疲れやすい」「やる気が出ない」「生理不順」などの不調があります。これら不調の原因の1つとしては、鉄欠乏性貧血を始めとした潜在性のミネラル不足が関係していることが挙げられます。

栄養素は細胞の正常な働きに必要な事から、不足すると体調の変化が現れるものもがある。その1つは、潜在性ミネラル不足によるもの

鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことです。この鉄欠乏性貧血は、特に月経のある20代〜40代日本人女性のおよそ7割が鉄欠乏性貧血もしくは隠れ鉄欠乏性貧血といわれています。

この理由としては、女性は毎月の月経によって定期的に出血してしまうことに加え、食べないダイエットや菜食主義、加工食品の摂取量増加など食生活の変化によって、鉄の摂取量が不足してしまっているためです。また、貧血の中には「貧血と診断されていないけど貧血になっている隠れ鉄欠乏性貧血」に陥ってしまっている方も多くいます。

フェリチン値のみが低値を示す状態を「潜在性鉄欠乏性貧血」や「隠れ貧血」と言う。ケンビックスでは、KYB運動開始当初からフェリチン値のみが低値を示す潜在性鉄欠乏性貧血に着目していた。

隠れ鉄欠乏性貧血は、またの名を「潜在性鉄欠乏性貧血」「隠れ鉄不足」「隠れ貧血」などとも呼ばれ、貯蔵鉄である「フェリチン値」のみが低値を示している状態のことです。

通常、貧血を診断する検査では、「ヘモグロビン」や「ヘマトクリット」などの数値のみで貧血の診断を行っています。これらの数値が基準値を上回っている場合では、基本的に「問題なし」とされてしまうことが一般的です。

しかし、隠れ貧血の状態では、「ヘモグロビン」や「ヘマトクリット」などの数値は正常範囲になっていても、体内の鉄の貯蔵量である「フェリチン」が少なくなっています。

鉄が不足すると、フェリチン鉄から補充される。フェリチン鉄が少ないと、体内で鉄が不足して貧血になりやすい

フェリチンは、出血してもすぐさま貧血とならないよう、ヘモグロビンや赤血球を作るための鉄を貯めておく役割を担っています。このフェリチンの量が少なくなってしまうと、いざ出血してしまったときにヘモグロビンなどに使う鉄が十分にありません。

すると、通常時は貧血と診断されていなくても、月経などで出血した場合には、すぐにヘモグロビン値が低下してしまい、貧血に陥ってしまうのです。このような状態の事を、隠れ貧血といいます。

この隠れ貧血の問題点は、貧血と診断されていなくても貧血と同じ不調が引き起こされる事が挙げられます。鉄欠乏性貧血は、めまいや息切れ、疲れやすい、やる気が出ない、身体が冷えるなど、様々な不調が引き起こされる原因です。

鉄欠乏性貧血とその症状。貧血は、めまいや疲労感、冷え性、やる気が出ないなど様々な不調が引き起こされる

このように、保険適用の血液検査では問題なしと言われているのに、貯蔵鉄であるフェリチン値が低く、出血するとすぐに貧血となってしまう状態が隠れ貧血です。このフェリチン値の検査は、保険診療の検査や健康診断の検査では行われていません。

つまり、体内の栄養状態を正確に把握するためには、血清フェリチン値を含めた多くの検査項目が必要です。健康保険や健康診断で受ける検査は安く受けられる分、必要最低限の項目しか受けられません。これでは、体内の栄養状態を正確に把握することは出来ないのです。

ナンナン

なるほど、オーソモレキュラー療法は健康保険の対象外で、検査の内容も保険適用の検査とは全く違うんだね

はる かおる

そうなんだ。オーソモレキュラー療法の検査はあくまで栄養状態を調べるもの、サプリメントはあくまで食品で、これに健康保険は適用できないよ。健康保険で行う検査とオーソモレキュラー療法の検査は、そもそも全く違うものなんだ。

サプリメントの代わりに、処方された薬でオーソモレキュラー療法は実践できる?

では、オーソモレキュラー療法の検査が保険診療や健康診断の検査で代用できないとして、処方箋の薬をサプリメントの代わりとして使用することは出来ないのでしょうか?

病院で処方される薬の中には、カルシウム製剤やマグネシウム製剤、鉄剤、ビタミンAやビタミンB、ビタミンD、ビタミンE製剤など各種ビタミンミネラルに加え、血液をサラサラにするためのEPA製剤などがあります。

これらを病院で処方して貰えば、わざわざサプリメントなんか買わなくても、保険適用の処方箋でオーソモレキュラー療法が出来そうな気がしますよね。

例えば、病院で行われている骨粗しょう症の治療においては、カルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK製剤、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」などのお薬が処方されています。対して、オーソモレキュラー療法でも骨粗しょう症対策としてカルシウム・マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどのサプリメントが用いられています。

このように見ると、処方箋の薬でオーソモレキュラー療法が出来るのでは?と感じますよね。また、アプローチ内容が殆ど同じ事から、オーソモレキュラー療法と保険診療で一体何が違うの?と感じる方も多いです。

しかし、薬とサプリメント、オーソモレキュラー療法と一般的な医療では目的も役割も全く異なります。基本的に、処方される薬を使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

薬と栄養素の役割の違い。薬は主に症状を抑えるためのもの。対して栄養素は壊れた細胞を修復するためにある。

何故かというと、薬と栄養素ではその役割が異なります。薬の役割は、症状を抑えたり、病気の悪化を防ぐためのものです。対して栄養素の役割は、壊れた細胞を修復するための材料として補給する物になります。

先ほどの骨粗しょう症の例で言えば、骨を壊してしまう破骨細胞の働きを強制的に薬で抑えたり、骨を形成する骨芽細胞の働きを薬によって強制的にコントロールしたりするのが現代の医療であり、医学です。

このお薬によるアプローチでは、体内で行われている代謝を薬によって強制的にコントロールする事から、必ず「副作用」が伴います。分かりやすい例で言えば、ビタミンD製剤は食品に含まれるビタミンDに比べて、過剰摂取による高カルシウム血症や高カルシウム尿症のリスクが高く、他にも吐き気や下痢などの症状を引き起こす可能性があります。

これは、ビタミンD製剤に含まれるビタミンDが「活性型」であるためです。食品に含まれているビタミンDに比べて働きが強いことから、ビタミンD製剤の使用は医師の管理下の元、慎重に投与量が決められて処方が行われています。

対して栄養素の場合、薬と比べて重篤な副作用はあまりありません。食品やサプリメントに含まれている栄養素は、薬と違って生体内で自由にコントロールする事が出来ます。この、体内での栄養素の働きを身体にまかせるのか、それとも強制的にコントロールするのかが、薬と栄養素の大きな違いです。

オーソモレキュラー療法と薬物療法の違い

薬物療法

  • 既に活性化したもの(薬物)を投与する
  • 栄養素や体内での働きを強制的にコントロールする
  • 速効性がある、誰にでも同じように効果が期待出来る

→副作用がある

オーソモレキュラー療法

  • 天然物を投与する
  • 栄養素の利用は生体内のコントロールに任せる
  • 速効性は無いが、人それぞれにあった効果が期待出来る。

→副作用が少ない

では、一見すると同じ栄養素が含まれているように感じる薬とサプリメントですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

薬の中にもビタミンA製剤やビタミンD製剤など栄養素の名前が付いたお薬がありますし、サプリメントの中にもビタミンAやビタミンDなどがあります。同じ名前が付いているので、どちらも同じように感じますよね。

しかし、薬とサプリメントではその働きが全く異なります。その理由は、薬に含まれているのが「活性型」であるのに対し、食品やサプリメントに含まれているのは「前駆体」であるためです。

栄養素には、同じように見えても「活性型」と「前駆体」があります。食品などに含まれる栄養素は、体内に入ってもそのままの形では働くことが出来ません。いったん身体の中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。

前駆体は、この活性型になる前の状態を言い、食品やサプリメントに含まれる栄養素のことです。体内では、酵素の働きによって必要に応じて前駆体から活性型に変換されて利用されています。対して活性型の栄養素とは、骨粗しょう症の治療に用いられているビタミンD製剤や、ニキビの治療薬として使われている「ビタミンA製剤」などです。お薬で使われる栄養素は、既に活性型として配合されているため、速効性があり、誰に対しても同じように効果が期待出来ます。

ビタミンAには種類があり、前駆体となるβカロテンや、お薬として使われている活性型のレチノイン酸などがある

例えば、ビタミンAで例えると前駆体は緑黄色野菜等に含まれる「βカロテン」が前駆体です。対してニキビなどの治療に使われているのは「レチノイン酸」と呼ばれるビタミンAの活性型です。

このように、同じ栄養素に見える薬とサプリメントでは、その働きも目的も全く異なります。保険診療では活性型の薬を投与して体内での働きを強制的にコントロールするのに対し、オーソモレキュラー療法では前駆体の栄養素であるサプリメントを用いて、栄養素の利用は生体内のコントロールに任せます。

この体内での栄養素の働きを理解し、「なぜ栄養素が不足してしまったのか?」や「体内で栄養素がきちんと働くためにはどうすればいいか?」を考えてアプローチを行っていくのがオーソモレキュラー療法であり、保険診療で処方される薬との大きな違いです。

ナンナン

薬とサプリメントって、働きが全く違うのか❗

はる かおる

そうだよ。同じ栄養素の名前だからって、薬をサプリメントのように栄養補給で使用するのは危険なんだ。分子栄養学を理解する上で、この違いを理解することが重要だね。

薬とサプリメントの具体的な違い。同じように見える物でも何が違う?

では、もう少し踏み込んで、薬とサプリメントの違いについて解説していきましょう。

先ほども解説しましたが、病院で処方される薬の中には、カルシウム製剤やマグネシウム製剤、鉄剤、ビタミンAやビタミンB、ビタミンD、ビタミンE製剤など各種ビタミンミネラルに加え、血液をサラサラにするためのEPA製剤などがあります。

これらの薬とサプリメントでは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか? 1つずつ解説していきます。

カルシウム製剤、マグネシウム製剤とサプリメントの違い

まずは、カルシウム製剤とマグネシウム製剤、それとサプリメントの違いについてです。

カルシウムというと牛乳に含まれているものというイメージですが、実はカルシウムにも様々な種類があります。特に、お薬で使われているカルシウム製剤は、それぞれ効果や目的によっていくつかの種類に分かれています。

例えば、骨粗しょう症の治療を目的に処方される「アスパラギン酸カルシウム製剤」、低カルシウム血症や副甲状腺機能低下症に使用する「グルコン酸カルシウム製剤」や「乳酸カルシウム製剤」、高リン血症の改善や消化管内の制酸成分として胃炎などに使用される「沈降炭酸カルシウム製剤」などがあります。

これらは医薬品であり、治療に必要な場合にのみ処方、使用されるものです。そのため、サプリメントのように栄養補給を目的として処方されることはありません。

もし、これら医薬品をサプリメントのように毎日、長期間摂取するとなると、相応の副作用のリスクが伴います。一番懸念される副作用が高カルシウム血症で、ビタミンD製剤と併用すると更にリスクが高まります。高カルシウム血症になると、食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、筋力低下、多飲多尿、精神症状等があらわれ、さらに重篤になると不整脈、意識障害が出現する場合があります。

また、医薬品の中にはアルミニウムが含まれている物もあります。このような医薬品に含まれるアルミニウムによって、便秘になるなどの副作用が出る恐れもあります。

それから、骨にも良いと言われるマグネシウムの場合、お薬で使うマグネシウム製剤は主に「酸化マグネシウム製剤」です。これは便秘の方に下剤として用いるもので、栄養補給や骨粗しょう症の治療目的には使用されません。もしサプリメントのような感覚で摂取した場合は、当然ながら下痢になります。

このように、医薬品の利用は副作用のリスクがあることから、医師の指示のもと、慎重に投与されています。基本的に、お薬を栄養補給の用途で使用する事はありません。

対してオーソモレキュラー療法で用いる専用のサプリメントの場合、栄養補給を目的とし、食品由来の成分から作られています。例えば、カルシウムなら魚の骨を原料とした「リン酸カルシウム」や、「リン酸マグネシウム」などを主成分としています。(※ケンビックスシリーズの場合)

これらは、人の骨や歯と同じ、生体内に存在するカルシウムやマグネシウムのため、生体利用効率が高い栄養素です。食品に含まれる成分ですので、あまりにも過剰に摂取しなければ、長期間、毎日摂取したとしても、基本的に副作用はありません。

また、ビタミンDについても、オーソモレキュラー療法で用いる専用のサプリメントの場合、羊毛に紫外線を当てて生成されたものを抽出しています。こちらも、生体内に存在する食品由来の成分ですので、薬と違って副作用は殆どありません。

このように、薬のカルシウム製剤やマグネシウム製剤、ビタミンD製剤と、サプリメントのカルシウムマグネシウム、ビタミンDでは、同じように見えても全く異なります。基本的に医薬品には副作用があることから、栄養補給を目的として使用する事は出来ません。

では、使う材料が違うだけで、サプリメントを使用するオーソモレキュラー療法と、薬を使用する保険診療では、同じように見えて一体何が違うのでしょうか? こちらも先ほどと同じく、骨粗しょう症の例で見てみましょう。

オーソモレキュラー療法の場合、骨粗しょう症のケアには、カルシウム・マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどのサプリメントを用いています。併せて、必要に応じて西洋医学的なアプローチも取り入れ、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」なども取り入れることがあります。

一方、病院で行われている骨粗しょう症の治療においても、カルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK製剤、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」などのお薬が処方されています。

この2つのアプローチは非常に似ていますが、一体どこが違うのでしょうか? まず、大きな違いとしては「マグネシウム」の摂取を重視し、身体が自然な形でカルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどが使えているかどうかです。

骨を形成するためにはカルシウムに加えてマグネシウムも同時に摂取することが重要。一般的な医療では、カルシウム製剤が処方されるのに対し、分子栄養学ではカルシウムとマグネシウムも同時に摂取する。

現在の保険診療における骨粗しょう症の治療法では、基本的にマグネシウムは処方されずに「カルシウム製剤のみ」処方されています。これは、お薬で使われているマグネシウム製剤は骨粗しょう症の治療目的には当てはまらず、主に便秘の解消を目的とした下剤としてや、胃の不調に対する制酸剤として処方されているためです。

また、骨粗しょう症の治療で用いられる「ビスフォスフォネート薬」とマグネシウムを同時に摂取すると、マグネシウムがビスホスホネート薬の吸収を低下させてしまうことが知られています。このため、マグネシウム製剤の同時処方は殆ど行われていません。

対してオーソモレキュラー療法では、骨粗しょう症の治療においてもカルシウムと同時にマグネシウムの摂取も重視しています。これは、骨の形成にはカルシウム以外にもマグネシウムが必要な点と、ビタミンDの活性化にマグネシウムが必要なためです。オーソモレキュラー療法では、必要な栄養素を前駆体で補給し、後の利用は身体に任せることで、より自然に体内で栄養が使える状態を目指しています。

カルシウムの吸収促進、利用にビタミンDが必要な事は有名だが、ビタミンDを利用するためにマグネシウムが必要な事はあまり知られていない。

そして、オーソモレキュラー療法ではカルシウムの吸収やビタミンDの吸収、利用に至るまでを考慮するのが特徴です。例えば、カルシウムの吸収を促進したり、阻害したりしてしまう原因としては次のような影響があります。

カルシウムの吸収を促進する因子と阻害する因子。カルシウムを摂取する際は、吸収を促進してくれる成分を含む食べ物を一緒に摂るのが良い。

カルシウムの吸収を促進するもの

  • 胃酸
  • アミノ酸やペプタイド
  • 乳糖
  • ビタミンD
  • マグネシウム

カルシウムの吸収を阻害してしまうもの

  • H2ブロッカー、ステロイドなどの服薬
  • 高リン酸の食事
  • 高食物繊維の食事
  • 高脂肪な食事
  • ストレス

カルシウムは胃酸の分泌量やアミノ酸(タンパク質)によっても影響を受けるので、オーソモレキュラー療法ではピロリ菌感染の有無など胃腸機能もチェックします。

また、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、吸収するためには十分な胆汁の分泌量も必要です。この胆汁がしっかり分泌されているかどうかや、吸収したビタミンDを活性型に変換するために重要な役割を果たしている肝臓と腎臓の健康状態も重視します。

加えて、吸収を阻害してしまうような食生活やストレスなど生活習慣も見直すようアドバイスしたり、運動して筋肉をつけることも積極的にアドバイスを行っています。

これは、単に骨を作る材料であるカルシウムやマグネシウムなどを摂ったとしても、骨に刺激が無ければ骨の修復は行われないためです。併せて、骨を支えているのは筋肉であることから、筋肉量も重視します。このため、骨粗しょう症のアプローチにおいても、タンパク質の摂取量やビタミンB群の摂取量など、骨に関する栄養素以外のアプローチも同時に行います。

このように、骨粗しょう症のアプローチでも様々な面を考慮し、根本原因から解決していくようアプローチを行っていくのがオーソモレキュラー療法です。

対して保険診療による骨粗しょう症の治療では、ビタミンD製剤として活性型のビタミンDが処方されるなど、体内での栄養素の働きを人為的にコントロールします。また、アプローチにおいても骨に特化したアプローチしか行われません。

これが、オーソモレキュラー療法と保険診療のアプローチの違いです。比べてみると、オーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますよね。

ナンナン

なるほど、薬とサプリメントは同じように見えても、全く成分が異なるものなんだね

はる かおる

そうだよ。一見するとオーソモレキュラー療法は薬をサプリメントに置き換えただけのように見えるけど、その考え方もやり方も保険診療とは全く違うんだ

病院で処方される鉄剤と、鉄サプリメントの違い

続いて、病院で処方される鉄剤と、サプリメントの鉄分の違いです。

鉄剤は、主に「鉄欠乏性貧血」と診断された場合に処方されています。鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことで、この鉄欠乏性貧血は、全体の貧血原因の約7割を占めていると言われています。

この鉄欠乏性貧血は特に女性に多く、理由としては女性の場合は毎月の月経によって定期的に出血し、血液と共に鉄分が失われてしまうためです。加えて、妊娠出産によって鉄の需要と消費が多くなるのも女性に貧血が多い理由です。他にも、子宮筋腫、過多月経など何かしらの疾病や病気、怪我によって出血量が多くなった場合も鉄欠乏性貧血となります。

このような鉄欠乏性貧血と診断されたときに病院で処方されるのが、次のような「鉄剤」です。特に「フェロム」や「フェロミア」が処方されること多く、もしかしたら、あなたも処方されたことがあるかもしれませんね。

病院で処方される非ヘム鉄の例

  • フェロム (フマル酸第一鉄) 有機鉄
  • フェロミア (クエン酸第一鉄) 有機鉄
  • リオナ (クエン酸第二鉄) 有機鉄
  • インクレミンシロップ (溶性ピロリン酸第二鉄) 有機鉄(食品添加物としても使われる)
  • フェロ・グラデュメット(硫酸第一鉄)無機鉄 発色剤の一種。食品添加物としても使われる。

対して、オーソモレキュラー療法で使用されているのは「ヘム鉄」です。鉄分には大きく分けて「非ヘム鉄」「ヘム鉄」があり、病院で処方される鉄剤は「非ヘム鉄」になります。

この2つの違いは何なのかというと、主に肉や魚に含まれる動物性の鉄分が「ヘム鉄」で、野菜や穀物、果物に含まれている鉄分が「非ヘム鉄」です。どちらも同じように見えるかも知れませんが、その分子構造は大きく異なります。

鉄分には、動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と野菜や果物などに含まれる「非ヘム鉄」がある

では、なぜオーソモレキュラー療法と病院で処方される鉄剤は、違う構造の鉄分が使われているのでしょうか? この2つは一体何が違うのでしょうか?

まず、ヘム鉄と非ヘム鉄の大きな違いは、その吸収率と安全性です。ヘム鉄は吸収率が高いという特徴があり、その吸収量は10%〜30%程度と言われています。これは、小腸にヘム鉄専用の吸収経路がある事と、お茶やコーヒーなどに含まれるタンニンの影響を受けにくいことが関係しています。

対して非ヘム鉄の場合、その吸収率はかなり低く、5%以下しか吸収することが出来ません。これは、非ヘム鉄の吸収には胃酸やビタミンCなどの助けが必要な事と、お茶やコーヒーなどに含まれるタンニンと結合し、吸収率が落ちてしまうことが関係しているためです。

そのため、病院で処方される鉄剤は1回の服用量が100mgとかなり多くなります。しかし、これだけ飲んだとしても、吸収出来る量はたった5mg程度です。しかも、人によっては胃がムカムカしたり便秘になったりと副作用が出る場合があります。これは、病院で処方される鉄剤の多くが「無機の鉄そのもの」である事と、吸収効率が非常に悪い事から、体内で活性酸素が発生し、胃や腸の粘膜を傷つけてしまうためです。

病院で処方される鉄剤は体内で活性酸素を発生させる原因となり、細胞や粘膜にダメージを受けてしまう

無機の鉄とは、タンパク質などと結合していない「鉄そのもの」の状態のものです。鉄は、酸素と結びつきやすく、錆びやすいことはご存じですよね。このサビが体内で活性酸素を発生する原因になる事から、体内では鉄を安全に運んだり利用したり出来るようにタンパク質に包まれて大切に扱われています。

しかし、鉄剤を大量に服用した場合、鉄を吸収する過程で活性酸素を大量に発生させてしまいます。活性酸素とは、酸素の一部が通常よりも活性化された状態になることで、活性酸素の事を「フリーラジカル」とも呼びます。

この活性酸素が胃や腸などお腹の中で発生すると、その活性の高さから細胞を傷つけてしまい、様々な機能障害や疾患の原因に繋がってしまうのです。

また、腸内細菌の中には、鉄をエサにして増殖する悪玉菌が存在しています。非ヘム鉄はその吸収率の悪さから、吸収されなかった鉄分が大腸へと流れ、悪玉菌のエサとなって悪玉菌が増殖してしまうことがあります。

すると、便秘などお腹の調子が悪くなるほか、SIBO(小腸内細菌増殖症)、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群(IBS)など炎症性の腸疾患や肝炎、非アルコール性脂肪肝などに進行してしまう可能性があります。この事から、オーソモレキュラー療法では病院で処方される鉄剤の使用は推奨していません。

病院で処方される鉄剤は「非ヘム鉄」であり、吸収率が非常に悪い。

では、オーソモレキュラー療法で使用している「ヘム鉄」はどうなのかというと、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて安全性が高く、活性酸素の発生源になりにくいという特徴があります。これは、ヘム鉄が「ポルフィリン環」と呼ばれるタンパク質のカプセルのような物に包まれていることから、吸収時に鉄を還元する必要が無く、活性酸素を発生させないためです。

加えて、ヘム鉄は吸収率が高いことから鉄剤と比べて大腸へと流れる量が少なくなるため、ヘム鉄を摂ってもお腹の調子は悪くなりにくく、身体にも優しいのです。

ヘム鉄は専用の吸収経路があり、タンニンなどの吸収阻害要因からの影響も受けにくい。
鉄剤やホウレン草などに含まれるFe3+は、一度Fe2+に変化させないと吸収することが出来ない

なぜ、ここまでヘム鉄が優れているかというと、ヘム鉄の構造もさることながらその吸収経路にあります。
小腸には「ヘムトランスポーター」と呼ばれるヘム鉄専用の吸収経路が存在しており、この専用の吸収経路から効率的に吸収されることで、非ヘム鉄よりも効率的な吸収が可能になっています。

そのため、お茶やコーヒーなどに含まれるタンニンなどの影響を受けにくく、効率的に吸収することが出来るのです。

対して、非ヘム鉄の吸収経路はDMT1という経路を使って行われています。この吸収経路は亜鉛や銅など他のミネラルを吸収経路と共通になっているため、鉄剤を多く飲めば飲むほど亜鉛など他のミネラルの吸収を阻害してしまい、亜鉛が欠乏することによって「亜鉛欠乏性貧血」という貧血を引き起こしてしまう可能性があります。

鉄欠乏性貧血は鉄分さえ補給すれば改善出来ると思われがちですが、実はそうではありません。貧血を改善させるためには、鉄以外にも様々なミネラルやタンパク質が関係していて、その中でも特に「亜鉛」が重要な働きをしています。

オーソモレキュラー療法ではこのような体内での分子(栄養素)の乱れを改善することが目的のため、ヘム鉄以外にも亜鉛など貧血改善に必要な栄養素も同時に摂取していきます。このあたりが、保険診療の大きな違いです。

保険診療とオーソモレキュラー療法の貧血対策の違い

では、オーソモレキュラー療法と保険診療では、使用する鉄分の違い以外にも、他に何が違うのでしょうか?

この2つが行う貧血対策では、使用する鉄分の違い以外にも、アプローチ方法そのものが大きく異なります。

保険診療では上述した鉄剤しか処方されませんが、オーソモレキュラー療法ではヘム鉄以外にもプロテインやビタミンB群、亜鉛など造血に必要な栄養素も同時に摂取していきます。

特に、タンパク質と亜鉛はヘモグロビンの材料となる「ポルフィリン環」の合成に必要な材料であることから、貧血を改善させるためにはタンパク質や亜鉛の同時補給が欠かせません。

このタンパク質や亜鉛が不足してしまうと、貧血が改善出来なかったり、亜鉛欠乏性貧血を引き起こしたりと、改善がうまくいかない結果となってしまうのです。そのため、オーソモレキュラー療法では鉄分のサプリメントを単体で摂取する事はまずありません。

ヘモグロビンの構造とポルフィリン環の構造

このあたりの理由を理解するためにも、すこし造血の仕組みを見てみましょう。上図は、赤血球を構成しているヘモグロビンの構成を表した物です。ヘモグロビンは「ヘム」というポルフィリン環と鉄がくっついた物で、グロビンはタンパク質です。この2つが組み合わさることで、ヘモグロビンは構成されています。

よく、貧血と診断される際には血液検査でヘモグロビンの濃度を測りますよね。ヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運ぶ働きをしています。このヘモグロビンが減ってしまった状態が、鉄欠乏性貧血を始めとした貧血と言われる状態です。

図をよく見てみると、ヘム鉄の元になる「ポルフィリン環」の材料に亜鉛が必要と書いてありますよね。ポルフィリン環とはタンパク質のカプセルのような物で、ヘム鉄はこのタンパク質に包まれていることが最大の特徴です。

私達が摂った鉄分はこのポルフィリン環に包まれた「ヘム鉄」と呼ばれる状態に合成され、ヘモグロビンの合成などに利用されています。この時に亜鉛が不足しているとポルフィリン環が十分に合成できなくなり、ヘモグロビンの合成量低下に繋がります。このことから、亜鉛は造血をする際にも必要な栄養素です。

他にも、亜鉛欠乏は「亜鉛欠乏性貧血」とも関係しています。亜鉛欠乏性貧血とは、亜鉛が不足することによって赤血球の膜が破れやすくなり、毛細血管通過時に血管とこすれて壊れてしまう状態の事です。

亜鉛欠乏性貧血では赤血球の膜が弱くなり、血管とこすれて赤血球が破裂してしまう

赤血球が壊れてしまうと、その中に含まれるヘモグロビンも壊れてしまいます。先ほど、ヘモグロビンの構成については説明しましたよね。このせっかく作ったヘモグロビンや赤血球が次々に壊れてしまうと、これら合成量よりも破裂量が多くなって、貧血が進行する原因になります。亜鉛は、この赤血球の膜を丈夫にし、壊れにくくするために必要な栄養素です。

そんな亜鉛不足ですが、一見すると鉄欠乏性貧血とは関係ないように思えますよね。しかし実は、この亜鉛不足は鉄欠乏性貧血と密接な関係がある事が分かっています。ある鉄欠乏性貧血の女性グループを調べたところ、鉄欠乏性貧血の女性は健常な女性と比較して、血清亜鉛濃度が低いことが分かりました。

亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血の関係。鉄欠乏性貧血がある人は同時に亜鉛欠乏を抱えている可能性が高い

この研究では、鉄欠乏性貧血の女性30名を調べた結果、血清亜鉛濃度が70μg/dL(正常値80μg/dL)を下回っている女性が27名とおよそ90%の女性が亜鉛欠乏状態でした。対して鉄欠乏性貧血で無い健常の女性30名では、血清亜鉛濃度が70μg/dLを超えている女性が29名と、殆どの方に亜鉛欠乏が見られなかったのです。

このことから、亜鉛欠乏と鉄欠乏性貧血には相関関係があり、鉄欠乏性貧血を抱える女性の殆どは亜鉛欠乏も同時に抱えている可能性があります。

亜鉛は、上述したようにポルフィリン環の材料となったり、赤血球の膜を強くしたり、インスリンの働きに関与していたりと、貧血や低血糖症にも大きく関係している栄養素です。この亜鉛を同時に摂取する事で、更に貧血を改善しやすくなるという結果が出ています。

「鉄だけ」「亜鉛だけ」の摂取グループと「鉄と亜鉛」を摂取してもらったグループの変化。鉄と亜鉛を摂取した方が有意な改善が見られた。

この図は、貧血の女性に「鉄だけ」を摂取してもらったグループと、「亜鉛だけ」を摂取してもらったグループ、そして「鉄と亜鉛」を摂取してもらったグループの変化を見た結果です。この結果では、鉄のみ、亜鉛のみのグループと比べ、「鉄と亜鉛を同時」に摂ったグループの方が赤血球数の改善に有意な差が見られました。

このことから鉄分だけや亜鉛だけを摂取するのでは無く、鉄分と亜鉛は同時に摂取する方が効果的です。このことから、オーソモレキュラー療法で使用するヘム鉄のサプリメントには、造血に必要な亜鉛やセレン、マンガンなどが配合されています。

貧血改善には、サプリメントの質が重要。鉄単体の補給はむしろ逆効果となる。

これは、生体内のミネラルバランスや有害金属の解毒、鉄の恒常性が保持されるよう考慮されているためです。

対して、市販されているサプリメントの中にもヘム鉄のサプリメントが売られていますが、これらは単にヘム鉄だけが配合されたものが殆どで、造血に必要な栄養素が摂取出来るようには設計されていません。また、有効成分であるヘム鉄の含有量が殆ど含まれていないものもあります。

そのため、ドラッグストアなどで市販されているヘム鉄のサプリメントと、オーソモレキュラー療法で使用するヘム鉄のサプリメントは別物です。

ヘム鉄のサプリメントというとみんな同じに見えるかも知れませんが、その中身や質には大きな違いがありますので注意して下さい。

市販の安いヘム鉄サプリにはご注意!

ヘム鉄のサプリと言えば、ドラッグストアーなどで安く販売されている物を見かけることがありますよね。ヘム鉄が補給出来るなら、安くて量が摂れるに越したことはありません。しかし、同じヘム鉄といえどその質にはピンからキリまであります。特に、「ヘム鉄パウダーの量」と「ヘム鉄含有量」は全く違うものですので注意して下さい。

ヘム鉄は豚の血液を精製して作られており、ヘム鉄パウダーと呼ばれるパウダー状の中にヘム鉄が1%もしくは2%含有している物が一般的です。例えば「一粒でヘム鉄50mg」と書かれていても、これはヘム鉄パウダーが50mg含まれているだけであり、実際にはその中の1%〜2%である0.5mg〜1mgしかヘム鉄が含まれていない計算になります。このように、多く含まれているように見せかけて、実際にはヘム鉄が殆ど含まれていない物があるのです。

また、繰り返しますが貧血改善にはヘム鉄以外にも微量ミネラルと呼ばれるセレンやマンガン、銅や亜鉛など他のミネラルの補給も重要です。ヘム鉄として市販されている商品の多くはヘム鉄のみなど鉄分の補給しか出来ません。加えて、ヘム鉄の製造管理には高度な技術が必要で、生体内利用効率まで考慮すると安く作る事は不可能です。物によっては、湿度などの製造管理体制が悪く、品質が劣化している恐れもあります。

この事から、同じように見えるヘム鉄サプリメントであっても、体内での利用効率が悪く、貧血が改善出来ない場合があります。これを避けるためにも、ヘム鉄を摂取する際は生体内のミネラルバランスや生体内利用効率などを考慮した質が高いものを選ぶようにして下さい。分子整合栄養医学で使われているヘム鉄製品は、「鉄の取り込み」「利用」「貯蔵」「排泄」など貧血改善における鉄分本来の働きが安全に出来るよう考慮されています。ヘム鉄を選ぶ際は、値段や含有量にとらわれず、体内で安全に利用出来る安心、安全な製品を選びましょう。

貧血改善には、サプリメントの質が重要。鉄単体の補給はむしろ逆効果となる。

また、造血をしたり貧血を改善させるためには、亜鉛やヘム鉄に加えて「タンパク質」も必要です。先ほども解説したように、無機の鉄そのものの状態が体内で存在すると、活性酸素を発生させてしまってむしろ身体や細胞にダメージを与えてしまいかねません。

身体はこの鉄から発生する活性酸素から身を守るために、鉄を運搬、貯蔵、利用する際は必ずタンパク質で出来たカプセルに鉄分子を入れて利用しています。これが、ポルフィリン環やフェリチンなどですね。

つまり、鉄を安全に運搬、利用するためにはタンパク質が絶対に欠かせません。いくら鉄分を多く補給しても、安全に貯蔵、運搬、利用出来るためのタンパク質がない状態では、貧血を改善させることが出来ないのです。

このことから、オーソモレキュラー療法では、貧血改善をするためには鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂ることも行っています。

タンパク質は日々消費する。一日に必要な目安量は、体重(kg)×1〜1.5gが目安

タンパク質は肉や魚などから摂取することが可能で、タンパク質の摂取目安量としては体重(kg)×1~1.5グラムが理想だと言われています。

これは例えば、体重が60kgであれば、一日に必要なタンパク質はその体重分の60gといった感じです。意外と少なく感じるかも知れませんが、これは肉を60グラム食べるという意味ではありません。お肉には水分や脂質などタンパク質以外のものが多く含まれています。また、加熱など調理によってもお肉に含まれるタンパク質は減ってしまいます。そのため、純粋なタンパク質量で換算すると、肉で言えばおよそ800g相当です。

ただ、お肉を毎日800g食べるのは現実的ではありません。そのため、オーソモレキュラー療法では「プロテイン」を利用します。プロテインなら、ものにもよりますが一食につき10g〜20g程度のタンパク質を手軽に補給することが出来ます。このプロテインと、先ほどのヘム鉄、タンパク質を利用するために必要な補酵素のビタミンB群をセットで摂取する事が基本です。

とは言え、単にプロテインを飲めば良いという訳ではありません。タンパク質を消化吸収するためには胃や腸がしっかり働いていることが重要です。中には自律神経の乱れやピロリ菌などの感染症、胃酸の分泌量低下などによってタンパク質をうまく消化吸収出来なくなっている方もいます。

そのような方に対して、消化酵素を同時に摂取したり、プロテインよりも消化吸収が良いアミノ酸などから補給したり、ピロリ菌の除菌を行ったりなど、消化吸収のケアを同時に行っていくのもオーソモレキュラー療法の特徴です。

このように、保険診療では非ヘム鉄しか含まれない鉄剤を処方するだけですが、オーソモレキュラー療法ではより安全なヘム鉄を使用し、さらに造血や貧血の改善に必要な亜鉛、タンパク質などの同時摂取、更にはタンパク質などの消化吸収を考慮してアプローチを行っていく事が大きな違いです。

鉄分というとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますよね。

ナンナン

なるほど、貧血は鉄だけを補給しても改善することは難しいのか❗

はる かおる

そうそう、その造血に必要な材料をトータルで補給していくのがオーソモレキュラー療法だよ。

海外サプリメントの「アミノ酸キレート鉄」にご注意❗

最近では、インターネットを使って個人でも手軽に海外製のサプリメントを輸入することが出来るようになりました。その中でも、吸収率が高い鉄サプリメントとして「アミノ酸キレート鉄」が、一部の栄養療法を行っている方の間ではブームとなっています。

アミノ酸キレート鉄とは、本来吸収効率の悪い鉄を「グリシン」と呼ばれるアミノ酸でサンドイッチする事で、飛躍的に吸収効率を高めた鉄サプリメントです。価格も安く、吸収率も高いことから、一見するとかなり良い鉄サプリのようにも思えます。ただ、このアミノ酸キレート鉄のサプリメントは良いことばかりではありません。

海外サプリメント通販で手軽に入手出来るアミノ酸キレート鉄。吸収率は高いが、利用効率は悪い

アミノ酸キレート鉄は鉄分だけを無理矢理大量に吸収させることから、とても利用効率が悪くなります。造血には鉄以外にも亜鉛や銅、セレンやマンガン、タンパク質なども必要で、これらが足りない場合は造血することが出来ません。特に、アミノ酸キレート鉄では鉄だけを大量に吸収させることから、他のミネラルとのバランスを崩しやすくなります。

鉄を多く摂取すれば貧血が改善出来るような気がしますが、鉄だけ大量に補給しても造血することは出来ません。先ほども解説した様に、造血するには「亜鉛」も必要で、鉄欠乏性貧血の方は同時に亜鉛欠乏性貧血も抱えています。このような理由から、アミノ酸キレート鉄及び病院から処方される非ヘム鉄の摂取は、むしろ亜鉛欠乏性貧血や炎症を招く原因となってしまう恐れがあります。

このように、単に吸収率や価格だけで鉄サプリメントを選ぶのは危険ですので注意して下さい。

ビタミンB製剤と、サプリメントで使われるビタミンBの違い

次に、病院で処方されるビタミンB剤と、サプリメントで使われるビタミンBとの違いについてです。

ビタミンBには8種類あり、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類を総称してビタミンB群(コンプレックス)と言います。

ビタミンBは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類がある

病院で処方されるビタミンB剤はこのうちの1種類を配合したもので、それぞれのビタミンBの働きと効果、病気によって使い分けられています。

例えば、しびれや痛みなど末梢性神経障害の治療に使われているビタミンB12(メコバラミン)、ビタミンB1不足によって引き起こされるウェルニッケ脳症や衝心性脚気、神経機能障害の治療に使われているビタミンB1(フルスルチアミン)、主に高コレステロール血症の治療や、口内炎や湿疹、ニキビの治療や結膜炎の治療に使われているビタミンB2(リボフラビン、FAD)、パントテン酸の欠乏による高脂血症や血液疾患の治療などに用いられているパントテン酸(パントシン)、口内炎や湿疹、ニキビの治療に用いられる他、末梢神経炎の治療に使われているビタミンB6(ピリドキサール)、同じく湿疹やニキビの治療に使われているビオチン(ビオチン散)、同じくニキビや肌荒れ、ペラグラの治療に使われているナイアシン(ニコチン酸アミド)、リウマチの治療時などで起こりやすい葉酸欠乏症の予防及び治療、巨赤芽球貧血(悪性貧血)や再生不良性貧血の治療に使われる葉酸(フォリアミン)などです。

こうして見ると、8種類のビタミンB製剤が目的別にそれぞれ単品で使われていることが分かりますね。では、これらビタミンBの薬を使って、オーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?

まず、これらのビタミンB製剤を処方して貰うためには、正当な処方理由に値する病態と診断されていることが必要です。ビタミンB製剤が処方される主な病気としては、脚気やウェルニッケ脳症、末梢神経障害や皮膚炎などがあります。

しびれや痛みなど、末梢神経障害の治療には、ビタミンB6やB12のお薬が処方されている

この中でも身近なものとしては、痛みや末梢神経障害、皮膚炎などで処方されるビタミンB6やビタミンB12でしょうか。これらは主に、手や足のしびれや痛みを抱えている方や、手足に力が入らない、感覚が鈍いなどの症状を抱えている方や、病気の治療のために処方されるものですので、病気と診断されていない方がこのようなお薬を処方して貰うことは基本的には出来ません。

また、もし病気などでビタミンB6やビタミン12等がお薬で処方されていたとしても、これらお薬でオーソモレキュラー療法を行う事は不可能です。

なぜなら、オーソモレキュラー療法ではビタミンBをそれぞれ単品で摂取するのではなく、8種類すべてをまんべんなく摂取する事が大切だと考えています。これは、それぞれのビタミンがお互い助け合って働くことから、複合体(ビタミンB群)として摂取する事が望ましいためです。

ビタミンBは、単品で摂取するのではなく、8種類すべてを複合体として摂取する事が望ましい

このため、オーソモレキュラー療法専用のサプリメントでは、8種類すべてのビタミンBがコンプレックスとして配合されています。また、DNA(核酸)成分やL-カルニチン、ベタイン、イノシトールなど、ビタミンB群と協調して働く成分も配合されていることも特徴です。

では、なぜこのような8種類のビタミンBを複合体で摂取する必要があるのかというと、 それはビタミンBが三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)を利用するために必要な補酵素であり、単体のビタミンBを摂取したとしても、十分に働くことが出来ないためです。

具体的には、私達が食べたタンパク質や脂質、糖質は、ビタミンB群を使って、体内で細胞のエネルギー源となる「ATP」に変換され、利用されています。このATPとは、いわゆる「エネルギーの電池」のようなもので、このATPを利用することで私達は筋肉を動かしたり体温となる熱エネルギーを生み出したりと、あらゆるエネルギーの元として使われています。

ビタミンB群とエネルギー代謝の図。エネルギー代謝にはほぼすべてのビタミンB群が関係している

このエネルギーの元であるATPを生み出すためには、ビタミンB群として8種類すべてのビタミンが欠かせません。つまり、1種類だけのビタミンBを摂ったとしても、体内では殆ど働くことが出来ないのです。

例えば、糖代謝の例で見てみましょう。よく言われるものとしては、ビタミンB1です。ビタミンB1には炭水化物に含まれる糖質をエネルギーに変える際に必要な酵素を助ける働きがあるとされています。そのため、ビタミンB1を摂取する事によってエネルギーがスムーズに作られ、疲労回復や精神を安定させる働きがあることがよく言われていますよね。

そのため、疲労回復を目的とした市販のビタミン剤やドリンクなど、幅広いものにビタミンB1が配合されています。

しかし、糖代謝に必要なのはビタミンB1だけに限りません。糖質をエネルギーとして利用するためには、ビタミンB1以外にも8種類すべてのビタミンB群が関係しています。それを表したものが、下の図です。

糖代謝などエネルギー生成には単品のビタミンBだけでなく、すべてのビタミンB群が関わっている

この図は、糖代謝に必要なビタミンB群を表したもので、左にある「糖質」から、右へ向かってエネルギーに変換されるまでの過程を表しています。途中に書かれているものが中間代謝産物で、その代謝に必要なビタミンが矢印で書かれています。

見て頂くと分かると思いますが、糖質であるブドウ糖(グルコース)からピルビン酸に代謝される際や、ピルビン酸からアセチルCoAに代謝される際には、ナイアシンを始めとした各種ビタミンB群が関係している事が分かりますよね。

また、エネルギーの元となるATPが作られる「TCAサイクル」においても、ビタミンB1以外にもナイアシンやビタミンB2、パントテン酸など様々なビタミンB群が必要です。このように、糖代謝に必要なビタミンはビタミンB1だけではありません。

また、タンパク質の代謝においても同様です。病院ではニキビや湿疹の治療を目的としてビタミンB2やビタミンB6、ビオチンなどのビタミン製剤が処方されることがあります。これらビタミン剤が処方される理由としては、肌の修復や再生にはタンパク質の代謝が関係しており、このタンパク質の代謝にこれらビタミンBが欠かせないためです。

ですが、これらビタミン製剤をどれか1種類だけ処方されたとしても、体内でのタンパク質代謝は上手く回りません。理由は先ほどの糖代謝と同じように、複数のビタミンBが協力して働くことではじめてタンパク質代謝がうまく回せるようになるためです。このタンパク質代謝に必要なビタミンBを表したものが下の図になります。

タンパク質を体内で利用するためにも、ビタミンB群が大きく関わっている

この図は、タンパク質をエネルギーとして使うまでの過程を表したもので、上にあるタンパク質から右下のエネルギーに変わるまでに、ナイアシンやビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビオチンやパントテン酸など、様々なビタミンが関係している事が分かりますよね。

左側もタンパク質をエネルギーとして利用する過程の1つで、グルタミン酸の「アミノ基」と呼ばれる部分を外す(酸化的脱アミノ反応)ことによって、αケトグルタル酸とアンモニアに分かれます。この反応を行うためにはナイアシンやビタミンB6が必要です。

そして、このαケトグルタル酸は右側にある「TCAサイクル」に参加することができ、エネルギーとしても使うことが出来ます。このようにタンパク質を利用するためには様々なビタミンが必要です。

ちなみに、アミノ酸とはタンパク質を構成しているもののことで、人の身体は20種類のアミノ酸から構成されています。

人体は、20種類のアミノ酸で構成されている。その中には、体内で合成出来ない必須アミノ酸と、必須アミノ酸から合成出来る可欠アミノ酸がある。

これらアミノ酸は、私達が食べた肉や魚などのタンパク質が材料です。タンパク質は胃で消化され、アミノ酸まで分解することによって得られています。この過程をわかりやすく例えるなら「真珠のネックレス」を思い浮かべてみて下さい。

タンパク質はこのアミノ酸が「真珠のネックレス」のように数珠つなぎに繋がったもので、胃酸やすい液によって真珠のネックレスが一粒一粒になるまでバラバラに分解されます。

こうしてバラバラになったアミノ酸は小腸で吸収され、皮膚や粘膜を構成するための材料として使われるほか、体内で作られる酵素や脳の神経伝達物質の材料、各種ホルモンなど様々なものに使われていますこのようなアミノ酸を体内で利用する際にも、補酵素としてビタミンB群が必要です。

つまり、ニキビや湿疹の改善を目的に特定のビタミンBを処方されたとしても、オーソモレキュラー療法を行うにはそれだけでは足りません。タンパク質を利用して皮膚の再生を促すためには様々なビタミンB群が協力して働いています。また、そもそもタンパク質が上手く消化吸収出来ていなければ、いくらビタミンBを摂っても代謝は上手く回りません。

このような代謝を正常な状態に整え、あるべき身体の状態を取り戻すのがオーソモレキュラー療法です。このためには、特定のビタミンBだけを摂るのでは無く、ビタミンB群としてまんべんなく摂取する事が必要になります。

それからもう一つ、血液中を流れる赤血球が大きくなりすぎてしまう巨赤芽球貧血(悪性貧血)の治療に葉酸やのお薬が処方されることがあります。これは、葉酸が細胞分裂やDNAの合成に関与しているためです。こちらに関しても、正常な赤血球を作るためには葉酸以外にもB12やB6など複数のビタミンBが必要です。

具体的には、赤血球は「幹細胞」という骨髄にある細胞が分裂して作られています。そして分裂した赤血球の赤ちゃんが成長していって大人の赤血球になるのですが、その成長の過程には葉酸以外にもビタミンB12やビタミンB6が必要になります。

また、赤血球は細胞ですので、細胞の元となる「タンパク質」が欠かせません。このタンパク質を合成するためにも、エネルギーとして糖質や脂質から作られるATPが必要です。

つまり、巨赤芽球貧血(悪性貧血)の改善には、葉酸やビタミンB12以外にも、先ほどの糖代謝やタンパク質代謝で必要なビタミンB群が一通り必要になるということです。このため、オーソモレキュラー療法を行う際は必ずビタミンB群として摂取する事が重要で、単品で処方されるビタミンB製剤ではオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

では、もしこれらの8種類のビタミンB製剤を保険診療ですべて処方してもらえた場合、これらを使用してオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?

こちらに関しても、お薬のビタミンB製剤でオーソモレキュラー療法は出来ません。その理由としては、最初にも解説したように、お薬のビタミンB剤に配合されているビタミンBは「活性型」や「誘導体」が付いているためです。

オーソモレキュラー療法と薬物療法の違い

薬物療法

  • 既に活性化したもの(薬物)を投与する
  • 栄養素や体内での働きを強制的にコントロールする
  • 速効性がある、誰にでも同じように効果が期待出来る

→副作用がある

オーソモレキュラー療法

  • 天然物を投与する
  • 栄養素の利用は生体内のコントロールに任せる
  • 速効性は無いが、人それぞれにあった効果が期待出来る。

→副作用が少ない

繰り返しになりますが、栄養素には、同じように見えても「活性型」と「前駆体」があります。お薬に配合されているものは「活性型」で、食品やサプリメントに含まれているものは「前駆体」です。

食品などに含まれる栄養素は、体内に入ってもそのままの形では働くことが出来ません。いったん身体の中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。

前駆体は、この活性型になる前の状態を言い、食品やサプリメントに含まれる栄養素のことです。体内では、主に肝臓の働きによって必要に応じて前駆体から活性型に変換されて利用されています。

酵素の働きに必要なビタミンB群は、肝臓で活性化されてはじめて全身で働けるようになる。このことから、栄養素を利用するためには肝臓の健康状態が鍵となる。

対して活性型の栄養素とは、既に身体が使える状態で入ってくるもので、ビタミンB製剤で言えばビタミンB12の「メコバラミン」やビタミンB6の「ピリドキサールリン酸エステル水和物」、ビタミンB2の「リボフラビンリン酸エステルナトリウム」などです。また、吸収を良くするために誘導体を付けられたものもあり、ビタミンB製剤で言えばビタミンB1の「フルスルチアミン塩酸塩」や「ベンフォチアミン」などがあります。

これらは吸収も良く、既に活性化されている状態である事から速効性があり、誰にでも同じように効果が期待出来ます。

このように聞くと、栄養素は前駆体で摂らずに活性型で摂った方が効果が高いのでは?と思いますよね。しかし、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

このことから、処方箋で出されるビタミンB製剤を使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。代わりに、オーソモレキュラー療法では活性型や人工的に加工された栄養素は使用せず、必ず食品と同じ成分で出来た天然由来の栄養素を用います。

このような天然である事、活性型になる前の前駆体である事を、クルードなプレカーサーと言います。クルード(Crude)というのは「天然の、ありのままの、加工していない」という意味で、プレカーサー(precursor)は「前駆体=活性化される前の形」という意味です。

なぜオーソモレキュラー療法では天然由来の前駆体の栄養素を使用するのかというと、栄養素は体内で酵素と結びついて初めて利用出来る状態になります。そのためには、限りなく天然に近い形である事が必要です。

本来、身体には必要な栄養素を必要なだけ活性型に変換して利用しています。これを正常に行うためには限りなく天然に近い形の栄養素が必要で、人工的に合成された栄養素や、もともと天然物を使っていても保存性や吸収性を良くするために誘導体をつけたり加工したりしたものでは、体内で酵素と結びつけずに、異物として排泄されたり効果が弱まったりしてしまう可能性が高くなります。

また、お薬のように活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

栄養素は体内で酵素と結び付くことで初めて使うことが出来る。この酵素と結びつく力や量には個人差があり、お薬では誰に対しても効果が期待出来るように設計されている。

対して栄養素の場合、薬と比べて重篤な副作用はあまりありません。食品やサプリメントに含まれている栄養素は、薬と違って生体内で自由にコントロールする事が出来ます。この、体内での栄養素の働きを身体にまかせるのか、それとも強制的にコントロールするのかが、薬と栄養素の大きな違いです。

ただし、薬で処方されるビタミンB製剤のすべてが悪というわけではありません。中には代謝障害や肝機能の低下などによって正常にビタミンBを活性化できなかったり、胃を切除してしまった方などでビタミンB12が上手く消化吸収出来ない方など、様々な事情の方がいます。

例えば、ビタミンBが活性型として働くためには、補酵素であるビタミンBが酵素と結びついて初めて働くことが出来ます。この酵素と補酵素の結合に必要な結合量や量には、個体差があることが一般的です。オーソモレキュラー療法では、この個体差を加味して至適量の栄養補給を行いますが、中には肝臓の病気や機能の低下、代謝障害によって栄養素を上手く活性化できない方もいます。このような方には、必要に応じて既に活性化されているお薬のビタミンB製剤を使用することも必要です。

また、ビタミンB12は他のビタミンBと消化吸収経路が異なります。ビタミンB12をしっかりと吸収するためには、消化管の状態がしっかりと働いていることが必要です。もし、胃を切除してしまったり、機能が低下していたり、代謝障害によってうまく活性化できない方は、既に活性型として配合されているビタミンB製剤を必要としている方もいます。

ビタミンB12を吸収するためには、唾液や胃から分泌される内因子の働きが必要で、消化管の状態がビタミンB12の消化吸収に関わる

具体的には、ビタミンB12は唾液腺から分泌されるR-タンパク(R-binder)と結合します。このR-タンパクは、ビタミンB12の腸粘膜への吸収を促進する働きがあります。このR-タンパクとビタミンB12が結合した状態で胃を通過すると、ビタミンB12を吸収するために必要な「内因子」が胃から分泌されます。

そして、ビタミンB12が十二指腸に進むと、先ほどのR-タンパクが切り離されて内因子と結合し、この内因子の助けを借りて小腸から吸収されます。

つまり、ビタミンB12をしっかりと吸収するためには、このような胃と腸を含めた消化管の状態がしっかりと働いていることが必要です。もし、胃を切除してしまったり、機能が低下していたり、代謝障害によってうまく活性化できない方は、必要に応じてお薬のビタミンB製剤を注射で投与したり鼻腔内投与したりすることも必要になります。これら方法であれば、胃の内因子の影響を受けずに直接体内に投与することができるため、内因子の分泌不足など消化管の状態に関係なくビタミンB12を吸収することが出来るからです。

薬と栄養素の役割の違い。薬は主に症状を抑えるためのもの。対して栄養素は壊れた細胞を修復するためにある。

このように、サプリメントのビタミンB群と薬のビタミンBでは役割が異なります。お薬で使用するビタミンB剤は、あくまで何らかの病気や障害によって必要とされる場合にのみ使われるものであって、日常的な栄養補給を目的としたものではありません。もし、8種類すべてのビタミンB製剤が処方されたとしても、お薬でオーソモレキュラー療法は出来ないのです。

ビタミンBというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。

ナンナン

お薬のビタミン剤でもオーソモレキュラー療法が出来ると思ってたけど、お薬とサプリメントでは中身も目的も全然違うんだね

はる かおる

そうだよ。お薬のビタミン剤は治療が目的の薬で、栄養補給のようには使えないんだ。逆に、サプリメントのビタミンB群は、治療目的に使うことは出来ないよ。このあたりの違いをしっかり理解することが重要だね。

薬で使われるビタミンEとサプリメントのビタミンEは何が違う?

次に、薬で処方されるビタミンE製剤と、サプリメントのビタミンEの違いについてです。

お薬で使われるビタミンE製剤は、主に「動脈硬化」など虚血性疾患のリスクが高い方に処方されています。動脈硬化とは、簡単に言うと「血管が硬くなってしまい、柔軟性がなくなってしまった状態」の事です。

動脈硬化とは、血管が硬くなり柔軟性が無くなってしまっている状態の事。この状態では血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などの病気がおこりやすくなる

この原因としては、酸化したLDLコレステロールなど、いわゆる「悪玉コレステロール」が血管壁にこびりつき、血管が狭くなって血管が詰まってしまうことが関係しています。

特に、血管が狭くなったり硬くなったりすると血流が悪くなり、血管壁に傷が付いてしまいます。この傷を修復するために血栓が形成され、これが積み重なることで血管が詰まってしまい、動脈硬化に至る原因になると考えられています。

動脈硬化は、コレステロールが血管内にたまり、血管が狭くなっていく状態。この部分に血栓が形成されると、血管が詰まってしまう

動脈硬化になると、脳や心臓、腎臓など重要な臓器への血流が途絶えてしまうため、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を引き起こします。また、最悪の場合は死亡したり、一命を取り留めたとしても半身不随などの後遺症が残ってしまったりと、非常に恐ろしい病気の1つです。

ビタミンEは、この動脈硬化や虚血性疾患を予防し、血流を改善する作用があります。そのため、動脈硬化のリスクが高い方には、ビタミンEのお薬が処方されているのです。

では、病院で処方されるビタミンEでオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか? 同じビタミンEなら、サプリメントのビタミンEよりも病院で処方されるビタミンEの方が効果が高そうな感じがしますよね。

ですが、病院で処方されるビタミンEでは、オーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

なぜなら、病院で処方されるビタミンE製剤では、動脈硬化対策や血液をサラサラにするために重要な「抗酸化作用」が殆ど期待出来ないためです。

実は、一言でビタミンEといっても、様々な種類や化学構造のものがあります。特に大きな違いとしては、「天然由来」か「天然型」か「合成型」かの違いです。

天然由来とは、食品に含まれる自然な形のビタミンEのことで、最も抗酸化作用と生理活性が期待出来る形のものです。こちらは主に、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントに配合されています。

他にも「天然型」と「合成型」があり、こちらは人工的に合成して作られたか、人工的に加工して作られたもののことで、お薬に含まれているビタミンEは、天然型もしくは合成型のビタミンEが主に使われています。また、ドラッグストアなどで売られているサプリメントや、海外サプリメントも、「天然型」もしくは「合成型」のビタミンEが配合されている物が殆どです。

これらの大きな違いは、ビタミンEとしての効果にあります。ビタミンEには主に「抗酸化作用」「血行促進作用」「赤血球膜の安定化」「ホルモン活性作用」などがあり、様々な効果があることから若返りのビタミンや血管ビタミン、妊娠ビタミンや心臓ビタミン、スポーツビタミン、自律神経やホルモン調節ビタミンなどとも呼ばれています。これらビタミンEの働き全般を指すのが「生理活性」です。

実は、お薬に使われている天然型や合成型では、このビタミンEにおける生理活性や抗酸化作用は殆ど期待出来ません。

理由は主に二つあり、一つは合成されたビタミンEや人工的に加工されたビタミンEでは、ビタミンEを酸化から守るために「エステル化」と呼ばれる加工がされていることと、単品のd-α-トコフェロールしか含まれていない事です。

エステル化とは、いわゆる「コーティング」のようなもので、抗酸化力を発揮する水酸基の部分をアルコールや酢酸などの物質と結合させて安定化する加工のことです。この水酸基をエステル化させることによって、空気や光などからビタミンEが酸化されないよう防いでいます。

しかし、このエステル化を行ってしまうと、デメリットも大きくなってしまいます。それが、先ほどの「抗酸化力の低下」です。エステル化を行うと、水酸基から「H」の水素が外れにくくなってしまうため、十分な抗酸化力は望めません。このことから、人工的に加工されたビタミンEや合成ビタミンEが体内に入っても、本来の栄養素としての働きが十分に行えないのです。

例えば、薬として処方されるビタミンEでは「酢酸 d-α-トコフェロール」や「酢酸dl-α-トコフェロール」が配合されています。これらは名前に「酢酸」が付いている事からも分かるように、ビタミンEを酸化から守るために「酢酸」を結合した「エステル化」がされています。

このようなビタミンEでは抗酸化力が殆ど無いことから、動脈硬化や虚血性疾患の予防に有効な抗酸化作用は殆ど期待出来ません。これがお薬のビタミンEにおける抗酸化作用が殆ど期待出来ない理由です。

もう一つの理由としては、お薬や市販されているビタミンEサプリメントの殆どには、単品のd-α-トコフェロールしか含まれていないことが挙げられます。

ビタミンEには大きく分けて「トコフェロール」と「トコトリエノール」があり、この二つにはそれぞれα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類、計8種類が存在しています。少し分かりにくいですが、α-トコフェロールやα-トコトリエノール、β-トコフェロールやβトコトリエノールなど、それぞれのトコフェロールやトコトリエノールに種類があり、合計で8種類あるということですね。

ビタミンEには、トコフェロールとトコトリエノールがあり、それぞれ4種類、全8種類がある

このトコフェロールとトコトリエノールの大きな違いは、分子構造の違いと、その作用の違いです。トコトリエノールは炭素同士の二重結合(図緑色の丸部分)があり、この二重結合がある事で細胞膜への侵入が容易に出来ます。そのため、トコトリエノールはトコフェロールと比べて速効性があり、生理活性がトコフェロールよりも高いという特徴があります。

対してトコフェロールは、炭素同士の二重結合が無いことから細胞膜への進入速度が遅く、代わりに持続性があるのが特徴です。

また、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類はそれぞれ生理活性や抗酸化力に違いがあります。最も生理活性が強いのはα型で、次にβ型、δ型、γ型と続きます。この生理活性は、主に妊娠をサポートする力やホルモンの活性作用などです。

生理活性の一つである抗酸化作用については、γ型が最も強く、次にδ型、β型、α型と続きます。つまり、α型のビタミンEが最も生理活性が高く、抗酸化作用についてはγ型のビタミンEが最も高いということになります。

では、お薬や市販されているサプリメントのビタミンEはどうかというと、これら様々な種類のビタミンEのうち、α-トコフェロールのみしか含まれていません。

実は、ビタミンEはこれら8種類が補い合って作用していることから、8種類すべてをバランス良く摂取する事が大切です。

8種類のビタミンEはそれぞれ働きの強さが違い、お互いが補い合って作用している。このことから、ビタミンEを摂取する際はバランス良く摂取するのがポイント

例えば、持続性のある「トコフェロール」と速効性のある「トコトリエノール」両方を同時に摂取する事で、体内のビタミンE濃度を高濃度で維持することが出来ます。

また、α型のビタミンEが最も生理活性が高く、抗酸化作用についてはγ型のビタミンEが最も高いことから、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類、それぞれ8種類すべてのビタミンEをバランス良く摂取する事が、最も生理活性と抗酸化作用が期待出来る方法です。

つまり、お薬や市販されているサプリメントのビタミンEでは、α-トコフェロールのみしか含まれていないことから、ビタミンEが本来持っている生理活性と抗酸化作用は殆ど期待出来ないのです。

対して、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは天然由来の植物成分から抽出していることから、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)を含むすべてのトコフェロール、トコトリエノール8種類が含まれています。

食品に含まれているビタミンEにはもともと複数のビタミンEが含まれていて、α-トコフェロール単品のみが含まれているなんてことはありません。そのため、食品由来の成分から抽出した天然由来のビタミンEサプリメントでは、8種類すべてのビタミンEが含まれています。

また、オーソモレキュラー療法で使用するビタミンEのサプリメントは、脂溶性ビタミンが上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

例えば、脂質や脂溶性ビタミンは消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

そして、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂溶性のビタミンを摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントであるケンビックス製品の場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

脂溶性のビタミンを吸収するためには、胆汁酸の働きによって水と油を混ぜ合わせる「乳化」を行う事が必要。肝機能が低下している方や高齢者では、胆汁酸の分泌が低下していることがある

また、天然に存在するビタミンEはそのままの状態だと光や酸素の影響で酸化、劣化してしまうため、それらから有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの特徴です。

このような違いがあることから、病院で処方されるビタミンEやドラッグストアなどで市販されているビタミンEを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

ビタミンEというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。

ナンナン

なるほど、ビタミンEには色々な種類があるのか❗ お薬のビタミンEは、1種類しか含まれていないんだね

はる かおる

そうそう、対してオーソモレキュラー療法で使うサプリメントは食品由来の原料から抽出しているから、8種類のビタミンEがバランス良く含まれているよ。このあたりも、薬とサプリメントの大きな違いだね

薬で処方されるEPA製剤と、サプリメントのDHA・EPAの違い

続いて、薬で処方されるEPA製剤と、サプリメントのDHA・EPAの違いについてです。

EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、主に魚に含まれている油のことで、オメガ3系脂肪酸と呼ばれています。EPAとDHAは必須脂肪酸の一つで、体内で合成することが出来ないことから必ず食事から摂取する必要があります。

油脂には種類があり、常温で固体のバターやラードなど飽和脂肪酸の他、魚油に多く含まれるオメガ3系脂肪酸のEPA・DHA、植物油に多く含まれるオメガ6系脂肪酸のリノール酸などがある。

また、油には他にも種類があり、スーパーなどで売られているサラダ油やコーン油、ごま油などは「オメガ6系脂肪酸」と呼ばれている油です。こちらも、体内で合成することが出来ないため、必ず食事から摂取する必要があります。

近年では魚を食べる量が減り、サラダ油やごま油などの「オメガ6系脂肪酸」を多く摂取するようになりました。魚に含まれている「オメガ3系脂肪酸」と植物油に多く含まれる「オメガ6系脂肪酸」は、摂取量のバランスが重要であり、よりオメガ3系脂肪酸の摂取量が多い人ほど、心筋梗塞による死亡率が著しく低いことが分かっています。

オメガ6系脂肪酸の摂取量が多いデンマーク人と、オメガ3系脂肪酸の摂取量が多いイヌイットの血清脂肪酸の割合を調べたところ、イヌイットの血中EPA濃度が高く、心筋梗塞による死亡率が著しく低いことが分かった

例えば、デンマーク人とイヌイットの心臓病による死亡率を調べたところ、オメガ6系脂肪酸の摂取量が多いデンマーク人に比べ、オメガ3系脂肪酸の摂取量が多いイヌイットのほうが、心筋梗塞による死亡率が著しく低いことが分かりました。

これは、イヌイットは野菜や果物の摂取量は少ないですが、EPAを多く含む魚やアザラシなどが主食のため血中EPA濃度が高濃度で維持できていたためです。

このことからEPAには虚血性疾患を予防する作用があるとされ、先ほどのビタミンEと同じく、動脈硬化や虚血性疾患の治療や予防のためにEPA製剤が処方されています。

EPAには赤血球の変形能を保ったり、傷んだ血管の修復を促す作用があり、特に狭い血管内を赤血球が流れる際には赤血球の柔軟性が欠かせません。

EPA・DHAには赤血球の変形能を保ち、虚血性疾患を予防する働きがある

赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を持っていて、狭い毛細血管内ではその形を柔軟に変形して身体の隅々まで酸素を送り届けています。この際、赤血球の変形能が低下してしまうと、毛細血管を通りにくくなって血流が悪くなったり、血管と赤血球がこすれて血管が痛んでしまいます。

これら赤血球の変形能を保ち、痛んだ血管の修復を促してくれる作用があるのがEPAとDHAです。また、EPAとDHAには不整脈や血栓の形成を防ぐ働きもあります。

このことから、動脈硬化や虚血性疾患のリスクが高い方には、ビタミンEと併せてEPA製剤やDHA・EPA製剤のお薬も同時に処方されることがよくあります。

では、病院で処方されるEPA製剤やDHA・EPA製剤でオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか? 主なものとしては、「エパデール(EPA製剤)」や「ロトリガ( EPAとDHA(ドコサヘキサエン酸)を主成分とする製剤)」があります。同じDHA・EPAなら、サプリメントのDHA・EPAよりも病院で処方されるDHA・EPAの方が質が高そうな感じがしますよね。

ですが、病院で処方されるDHA・EPAでは、オーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

なぜなら、病院で処方されるDHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから、出血しやすくなるなどの副作用が伴うためです。

また、DHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから脂肪酸の含有バランスが食品由来のものとは大きく異なります。これでは、日常的な栄養補給や体内の脂肪酸バランスを整える目的としては使えません。

薬のEPA・DHAと食品由来のDHA・EPAの違い。薬のDHA・EPAは高純度のEPAもしくはDHAのみで、出血しやすくなるなどの副作用がある

例えば、EPA製剤のお薬である「エパデールT」の副作用説明には、使用上の注意として次のような説明があります。

<<エパデールT 使用上の注意>>
◆してはいけないこと(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります)

  • (1)20才未満の人。
  • (2)出血している人。
    (血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等にて出血している場合、止血が困難となることがあります)
  • (3)出血しやすい人。(出血を助長することがあります)
  • (4)手術を予定している人。(出血を助長することがあります)
  • (5)次の医薬品を服用している人。
    ミフェプリストン及びミソプロストールを含有する人工妊娠中絶薬、ワルファリン等の抗凝固薬、アスピリンを含有するかぜ薬・解熱鎮痛薬・抗血小板薬、インドメタシンを含有する鎮痛消炎薬、チクロピジン塩酸塩やシロスタゾール等の抗血小板薬(出血傾向が強くなることがあります)
  • (6)脂質異常症(高脂血症)、糖尿病又は高血圧症と診断され現在医師の治療を受けている人、あるいは健康診断等で医師の治療を勧められた人。

https://www.taisho-direct.jp/products/detail/EDT-00-L2F000Xより

また、同じくDHA・EPA製剤である「ロトリガ粒状カプセル」においても次のような副作用が記載されています。

ロトリガ粒状カプセルの副作用

主な副作用

過敏症 、 発疹 、 薬疹 、 そう痒 、 高血糖 、 めまい 、 頭痛 、 鼻出血 、 下痢 、 悪心 、 腹痛

重大な副作用

肝機能障害 、 黄疸 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 AL−P上昇 、 γ−GTP上昇 、 LDH上昇 、 ビリルビン上昇

上記以外の副作用

おくび 、 腹部膨満 、 便秘 、 鼓腸 、 痛風 、 味覚異常 、 低血圧 、 消化不良 、 胃食道逆流性疾患 、 嘔吐 、 胃腸出血

薬剤との相互作用

血液凝固阻止剤、ワルファリンカリウム、抗血小板剤、アスピリン いずれも出血等の副作用

このように、病院で処方されるDHA・EPA製剤では出血しやすくなるなどの副作用が起こる他、特定の病態を抱えている方や薬を服用している方では、相互作用に対して特に気をつけることが必要です。

そのため、DHA・EPA製剤は医師の判断の下慎重に投与が行われており、副作用など安全性の観点から日常的な栄養補給の用途として安易に用いるべきではありません。病院で処方されるEPA・DHA製剤は、あくまで病気の治療を目的としたお薬です。

それから、DHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから、オーソモレキュラー療法で必要な体内の脂肪酸バランスを整える目的で用いることは出来ません。

本来、魚に含まれている油にはDHA・EPAに加え、魚油由来の脂肪酸がバランス良く含まれています。例えば、同じくオメガ3系脂肪酸の「α-リノレン酸」や、オメガ6系脂肪酸である「アラキドン酸」や「リノール酸」などです。

α-リノレン酸は主に亜麻仁油など植物に含まれている油で、体内ではEPAやDHAに変換される出発物として、EPAやDHAに変換されて使われています。魚油にもα-リノレン酸が含まれる理由としては、植物プランクトンにもα-リノレン酸が多く含まれており、それを食べる動物プランクトンや、動物プランクトンを食べる魚では、食物連鎖によってオメガ3系脂肪酸が蓄積していくためです。

また、「アラキドン酸」や「リノール酸」はオメガ6系脂肪酸の必須脂肪酸であることから、これら油もバランス良く摂取する必要があります。

オーソモレキュラー療法ではこれら油をバランス良く摂取して体内の脂肪酸バランスを整える事が目的で、DHA・EPA製剤のように病気の治療を目的としたものではありません。

そのため、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、医薬品のように合成のEPAやDHAを配合するのではなく、天然に存在する魚から油を抽出して作られています。(ケンビックスシリーズの場合)

ケンビックスシリーズのDHA・EPAでは、DHA・EPA以外にもリノール酸やαリノレン酸、アラキドン酸など魚油由来の脂肪酸がバランス良く含有している。

例えば、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの一つであるケンビックスシリーズでは、使用されている原材料が食品由来の天然成分であるため、副作用の心配は基本的にありません。これは、例えるなら魚を食べているのと同じような状態になるためです。健康な人が魚を食べても副作用がほぼ起こらないのと同じように、天然由来の食品成分であれば、副作用が起こることはほぼありません。

また、DHAにはEPAと同等、もしくはそれ以上の抗炎症作用がある事から、EPAとDHAを同時に摂取することで相乗効果が期待出来ます。病院で処方されるDHA・EPA製剤はEPAもしくはDHAのどちらかしか含有していませんが、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントではDHA・EPAどちらもバランス良く含まれています。

このように、病院で処方されるDHA・EPAとオーソモレキュラー療法で使用するDHA・EPAは、それぞれ配合されている成分も使用する目的も違うことから、病院で処方されるDHA・EPAをオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ません。

もし、DHA・EPA製剤が保険適用で利用出来るようになったとしても、やはりオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ないのです。

病院で処方されるビタミンDHA・EPAは治療が目的の薬
対してオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントは、食生活などで乱れた体内の脂肪酸バランスを整える事が目的!

また、オーソモレキュラー療法で使用するDHA・EPAのサプリメントは、脂質を上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

繰り返しになりますが、脂質や脂溶性ビタミンは消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

そして、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂質を摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントであるケンビックス製品の場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

脂質を吸収するためには、胆汁酸の働きによって水と油を混ぜ合わせる「乳化」を行う事が必要。肝機能が低下している方や高齢者では、胆汁酸の分泌が低下していることがある
写真はビタミンAのサプリメントだが、ミセル加工されたDHA・EPAもライナップされている

また、天然に存在するDHA・EPAはそのままの状態だと光や酸素の影響で酸化、劣化してしまうため、それらから有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの特徴です。

このような違いがあることから、病院で処方されるDHA・EPA製剤やドラッグストアなどで市販されているDHA・EPAサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

DHA・EPAというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。

ナンナン

げっ、DHA・EPAってどれも同じように見えるけど、薬のDHA・EPAは副作用があるのか❗

はる かおる

そうだよ。お薬で処方されるDHA・EPAはあくまでお薬だから、栄養補給を目的とした用途には使えないんだ。逆に、サプリメントを薬のように使うことも出来ないよ。同じように見えるけど、この2つは全く違うものなんだ。

Column : 魚をたくさん食べればDHA・EPAサプリメントの代わりになる?

DHAとEPAは主にイワシやサバなどの青魚に多く含まれているが、その中でも特に脂ののったイワシやサバなどに多く含まれる。

EPAやDHAはサバやイワシなど青魚の脂に多く含まれている成分です。先ほど解説したイヌイットの例では、イヌイットはEPAを多く含む魚やアザラシなどが主食のため血中EPA濃度が高濃度で維持できていました。

また、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、サバやイワシなど食品由来のものから抽出した成分を原材料に使用しています。

このことから、魚を多く食べればサプリメントと同じようにDHAやEPAが摂れるのでは?と思う方もいますよね。果たして、魚を多く食べれば、サプリメントに頼らなくても血中EPA濃度を高濃度で維持することは出来るのでしょうか?

これについては、不可能とは言いませんが、なかなか難しい部分が多くあるかと思います。

例えば、手軽に食べられるサバ缶の場合、DHAが1300mg、EPAは930mg含まれているとされ、イワシ缶ではDHA・EPAはそれぞれ1200mg・1200mg含まれていると言われています。※文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)脂肪酸成分表」より

オーソモレキュラー療法におけるDHA、EPAの推奨摂取量は、一日あたり1,000mg~とされていますので、毎日イワシまたはサバ缶を100g以上食べ続ければ、推奨摂取量が満たせる計算です。やろうと思えば、何とか出来そうな気がしますよね。

しかし、サバ缶やイワシ缶からDHA・EPAを摂取するとした場合、缶詰内にある汁まですべて残さず摂取した場合に限り、先ほどのDHA・EPAを摂取する事が可能です。汁を捨ててしまったり、残したりしてしまった場合は、DHA・EPAの総摂取量は減ってしまいます。

また、DHA・EPAは非常に酸化されやすく、保管状況や調理の仕方によっては、DHA・EPAの酸化が促されて栄養成分が損失したり成分が劣化してしまったりします。

例えば、揚げ物や炒め物など高温での調理を行う場合や、煮るなど長時間の加熱料理ではDHAやEPA酸化反応が促進されるため、DHA・EPAが酸化してしまう場合があります。

また、酸性の環境でも酸化が進みやすいため、酸味の強い料理や酢を多く使用する調理法では酸化の影響を受けやすくなるので注意が必要です。(イワシやアジの南蛮漬けなど)

それから、DHAやEPAは酸素との反応が速いため、調理中など空気に触れている状態であれば、酸化しやすくなります。これは、調理中に限らず、開封して余ったサバ缶やイワシ缶を保管する場合や、乾物、塩蔵品、干物なども同様です。(魚油が酸化している場合、黄色ないし赤褐色に変色し、味や香りなど風味の劣化が著しくなります)1

もし、このような酸化したDHAやEPAを多く摂取してしまった場合、酸化した油による活性酸素の影響によって、むしろ体内でダメージを受けて炎症が促進され、動脈硬化や虚血性疾患、ガンなどのリスクが上昇してしまうことにも繋がりかねません。

そのため、サバ缶やイワシ缶など食品からDHA・EPAを十分に摂取しようとした場合、なるべく製造日から日が経っていないものを選ぶことと、なるべく調理はせずにそのまま食べる事が理想となります。これについては筆者も一度チャレンジしてみたことがあるのですが、サバ缶を3日連続で食べたあたりから魚油の臭いで気持ち悪くなり、とても食べ続けることは出来ませんでした。

また、魚油というとDHAやEPAしか含まれていないというイメージですが、実は心筋梗塞のトリガーとなる「セトレン酸」や「エルカ酸」「ドコセン酸」と呼ばれる脂肪酸も多く含まれている傾向にあります。

具体的には、サンマではエイコセン酸とドコセン酸をあわせて45%程度含まれていることもあり、マイワシやサバでは、多いものでそれぞれ15%〜25%程度含まれていると言われています。1

このため、魚を食べれば必ず心筋梗塞や心疾患の予防、改善に効果が期待出来るとは言えません。

これは、魚に限らずサプリメントも同じです。サプリメントの種類によっては、このような不要な脂肪酸がそのまま含まれているものや、逆に、不要な脂肪酸は取り除かれているものの、α-リノレン酸やリノール酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸まですべて取り除かれてしまっているものもあります。また、サプリメントによっては酸化しやすい魚油成分に対して十分な酸化対策や工夫がされていないものもあります。

そのため、やはり魚を食べるのとサプリメントからDHA・EPAを摂取するのと、薬で摂取するのとでは、摂取できる有効成分や脂肪酸バランスに大きな違いがあります。

ではオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントのEPA・DHAサプリメントはどうなのかというと、精製過程でドコセン酸をはじめその他不必要な脂肪酸はしっかりと取り除かれているので安心です。加えて、体内で必要なα-リノレン酸やリノール酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸は残すという絶妙な塩梅で精製がされています。(ケンビックスシリーズの場合)

ケンビックスシリーズのDHA・EPAでは、不要な脂肪酸は取り除き、必須脂肪酸など有益な成分は残すよう設計・製造が行われている

また、ケンビックスシリーズのオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品も用意されており、加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方でも安心して摂取出来るよう配慮がされています。

酸化・劣化対策においても、有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの特徴です。

このように、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、消化吸収能を考慮し、体内の脂肪酸バランスを整えるために必要なものは残し、不要なものは極力排除するという絶妙なバランスで設計、製造されています。(ケンビックスシリーズの場合)

魚の油には確かにDHA・EPAが含まれていますが、魚とサプリメント、薬では、摂取出来る有効成分や脂肪酸のバランスに大きな違いがあります。

そのため、食事からDHA・EPAを摂取することも大切ですが、脂肪酸のバランスや有効成分の酸化・劣化、消化吸収能も考慮し、必要に応じてサプリメントや適切にお薬も使用することが大切です。

薬で使われるビタミンAと、サプリメントのビタミンAの違い

最後に、薬で処方されるビタミンAと、サプリメントのビタミンAの違いについてです。

ビタミンAには主に細胞の分化・分裂に関係しており、規則正しい細胞分裂を誘導するために必要な栄養素です。特に皮膚や粘膜などの細胞分裂に重要な役割を果たしていることから、「お肌のビタミン」とも表現することが出来ます。

ビタミンAは細胞の分化・分裂に関わっている
ビタミンAは特に皮膚や粘膜などの細胞分裂を規則正しく誘導するために必要な栄養素である事から、ニキビの治療薬としても使われる

このビタミンAが不足してしまうと、細胞の分化・分裂が上手く誘導されなくなってしまい、お肌の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れてしまいます。

すると、お肌のハリ・ツヤが無くなる、小じわが目立つ、シミ・そばかすが目立つ、ニキビなどの皮膚炎になりやすくなるなどのトラブルが起こります。

ビタミンAが不足すると細胞の分化・分裂が上手く誘導されなくなってしまい、お肌の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れてお肌のトラブルの元となる

また、ビタミンAは他にも眼の機能を維持する働きを持っていて、不足すると夜盲症(暗いところでものが見えない)や眼球乾燥症(結膜や角膜の乾燥)、ドライアイを起こすことがあります。

そのため、ビタミンAは皮膚や粘膜以外に、眼の健康や視力の維持にも必要な栄養素です。もしビタミンAが不足してしまうと、眼が乾燥する、涙目になる、暗いところでものが見にくい、眼が疲れるなどの不調が起こりやすくなります。

ビタミンAは、眼の機能を維持する働きを持ち、不足すると夜盲症や眼球乾燥症を引き起こすことがある
ビタミンAの不足・欠乏に関係する症状。主に眼と皮膚に不調が引き起こされることが分かる

では、病院で処方されるビタミンAを使って、オーソモレキュラー療法を行う事は出来るのでしょうか?

病院では主に、ニキビや吹き出物の治療としてビタミンAのお薬が処方されています。同じビタミンAなら、サプリメントのビタミンAよりも病院で処方されるビタミンAの方が効果が高そうな感じがしますよね。

ですが、病院で処方されるビタミンAでは、オーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

なぜなら、病院で処方されるビタミンA製剤は「活性型」の栄養素であり、効き目が強すぎることから、栄養補給を目的としたオーソモレキュラー療法では使用できないためです。

具体的には、ビタミンAには「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」という3つの種類があります。また、ビタミンAの一種と言われているβカロテンも必要に応じてレチナールに変換されています。このうち、「βカロテン」「レチノール」が前駆体で、「レチナール」と「レチノイン酸」が活性型です。(※正確にはレチノール、レチナール、レチノイン酸共に活性型ですが、ここでは分かりやすくするためにレチノールを前駆体としています)

単にビタミンAといっても、その中には様々な種類がある。特に前駆体であるレチノールやβカロテンと、活性型であるレチノイン酸は働きが異なるので、区別することが大切

レチノールは主にレバーや魚の脂肪部分、肝臓部分に含まれていて、普段私達が食品から得られるビタミンAです。また、βカロテンは主に緑黄色野菜に含まれています。これらは体内で必要な量を必要なだけ、必要に応じて「レチナール」や「レチノイン酸」に変換(活性化)されて利用されています。

食品に含まれるビタミンAには主に2種類あり、動物性食品に多く含まれるレチノールと、緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンがある

対して、皮ふ科などの治療で用いられているのが、既に活性型のビタミンAである「レチノイン酸」です。レチノイン酸には細胞の分化・増殖を促進し、皮膚の細胞分化やターンオーバー(新陳代謝)を調節する働きがあります。このことから、主にニキビの治療薬として使われています。

このように聞くと、栄養素は前駆体で摂らずに活性型で摂った方が効果が高いのでは?と思いますよね。しかし、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

例えば、レチナールは主に網膜に存在し、視覚に関与するのに対し、レチノイン酸では細胞の分化・増殖に関与しています。同じビタミンAに属していますが、この2つは全く働きが異なります。もし、眼の健康を目的としているのに、同じビタミンAだからと「レチノイン酸」を大量に摂取してしまった場合、レチナールとしての働きは得られないどころか、レチノイン酸による副作用によってむしろ健康を害してしまう結果になりかねません。

また、お薬である「レチノイン酸」の過剰摂取で問題となるのが、時に死に至るなど重篤な副作用を引き起こしてしまうことです。これを読んでいるあなたも、「ビタミンAを摂りすぎると死に至る」という情報を聞いたことがあるのではないでしょうか。

ビタミンA過剰症や副作用報告は合成のレチノイン酸の大量投によるもので、前駆体であるレチノールでテストされたものではない

これについては、やはりお薬である活性型のレチノイン酸を過剰摂取することは非常に危険です。先ほども解説した様に、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまい、最悪の場合は死に至る原因になってしまうのです。

逆に、前駆体である「βカロテン」や「レチノール」ではそのような危険性はありません。なぜなら、これらは体内で必要に応じて活性化されて利用されています。そのため、βカロテンやレチノールを摂りすぎたとしても、死に至るなどの危険性は基本的には無いのです。

妊婦にビタミンAを大量摂取させることは危険と言われていたが、それは活性型のレチノイン酸のことであり、レチノールやβカロテンとして摂取する限り、ビタミンAの過剰症の心配はない

また、副作用の報告のすべては活性型である「合成のレチノイン酸」を大量投与した結果であって、決して「レチノール」や「βカロテン」でテストされたものではありません。

ビタミンA過剰症についての注意喚起では、その情報の多くが活性型のレチノイン酸と「レチノール」「βカロテン」などを混同しています。基本的にレチノールやβカロテンでは、活性を持たないことから安全性が高いビタミンAです。

加えて、「レチノール」と「レチナール」は体内で必要に応じて相互に変換することができ、体内でビタミンAを運ぶ際や貯蔵する際にも「レチニルエステル」というエステル化(コーティングのようなもの)が行われます。例え食品からビタミンAを摂りすぎたとしても、体内では「レチナール」を活性の低い「レチノール」にしたり、レチニルエステルという非常に安定性が高い状態にして肝臓に貯えることが出来るのです。

そのため、「レチノール」や「βカロテン」をサプリメントで摂ったとしても、基本的に過剰摂取の心配はありません。逆に、レチノイン酸はレチノールへと変換できないことから、薬によるレチノイン酸の大量投与は過剰摂取の危険性が高まってしまうのです。

それから、体内では必要に応じて「レチノイン酸」に活性化して利用されますが、この体内で作られる「レチノイン酸」と薬で用いられる「レチノイン酸」の作用は異なります。

例えば、体内でレチノイン酸が生成される場合、その生成量やタイミングは生体の調節機構によって厳密に制御されています。一方、薬など外部から投与される場合は、一度に大量のレチノイン酸が体内に供給されるため、自然な生体調節とは異なる影響を及ぼす可能性が高くなるのです。

つまり、体内で作られるレチノイン酸は、作られる量や作られた後の分解量、分解するタイミングなどを身体がコントロールできるのに対し、外部から投与したレチノイン酸は、身体がコントロールする事が出来ません。このため、外部から投与するレチノイン酸の作用と、身体の中で作られるレチノイン酸の作用は、同一視してはならないのです。

このように、お薬で使われるビタミンAには副作用があることから、医師の判断の下慎重に投与量が決められて処方されています。お薬のビタミンAを処方されたときは、医師の処方通りに用法用量を守って正しく服用することが大切です。

対して、オーソモレキュラー療法では、食生活などで不足したビタミンA(βカロテン、レチノール)の補給を目的としているため、お薬のビタミンAをオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ません。同じ栄養素に見える薬とサプリメントですが、その働きも目的も全く異なるのです。

また、オーソモレキュラー療法ではビタミンAのサプリメントを単品で摂取する事は基本的にありません。これは、ビタミンAを体内で貯蔵したり運んだりするためには、ビタミンAを運ぶための「タンパク質で出来た専用のトラック」が必要なためです。

ビタミンAはタンパク質で出来たトラックに乗って運ばれる。そのため、タンパク質不足はビタミンA不足に繋がる

もし、体内でタンパク質が不足していた場合、ビタミンAを貯蔵したり運んだりすることが出来なくなり、ビタミンA不足に繋がります。

そのため、オーソモレキュラー療法ではビタミンAのみを単品で摂取するのではなく、タンパク質やタンパク質の代謝を助けるビタミンB、亜鉛など、ビタミンAの利用に必要な栄養素も同時に摂取を行っていきます。

加えて、ビタミンAを活性化しているのは主に肝臓ですので、脂肪肝や肝炎など肝臓の働きが悪くなっていないか、お酒を飲みすぎていないかなどもチェックし、摂取したビタミンAが体内できちんと働けているかどうかもチェックしながら行っていく事が基本です。

特に、ビタミンAは脂溶性のビタミンのため、消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

繰り返しになりますが、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂質を摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

そのため、オーソモレキュラー療法で使用するビタミンAのサプリメントは、脂質を上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

脂溶性のビタミンを吸収するためには、胆汁酸の働きによって水と油を混ぜ合わせる「乳化」を行う事が必要。肝機能が低下している方や高齢者では、胆汁酸の分泌が低下していることがある
ミセル加工されたビタミンAと、ミセル加工されていないビタミンAサプリメントの違い。ミセル加工されたビタミンAでは、水とよく馴染んでいることが分かる

オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントであるケンビックス製品の場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

また、天然に存在するビタミンAは「βカロテン」や「レチノール」など、様々な形態で存在しています。オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、なるべく食品と同じ自然に近い形で摂取する事が大切と考えていることから、レチノール以外にも協調して働く7種類のカロテノイドとDHA・EPAが配合されています。このように、体内での利用効率も考えられた処方設計になっている事も特徴です(ケンビックスシリーズの場合)

つまり、病院で処方されるビタミンAは、あくまで治療が目的であって、栄養補給を目的とした用途には使うことが出来ません。

病院で処方されるビタミンAは治療が目的の薬
対してオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントは、食生活などで不足したビタミンAを補給する事が目的!

もし、ビタミンA製剤が保険適用で利用出来るようになったとしても、やはりオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ないのです。

このような違いがあることから、病院で処方されるビタミンA製剤やドラッグストアなどで市販されているビタミンAサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

ただ、中には代謝障害や臓器の病気などでビタミンAをうまく活性化したり、利用することができない方もいます。そのような方は適切にお薬のビタミンAを使うことも必要です。

ビタミンAというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。

ナンナン

薬をサプリメントのように使うと、命を落とす危険性もあるのか❗

はる かおる

そうだよ。同じ栄養素の名前だからって、薬をサプリメントのように栄養補給で使用するのは危険なんだ。オーソモレキュラー療法を行うなら、この違いを理解することが重要だね。

サプリ代や検査代を少しでも安くしたい! 市販されている検査キットや安いサプリメントでも代用可能?

ここまで、病院で処方されるビタミンやミネラルのお薬と、サプリメントに含まれるビタミンやミネラルの違いについて解説してきました。

保険診療では安く検査を受けられたり、安くお薬を処方してくれたりします。しかし、それでオーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

では、保険診療以外に、オーソモレキュラー療法を安く実践する方法は無いのでしょうか?

例えば、自分で血液検査が出来る検査キットを取り寄せて特定項目の検査だけを行うとか、ドラッグストアや海外で販売されている安いサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法を実践するなどです。

現在では、Amazonを始めとした通信販売が普及したことで、自宅でできる血液検査キットなども販売されるようになってきました。

このような自宅でできる血液検査キットは、検査キットに同封されている案内に従い、ご自身で採血します。そして、採血した血液を郵送で送ることで、後日結果が郵送されてくるといった流れです。

主に12項目前後の項目が検査でき、値段も数千円と手ごろなことから、病院で採血を受けられない方や自力でオーソモレキュラー療法を行っていきたい方に利用されています。

DEMECAL 生活習慣病+糖尿病 セルフチェック

検査項目

  • 栄養状態総タンパク(TP)、アルブミン(ALB)
  • 肝機能AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ‐GTP)
  • 脂質代謝総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)
  • 腎機能尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)
  • 痛風尿酸(UA)
  • 糖代謝血糖(GLU)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)

価格

7,370円(税込)(記事執筆時点)

自宅でフェリチン検査!(標準キット)

検査項目

  • 鉄関係:血清フェリチン、血清鉄 (Fe) 
  • 生化学:AST (GOT)、ALT (GPT)、γ-GTP、中性脂肪 (TG)、総コレステロール、LDLコレステロール (悪玉コレステロール)、HDLコレステロール (善玉コレステロール)、尿素窒素 (BUN)、クレアチニン (Cr)、尿酸 (UA)、総タンパク (TP)、アルブミン (Alb)

価格

オンライン一般価格:7,200円 (税込7,920円、送料無料)(記事執筆時点)

これら検査結果を基に、市販されている安いサプリメントや、海外サプリメントなどを使えば、かなり安くオーソモレキュラー療法が出来そうですよね。

例えばドラッグストアで売られているサプリメントは、ものにもよりますが数百円〜1,000円前後で販売されています。また、最近ではインターネットを使って海外サプリメントを手軽に個人輸入することが出来るようになりました。

海外サプリメントでは、日本で販売されているサプリメントと比べて、かなりの高濃度です。この海外サプリメントは高濃度でありながら値段も手ごろで、1つあたり1,000円〜3,000円程度で購入することが出来ます。

対して、オーソモレキュラー療法専用サプリメントではこれらサプリメントの3倍〜5倍、ものによっては10倍近くするものもあり、市販されているサプリメントや海外サプリメントと比べて高額です。

このような安くて高濃度のサプリメントを駆使すれば、わざわざ「オーソモレキュラー療法専用のサプリメント」なんて必要ないのでは?と思いますよね。

では、これらを用いて正しいオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?

結論としては、このような自分で出来る検査キットや海外サプリメントなど市販されているサプリメントを使って正しいオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

理由としては、検査項目がそもそも少ない事、検査結果の数値がほぼ参考にならないこと、海外サプリメントなど市販されているサプリメントでは、胃や腸で溶けずに排泄されてしまうものや、表示成分に記載されていない薬品成分などが混入している恐れがあるためです。

まず、そもそもオーソモレキュラー療法では、フェリチン値の単体項目のみで貧血かどうかを判断することはありません。また、貧血の方に鉄だけを摂らせることはありません。

上記の検査キットを使用する方は、主にフェリチン値低下による隠れ鉄欠乏性貧血の改善や、それに伴う精神的不調、身体的不調の改善が目的かと思います。特に、メガビタミン健康法などでは「タンパク質不足や鉄欠乏性貧血を改善すれば不調が治る」として、フェリチン値を上げることが重要だと言われていますよね。

このように聞くと、単に「タンパク質と鉄分を摂取すれば良いのでは」と思われるかも知れませんが、実はタンパク質不足や貧血は、タンパク質や鉄分の摂取が足りない以外にも、様々な原因や栄養欠損が関係しています。

例えば、鉄欠乏貧血においては、ピロリ菌に感染している場合や、婦人科疾患による過多月経、スポーツにおける溶血、自律神経の乱れによる消化吸収能の低下、消化管からの出血、タンパク質やビタミンB群、亜鉛などの栄養欠損など、様々な原因が複雑に絡み合って発生しています。

加えて、例えその方が貧血だったとしても、貧血には様々な種類があり、その原因も様々です。例えば、亜鉛が足りなくて貧血になる亜鉛欠乏性貧血や、再生不良性貧血、大球性貧血や小球性貧血、慢性炎症における鉄の利用障害や、溶血性貧血など、貧血には様々な種類があります。

特に重度の貧血を引き起こしている場合には、消化管の出血や婦人科疾患など出血を伴う何らかの疾病が隠れている可能性があります。貧血を改善する際には、これら出血原因となっている疾病から先に対処する必要があるため、まずは疑わしい原因を特定するための検査を受けることが重要です。

また、造血を行うためには鉄分以外にもタンパク質やビタミンB群、亜鉛、セレン、マンガンなど様々な栄養素が必要です。鉄分を十分に補給してもこれら栄養素の摂取が足りない場合や、タンパク質が十分に消化吸収出来ない場合でも貧血となる場合があります。

この消化吸収に問題が起こる原因としては、先に挙げたピロリ菌の感染やIBS(過敏性腸症候群)、ストレスや自律神経の乱れなど、様々な原因があります。このような問題を抱えていた場合は、問題となっている疾病や症状の対処も同時に行う必要があります。

それに、フェリチン値は肝臓病などの炎症性疾患や、リウマチなど自己免疫性疾患などの炎症でも上昇することがあります。そのため、フェリチン値が上昇していても、鉄が足りているとは限りません

このような理由から、貧血の判断は関連項目や病態、生活習慣を含めた幅広い検査結果を基に解析し、その方それぞれに最適な分子栄養学的アプローチを行っていく事が大切です。オーソモレキュラー療法ではこのような関連項目や病態、生活習慣を含めた幅広い情報を元に行っていく事から、単にフェリチン値のみを見て貧血かどうかを判断し、アプローチを行う事はありません。また、貧血の方に対して鉄分だけを摂らせることもありません。

つまり、自宅でできる検査キットでは関連項目など項目数が少なすぎるため、なぜフェリチンが低いのか?や、なぜフェリチン値が高くなってしまったのか?など、深い部分までは全く分からないのです。

加えて、メガビタミン健康法で言われているような「精神的な不調はタンパク質不足と鉄欠乏性貧血が原因であり、フェリチン値を上げれば改善する」というのも、すべての方に当てはまるとは限りません。

例えば、うつ症状との関連があると考えられる疾病としては、貧血以外にも様々なものが関係しています。

うつ症状との関連があると考えられる疾病の例

  • ピロリ菌感染による消化能力の低下と栄養欠損
  • 更年期障害
  • 低血糖症
  • 甲状腺機能障害
  • PMS、PMDD
  • SIBO(小腸内細菌増殖症)
  • リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)
  • 機能性ディスペプシア
  • 過敏性腸症候群
  • 副腎疲労症候群
  • 脳の炎症

このような疾病は、消化吸収能の低下や自律神経の乱れを引き起こし、結果的にタンパク質不足を始めとした栄養欠損の状態になりやすくなります。栄養欠損の状態では、自律神経の調節に必要な栄養素が不足してしまうことから、うつ症状などが引き起こされてしまうことがあるためです。

そのため、うつ病だからといって症状だけで鉄欠乏性貧血だと決めつけるのでは無く、血液検査を通して客観的に判断し、それぞれ適切なアプローチを行うことが大切です。

特に貧血には必ず原因があり、消化管から出血している場合には、まず消化管からの出血を止めることが第一ですし、婦人科疾患によって出血量が増加していた場合は、婦人科疾患の治療を先に行うことも必要になります。ピロリ菌の感染やリーキーガット症候群などで消化吸収能が低下していた場合は、その対策も必要です。

オーソモレキュラー療法では、症状の背景にこのような疾病が隠れていないかどうかを血液検査や画像診断などで分析し、必要であれば疾病に対して薬物療法を行うなど西洋医学的な治療も併せて行われます。

この原因からきちんと対処しなければ、いくらサプリメントで鉄を補給したとしても、血液や栄養素がザルのように体外へ流れ出てしまってほとんど効果がありません。そのため、オーソモレキュラー療法では単に足りない栄養素をサプリメントで補うだけで無く、栄養欠損を引き起こした原因に対しても適切なアプローチを行っているのです。

他にも、メガビタミン健康法とオーソモレキュラー療法では、違う点がいくつもあります。詳しくは、下記の記事も参考にしてみて下さい。

ナンナン

うぅ、自宅でできる血液検査キットでオーソモレキュラー療法は出来ないんだね💧

はる かおる

そうだね。そもそも検査で使う試薬の違いでも出てくる数値は大きく違うから、参考にもならないよ。やっぱりちゃんとしたオーソモレキュラー療法の血液検査を受けるのが一番良いね。

海外サプリメントなど市販されているサプリメントで安くオーソモレキュラー療法を行う事は可能?

では、自宅でできる検査キットでは正確なオーソモレキュラー療法が出来ないとして、サプリメントについては海外サプリメントなど安いサプリメントを使うことは出来るのでしょうか?

こちらについても、オーソモレキュラー療法では海外サプリメントや市販されているサプリメントを使っての実践はオススメしていません。

その理由としては、胃や腸で溶けないサプリメントが多くあるほか、パッケージに表示されていない医薬品成分が混入している可能性があるためです。

例えば、独立行政法人国民生活センターでは、『錠剤・カプセル状の健康食品は、外見上医薬品と誤認されることが多いものの、医薬品並みの品質管理がなされているものではないとされています。また、成分が一定量に調整されていない商品や、消化管の中で確実に溶けて、吸収されるように作られていないと思われる商品があるともいわれています。』と解説しています。

そして、独立行政法人国民生活センターが市販されている商品を実際に購入して崩壊性を調べた結果、なんと100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったという結果になりました。

市販されている商品に関するテスト

 市販されている商品をテスト対象として、崩壊せず体内で吸収されない可能性があるか、表示されている機能性成分(注6)が表示どおり入っているか、微生物や重金属に汚染されていないか等、品質について調べました。

  • 消費者へのアンケート調査の回答結果を参考に、多くの消費者が摂取すると考えられた機能性成分を10カテゴリー(「マルチビタミン」、「GABA」、「黒酢、香醋(こうず)」、「コエンザイムQ10」、「酵素」、「HMB」、「ルテイン」、「乳酸菌類」、「グルコサミン」、「DHA、EPA」)選定し、神奈川県内、東京都内及び徳島県内のドラッグストアの店頭やインターネット通信販売の大手ショッピングモール(Amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)、検索サイトGoogleにて市場調査を行い、各カテゴリーにつき10銘柄ずつ、合計100銘柄を選定しテスト対象としました。100銘柄中には、栄養機能食品が21銘柄、機能性表示食品が11銘柄含まれています。
  • 崩壊性を調べた結果、100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しませんでした。

利用途中の健康食品に関するテスト

 消費者の利用状況等が錠剤・カプセル状の健康食品の品質に影響を及ぼすかを調べるために、徳島県内で利用途中の健康食品を収集し、同時に、対面でその健康食品の利用実態に関するアンケート調査及び聞き取り調査を実施しました。容器を移し替えておらず、かみ砕いて摂取する錠剤ではない合計105商品をテスト対象としました。

  • ハードカプセルの内容物が硬化しているものがみられました。
  • 医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あり、未開封品よりやや高い割合でした。
  • 収集した利用途中の健康食品の多くでは、未開封品と比べると機能性成分の量がわずかに少ない傾向がみられました。
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190801_1.html

また、既に利用中の健康食品の崩壊性を調べた結果もあり、テスト対象とした合計105商品のうち、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あったとの結果にもなっています。

このことから、市販されているサプリメントのおよそ半数は、医薬品に定められた規定時間内にきちんと崩壊していないという事実があります。当たり前ですが、どんなに良い原材料を使った高濃度の有効成分が含まれているサプリメントでも、それが胃や腸できちんと崩壊しなければ全く意味がありません。

なぜこのような結果になってしまうのかというと、サプリメントは「食品」という位置づけである事から、医薬品ほど厳密な設計や製造、テストが行われていないためです。医薬品は有効性を保証するために体内での崩壊性を考慮した設計や製造、厳しいテストを行いますが、市販されているサプリメントの多くはこのような考慮や設計は殆ど行われていません。

大抵の場合は、コストを抑えるために単に原材料を錠剤の形に固めただけで販売されています。この時に固めすぎてしまうことで、体内できちんと崩壊しないといった結果になってしまうのです。

また、海外サプリメントなどサプリメントの中には、薬品成分が混入していることがあります。サプリメントは「食品」という位置づけである事から、医薬品ほど厳密な製造体制やチェック体制が求められていません。

このため、信じられないかも知れませんが、実際にサプリメントによる医薬品成分の検出が相次いで発生しているのです。このようなサプリを摂取した結果、肝機能障害が引き起こされたなど健康被害を伴う事件も発生しており、厚生労働省や日本アンチドーピング機構などが注意を呼びかけています。

サプリメントには法律で禁止されている成分が混入している場合がある。日本よりも質が良いと言われる米国製サプリメントであっても注意が必要
https://www.jtu.or.jp/news/2017/10/18/13162/より
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/ken_shoku5.htmlより

例えば、2017年には「ANAVITE」という海外製サプリメントに、ドーピングで禁止薬物であるタンパク質同化ステロイドが検出された当事件が発生しています。

この他にも、愛知県衛生研究所が平成18年4月1日から平成19年3月31日までの一年間で、国内で販売された健康食品の成分を調べた結果、66のサプリメントから医薬品成分が検出されたとの結果が出ました。

この情報からも分かるように、国内外問わずサプリメントに薬品成分が混入している事例が相次いでいます。基本的にサプリメントには成分をすべて表示する義務がないため、パッケージの栄養成分表示を見ても薬品成分が混入しているかどうかは分かりません。

サプリメントは薬のような見た目をしているので「どれも一緒だ」と思われる方が多いのですが、サプリメントの善し悪しは見た目や味、値段やパッケージの表示成分を見ただけでは判断することが出来ないのです。

このため、市販されているサプリメントや海外サプリメントとオーソモレキュラー療法専用サプリメントでは、その品質に雲泥の差があります。それぞれを比較してみると、次のような感じです。

一般的なサプリメントとオーソモレキュラー療法専用サプリメントの違い

スクロールできます
一般的なサプリメントオーソモレキュラー療法専用
サプリメント
食品由来の安全な原材料を使用
合成した原材料が使われている場合がある

使用している
規格化された高品質な原材料を使用
使用されていないものが多い

使用している
消化吸収能が考慮された配合
されていない

されている
体内での崩壊を考慮
考慮されていない

考慮されている
複合体での設計、配合
なっていない

なっている
反応抑制のためのコーティングの有無
なし

ある
医薬品レベルの厳しいチェック体制
行われていない

行われている
鮮度を保つための小ロット生産
されていない

されている

栄養摂取の目的
欠乏症、病気の予防病態の改善・予防
オプティマムヘルスの推進

このように比べてみると、市販されているサプリメントや海外サプリメントとオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、品質や目的が全く違うことが分かりますよね。

オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントは値段が高いとよく言われることがありますが、高いものは高いなりに理由があります。この違いを理解し、オーソモレキュラー療法を実践する際は必ずオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントで行うことが大切です。

この他、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの具体的な違いについてもっと知りたい方は、次の記事を参考にして下さい。

特定の栄養素をサプリメントで過剰に摂取することは、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させる可能性あり

この記事でも解説しているように、一般的なサプリメントや海外サプリメントでは合成した原材料などが主に使用されていることから、特定の栄養成分のみしか含まれていない物が大半です。

このような特定の成分のみしか含まれていないサプリメントで分子栄養学を実践すると、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性があります。

例えば、フィンランドで行われたα-トコフェロール・β-カロテンがん予防試験(ATBC)で、29,000人以上の男性喫煙者に20mg/日のβ-カロテンおよび/または50mg/日のα-トコフェロールを与えて効果を調べた研究があります。

また、米国で行われたβ-カロテンおよびレチノール有効性試験(CARET)では、30mg/日のβ-カロテンと25,000IU/日のレチノール(ビタミンA)の組み合わせを、喫煙者、以前に喫煙していた者、または職業的にアスベストに接していた18,000人以上の男女に与えて効果を調べた研究があります。3

この結果としては、β-カロテンのサプリメントを摂っていたグループの肺がんリスクが、ATBCの参加者で6年後に16%増加し、CARETの参加者でも4年後に28%増加したという結果になりました。

このことから、1996年にアメリカ国立がん研究所が「β-カロテンにはがん予防効果が無く、また喫煙者では逆に肺がんを増加させる恐れがある」という研究結果を発表しています。多くの専門家は、特に喫煙者やその他のハイリスク集団においては、高用量β-カロテン補給の危険性の方ががん予防効果を凌ぐのではないかと考えているようです。

このように聞くと、サプリメントで栄養素を摂取する事はむしろ危険な行為のように思えますよね。ですが、27,000人以上の男性喫煙者を14年間調べたフィンランドでの研究では、β-カロテンを除いて全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンの食事からの摂取が、逆に肺がんリスクを有意に減らしていたという結果になりました。また、全カロテノイド、α-カロテン、およびリコピンの摂取が最も多かった男女は、摂取が最少であった男女よりも有意に肺がんリスクが低かったという研究結果があります。4

この結果から、食事などから全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンなどを摂取した場合はガンのリスクを低下させ、逆に合成のα-トコフェロールや合成のβ-カロテン、レチノールなど特定の栄養素を大量に摂取した場合はむしろガンリスクを増加させてしまう恐れがあると考えられます。

特に、前者の研究(ATBCやCARET)で被験者に投与されていたのは合成のβ-カロテンでした。合成のβ-カロテンでは100%オールトランスβ-カロテンで構成されています。

通常、食品に含まれる天然のカロテノイドには、オールトランスβ-カロテンの他にもシス体のβ-カロテンやα-カロテン、リコピンなど様々なカロテノイドを含んでいます。何か1種類のカロテノイドだけが大量に含まれているなんてことは基本的にありません。

このような何か特定の1種類のカロテノイドを大量に摂取した場合、他のカロテノイドの吸収や組織での利用を妨げてしまう可能性があります。また、ある種の抗酸化剤が単独で大量に摂ると、条件によっては抗酸化剤としてよりも酸化促進剤として作用してしまう可能性があります。

そのため、サプリメントを選ぶ際は食品由来の原材料を使用した高品質なサプリメントを選ぶことが大切です。特定の成分のみしか含まれていないサプリメントで分子栄養学を実践すると、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性がありますので注意して下さい。

市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、上述したように合成のβ-カロテンのみや、レチノールのみ、酢酸 d-α-トコフェロールや酢酸dl-α-トコフェロールのみといったように、特定の栄養成分しか含まれていない物が殆どです。

このようなサプリメントでは特定の栄養成分しか含まれていないことから、大量に摂取すると生体内の分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性があります。

対して、分子栄養学実践専用サプリメントでは、天然由来の食品成分を原材料として使用し、なるべく食品と同じになるよう複数のカロテノイドや複数のトコフェロール、トコトリエノールなどの栄養成分が含まれています。このような設計や製造がされているサプリメントを選ぶことが、安全に分子栄養学を実践する際のポイントです。

同じように見えるサプリメントでも、含まれている栄養成分や使われている原材料には大きな違いがあります。また、それによって得られる結果も変わってくる恐れがありますので、分子栄養学を実践する際は必ず分子栄養学実践専用サプリメントを使用するようにして下さい。

ナンナン

げげっ❗サプリメントって安い方が良いと思ってたけど、ちゃんと溶けなかったり、変な薬が混ざってることもあるのか❗

はる かおる

そうだよ。中にはちゃんとまともに作られているものもあるけど、残念ながら質の悪いサプリメントが多く存在してるのが現状なんだ。
オーソモレキュラー療法を実践するなら、きちんと血液検査で身体の状態を調べて、質の高いオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントで栄養補給を行っていくのが大切だね。

オーソモレキュラー療法は、正しく行わないと危険! 間違ったオーソモレキュラー療法を行わないためにも、一人一人が分子栄養学について正しい知識を学びましょう

ここまで、保険診療の検査や薬を使ってオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについてと、自宅でできる検査キットや市販されている安いサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについて解説してきました。

オーソモレキュラー療法を安くやりたい!と思っていた方には、ちょっと残念に感じてしまった部分も多いかと思います。

しかし、オーソモレキュラー療法は単に安く出来ればいいというわけではありません。オーソモレキュラー療法を行う上で最も大切なことは、一人一人が分子栄養学について正しい知識を付け、正しく行う事が最も重要です。

この記事でも解説したように、同じように見える栄養素でも、薬とサプリメントでは含まれている成分が全く異なりますよね。もしこの事を知らずに、薬をサプリメントの代わりように使用してしまった場合、むしろ身体を壊してしまうことにもなりかねません。

ですので、安全にオーソモレキュラー療法を行うためにも、まずは一人一人が分子栄養学について正しい知識を学びましょう。正しい分子栄養学を学ぶことが出来れば、身を守ることにも繋がります。

では、どうすれば正しい分子栄養学を学べるのでしょうか?

分子栄養学が学べる本や講座などはいくつかありますが、その中でも正しい分子栄養学を学べる場としては、KYBクラブが最もオススメです。筆者自身も、このKYBクラブで分子栄養学を学びました。

このKYBクラブとは一体何なのかというと、(株)ケンビファミリーが運営する健康自主管理運動の会員制クラブのことです。このKYBクラブのKYBとは、「Know Your Body」の略で、自分の身体は自分で守りましょうという意味になります。

KYBクラブでは主に分子栄養学について「学ぶ」、血液検査などを通して自分の身体について「知る」、必要な栄養素を「補う」という3つの柱をベースに、健康の自主管理に必要な情報やオーソモレキュラー療法などを提供しています。

KYBクラブでは、分子栄養学の基礎理論が学べる講座が開催されているほか、分子栄養学をもっとわかりやすく学べる講演会や勉強会も定期的に開催されています。

こちらでは、例えば「貧血に対する分子栄養学アプローチ」「更年期障害に対する分子栄養学的アプローチ」「成長期の子供に必要な栄養素」など、より的を絞った分子栄養学が分かりやすく学べる内容になっています。

初心者の方は、いきなり金子塾の講座を受講するよりも、まずはこちらの勉強会から学んで頂くのがオススメです。

講演会や勉強会は、オフラインの会場にてご参加頂く以外にも、ZOOMなどオンラインでのご参加も可能です。他、タンパク質やビタミン、ミネラルなど栄養素の働きについてや、身体の仕組みについてなど様々な分子栄養学に関する情報も会員サイトからご覧頂けます。
※オンラインにおける各種講演会のご参加、動画のご視聴は無料です。一切追加料金はかかりません。

この他、分子栄養学に関する書籍もご用意しています。
書籍についても、KYBクラブ入会後、ディレクターを通して購入出来ます。

このような分子栄養学に関する勉強会や講演会以外にも、KYBクラブでは自分の身体の状態を「知る」ための検査と、足りない栄養素を「補う」ための分子栄養学実践専用サプリメントが提供されています。この2つを合わせてオーソモレキュラー療法とも呼ばれています。

KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、血液、唾液、尿を含めた全68項目もの項目を検査することで、全身の状態や栄養状態を把握することが出来るようになっています。

更に、オプション検査として糖尿病や骨粗しょう症、SIBOやリーキーガット症候群、DHEAs、酸化LDL検査など様々なオプションを加えることで、更に詳細に身体の状態や栄養状態を把握することが可能です。

KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、68項目にも及ぶ血液検査を実施し、栄養状態や生活習慣病の状態などを把握している

これらの検査結果は、分子栄養学に精通した専門医が一人一人のデータを解析し、レポートにまとめられます。このレポートを参考に、個人個人それぞれが分子栄養学を学びながら、分子栄養学実践専用サプリメントを使って実践していくのがKYBクラブのオーソモレキュラー療法です。

例えば、KYBクラブでは、血液検査を受けた方に上図のようなレポートを発行しています。このレポートは、血液検査結果や栄養相談シートに基づいて専門医が一人一人を解析し、個別に作成しているものです。

メディカルレポートでは、血液検査結果についての総合評価や解説、前回からの変化などが記載され、現在の身体の状態が分かります。また、栄養レポートでは、血液検査結果の分析に基づく栄養アドバイスが解説されており、どの栄養素をどのくらい摂ったら良いのかが解説されています。

このような検査やアドバイスを元に自分の状態を「知り」、分子栄養学実践専用サプリメントであるケンビックスシリーズを使って「補う」のが、KYBクラブが推進している健康自主管理運動です。

分子整合栄養学実践用に設計、開発されたケンビックスシリーズ

分子栄養学では、一般的に推奨されている量よりも遙かに多くの量の栄養素を摂取します。そのため、使用するサプリメントは安心・安全な設計と製造が行われている高品質なサプリメントを選ぶことが大切です。

ケンビックスシリーズでは、分子栄養学や生物学に精通したサプリメントの専門家チームが設計・製造し、医薬品と同じレベルの製造管理技術で作られた高品質なサプリメントになっています。

オーソモレキュラー療法を実践する際は、このようなサプリメントの質に対する知識の他、分子栄養学の基礎理論もしっかりと学び、理解して行う事が大切です。分子栄養学について学ばなければ、なぜオーソモレキュラー療法の血液検査が必要なのか、なぜオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントが必要なのかが分かりません。

ですので、オーソモレキュラー療法を実践してみたい方は、まずKYBクラブの勉強会で分子栄養学やオーソモレキュラー療法についてしっかりと学ぶことからはじめましょう。

上述したKYBクラブの詳細については、下記の記事でご紹介していますので興味のある方は参考にしてみて下さい。

間違った分子栄養学の情報に注意!

近年、インターネットやSNSが発展したことから、健康に関する様々な情報が飛び交っています。分子栄養学においても、分子栄養学を学べるセミナーや講座が増えた事によって、これらを学んだ人達による情報発信が急激に増えてきました。

このような中で問題となってくるのが、間違った分子栄養学の情報です。分子栄養学の情報の中には間違った情報や、分子栄養学をしっかり理解せずに情報発信されたもの、独自理論を組み合わせたものや、自身の経験のみで語られた客観性、エビデンスのない情報なども発信されています。酷いものでは、全く分子栄養学でも何でも無いのに分子栄養学だと語られているものもあります。

例えば、以下のような情報は間違った分子栄養学の例です。

  • メガドーズ、メガビタミン療法
  • 食事内容の改善や、特定の食材を摂取するだけで至適量の栄養が得られ、病気が改善するとしているもの
  • この不調にはこの栄養素」といったように、単に不調の症状だけを元に栄養アプローチを行うもの
  • 海外サプリメント、単に安価なサプリメントなど、安全性、有効性が確認されていないサプリメントで分子栄養学の実践をおこなっているもの
  • 前駆体では無く、活性型の栄養素を用いているもの
  • ファスティングと分子栄養学を組み合わせるなど、独自理論が組み合わされたもの
  • 薬は一切使わない、栄養療法だけで病気が治るなど極端なもの
  • 病態や不調の根本原因を調べるための検査に誘導しないなど、栄養欠損となった原因をきちんと調べずに行っているもの
  • 医師免許を持たない者が、血液検査データを扱う、サプリメントを処方する、食事指導を行うなど、医療機関を通さずに分子栄養学の指導を行っているカウンセラー など

このような情報は間違った分子栄養学であり、実践することで病態や体調が悪化するなどむしろ命に関わる危険性があります。事実、当方にもこれら誤った情報を元に実践した方からの健康被害に関するご相談も増えてきました。

現代では個人がSNSで気軽に情報発信が出来る世の中になっています。このような時代だからこそ、間違った分子栄養学の情報にはくれぐれもご注意ください。

ナンナン

オーソモレキュラー療法を実践するときは、ちゃんとオーソモレキュラー療法の血液検査を受けて、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを使うのが一番良いんだね

はる かおる

そうそう。健康保険適用の検査や、病院で処方されるビタミン・ミネラル剤は、オーソモレキュラー療法の実践には使えないんだ。このあたりをしっかり理解するためにも、一人一人が分子栄養学についてしっかり学ぶことが大切だね

保険診療でオーソモレキュラー療法は出来る? 保険診療で受けられる検査とオーソモレキュラー療法の検査の違い、薬とサプリメントの違いとはまとめ

以上が、保険診療でオーソモレキュラー療法が受けられるかどうかについてと、薬とサプリメントの違いについてでした。

保険診療では、主に「悪くなっているところを検査で調べて客観的に分析し、症状の原因となっている病巣を科学的根拠に基づいて排除しましょう」というのが適用範囲です。主に、お薬や手術、食事療法などによって病気を治療することを目的としています。

対してオーソモレキュラー療法は、生体内の分子の乱れ(栄養素)を整える事により、病気の予防や改善を図る療法です。主に血液検査によって個人差を判断し、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを用いて栄養補給を行います。

この時、オーソモレキュラー療法では、それぞれの消化吸収能力を考慮したり、病態を考慮したりと、個人個人に合わせた最適な栄養アプローチ(至適量)を行います。そして、保険診療では活性型の栄養素(お薬)を使うのに対し、オーソモレキュラー療法では前駆体の栄養素(サプリメント)を使って、栄養素の利用は身体に任せることが最大の違いです。

このような違いがあることから、保険診療で処方される薬を使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。また、オーソモレキュラー療法自体も、保険診療の対象外です。

そのため、オーソモレキュラー療法を実践する際は、完全自費で受ける必要があります。この際も、使用する検査やサプリメントは何でも良いというわけではありません。

このあたりの違いを理解し、正しくオーソモレキュラー療法を行うためには、やはり一人一人が分子栄養学を学ぶことが大切です。

もし、分子栄養学に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。分子栄養学については、ここで解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。

分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「KYBクラブ」「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。

KYBクラブについては、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で入会方法などをご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。

  1. 一般財団法人日本水産油脂協会 ↩︎
  2. 一般財団法人日本水産油脂協会 ↩︎
  3. カロテノイド ↩︎
  4. カロテノイド ↩︎

※当サイトは分子栄養学の普及を目的に、個人が独学で学んだ情報を発信しているサイトです。情報の正確性には配慮しておりますが、サイトに記された情報については、必ずしも正確性を保証するものではありません。また、サイトに示された表現や再現性には個人差があり、必ずしも利益や効果を保証したものではございません。
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