オーソモレキュラー療法は自宅でできる検査キットを使って実践できるのか? クリニックで受ける検査との違いや問題点を解説
近年、健康意識が高まるにつれて「メガビタミン健康法」や「オーソモレキュラー療法」に関する情報が増えてきました。
メガビタミン健康法とは、主に海外サプリメントなどを使ってサプリメントをメガドーズする療法です。対してオーソモレキュラー療法は、血液検査を行って専用のサプリメントで栄養療法を行っていくものです。
どちらもサプリメントで足りない栄養素を補給していきますが、この際どれくらいサプリメントを摂るかについては、主に血液検査を用いて判断しています。この血液検査は血清フェリチン値など保険診療の血液検査では受けられず、対応しているクリニックも多いとは言えません。
そこで候補に挙がるのが「自宅でできる血液検査キット」です。自宅でできる検査キットでは、郵送を利用して自宅に居ながら血清フェリチン値や総タンパクなどを検査することが出来ます。このため、自力でやりたい方やクリニックが近くに無くて検査が受けられない方に人気となっています。
ですが、このような自宅でできる検査キットで出た結果は、果たして正確な値と言えるのでしょうか? 今回は自宅でできる検査キットの問題点と、クリニックで受ける検査との違いについて解説します。
目次
オーソモレキュラー療法は、 自宅でできる検査キットを使っても実践可能?
ナンナン
ねぇねぇ、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみたいんだけどさ。近くに無いし、なかなか行ける機会が無いんだよね💦
オーソモレキュラー療法の検査を受けてみたいの❓ 近くに対応クリニックが無いと、なかなか大変だよね💧
うん。そこでさ、自宅で検査ができるキットを使ってみようと思うんだけど…どうかな❓ これならクリニックに行く必要ないし、安いし。すごくいいと思うんだ
自宅で検査ができるキットかぁ。それで何が調べられるの❓
えっと、フェリチンやタンパクが足りてるかどうかとか、他にもASTやALT、コレステロール値なんかも分かるみたいだよ
なるほど。 でも、 それだけじゃ殆ど何も分からないんじゃないかなー
いやいや、そんな事無いよ❗ タンパクと鉄が足りてるかどうかが調べられれば、それだけで十分じゃん❗ そもそも、タンパクと鉄が足りてるかどうかを調べるだけならそんな大量の項目を調べる必要ないし。わざわざ高いお金払ってクリニックで受ける必要なんて無いと思う❗
なるほど💧 でも、オーソモレキュラー療法の検査は単にタンパクや鉄が足りているかどうかを調べてるだけじゃないんだよ。実は、何故タンパクや鉄など栄養が不足したのかの原因を調べることの方が大切なんだ。
タンパク質や鉄が不足した原因❓ ただ足りないから不足してるだけじゃないの❓❓
いやいや、摂取量が足りない事も原因の1つだけど、それ以外にも様々な原因があるんだ。例えば、今まで食事からしっかりとタンパク質や鉄を摂っていたにもかかわらず、貧血になってしまった人とか。このあたりの理由をちゃんと説明出来る❓
えっ…💧 タンパクや鉄の摂取量が足りていても貧血になる人がいるの❓❓ なんでだろう、全然分かんない💦
そのあたりをしっかりと調べて、根本原因からアプローチを行わないと意味が無いんだ。自宅でできる検査キットだと、この原因は全く分からないんだよ。その理由を、もっと詳しく解説してあげるね
オーソモレキュラー療法とは、基本的にオーソモレキュラー療法に対応するクリニックで専用の採血を行い、その結果を基にサプリメントを用いてアプローチしていく療法です。
このオーソモレキュラー療法を行うと、現代の医療では治療が難しい原因不明の不調や、うつ、パニック障害などのメンタル的な不調が改善出来ると言われています。また、アンチエイジングや美白など美容にも効果があるとされ、様々な病気の予防や改善など、多くの効果が期待出来るとされる療法です。
そんなオーソモレキュラー療法で効果が期待出来ると言われているものには次のようなものがあります。非常に様々な不調や病気が当てはまることが分かりますね。
オーソモレキュラー療法で効果が期待出来ると言われているもの
- 美容・美白
- アンチエイジング
- デトックス
- 花粉症・アレルギー
- アトピー
- 自律神経失調症
- うつ病
- めまい
- パニック障害
- 起立性調節障害
- 関節リウマチなど自己免疫性疾患
- メニエール病
- へパーデン
- 甲状腺機能障害
- 糖尿病
- 低血糖症
- 睡眠障害
- 脂肪肝
- 脂質異常症
- 痛風
- 認知症
- 発達障害
- 副腎疲労
- 貧血
- 逆流性食道炎
- ガン
- ドライアイ
- PMS・PMDD
- SIBO
- リーキーガット症候群
- 不妊症
- 更年期障害
- 骨粗しょう症
- 低身長 など、他様々な病気
このように様々な不調に効果が期待出来ると言われているオーソモレキュラー療法ですが、難点があります。それが、対応するクリニックでしか検査が受けられないことと、オーソモレキュラー療法の検査は健康保険が適用されないため、保険適用の検査と比べるとどうしても高額になってしまう事です。
例えば、KYBクラブで行われているオーソモレキュラー療法の血液検査(基本スクリーニング検査)では、血液、唾液、尿を含めた全68項目もの項目を検査することで、全身の状態や栄養状態を把握することが出来るようになっています。
更に、オプション検査として糖尿病や骨粗しょう症、SIBOやリーキーガット症候群、DHEAs、酸化LDL検査など様々なオプションを加えることで、更に詳細に身体の状態や栄養状態を把握することが可能です。
これらの結果は、分子栄養学に精通した専門医が一人一人のデータを解析し、レポートにまとめられます。メディカルレポートでは、血液検査結果についての解説を主に行い、栄養レポートでは個別に最適な栄養アプローチのアドバイスが記されています。
このようなレポートを参考に、専用の分子栄養学実践専用サプリメントで栄養補給を行っていくのがオーソモレキュラー療法です。
このオーソモレキュラー療法の検査では健康保険が適用されず、すべて自己負担となる自費診療です。加えて、抱えている病態が多ければ必要な検査の数も増えてしまいます。
このため、人によっては検査代が2万円〜5万円、受けるクリニックによっては10万円や20万円以上するケースも見られます。特にオーソモレキュラー療法の検査に対応したクリニックはまだまだ少なく、料金はクリニックが独自で決めているところも多くあります。そのため、近くで受けられるクリニックの料金設定によっては、かなり高額になってしまうところもあります。
また、使用するサプリメントも特殊なもので、市販されているサプリメントに比べると非常に高額です。人によってはオススメされたサプリメントの合計額が5万円〜10万円以上と高額になることもあることから、その金額の高さで躊躇してしまう方も多くいます。
これに対し、もっと手軽で安く出来ることを売りにしたのが「メガビタミン健康法」です。メガビタミン健康法は、「高額な検査は必要なし」「使うサプリメントは安い海外サプリメントでOK」とした、藤川徳美氏が独自に提唱している健康法です。
特に、2018年11月に発売された「うつ消しごはん」(藤川徳美著)や、2020年11月に発売された「心と体を強くする! メガビタミン健康法 」(藤川徳美著)という本によってメガビタミン健康法が大きく知れ渡るようになりました。
メガビタミン健康法では、うつ病などのメンタル的な不調や体調不良は「タンパク質不足」と「鉄不足」が原因だとし、これを改善させるためにプロテインを始めとしたサプリメント(ATPセット)をメガドーズしていく手法です。
例えば、うつ病など精神的な不調は原因の1つとして「鉄欠乏性貧血」が関係している事があります。鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄分の摂取量が足りない場合や、体内で鉄分が不足してしまっている場合に起こる貧血です。全体の貧血原因の約7割が鉄欠乏性貧血だと言われています。
ただ、鉄欠乏性貧血といっても、単に鉄分が足りないだけで無く、タンパク質が足りていない場合も鉄欠乏性貧血となる事があります。これは、体内で鉄を運搬、貯蔵、利用するためには、タンパク質の利用が欠かせないためです。
そのため、メガビタミン療法ではうつ病に対して基本セットとなる「ATPセット」と呼ばれるサプリメントセットの摂取が推奨されています。ATPセットとは、「プロテイン」「ビタミンB」「ビタミンC」「ビタミンE」「アミノ酸キレート鉄(フェロケル)」の5種類のサプリメントのことです。
これらサプリメントを、例えば次のような量摂取することがメガビタミン健康法の基本的な手法です。
ATPセットの標準量とメガ量の例
標準量;
- ホエイプロテイン・・・20g〜30g×2〜3回
- ビタミンB50:2錠、朝夕。
- ビタミンC1000:3錠、朝昼夕。
- ビタミンE400:1~2錠、朝。
- キレート鉄(フェロケル)36mg*2~3、もしくは27mg*3~4。夜に摂取。
メガ量;
- ホエイプロテイン・・・20g〜30g×2〜3回
- ビタミンB50、3~6錠、朝昼夕。
- ビタミンC1000、9~12錠、朝昼夕(腸耐性用量の2/3程度)。
- ビタミンE400、3~5錠、朝。
- キレート鉄(フェロケル)36mg*2~3、もしくは27mg*3~4。夜に摂取。
※プロテインの量はお腹の調子をみて減量する場合がある。
https://ameblo.jp/kotetsutokumi/entry-12412449253.html より
※男性の場合は、鉄の摂取は非推奨
これらサプリメントを摂取していき、タンパク質や鉄の血中濃度を高めていきます。その際、タンパク質が足りているかどうかや、鉄が足りているかどうかを調べるのが、血液検査項目の「BUN(尿素窒素)」や貯蔵鉄である「血清フェリチン」等です。
メガビタミン健康法では、BUNの目標値は20、アルブミン4.2以上、GOT、GPT、γGTPは20前後が理想と言われています。1
また、フェリチン値の目標は150~200程度とし、3ヶ月〜半年ごとに測定して血清フェリチン値が目標の範囲内に収まっているかどうかを確認するとしています。2
この血液検査は自身で受ける必要がありますが、保険適用の検査では何かしら病気の疑いや病気を抱えていないとこれら項目の血液検査は受ける事が出来ません。また、フェリチン値を調べる検査は健康保険適用外で、そもそも検査自体を行ってくれないクリニックが大半です。
そのため、検査をしたくても受けられない方もいますよね。そこで候補に挙がるのが、自宅でできる検査キットの活用です。
現在では、Amazonを始めとした通信販売が普及したことで、自宅でできる血液検査キットなども販売されるようになってきました。
これらは検査キットに同封されている案内に従い、ご自身で採血します。そして、採血した血液を郵送で送ることで、後日結果が郵送されてくるといった流れです。
主に12項目前後の項目が検査でき、値段も数千円と手ごろなことから、病院で採血を受けられない方や自力でオーソモレキュラー療法を行っていきたい方に利用されています。
DEMECAL 生活習慣病+糖尿病 セルフチェック
検査項目
- 栄養状態総タンパク(TP)、アルブミン(ALB)
- 肝機能AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ‐GTP)
- 脂質代謝総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)
- 腎機能尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)
- 痛風尿酸(UA)
- 糖代謝血糖(GLU)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)
価格
7,370円(税込)(記事執筆時点)
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早期発見・早期治療は治癒率も高くなります。まずは、デメカルで第一歩を。「忙しくて検査する時間がない」「自覚症状もない」そんな人も自宅にいながら自分の気になる健康…
自宅でフェリチン検査!(標準キット)
検査項目
- 鉄関係:血清フェリチン、血清鉄 (Fe)
- 生化学:AST (GOT)、ALT (GPT)、γ-GTP、中性脂肪 (TG)、総コレステロール、LDLコレステロール (悪玉コレステロール)、HDLコレステロール (善玉コレステロール)、尿素窒素 (BUN)、クレアチニン (Cr)、尿酸 (UA)、総タンパク (TP)、アルブミン (Alb)
価格
オンライン一般価格:7,200円 (税込7,920円、送料無料)(記事執筆時点)
自宅でフェリチン検査! フェリチン、タンパク不足、体内炎症を分析 – リ・スタート 指先微量採血検査キッ…
フェリチンとは、生物の生命維持に不可欠な高分子のタンパク質のカゴのことで、全身にあります。 内部には5千個ほどの『鉄』を貯蔵し、全身の鉄需要により鉄をトランスフェ…
このような検査キットを使えば、自宅で手軽にBUNやアルブミン、GOT、GPT、γGTPやフェリチン値などを検査することが出来ます。これならわざわざクリニックまで血液検査を受けに行かなくても、オーソモレキュラー療法が出来そうですよね。
では、これらを用いて正しいオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?
結論を先に言いますが、このような自宅でできる血液検査キットを使ってのオーソモレキュラー療法実践は、問題点が多くオススメできません。
なぜなら、これら検査で使われている試薬が不明なため、出てきた数値の基準値やカットオフ値が全く通用しないからです。
また、他にも検査項目が少ない、タンパク質や鉄が不足した原因までは分からない、検査で出てきた数値がそのまま体内の栄養状態を表しているとは限らないなど、様々な問題があります。
自宅でできる検査キットを使ってオーソモレキュラー療法を行う際の問題点
- 検査項目数が少ない
- カットオフ値、基準値の違い
- タンパク質や鉄が不足した原因までは分からない
- 検査結果がそのまま体内の栄養状態を表しているとは限らない
そのため、自宅でできる血液検査キットを使ってのオーソモレキュラー療法実践は、問題点が多くオススメできません。
えっ、自宅でできる検査キットって、クリニックで受けられる検査と同じじゃないの❓❓
いや、自宅でできる検査キットは、クリニックで受けられる検査とは手法が違うから、検査結果も異なる可能性が高いよ。メリットが多そうに見える検査だけど、デメリットも多いんだ。
自宅でできる血液検査キットを使ってオーソモレキュラー療法を行う際の問題点
では、なぜこのような問題がオーソモレキュラー療法の実践に支障を来すのでしょうか? その理由を一つ一つ解説していきましょう。
まず、血液検査を行う上で是非とも知っておいてほしいことがあります。それが、血液検査は使用する「試薬」や「手法」によって、出てくる検査結果に大幅な違いがあるということです。
例えば、同じ日に採血した血液でも、受診した医療施設によっては血液検査結果のデータが異なる場合があります。これは、検査の手法や使用する試薬は、医療施設によって異なることがあるためです。3
また、自宅でできる検査キットでは指先に「ランセット」と呼ばれる針を刺して血液を押し出すのに対し、クリニックでは注射器を用いて血液を吸い出します。このような手法の違いも、血液検査結果に影響を与える要因です。
このことから、クリニックで受ける血液検査と、自宅でできる検査キットを使った場合の検査では、検査結果にばらつきが出る可能性が高くなります。例えば、クリニックで検査を採血したときのフェリチン値は50だったのに対し、自宅でできる検査キットでは100だったというように、検査結果に大きな違いが出る可能性が高いのです。
そこで問題となるのが、基準値やカットオフ値の問題です。先ほど、メガビタミン健康法ではBUNの目標値は20、アルブミン4.2以上、GOT、GPT、γGTPは20前後、血清フェリチン値は150~200が理想としていましたよね。
また、オーソモレキュラー療法では目標血清フェリチン値を100ng/mL以上としています。この栄養状態や病態を識別するために、正常範囲と見なす基準範囲を区切った値のことをカットオフ値と言います。
先ほど解説した検査結果のバラツキでは、このカットオフ値も異なってくるため、正確な判断が行えません。
先ほどの例えで言えば、クリニックで検査を採血したときのフェリチン値は50だったのに対し、自宅でできる検査キットでは100だったといった場合、これをそのまま上述したカットオフ値に当てはめて判断することは出来ないのです。
このことから、自宅でできる検査キットではそれに適応するカットオフ値で判断する必要がありますし、クリニックで受けた検査結果は、その検査に適応するカットオフ値で判断する必要があります。
つまり、メガビタミン健康法で用いられているカットオフ値は、あくまで藤川徳美先生が行っているクリニックでの血液検査などに適用されるものであり、それ以外の血液検査でも同じように適用できるとは限りません。
また、オーソモレキュラー療法では、専用の血液検査結果で定められたカットオフ値です。このカットオフ値は、「このような手法を用いて採血し、お願いする検査会社はここ、使用する試薬はこれ」といったように細かく定めた上で決定しています。そのため、上述したオーソモレキュラー療法のカットオフ値は、オーソモレキュラー療法の血液検査結果のみにしか使うことは出来ません。
これは自宅でできる検査キットだけに限らず、人間ドックでの血液検査や、保険診療での血液検査でも同様です。クリニックAで受けた血液検査と、クリニックBで受けた血液検査では、検査の手法や使用する試薬が異なることがあるため、一概に比較することは出来ません。また、検査の手法や使用する試薬が異なることから、オーソモレキュラー療法のカットオフ値を用いて判断することも出来ません。
このような問題は20年以上前から取り上げられており、そのたびに検査の標準化を進めて同じ結果が得られるよう改善されてきました。しかし、どんなに検査の標準化を進めても、検査の手法や使用する薬品などが国際基準で統一されていないため、いまだにばらつきが出てしまっているのが現状です。
このような問題があることから、単に検査結果だけを見て栄養状態を判断することは出来ません。
同じに見える血液検査なのに、受けたクリニックや検査によって結果が違って出てくるの❗❓
そうだよ。検査をする手法や試薬によって、検査にはバラツキが出る事があるんだ。結果が違うとカットオフ値も違ってくるから、オーソモレキュラー療法を行う検査は、何でも良いってわけじゃないんだよ。
自宅でできる検査キットでは検査項目が少なく、根本原因までは分からない
次に、自宅でできる検査キットの問題点としてあげられるのが、検査項目の少なさです。検査項目が少ないと、体内の栄養状態を正確に把握することは出来ません。
多くの方は、栄養療法を行う際に、先ほどのような血液検査結果を「カットオフ値」に当てはめて、基準値以上であれば栄養が足りている、基準値以下であれば栄養が足りていないなどと判断しているかと思います。
例えば、フェリチンが50と少なければ鉄が足りていない、逆にフェリチンが150と高ければ鉄が足りているといった感じです。また、総タンパクやアルブミン値、BUNが高ければタンパク質が足りていて、これらが逆に少ない場合はタンパク質が不足しているなどです。
ですが、実際にはこれだけで栄養が足りているかどうかを判断するには不十分すぎます。なぜなら、数値は体調や脱水の状態によっても変化するうえ、慢性炎症や病態の有無によっても、特定の値は変化してしまうためです。
例えば「脱水状態」だと通常よりも数値が高く見える場合があります。これは、脱水によって血液の濃縮が起こり、腎機能が低下するためです。脱水状態では、次のような数値が上昇することが分かっています。4
脱水によって上昇する数値
・赤血球数(RBC)
・ヘモグロビン値(Hb)
・アルブミン(Alb)
・総たんぱく(TP)
・ヘマトクリット(Ht)
・尿素窒素(UN)
・尿酸(UA)
・クレアチニン(Cr)
特に、タンパク質不足の状態では脱水が起こりやすくなります。これは、アルブミンなどが体内の水分を保持する働きをしていることから、タンパク質不足によってアルブミンが低下していると、脱水を起こしやすくなるためです。
他にも脱水を起こす原因には多々あり、通常、脱水を起こしているかどうかは、医師が他の血液検査項目や身体的所見、食事や運動などの聞き取りを行いながら総合的に判断を行います。
そのため、このような知識が無い初心者の方が、単に血液検査結果のデータを見て栄養が足りている、足りていないと判断することは、ほぼ間違っているといっても過言ではありません。
それに、フェリチン値は肝臓病などの炎症性疾患や、リウマチなど自己免疫性疾患などの炎症でも上昇することがあります。そのため、フェリチン値が高かったとしても、鉄が足りているとは限りません。
また、AST (GOT)、ALT (GPT)、γ-GTPは脂肪肝などの疾病や薬物、運動、食事などの影響でも上昇することがあり、数値がそこそこある様に見えても、それで栄養が足りていると判断することは出来ません。
総コレステロール、LDLコレステロール 、HDLコレステロール においても同じで、脂質代謝が悪くなっている場合にも数値が足りているように見えることがありますし、中性脂肪の場合では食後10時間以上絶食したかなど検査を行う時間やタイミングによっても変化します。
通常、このような数値の影響に関しては医師が他の血液検査項目や身体的所見、食事や運動などの聞き取りを行いながら総合的に判断を行いますが、自宅でできる検査キットではこのような判断は行われていません。
このことから、自宅でできる血液検査キットでは、オーソモレキュラー療法に使えないどころか、殆ど何の参考にもならないというのが実際にオーソモレキュラー療法に携わっている筆者の見解です。
そもそも、オーソモレキュラー療法の血液検査は、単品の血液検査項目を見て栄養が足りているかどうかを判断しているわけではありません。
血液検査には「関連項目」といって、それに関連する検査項目をセットで検査して初めて意味があります。例えば、貧血であればフェリチンやヘモグロビン以外にも様々あります。主なものとしては、次の通りです。
貧血関連項目
- 赤血球数 RBC
- ヘモグロビン HB
- ヘマトクリット HT
- 平均赤血球容積 MCV
- 平均赤血球HB量 MCH
- 平均赤血球HB濃度 MCHC
- 網状赤血球 RET
- 血小板数 PLT
- 血清鉄 Fe
- 不飽和鉄結合能 UIBC
- フェリチン
- C反応性タンパク CRP
- GOT(AST)
- GPT(ALT)
- γ-GPT
- 25-OHビタミンD
この他にも、タンパク質関連項目や炎症・免疫関連項目、酵素関連項目、腎・尿関連項目、酸化ストレス関連項目など様々な関連項目も同時にチェックします。決して、単品の項目だけを見て栄養が足りているかどうかを判断することはありません。
では、なぜこのような関連項目まで同時に見る必要があるのかというと、根本原因までしっかり調べてアプローチを行っていく事が大切だからです。
タンパク質や鉄が不足するにも、必ず原因があります。また、数値が高い低いにも必ず原因があり、なぜその数値が高いのか、逆になぜ低くなってしまったのかの根本から理解することが大切です。
特に貧血においては、単に鉄分の摂取量が少ないこと以外にも様々な原因によって貧血となる事があります。貧血だから鉄を摂れば良いというわけではなく、貧血を引き起こした根本原因からアプローチを行っていく事が必要です。
このことから、正しいオーソモレキュラー療法を行うためには、関連項目を含めた専用の血液検査を行いましょう。自宅でできる検査キットでは、検査項目が少ない事から何故栄養が不足してしまったのか、その根本原因までは分かりません。特に、単に特定の項目だけを見て栄養が足りているか足りていないかを判断することは無意味です。
血液検査データの読みやオーソモレキュラー療法はそんな単純ではありませんので、くれぐれも自己判断のみで行わないよう注意して下さい。
フェリチン値や総タンパクを調べれば体内の栄養状態が分かると思ってたけど、そんなに簡単じゃないんだね
そうだね。血液検査結果は、特定の値だけで見ても意味が無く、関連項目も同時に見ないと意味が無いよ。このことから、自宅でできる検査キットで正しいオーソモレキュラー療法を行う事はほぼ不可能と言っていいね。
タンパク質不足や貧血には必ず原因がある。オーソモレキュラー療法では、原因を調べて根本からアプローチすることが大切
ここまで、自宅でできる検査キットの問題点や、単に特定の項目だけを見て栄養が足りているか足りていないかを判断することの問題点について解説してきました。
自宅でできる検査キットを使用する方は、主にフェリチン値低下による隠れ鉄欠乏性貧血の改善や、それに伴う精神的不調、身体的不調の改善が目的かと思います。特に、メガビタミン健康法などでは「タンパク質不足や鉄欠乏性貧血を改善すれば不調が治る」として、フェリチン値を上げることが重要だと言われていますよね。
このように聞くと、単に「タンパク質と鉄分を摂取すれば良いのでは」と思われるかも知れませんが、実はタンパク質不足や貧血は、タンパク質や鉄分の摂取が足りない以外にも、様々な原因や栄養欠損が関係しています。
例えば、鉄欠乏貧血においては、ピロリ菌に感染している場合や、婦人科疾患による過多月経、スポーツにおける溶血、自律神経の乱れによる消化吸収能の低下、消化管からの出血、タンパク質やビタミンB群、亜鉛などの栄養欠損など、様々な原因が複雑に絡み合って発生しています。
加えて、例えその方が貧血だったとしても、貧血には様々な種類があり、その原因も様々です。例えば、亜鉛が足りなくて貧血になる亜鉛欠乏性貧血や、再生不良性貧血、大球性貧血や小球性貧血、慢性炎症における鉄の利用障害や、溶血性貧血など、貧血には様々な種類があります。
そのため、単にフェリチン値を調べて鉄やタンパク質を補給するのではなく、何故タンパク質不足や貧血になってしまったのかの原因をしっかり調べて行う事が重要です。
特に重度の貧血を引き起こしている場合には、消化管の出血や婦人科疾患など出血を伴う何らかの疾病が隠れている可能性があります。貧血を改善する際には、これら出血原因となっている疾病から先に対処する必要があるため、まずは疑わしい原因を特定するための検査を受けることが重要です。
また、造血を行うためには鉄分以外にもタンパク質やビタミンB群、亜鉛、セレン、マンガンなど様々な栄養素が必要です。鉄分を十分に補給してもこれら栄養素の摂取が足りない場合や、タンパク質が十分に消化吸収出来ない場合でも貧血となる場合があります。
この消化吸収に問題が起こる原因としては、先に挙げたピロリ菌の感染やIBS(過敏性腸症候群)、ストレスや自律神経の乱れなど、様々な原因があります。このような問題を抱えていた場合は、問題となっている疾病や症状の対処も同時に行う必要があります。
このように、貧血を含めた栄養欠損は、病態や生活習慣など様々な原因が関係しているため、その方それぞれに最適な分子栄養学的アプローチを行っていく事が大切です。
オーソモレキュラー療法ではこのような関連項目や病態、生活習慣を含めた幅広い情報を元に行っていく事から、単にフェリチン値のみを見て貧血かどうかを判断し、アプローチを行う事はありません。また、貧血の方に対して鉄分だけを摂らせることもありません。
加えて、メガビタミン健康法で言われているような「精神的な不調はタンパク質不足と鉄欠乏性貧血が原因であり、フェリチン値を上げれば改善する」というのも、すべての方に当てはまるとは限りません。
例えば、うつ症状との関連があると考えられる疾病としては、貧血以外にも様々なものが関係しています。
うつ症状との関連があると考えられる疾病の例
- ピロリ菌感染による消化能力の低下と栄養欠損
- 更年期障害
- 低血糖症
- 甲状腺機能障害
- PMS、PMDD
- SIBO(小腸内細菌増殖症)
- リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)
- 機能性ディスペプシア
- 過敏性腸症候群
- 副腎疲労症候群
- 脳の炎症
このような疾病は、消化吸収能の低下や自律神経の乱れを引き起こし、結果的にタンパク質不足を始めとした栄養欠損の状態になりやすくなります。栄養欠損の状態では、自律神経の調節に必要な栄養素が不足してしまうことから、うつ症状などが引き起こされてしまうことがあるためです。
そのため、うつ病だからといって症状だけで鉄欠乏性貧血だと決めつけるのでは無く、血液検査を通して客観的に判断し、それぞれ適切なアプローチを行うことが大切です。
特に貧血には必ず原因があり、消化管から出血している場合には、まず消化管からの出血を止めることが第一ですし、婦人科疾患によって出血量が増加していた場合は、婦人科疾患の治療を先に行うことも必要になります。ピロリ菌の感染やリーキーガット症候群などで消化吸収能が低下していた場合は、その対策も必要です。
この原因からきちんと対処しなければ、いくらサプリメントで鉄を補給したとしても、血液や栄養素がザルのように体外へ流れ出てしまってほとんど効果がありません。
オーソモレキュラー療法では、症状の背景にこのような疾病が隠れていないかどうかを血液検査や画像診断などで分析し、必要であれば疾病に対して薬物療法を行うなど西洋医学的な治療も併せて行われます。
そして、その人の消化吸収能や状態に合わせた「至適量」の栄養補給を行っていくのが正しいオーソモレキュラー療法のアプローチです。
自宅でできる検査キットでは、このような根本原因までは分かりませんので、ただ単にプロテインや鉄サプリメントを飲む事になります。これでは正しいアプローチが出来ず、隠れた病気や原因を見つけることも出来ません。
オーソモレキュラー療法は単に数値が低ければ栄養を足せば良いという単純なものではありませんので、自己流で行わず、必ず医療機関でオーソモレキュラー療法専用の検査を受けるようにしましょう。
他にも、メガビタミン健康法とオーソモレキュラー療法では、違う点がいくつもあります。詳しくは、下記の記事も参考にしてみて下さい。
分子栄養学とメガビタミン健康法の違いとは? メガビタミン健康法とオーソモレキュラー療法は全くの別モ…
分子栄養学と言われているものに、「メガビタミン健康法」と「オーソモレキュラー療法」があります。 メガビタミン健康法とは、主に海外サプリメントなどを使ってサプリ…
そっかぁ、やっぱり自宅でできる血液検査キットでオーソモレキュラー療法は出来ないんだね💧
そうだね。栄養が足りないからといって単にサプリメントを飲めば良いってわけじゃないんだ。栄養が足りなくなるには必ず理由があるから、その根本原因からアプローチしていくことが大切だよ。自宅でできる検査キットではここまで分からないから、使用するメリットはほぼ無いと言っていいね
Column : 今後、オーソモレキュラー療法に完全対応した「自宅でできる血液検査キット」は販売される?
ここまで自宅でできる検査キットの問題点を解説してきましたが、やはりクリニックなどで検査を受けられない方にとっては、自宅で血液検査ができた方が有り難いですよね。
では、今後フルセットの項目が検査できるなど、オーソモレキュラー療法に完全対応した血液検査キットは誕生するのでしょうか?
現在の自宅でできる血液検査キットでは、試薬の違いや検査項目の違いなどがあり、オーソモレキュラー療法で使うことは出来ません。しかし、試薬を統一したり検査項目を増やした検査キットが出来ればどうでしょうか?
検査結果に関しても、医師が解析してその結果を送って貰えれば、脱水や病態などの影響も考慮しなくて済みますよね。
しかし、現時点で自宅でできる完璧なオーソモレキュラー療法の検査キットが販売される可能性は、かなり低いと言えます。
その理由は、やはり手法や手技、温度による影響が大きいことと、身体の状態を正確に把握するためには、最終的には目視での検査や判断が必要になるためです。
例えば、血液検査は検査する項目数が増えるほど採血する量が増える傾向にあります。自宅でできる検査キットでは指先に「ランセット」と呼ばれる針を刺して血液を押し出すのですが、この方法で多量の血液を採血するのは無理があります。人によっては血流や血管の状態から、十分な量の採血が出来ない恐れもあります。
また、何回も手指を圧迫して血液を押し出すことで赤血球が壊れたり、採血に時間がかかりすぎたりすると検査値にも影響があります。加えて、冬場の寒い時期では低温によって血球内からカリウムが漏れ出て異常高値となる事もあるため、郵送でやりとりする検査キットでは正確な値は期待出来ません。5
検査結果によっては超音波やカメラなど画像診断を追加で行う必要があったり、検査内容によっては遠心分離機にかける必要があったりもします。このことから、やはり自宅でできる検査キットでは完璧な検査は行えません。
そのため、自宅でできる完璧なオーソモレキュラー療法の血液検査キットが今後市販されることはほぼ考えにくいかと思います。
もちろん、テクノロジーの進化によって自宅で検査ができるようになる時代が到来する可能性はあります。しかし、現時点ではそれがすぐに実用化する可能性は低いでしょう。
クリニックが近くに無いなどでオーソモレキュラー療法の血液検査が受けられない方にとっては残念ですが、今後オーソモレキュラー療法の血液検査対応クリニックが増えていくことに期待しましょう。
海外サプリメントなど市販されているサプリメントで安くオーソモレキュラー療法を行う事は可能?
ここからは少し話がそれますが、海外サプリメントや市販されているサプリメントなどでオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについても触れておきたいと思います。
自宅でできる検査キットを使用する方は、その検査結果に応じて海外サプリメントや市販されているサプリメントを使って栄養補給を行おうと考えている方も多いかと思います。
また、クリニックでオーソモレキュラー療法の血液検査を受けて、その結果を基に海外サプリメントや市販されているサプリメントを使おうと考えている方もいらっしゃるかもしれませんね。
では、オーソモレキュラー療法は、わざわざ高いサプリメントを購入しなくても、海外サプリメントなど安いサプリメントを使うことは出来るのでしょうか?
こちらについても、オーソモレキュラー療法では海外サプリメントや市販されているサプリメントを使っての実践はオススメしていません。
その理由としては、胃や腸で溶けないサプリメントが多くあるほか、パッケージに表示されていない医薬品成分が混入している可能性があるためです。
例えば、独立行政法人国民生活センターでは、『錠剤・カプセル状の健康食品は、外見上医薬品と誤認されることが多いものの、医薬品並みの品質管理がなされているものではないとされています。また、成分が一定量に調整されていない商品や、消化管の中で確実に溶けて、吸収されるように作られていないと思われる商品があるともいわれています。』と解説しています。
そして、独立行政法人国民生活センターが市販されている商品を実際に購入して崩壊性を調べた結果、なんと100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったという結果になりました。
市販されている商品に関するテスト
市販されている商品をテスト対象として、崩壊せず体内で吸収されない可能性があるか、表示されている機能性成分(注6)が表示どおり入っているか、微生物や重金属に汚染されていないか等、品質について調べました。
- 消費者へのアンケート調査の回答結果を参考に、多くの消費者が摂取すると考えられた機能性成分を10カテゴリー(「マルチビタミン」、「GABA」、「黒酢、香醋(こうず)」、「コエンザイムQ10」、「酵素」、「HMB」、「ルテイン」、「乳酸菌類」、「グルコサミン」、「DHA、EPA」)選定し、神奈川県内、東京都内及び徳島県内のドラッグストアの店頭やインターネット通信販売の大手ショッピングモール(Amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)、検索サイトGoogleにて市場調査を行い、各カテゴリーにつき10銘柄ずつ、合計100銘柄を選定しテスト対象としました。100銘柄中には、栄養機能食品が21銘柄、機能性表示食品が11銘柄含まれています。
- 崩壊性を調べた結果、100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しませんでした。
利用途中の健康食品に関するテスト
消費者の利用状況等が錠剤・カプセル状の健康食品の品質に影響を及ぼすかを調べるために、徳島県内で利用途中の健康食品を収集し、同時に、対面でその健康食品の利用実態に関するアンケート調査及び聞き取り調査を実施しました。容器を移し替えておらず、かみ砕いて摂取する錠剤ではない合計105商品をテスト対象としました。
- ハードカプセルの内容物が硬化しているものがみられました。
- 医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あり、未開封品よりやや高い割合でした。
- 収集した利用途中の健康食品の多くでは、未開封品と比べると機能性成分の量がわずかに少ない傾向がみられました。
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190801_1.html
また、既に利用中の健康食品の崩壊性を調べた結果もあり、テスト対象とした合計105商品のうち、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あったとの結果にもなっています。
このことから、市販されているサプリメントのおよそ半数は、医薬品に定められた規定時間内にきちんと崩壊していないという事実があります。当たり前ですが、どんなに良い原材料を使った高濃度の有効成分が含まれているサプリメントでも、それが胃や腸できちんと崩壊しなければ全く意味がありません。
なぜこのような結果になってしまうのかというと、サプリメントは「食品」という位置づけである事から、医薬品ほど厳密な設計や製造、テストが行われていないためです。医薬品は有効性を保証するために体内での崩壊性を考慮した設計や製造、厳しいテストを行いますが、市販されているサプリメントの多くはこのような考慮や設計は殆ど行われていません。
大抵の場合は、コストを抑えるために単に原材料を錠剤の形に固めただけで販売されています。この時に固めすぎてしまうことで、体内できちんと崩壊しないといった結果になってしまうのです。
また、海外サプリメントなどサプリメントの中には、薬品成分が混入していることがあります。サプリメントは「食品」という位置づけである事から、医薬品ほど厳密な製造体制やチェック体制が求められていません。
このため、信じられないかも知れませんが、実際にサプリメントによる医薬品成分の検出が相次いで発生しているのです。このようなサプリを摂取した結果、肝機能障害が引き起こされたなど健康被害を伴う事件も発生しており、厚生労働省や日本アンチドーピング機構などが注意を呼びかけています。
https://www.jtu.or.jp/news/2017/10/18/13162/より
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/ken_shoku5.htmlより
例えば、2017年には「ANAVITE」という海外製サプリメントに、ドーピングで禁止薬物であるタンパク質同化ステロイドが検出された当事件が発生しています。
この他にも、愛知県衛生研究所が平成18年4月1日から平成19年3月31日までの一年間で、国内で販売された健康食品の成分を調べた結果、66のサプリメントから医薬品成分が検出されたとの結果が出ました。
この情報からも分かるように、国内外問わずサプリメントに薬品成分が混入している事例が相次いでいます。基本的にサプリメントには成分をすべて表示する義務がないため、パッケージの栄養成分表示を見ても薬品成分が混入しているかどうかは分かりません。
サプリメントは薬のような見た目をしているので「どれも一緒だ」と思われる方が多いのですが、サプリメントの善し悪しは見た目や味、値段やパッケージの表示成分を見ただけでは判断することが出来ないのです。
このため、市販されているサプリメントや海外サプリメントとオーソモレキュラー療法専用サプリメントでは、その品質に雲泥の差があります。それぞれを比較してみると、次のような感じです。
一般的なサプリメントとオーソモレキュラー療法専用サプリメントの違い
スクロールできます
一般的なサプリメント | オーソモレキュラー療法専用 サプリメント | |
---|---|---|
食品由来の安全な原材料を使用 | 合成した原材料が使われている場合がある | 使用している |
規格化された高品質な原材料を使用 | 使用されていないものが多い | 使用している |
消化吸収能が考慮された配合 | されていない | されている |
体内での崩壊を考慮 | 考慮されていない | 考慮されている |
複合体での設計、配合 | なっていない | なっている |
反応抑制のためのコーティングの有無 | なし | ある |
医薬品レベルの厳しいチェック体制 | 行われていない | 行われている |
鮮度を保つための小ロット生産 | されていない | されている |
栄養摂取の目的 | 欠乏症、病気の予防 | 病態の改善・予防 オプティマムヘルスの推進 |
このように比べてみると、市販されているサプリメントや海外サプリメントとオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、品質や目的が全く違うことが分かりますよね。
オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントは値段が高いとよく言われることがありますが、高いものは高いなりに理由があります。この違いを理解し、オーソモレキュラー療法を実践する際は必ずオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントで行うことが大切です。
この他、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントと海外サプリメントなど一般的なサプリメントの具体的な違いについてもっと知りたい方は、次の記事を参考にして下さい。
分子栄養学で使われるサプリメントと、海外サプリメントなど一般的なサプリメントとの違い
分子栄養学の実践においては、必ずサプリメントが用いられています。この時に使われているサプリメントは「分子栄養学実践専用サプリメント」という特殊なものです。 で…
げげっ❗サプリメントって安い方が良いと思ってたけど、ちゃんと溶けなかったり、変な薬が混ざってることもあるのか❗
そうだよ。中にはちゃんとまともに作られているものもあるけど、残念ながら質の悪いサプリメントが多く存在してるのが現状なんだ。
オーソモレキュラー療法を実践するなら、きちんと血液検査で身体の状態を調べて、質の高いオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントで栄養補給を行っていくのが大切だね。
オーソモレキュラー療法は、正しく行わないと危険! 間違ったオーソモレキュラー療法を行わないためにも、一人一人が分子栄養学について正しい知識を学びましょう
ここまで、自宅でできる検査キットを使ってオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについてと、市販されている安いサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについて解説してきました。
オーソモレキュラー療法の検査を自宅でやりたい!と思っていた方には、ちょっと残念に感じてしまった部分も多いかと思います。
しかし、オーソモレキュラー療法の検査は単に採血すればいいというわけではありません。正しいオーソモレキュラー療法を行う上で最も大切なことは、一人一人が分子栄養学について正しい知識を付け、正しく行う事が最も重要です。
この記事でも解説したように、同じように見える検査でも手法や試薬の違いによっては検査結果にバラツキが出ますし、検査項目が少ないと栄養欠損が引き起こされた根本原因までは分かりません。
もしちゃんとした検査を受けずに当てずっぽうでサプリメントを摂取した場合、むしろ身体を壊してしまうことにもなり得ます。
ですので、安全にオーソモレキュラー療法を行うためにも、まずは一人一人が分子栄養学について正しい知識を学びましょう。正しい分子栄養学を学ぶことが出来れば、自分の身を守ることにも繋がります。
では、どうすれば正しい分子栄養学を学べるのでしょうか?
分子栄養学が学べる本や講座などはいくつかありますが、その中でも正しい分子栄養学を学べる場としては、KYBクラブが最もオススメです。筆者自身も、このKYBクラブで分子栄養学を学びました。
このKYBクラブとは一体何なのかというと、(株)ケンビファミリーが運営する健康自主管理運動の会員制クラブのことです。このKYBクラブのKYBとは、「Know Your Body」の略で、自分の身体は自分で守りましょうという意味になります。
KYBクラブでは主に分子栄養学について「学ぶ」、血液検査などを通して自分の身体について「知る」、必要な栄養素を「補う」という3つの柱をベースに、健康の自主管理に必要な情報やオーソモレキュラー療法などを提供しています。
KYBクラブでは、分子栄養学の基礎理論が学べる講座が開催されているほか、分子栄養学をもっとわかりやすく学べる講演会や勉強会も定期的に開催されています。
こちらでは、例えば「貧血に対する分子栄養学アプローチ」や「更年期障害に対する分子栄養学的アプローチ」「成長期の子供に必要な栄養素」など、より的を絞った分子栄養学が分かりやすく学べる内容になっています。
初心者の方は、いきなり難しい講座を受講するよりも、まずはこちらの勉強会から学んで頂くのがオススメです。
このような分子栄養学に関する勉強会や講演会以外にも、KYBクラブでは自分の身体の状態を「知る」ための検査と、足りない栄養素を「補う」ための分子栄養学実践専用サプリメントが提供されています。この2つを合わせてオーソモレキュラー療法とも呼ばれています。
KYBクラブのオーソモレキュラー療法では、血液、唾液、尿を含めた全68項目もの項目を検査することで、全身の状態や栄養状態を把握することが出来るようになっています。
更に、オプション検査として糖尿病や骨粗しょう症、SIBOやリーキーガット症候群、DHEAs、酸化LDL検査など様々なオプションを加えることで、更に詳細に身体の状態や栄養状態を把握することが可能です。
これらの検査結果は、分子栄養学に精通した専門医が一人一人のデータを解析し、レポートにまとめられます。このレポートを参考に、個人個人それぞれが分子栄養学を学びながら、分子栄養学実践専用サプリメントを使って実践していくのがKYBクラブのオーソモレキュラー療法です。
例えば、KYBクラブでは、血液検査を受けた方に上図のようなレポートを発行しています。このレポートは、血液検査結果や栄養相談シートに基づいて専門医が一人一人を解析し、個別に作成しているものです。
メディカルレポートでは、血液検査結果についての総合評価や解説、前回からの変化などが記載され、現在の身体の状態が分かります。また、栄養レポートでは、血液検査結果の分析に基づく栄養アドバイスが解説されており、どの栄養素をどのくらい摂ったら良いのかが解説されています。
このような検査やアドバイスを元に自分の状態を「知り」、分子栄養学実践専用サプリメントであるケンビックスシリーズを使って「補う」のが、KYBクラブが推進している健康自主管理運動です。
分子栄養学では、一般的に推奨されている量よりも遙かに多くの量の栄養素を摂取します。そのため、使用するサプリメントは安心・安全な設計と製造が行われている高品質なサプリメントを選ぶことが大切です。
ケンビックスシリーズでは、分子栄養学や生物学に精通したサプリメントの専門家チームが設計・製造し、医薬品と同じレベルの製造管理技術で作られた高品質なサプリメントになっています。
オーソモレキュラー療法を実践する際は、このようなサプリメントの質に対する知識の他、分子栄養学の基礎理論もしっかりと学び、理解して行う事が大切です。分子栄養学について学ばなければ、なぜオーソモレキュラー療法の血液検査が必要なのか、なぜオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントが必要なのかが分かりません。
ですので、オーソモレキュラー療法を実践してみたい方は、まずKYBクラブの勉強会で分子栄養学やオーソモレキュラー療法についてしっかりと学ぶことからはじめてみてください。
上述したKYBクラブの詳細については、下記の記事でご紹介しています。興味のある方は是非参考にしてみて下さい。
オーソモレキュラー療法とは? かかる費用や受けられる検査機関、具体的なやり方を解説
近年、SNSやインターネット上では、「オーソモレキュラー療法で病気が治る」といった情報や、食事や栄養状態を整えれば病気が治るといった情報が増えてきています。また…
間違った分子栄養学の情報に注意!
近年、インターネットやSNSが発展したことから、健康に関する様々な情報が飛び交っています。分子栄養学においても、分子栄養学を学べるセミナーや講座が増えた事によって、これらを学んだ人達による情報発信が急激に増えてきました。
このような中で問題となってくるのが、間違った分子栄養学の情報です。分子栄養学の情報の中には間違った情報や、分子栄養学をしっかり理解せずに情報発信されたもの、独自理論を組み合わせたものや、自身の経験のみで語られた客観性、エビデンスのない情報なども発信されています。酷いものでは、全く分子栄養学でも何でも無いのに分子栄養学だと語られているものもあります。
例えば、以下のような情報は間違った分子栄養学の例です。
- メガドーズ、メガビタミン健康法
- 食事内容の改善や、特定の食材を摂取するだけで至適量の栄養が得られ、病気が改善するとしているもの
- 「この不調にはこの栄養素」といったように、単に不調の症状だけを元に栄養アプローチを行うもの
- 海外サプリメント、単に安価なサプリメントなど、安全性、有効性が確認されていないサプリメントで分子栄養学の実践をおこなっているもの
- 前駆体では無く、活性型の栄養素を用いているもの
- ファスティングと分子栄養学を組み合わせるなど、独自理論が組み合わされたもの
- 薬は一切使わない、栄養療法だけで病気が治るなど極端なもの
- 病態や不調の根本原因を調べるための検査に誘導しないなど、栄養欠損となった原因をきちんと調べずに行っているもの
- 医師免許を持たない者が、血液検査データを扱う、サプリメントを処方する、食事指導を行うなど、医療機関を通さずに分子栄養学の指導を行っているカウンセラー など
このような情報は間違った分子栄養学であり、実践することで病態や体調が悪化するなどむしろ命に関わる危険性があります。事実、当方にもこれら誤った情報を元に実践した方からの健康被害に関するご相談も増えてきました。
現代では個人がSNSで気軽に情報発信が出来る世の中になっています。このような時代だからこそ、間違った分子栄養学の情報にはくれぐれもご注意ください。
オーソモレキュラー療法を実践するときは、ちゃんとオーソモレキュラー療法の血液検査を受けて、オーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを使うのが一番良いんだね
そうそう。オーソモレキュラー療法は、特定の項目だけを見てサプリメントを飲むような、そんな単純な療法じゃないんだ。間違ったオーソモレキュラー療法ではむしろ身体を壊してしまう恐れもあるから、一人一人が分子栄養学についてしっかり学ぶことが大切だね
オーソモレキュラー療法は自宅でできる検査キットを使って実践できるのか? クリニックで受ける検査との違いや問題点を解説まとめ
以上が、自宅でできる検査キットでオーソモレキュラー療法が出来るかどうかについてと、その問題点についてでした。
自宅でできる検査キットでは、クリニックで行う血液検査と比べて手法や試薬が異なるため、結果にバラツキが出る可能性があります。また、オーソモレキュラー療法などで用いられているカットオフ値は、オーソモレキュラー療法で行われている血液検査でのみ参考に出来るものですので、それ以外の自宅でできる検査キットでは参考に出来ません。
また、オーソモレキュラー療法は関連する様々な項目や検査を参考にし、なぜ栄養が不足してしまったのか、なぜこの検査結果となったかの根本原因からアプローチしていくことが大切です。特定の数値だけを見て栄養が足りているかどうかを判断するものではありません。
正しいオーソモレキュラー療法では、それぞれの消化吸収能力を考慮したり、病態を考慮したりと、個人個人に合わせた最適な栄養アプローチ(至適量)を行います。そして、この使用するサプリメントは何でも良いというわけではなく、きちんと消化吸収などが考慮されたオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを使用する事が大切です。
このような違いがあることから、自宅でできる検査キットや市販されているサプリメントを使用した場合、正しいオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。
オーソモレキュラー療法というと単にサプリメントを飲むだけの療法だと思われがちですが、この記事で解説した以外にもまだまだ奥が深く、一生かけても学びきれないほど奥が深い学問です。もし、オーソモレキュラー療法に興味ある方は、是非分子栄養学を学んでみて下さい。
分子栄養学を学べる教材としては、ケンビックスが行っている「KYBクラブ」や「金子塾」があります。これらは分子栄養学の基礎を学べるほか、病態別のアプローチなど分子栄養学を応用したアプローチについても学ぶことが出来ます。
KYBクラブについては、オーソモレキュラー療法・無料栄養相談申し込みページ で入会方法などをご案内しておりますので、ご興味ある方は是非こちらもご覧下さい。
参考情報